ここからは最後のチャプター、鳥類の食性についての展示です。
鳥類 Aves だけでまるまる一章割かれており驚きました。

完全無欠の鳥類ですが偽歯があるだけで恐ろしげです。頭も大きいし。

エナンティオルニス類 Enantiornitidae は白亜紀を繁栄を極めた鳥類ですが、非鳥類型恐竜類と共に絶滅したのです。

胃石を保存した珍しいエナンティオルニス類。食性については紆余曲折あるようで、当初はカワセミ Alcedo atthis のような魚食性の生態と言われていましたが、その後、昆虫食や果実食を示唆する研究もあるみたいです。食性にもろに関係するであろうクチバシはきれいに残っていますが、それだけで食性を推定するのは難しいようです。

骨の見た目ですでに鉤状になった全上顎骨をご覧ください。生体では角質でさらに鋭いクチバシが備わっていたことでしょう。
片足で小型哺乳類を踏みつけながらクチバシで肉を食いちぎる姿が想像できますでしょう。完全無欠の肉食獣脚類です。

ふたむかし前はこちらが小型哺乳類を襲う肉食鳥類として復元されることもありましたが、頑丈で鈍い形のクチバシの様子などから果実などを食べる草食獣脚類という事で今日ではコンセンサスを得ているかなと思います。

キャプションに何が書かれていたかおぼえていませんが、この体に対して卵の大きさがいつ見てもすごいです。

中足骨は我々がよく知る鳥類のように癒合して1本になっていると思うんですが、元々の3本の形が結構くっきりしています。

ほぼ後肢と頸だけの恐竜みたいになろうとしているみたいです。鉤状突起すらないのが面白いです。

植物を中心に食べる雑食性の鳥らしいですが、糞から魚の椎骨と鱗が見つかった例もあるそうです。当時は貯水池の水位が下がり岸辺に死魚が多く残されていたため、生きたものを捕らえたのか死体を拾って食べたのかは不明とのこと。いずれにしても、植物や昆虫だけでなく、利用できるものを柔軟に食べる逞しさがうかがえますね (Azevedo et al., 2006)。

主に果実食というイメージはありましたが、カニや貝を食べていた可能性もあるそう。糞一つあれば大きく進んだかもしれない研究が、絶滅によって永久にできなくなっているわけですね。

ヤマシギの生態で一番面白いのは、クチバシで土中のミミズを直接触る前に見つけられることではないでしょうか。
クチバシの先には、振動を感知する「ヘルプスト小体」と呼ばれるものが高密度に集まっているそうです。これにより、土中でミミズが動いて生じるわずかな振動を捉える、いわばリモートセンサーを持っているというわけです。目で探しているのでも、手当たり次第に突いているのでもないわけです。
昼は身を隠し、夜になるとミミズの多い場所へ通うそうですが、あるバイオロギング研究では、隣り合う似た畑でもミミズの多い側だけを選び、同じ場所へ繰り返し戻る個体が確認されたそう。つまりヤマシギの夜間移動は、精密なミミズ分布に則っているらしいのです(Cunningham et al., 2013) 。

始新世のドイツに生息していたツル目の鳥類。雑食性で、木の実やサカナの死骸を利用していたことが知られているらしいです。

Cf. ジュンキタルスス(ユンキタルスス) Cf. Juncitarsus
メッセロルニスと同じ湖周辺に住んでいた鳥類。水の中をウェイドするのに適した細長い脚をもっているのがわかります。胃石も見つかってるそうですがこの標本からではないですよね?

口に入る生き物はなんでも食べる悪食らしいです。僕と同じですね。

この辺りから身近な恐竜が現れます。
個人的に本州の獣脚類では一番好きな種です。
大きめの獲物は長い頸を躍動させ、長いクチバシを銛のように突き刺して捕えるそうです。我々がアオサギにとって「大きめの獲物」でなくて良かったと思います。

主に水草を食べる恐竜かと思いますが、2004年、長野市で捕獲された本種は、嘴にオイカワを5尾くわえ、食道などからさらに25尾、合計30尾が見つかったそうな。他の食物は確認されず、オイカワもほぼ未消化だったため、水草と一緒に偶然飲み込んだのではなく、短時間にオイカワを集中的に襲った可能性が高いと考えられています。ただし一個体の事例なので、もちろん一般的な習性ではないと思います(水野,2006)。

サカナや水生昆虫を食べるだけかと思ったら、自分の羽毛まで食べるというのがカイツブリの食生活の面白いところです。親は孵化したばかりの雛にも羽毛を与えるそう。初めての食事がまさかの羽毛ってんだから驚きです。
もちろん栄養ではなく、胃の中で餌を留め、魚の骨や昆虫の殻を濾し取るフィルターのようなものとしてはたらくと考えられています。最後はゴミカスごとペリットとして吐き出すそうです(Jehl, 2017) 。

スフェニスクス Spheniscus とはケープペンギン属のこと。パラエオスフェニスクスはペルーで発見されたペンギンモドキ Protopterum ではなくペンギンに近縁な化石属。鮮新世の時点ですでにペンギン目 Sphenisciformes は翼をフリッパーに進化させ海のサカナを追い回していたんですね。

ペンギンらしい直立(膝が曲がっているのでそう言って良いかわかりませんが)ではなく前傾姿勢のマウントなので骨で見るとおびただしく変な獣脚類という感じがします。まあ実際その通りなのですが。

多くの人にとって最も身近なタカ類 Accipitriformes でしょう。「繁栄している事が強さ」と定義するなら現生最強の猛禽類候補に上げたいです。
長崎県での研究では夏には海棲動物、秋には昆虫といったようにその時に手に入りやすい獲物を襲う、良い意味でスペシャリストではない点が成功の一翼を担っているのかなと思います。ちなみに共食いの記録もあるらしいです(Shiraishi et al., 1990) 。

夏限定でカブトムシ Trypoxylus dichotomus septentrionalis を頻繁に狩る個体群が報告されています。闇に乗じてネズミを襲う森の忍者が、夏は昆虫採集に本気を出すわけです。昆虫食は例外的と考えられていましたが、カブトムシが豊富な短期間には主食候補になるようです(Hongo and Kaneda, 2009) 。

ご存知、最も有名な恐竜類。異論は認めます。
これ後方胴椎癒合してるんですかね?

この章で唯一の恐竜以外の展示物。
雑食で、狩猟採集、農耕牧畜で食べ物を得ると言われています。恐竜を調べたり飼ったり食べたりするらしいです。

ニワトリに次いで日本ではシナントロープな恐竜類ということで紹介されています。
参考文献:
• Azevedo, C.S., Tinoco, H.P., Ferraz, J.B. and Young, R.J. (2006) ‘The fishing rhea: a new food item in the diet of wild greater rheas (Rhea americana, Rheidae, Aves)’, Revista Brasileira de Ornitologia, 14(3), pp. 285–287.
• Cunningham, S.J., Corfield, J.R., Iwaniuk, A.N., Castro, I., Alley, M.R., Birkhead, T.R. and Parsons, S. (2013) ‘The anatomy of the bill tip of kiwi and associated somatosensory regions of the brain: comparisons with shorebirds’, PLoS ONE, 8(11), e80036. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0080036
• 水野千代(2006)「カルガモの魚類捕食に関する事例報告」『Strix』24,pp. 201–203.
• Jehl, J.R. Jr. (2017) ‘Feather-eating in grebes: a 500-year conundrum’, The Wilson Journal of Ornithology, 129(3), pp. 446–458. https://doi.org/10.1676/16-196.1
• Shiraishi, S., Koga, K. and Kawaji, N. (1990) ‘Food habits of the Black-eared Kite, Milvus migrans lineatus, in Nagasaki Airport and its adjacent areas’, Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University, 34(3), pp. 247–254. https://doi.org/10.5109/23900
• Hongo, Y. and Kaneda, H. (2009) ‘Field observations of predation by the Ural Owl Strix uralensis upon the Japanese Horned Beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis’, Journal of the Yamashina Institute for Ornithology, 40(2), pp. 90–95. https://doi.org/10.3312/jyio.40.90
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