東京たま大恐竜博 #3

アイス(クリーム)食べようと思ったらなかった。ケラトプスユウタです。

表題の通り、『東京たま大恐竜博』のレポート3回目です。早速いきましょう。

ここからはチャプター3とも言うべき、本展のメインと思われるアニマトロニクスの生息地。

全てを載せる気はないですが、いくつか「これは」というものをピックアップします。

僕の大好きなケラトプス類 Ceratopsidae の一つ、スティラコサウルス Styracosaurus

概ね顔の特徴はよくとらえていますね。

側面視ですと、首の長さと角度、そして身体に対する頭のプロポーションの解釈が僕とは違っています。

“鼻の上に長い角を持つ。”

はい。

“襟飾りの周りから、長く先細りした骨が突き出ていた。”

はい。

“これは、オスのみ。”

これ、表現が拙い感じがするのはさておき、「先述の形質がオスのものでメスはそうなっていなかった」という意味なら誤りです。

角竜類 Ceratopsia 全般性別について確からしいことは現状ほとんどわかっていません。「これはオスの特徴であれはメスの特徴」みたいな話ができるほどわかっていることはありません。

スティラコサウルスに割り当てられている標本は複数発見されています。確かに、頭骨の保存がある程度以上良好なものだけを見ても、長い角や長いホーンレットをもつものばかりではありませんが、角やホーンレットが短い個体は縫合線の癒合が進んでいないことから未成体と考えるのが主流である一方、それらをメスとする根拠はありません。

2000年台の図鑑ではセントロサウルス Centrosaurus がスティラコサウルスのメス型を表しているという説を紹介していたものもありますが、地層的にも形質的にも現在は否定されています。

もし謙抑的セーフティーサイドに寄せるなら、例えば「長い角やフリルのトゲは、なかまへのアピールに使われた可能性がある。一部の研究者は、オス同士の競争や性差との関係を考えているが、はっきりしたことはまだわかっていない」くらいが、現状の水準には近いんじゃないかなと思います。

テリジノサウルス Therizinosaurus

近年の復元に近い姿でなかなか良いのではないでしょうか?

申し訳程度に生えた前腕の羽も僕はおかしいとは思いません。

これは前傾姿勢になった瞬間ですが、大型テリジノサウルス類の通常姿勢と言われる上体を起こした姿勢もとれる優れもの。

アンキロサウルス Ankylosaurus

四肢が長すぎるのと、尾の付け根から先端まで柔軟性が担保されてそうな見た目が、化石と比べると差があります。

装甲も全体的にいい加減です。特にハーフリング(首の背側の装甲)は2つと決まっているのですが、5つもあってキモいです。

それでも頭はしっかりアンキロサウルスに見えることから、クオリティは凡百の「自称アンキロサウルスロボット」の平均よりは高いと言って良いのではないでしょうか。

最大級の剣竜類 Stegosauria として近年注目を集めつつあるかどうかは定かではないですが、このアニマトロニクスはダケントルルス Dacentrurus だそうです。

これは結構良いんじゃないですかね?

ショルダースパイクが前傾しているのが、えー、独創的で面白いです。

アロサウルス Allosaurus

なんらかの剣竜が食べられています。

首が長すぎますが、頭はアロサウルス・フラギリス A. fragilis に見えるのでかっこいいです。

“専門の学者でもティラノサウルスのメスと力説していた時代があった”

生きていた時代が8000万年くらい隔たりある(現代と白亜紀末の方が近い)ので到底ありえない話なのですが、“メス”の部分だけ“祖先”に読み替えると、確かにそういう説もあったらしいので正しい事になりますね。

それにしても古生物では触れるのに勇気がいるはずの性別に関して何度も切り込むとはこの展示会、まさに蟷螂の斧。

タペヤラ Tapejara とキャプションに書かれていますが、今で言うトゥパンダクティルス・インペラトル Tupandactylus imperator の頭です。かつてはタペヤラ属に含まれていた種ですね。まあまた戻ることもあり得るのかもしれませんが。

キャプションでは分布が“アメリカ”になっていますが僕の知る限りブラジルでしか見つかっていないので「南アメリカ」の間違いでしょう。

復元については、とにかく巣が鳥類 Aves っぽすぎる事が気になりました。

幼体も鳥類っぽいのは仕方ないとして、デザインも動きもオモチャすぎました。

トリケラトプス Triceratops

目測ですが既知の最大のトリケラトプスよりもさらに大きくて強そうです。

念のためツーショットを撮ってもらいました。

デザインに口出しさせてもらうと、顔の上面が平らすぎかつ幅が広すぎます。ホーンレットも数が多すぎ。前肢もゾウっぽすぎですよ。

上眼窩角は、顔との比率的には角質でこのくらい長くなっててもおかしくはないのかもしれません。

心をフラットにして見れば、横顔はイケメンと言える造形です(主観)。

プロルスス T. prorsus ともホリドゥス T. horridus ともつかない顔です。

ティラノサウルス Tyrannosaurus

絶対的にも相対的にも顔デカ過ぎ。前肢が細長過ぎ。頭部の造形は本展のアニマトロニクスの中では最も空想的です。

強そうですがかっこ悪いです。

スピノサウルス Spinosaurus

後側頭窓は存在しない想定のようで奇抜です。

足元にはランダムな「サカナ」のイメージのようなものがいます。

立体の展示物はこれが最後でした。

あとは別料金の映像作品(『オーロラを見た恐竜たち』というタイトルでアラスカが舞台、パキリノサウルス Pachyrhinosaurus が主人公のようでしたが観てません)や、『トリック博士の魔法トンネル』なる恐竜とは無関係のアトラクション(写真を見たところ、薄暗いトンネル内を橋が貫いていて、その周囲をイルミネーションのような物のついた筒状の壁がぐるぐる回るので、その中を歩いて通過するというもののよう)。後者はもしかしたら本来はドラえもんタイムトンネルのイメージなのかもしれません。

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では感想いきます。

まず、わかってはいたことですし、そもそもこれは『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』と同じで恐竜をエンタメとして楽しむための非学術的イベントなので、あまり細かく言うのも野暮だとは思います。とはいえ、さすがに「頼むから静かにしてくれよ」という部分もかなりありました!

キャプション類は特に香り豊かで、「ソース不明系」「想像で書いているだろ系」「勉強不足系」「勘違い系」など、バリエーション豊富な誤りや誤字脱字が散見されましたよね。

ただ、そのあたりを一旦脇に置いたとしても、展示全体として最も気になったのは、分類や産地表記などのスタイルに統一性がないことです。例えばキャプションによって“白亜紀後期”、“中生代白亜紀”、“上部白亜紀 セノマニアン” のようにばらばらでキモいってことです。三つ目はそれ以前の問題がありますが。

おそらくキャプションのレイアウトのデザイン自体は一人、あるいは少人数で統一して作っているのだと思われるだけに、この基準と信念の無さが余計に目立ちます。「知識が正しいか以前に、単純に情報整理として雑」という印象でした。

見出しと本文の内容が噛み合っていないものまであり、そこはさすがに論外です。

化石・レプリカ系展示については、目新しい標本はほとんどなく、資料的価値もそこまで高くなさそうなものが中心でした。ただ、事前の予想では「どうせ10個程度だろう」と思っていたので、その意味では予想より展示数が多かった点は良かったです。

一方で、会場が広いぶん、全体としてはかなりスカスカした印象もありました。

アニマトロニクスは、この記事で見ていただいた通りのクオリティです。とはいえ、よく見かける某四川省製の“デタラメ恐竜”よりは明らかに出来が良く、ちょうどそのあたりとココロ社製恐竜の中間くらいの品質と言えるでしょう。期待を上回りました。

ただし、トリケラトプス、ティラノサウルス、スピノサウルスあたりは造られた時期が古いのか、科学考証がかなり甘いです。他の恐竜と比べても「なんとなくイメージで作った感」が強く、特にティラノサウルスの出来はかなり厳しいです。逆に、比較的新しそうな個体は、完璧ではないにせよ意外と真面目に作られているものが多かった印象でした。

そしてアニマトロニクスについてもキャプションは、基本的に全部どこかしらおかしい。

「一度角を折って出直してください。お願いします」と言いたくなるレベルです。

あんま言うと「じゃあお前が作れよ」と言われてしまいますが。

もちろん、良い展示の良さを正しく理解するためには、たまにはこういう展示を見るのも必要だとは思います。とはいえ、こうやって性格悪く粗探しできるのも、僕にとっては恐竜コンテンツの楽しさの一部ですね。

結果として、博物館や研究者監修の“いつもの恐竜展”が、いかに高水準で作られているかを改めて実感しました。

ありがとうございました。

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会場近くの松の屋のカツカレーをいただきました。美味しかったです。

『東京たま大恐竜博』のレポートは終わりですが、この日の旅はまだ続きます。

それじゃ👋