超危険生物展

野生動物とかけて太陽ととく。ケラトプスユウタです。

2026年4月12日に国立科学博物館の特別展『超危険生物展』に侵入して来ました。

いわゆる『危険生物』とありますが、生物の中でも特に動物にフォーカスした特別展で、ヒト Homo sapiens にとってのリスクを軸にさまざまな動物を紹介するイベントでした。

※今回はいろいろな動物の画像が出てきます。特定の動物が苦手な方は充分ご注意ください。特定動物と言う意味ではなく、あなたが苦手な動物と言うのがあるのであればその動物という意味です。

Gakken の『動物最強王図鑑』のようなキービジュアルだと感じていましたが、実際グッズでコラボしてました。

下半分はほとんど哺乳類の中で唯一節足動物から入り込んでいる右端のモンハナシャコOdontodactylus scyllarus が色彩も相まって目を引きます。

ヒグマ Ursus arctos

爪がキャプションを切り裂いていて遊び心がある展示ですね。

さて!人の安全を優先するのは当然として、その当然さの中に違和感が消えない状態、それこそが僕にとってのクマです。

昨今の日本のクマ被害は、今起きている危険生物のノンフィクションです。よく起きる誤解は「クマ=危険な存在」という単純化ではないでしょうか。

クマとヒトの遭遇には、我々の生活圏拡大、ゴミ管理の不備、シカの大量発生などに起因する自然界のエサ不作などの環境変動といった要因が絡んでいるのかなと思います。

つまりクマは危険生物として生まれたから危険なのではなく、状況によって危険になる生物という事でしょう。その裏に我々側の環境改変という背景が存在しているという事をおぼえていたいです。

クマ駆除の話になると、どうしても「生かすか、殺すか」という単純な議論に回収されがちですが、実際に起きているのはもっと地味かつ複雑な事です。たとえば ツキノワグマ や ヒグマ による被害は、山の中の出来事ではなく、生活圏の延長線上で起きています。畑が荒らされる、通学路に出る、そして時に人が傷つく。そこにいる人にとっては理屈ではなく、「命の危険があるという状況」です。

だから駆除は、感情的に正当化されるものでも、美談として語られるものでもなく、ただ「そうしないと社会が回らないから選ばれている手段」に過ぎません。

結局のところ、被害が出た以上は対応しなければならないし、その対応の中に駆除が含まれるのは現実的な帰結です。ただ、その判断に納得してしまうほど開き直るわけでもありません。むしろ、そうせざるを得ない状況を久しく作ってきた側に僕が属している以上、罪悪感のようなものはもつべきだと判断しています。

そんな現在日本で残念ながらと言うべきか、危険生物を代表するべくして最初に展示されたこの個体。今述べさせていただいた考え方はあらゆる危険生物にも言える話かもしれません。

それじゃ👋

アフリカゾウ Loxodonta africana

現生では地上最強の呼び声も高い危険生物。体が大きくタスクも長大で誰が見てもわかりやすいシンプルな強さをお持ちです。

多摩動物公園で飼育されていたタマオという個体の骨格で、過去にも大哺乳類展シリーズで僕は観ているはずです。

本展はフェンスやカラーコーンやコーンバーやトラテープのようなセキュリティ用品を展示に取り入れているところが、展示物と来場者を隔てる物理的・視覚的バリケードとなっているだけでなく雰囲気作りにも役立っており、テーマにも噛み合っていて良いなと思いました。

***

本展では動物の危険性に基づいて『肉弾攻撃系』と『特殊な攻撃系』に大別。さらに『肉弾攻撃系』の下位分類として『パワーファイター型』、『キラーバイト型』、『武装型』、『集団型』。そして『特殊攻撃』の中に『猛毒型』、『化学攻撃型』、『電撃型』が分類されていました。

これポケモンっぽいと思った人は僕だけじゃないはずです。『どくタイプ』は紫色で『でんきタイプ』は黄色ですしね。

また『必殺技・能力』の名前もほぼすべての展示生物で紹介されていたのですが、これもポケモンの「わざ」とか「とくせい」を思わせるものも少なからずありました。

ポケモンはキャラクターIPの経済効果では世界一のようですし、『ポケモン化石博物館』という展示会も巡回施設の数、ひいてはトータルの公開日数はおそらくダントツで日本一でしょうし、海外にまで巡回予定ということで、すさまじい人気があるので、日本の博物館経営もいろいろ厳しくなっていることを考えるとポケモンを参考にするのは良いことだと思います。僕ポケモン好きだし。

キリン Giraffa camelopardalis

これは「必殺技」として紹介されていた雄のネッキングという習性を表現した展示ですね。骨格の方はこのために作られたのでしょうか?

剥製の方は戦意なさそうですが、映像展示を観る限り、実際闘争中も無表情ではありました。たぶん。

あと検索して知ったのですが、キリンの亜種の分類って議論中で共通の見解というのがないみたいで最高です。

左が老成したキリンの頭骨で右が若いキリンの頭骨。オシコーン(骨角)が個体発生によってゴツくなっていくのがわかりやすいです。

なにぶん角なのでケラトプス類 Ceratopsidae の個体発生に想いを馳せたくなるのが人情ですが、2023年にまさにこの会場でシャーマン(ズール Zuul)を通じてアンキロサウルス類 Ankylosauridae のテールクラブが種内闘争に使われていたという説の根拠としてキリンのオシコーンが挙げられていたのが記憶に新しいです。

ミナミゾウアザラシ Mirounga leonina 剥製

まさに「海獣の中の怪獣」と言いたくなる威容です。科博の哺乳類系の特別展では常連の剥製かなと思います。

映像展示では市街地で本種が自動車にのしかかっている姿とそれを苦笑しながら至近距離で見守る人々が映っていたのが印象的です。「笑うしかない」というやつでしょう。

昭和の怪獣図鑑の挿絵のようなタッチが良いですね。「大解剖」と言いつつ皮下脂肪の事しか言ってないのも好きです。

アミメニシキヘビ Malayopython reticulatus 骨格標本

獲物をしめつけている時に片方の肺だけで呼吸ができるという特性が映像付きで紹介されていました。

2024年の科博の特別展(大哺乳類展3、昆虫マニアック、鳥類展)はいずれも分類群縛りで、分類群を横断するということはほぼ無かったかと思いますが、本展では危険性の方向性によって体系化されていた為、哺乳類の展示の後に爬虫類が来るみたいな分類群を横断した展示構成もしばしば見られました(有羊膜類 Amniota という意味では横断はしてないのですが)。

このような展示は珍しくはないですし直近の大絶滅展や氷河期展などでも分類群を横断してはいましたが、分類群でもなく地質時代でもなく分布でもなく、人間側が見出したに過ぎない共通性で整理されているのは思い出せる限りではあまりなかったように思いますね。

これよく言語化できたな。

ヒクイドリ Casuarius casuarius

本展で数少ない恐竜類の展示の中で、もっとも一般的な恐竜のイメージに近いであろう存在。

(実質的には)『世界一危険な鳥』として知られる現生の恐竜類 Dinosauria。あまり恐竜類に馴染みがない方のために言っておくと、ヒクイドリ(というか鳥類)を恐竜扱いするのは比喩でも誇張でもなく客観的事実です。

本種は本展では“パワーファイタータイプ”に分類されており、映像展示ではスイカを蹴り壊すキック力に注目されていましたが、よく観ると大きくて鋭い第2趾を垂直に突き刺すことでスイカを破壊しており、単純に膂力が強いというより、パワーを効率的に伝える槍のような形状を活かしているわけですね。

現生最大の恐竜であるダチョウ Struthio camelus は比較的大人しいかと思いますが、ダチョウの連続キックと踏みつけを喰らった事がある身からすると、パワーファイター型鳥類としてはダチョウもヒクイドリに負けず劣らずの危険生物として挙げさせていただきます。

イヌワシ Aquila chrysaetos

ヒクイドリと比べたらそれほど恐ろしい恐竜とは思えないです。ヒトの赤ん坊が攫われた事例が記録に残っているそうですが、赤ん坊くらいイヌやニホンザルでも条件が揃えば襲うでしょう。

イヌワシの狩りは上空からの急降下+不意打ち、止まり木反射による足での急速な固定らしいので パワーに頼って戦っているわけでもないです。

獲物を掴んだまま再び飛翔する姿がパワフルと言うならわかりますが。

やはりゾウやキリンと並べられると「なぜきみがそこにいる?」と感じてしまうのも無理はないと思います。近くのキャプションでジャイアントモアやフォルスラコス類が紹介されていたので、その導入の意味はあるかもしれません。

おそらくこのキャプションは本展で唯一の絶滅恐竜を扱った展示だったかと思います。

ジャガー Panthera onca

ここからは第2章にあたるのかはよくわかりませんが、『キラーバイト型』の動物の紹介です。

ジャガーは体サイズに比した咬合力がネコ科最大らしいです。

オオフクロネコ Dasyurus maculatus

路上博物館さんの頭骨拡大模型(右)と実物頭骨(左)。

一見、基盤的獣歯類 Theriodont を思わせる形に見えるのは僕だけでしょうか。

イイズナ Mustela nivalis

このあたりでは体の大きさに比した相対的な咬合力の大きさについてしきりに強調した解説が多かったように思うのですが、当然体が大きい動物の方が絶対的な咬合力は強く、我々にとってより危険なのも相対的な咬合力ではなく絶対的な咬合力なわけじゃないですか。いくらイイズナが体のわりに噛む力が強く侮れないとしても我々の脅威になりませんし、イイズナよりも相対的な咬合力の弱いトラの方が危険なわけですよね。相対的な咬合力を比較するのは基礎研究として何らかの科学的意義はあるかなと思いますが(それすらも脳化指数ほどの意義を僕は見出せないのですが)、ここの展示でどういう理由で相対的な咬合力の強さがアピールされていたのかよくわかりませんでした。

グリソン Galictis vittata

存在を初めて知りました。キャプションがなければラーテルだと思ったところです。この剥製を見る限り相当恐ろしげな姿をしています。

クズリ Gulo gulo

この剥製は中学生の時に『北極と南極』のようなタイトルのフルカラーでハードカバーの本で見た事があります。たれ目が印象的ですが、実際のクズリとは少し顔の形に差があるように感じました。

英名は Wolverine でXメンのウルヴァリンの名付け元ですが爪はそこまで目立ちません。

ラーテル Mellivora capensis

『最も勇敢な動物』としてギネスブックに載っているというこの生き物。アフリカゾウに繰り返し挑み掛かる映像を観たことがありますが、勇敢というか狂暴と言った方が適切なように見えます。この剥製だと、よだれを垂らしており獰猛さが強調されているように感じます。

カバ Hippopotamus amphibius 頭骨模型

むかしタブレットの待ち受け画面をカバの頭骨にしていたことがあるのですが、知人がそれを見て「すげえ!ティラノサウルス!」と言っていたので本当のことを教えてあげたのですが「嘘ついてんじゃねえよ。カバなわけねえだろ」と言われたのは良い思い出。

これは自動で上顎が開閉する優れ物です。

野生のカバは日本人にとっては馴染み深いとは言えませんが、本種は話題になる度に「アフリカで最も危険な動物」というレッテルが付きまとうほど攻撃的らしいので、危険生物アフリカ代表として本展を代表する動物の一つと言えるでしょう。

イリエワニ Crocodylus porosus の「ロロン」のレプリカ(模型)

実物(剥製)はフィリピン国立自然史博物館の常設です。

これは僕が観た時はかなりの人だかりで会場内でも随一の人気展示でした。まあ水を差すと、単純に人気が高いだけでなく、ステージが前後に長いので物理的にそれだけより多くの人が周辺にたかる事ができるという面も少なからずあるかとは思いますが。

ロロンの大きさはソースによって体長5.48mとも6m超とも言われているのですが、どのみち全長の間違いですね。ナショジオの記事ですと全長6.17mとされています。

成長段階にもよるかと思いますが、イリエワニの全長の半分弱が尾なので、体長が6mだとすると全長は10〜11mほどになってしまう計算で、そうなるとデイノスクス Deinosuchus に匹敵してしまうのではないでしょうか。

映像展示では有名な“デスロール”の物理的な解説(普通に上半身をねじろうとすると下半身が逆側にねじれて全身をツイストすることができないけど、ワニは体をC字状に曲げる事で回転軸がどうたらこうたらでツイストできるという解説)があったのですが、モグラ研究の第一人者である川田伸一郎先生が体をはられていたのが印象的でした。

ホホジロザメ Carcharodon carcharias 顎の骨。

キャプションによると咬合力は最大18216N(1.8t)あるそうで、これはライオン以上でナイルワニに迫る強さのようですが、これでも体重比ではそこまで大きな値ではないですね。要するに体が大きいから噛む力もそれなりという事のようです。

ホホジロザメの可動模型

必殺技「とびだすアゴ」と体温維持のメカニズムを視覚的に説明している展示。口を開く際に眼球も動いて瞳孔が後ろを向くカラクリになっていたのですが、そういうものなのでしょうか?

体温維持については、奇綱によって温まった内側の血液で冷たい外側の血液の熱交換をして恒温性を実現しているようです。これにより代謝率が高まり、長時間にわたって大きな力を発生させることができるわけですね。サバ類 Scombriformes も似たメカニズムをもっていて収斂進化の妙を見ました。

ムベンガ Hydrocynus goliath またの名をゴライアスタイガーフィッシュ 頭骨

この鋭い歯の噛み合わせタイガー(トラ)というよりまさにトラバサミのようです。最大全長2mになり、自分より小さいワニなら噛み砕いて食べてしまうそうです。スワヒリ語でムベンガ (Mbenga)「危険なサカナ」を意味するそうですが、味はティラピアに似ておいしいらしいです。

恐い、強い、おいしい。三拍子揃った至高の淡水魚かもしれません。

ギャロップで向かってくるクロサイ Diceros bicornis の壁画に実物のシロサイの角がついているというトリックアートのようでトリックアートではない迫力の展示。僕好みです。

ここから『武装型』の区画。武装と言えば角。実際、現生の大型の偶蹄類や奇蹄類の多くの種において頭に角状の構造を見ることができますよね。世はまさに大角獣時代。

ところで爪という凶器をもつヒクイドリがパワーファイター型で、より巨大なシロサイが武装型なのは基準がよくわかりません。

クロサイ 骨格標本

生きている姿とはまた違ったかっこよさです。

クロサイの前肢

骨にしてみると短くも軽快そうな足先のつくりに目がいきます。

シロサイ Ceratotherium simum のツノ

“サイの角は伝統的には「皮角」と呼ばれていましたが、大部分は毛で構成されているので「毛角(ケヅノ)」とでも呼ぶべきもの…”という主旨の解説がありました。

サイといえば犀角が特定の病気に効くという迷信のために乱獲されている事実が真っ先に思いつきますが、ウマの尾の毛で作った人工犀角というのがあるそうなのでこれを流通させて天然犀角の市場価値を下げることでサイの保全に役立てたりできないですかねと思って検索したところ、もう試されているけど消費者は案の定『美味しんぼ』の山岡で「本物信仰」が強く人工品では代替できないと考えられていたり、人工犀角の流通が市場の拡大や密猟品の偽装を助長するリスクも指摘されていたりと一筋縄ではないようです。

産地情報もないのでこれがキタシロサイのツノかどうかはわかりませんが、シロサイといえば自然繁殖が不可能になって久しい亜種キタシロサイ C. S. cottoni です。

大阪大学の林克彦先生らは、生きていた時に採取し保存されていたキタシロサイiPS細胞から繁殖に関わる細胞を誘導する技術を研究しているそうで、遺伝的多様性のあるキタシロサイの復活を目指しているらしいです。素晴らしい研究だと思いますが、これがうまくいったからと言って、「絶滅してもips細胞でどうとでもなる」という構えを取らないように気をつけたいですね。iPS細胞は「奥の手」にはなり得ても、「絶滅させても大丈夫」という免罪符にはならないはずです。むしろこの技術があるからこそ、その重さを理解すべきというのが人道的な姿勢かなと思います。

角をもつ偶蹄類のハンティングトロフィーの壁

少なくとも『大哺乳類展2』という過去の科博の特別展で似た展示はあり、おそらく大部分が同じ標本ではあります。もちろん目新しさは大事ですが、過去に展示されたものがそれきりになるよりもこうして再び拝める機会が与えられるというのもありがたいこともあります。そうでなければ、過去の特別展に侵入することができなかった人たちは、特定の標本が収蔵庫には現存しているにも関わらず一生目にする機会が失われるという事になる可能性が出てきてしまいます。

どの特別展も誰かにとっては初めての特別展ですからね。

さて、言うまでもないですが博物館のハンティングトロフィーはホビーではなく文化と機能のレガシーです。この壁を、良し悪しの単純な二元論で判断する事はできません。

まず事実として、博物館の壁に並ぶ角や頭骨はいかに装飾的であろうとインテリアではありません。インテリアの側面を担っているとしても、少なくともただのインテリアではございません。いつどこで何を採取したかという科学的な記録であり、あるいはかつて資源利用にともなって生じた副産物だったものもあるでしょう。

ただし同じ姿をした展示でも、「自分より強大な野生動物を殺す事で制覇する事を粋とする価値観」による我々の娯楽としての狩猟の戦利品である場合、そこで初めて「悪趣味」という感想が出てきます。

一方、見かたをひろげると、これは面白みの強い、そしてかっこいい壁でもあります。角の形や大きさは種ごとの性選択や闘争様式、生息環境や行動の違いを表す鏡のようなものです。早速いきましょう。

アフリカスイギュウ Syncerus caffer

分厚く逞しい角の付け根が兜のように頭頂部を覆い、横に伸びた漆黒の角が美しい弧を描いて先端が内向きに曲がる。この角でライオンすら返り討ちにする事も珍しくないと言われます。その角は捕食者に対する反撃の武器である前に、仲間を守る団結の防具である前に、種内闘争の為の武器です。枝角のような絢爛さはないですが、確かなかっこよさがあります。

エランド Taurotragus oryx

ゆるやかにほどける螺旋は、まるでサバンナの風に撫でられるような線で角をなぞっています。力を誇示するのではなく、間合いを保ち、ライバルとの間に余白をつくるための形。衝突はあくまで最小限に、押し合いのリズムで優劣を測る。静けさの糸で秩序を編むかっこよさです。

マーコール  Capra falconeri

大きくねじれ上がる螺旋は「美の悪魔」を思わせる造形です。見上げるほどに天に引き上げられるような不安感を伴い、その曲線は抗いがたいかっこよさでこちらを捉えます。絡み合うことで力を測るその角は、闘争でありながらどこか儀式めいており、まるで互いに契約を結ぶかのように優劣を定めていきます。美と緊張が同時に存在する、妖しい魅力があります。

ハーテビースト Alcelaphus buselaphus

後ろへ伸びた角は途中で鋭く折れ、そこから外へ開く独特の歪なS字の線を描きます。角輪はゆっくりと流れて固まりかけた溶岩が段差を越えてたわむようでもあり、水面に広がるさざ波が連なっていくようでもあります。過度な主張をせず、しかし長く、立体的な流れを持つ、その緩やかな線の重なりがかっこいいです。

ヨツヅノレイヨウ Tetracerus quadricornis

種名はトートニムではないですが、属名も種小名も共に「4本の角」という意味ですね。

前後に二対、合計四本の尖塔が段差をもって並ぶその配置は、鼻先方向から見た時に角の配置が視線方向に重なり、情報量と違和感が最大化される視点となります。前方の小さな角と後方のより長い角が視線に引っかかりを生み、単純な対称からわずかに外れた不穏さをつくり出します。その印象は、能面の般若や真蛇を思わせつつも、それを整え、強調した上位互換のようです。控えめでいて、ただならぬ気配を宿したかっこよさです。

インパラ Aepyceros melampus

後方へ流れるように立ち上がり、ゆるやかなS字を描いて内側へ収束する角は、空間に音もなく弧を残すような線です。首を下げれば、正対した相手を下から突き上げるように構えた槍となり、首を持ち上げれば急所である首の背側を守るネックガードへと転じます。ひとつの曲線が攻防の両義性を担い、シンプルな動きひとつで機能を切り替えるその構造は、しなやかさそのものが凶器であり防具でもあることをかっこよく示しています。

トナカイ Rangifer tarandus

前方へ張り出す眉枝と、上方へ伸びて段階的に枝分かれする主幹が組み合わさり、広がりのある立体的な構造をつくっておりかっこいいです。2本の角というよりも、複数の接触面を持つ構造であり、複合的な動きに対応します。雪を掻き分ける実用と、種内闘争用の武器が一つになった機能美の枝角です。

ノロジカ Capreolus capreolus

頭頂に立ち上がる、長さほどほどの枝角は、豪華な広がりやそれ以上の装飾は持たず、最小限の分岐だけで構成されています。一本の主幹からわずかに枝分かれするその形は、近距離での押し合いと角の掛け合いに適しています。付け根にはイボ状に隆起したバールが環状に発達し、角の境界を強調すると同時に、基部の剛性と摩擦を高めていると言われます。簡潔さの中に、接触と保持のための工夫が凝縮されたかっこいい角です。

ターミンジカ(エルドジカ) Rucervus eldii thamin

長く前へ突き出す眉枝と、そこから後方へ返る大きな弧がつくる輪郭は、竪琴のフレームのような佇まいでかっこいいです。鋭く前に出た眉枝は鋭い一撃を叩き込む明確な機能を担っているようです。主幹が掌状に広がる部分は厚みのある響板となり、ライバルの角をがっしり受け止めて頭部への致命傷を避ける盾であると同時に、その広い面は視覚的な魅力を増幅し、性選択の舞台で存在感を響かせるディスプレイでもあります。攻め、守り、魅せる。三つの役割が一つの構造に収まり、戦いのリズムの中で攻防と誇示が一つのピンピートのように立ち上がるのでしょう。

ションブルグジカ(“ダイタセンサワシカ” とも書かれていますがこの名については詳細不明。「大多尖沢鹿」という事でしょうか?) Rucervus schomburgki

動物は生きていて初めて我々の脅威になると思っていたし今も思っているので、よもや「現存種」に混じって絶滅種が展示されていようとは。

まるで指を広げた聖掌尊の御手のごとき十四尖の牡鹿。その枝はただ多きにあらず、前へと伸び出でし主軸より四方へひらけ、受けの構えを成します。枝々は乱れ散らかしているようにみえて概して左右対称性を守っていてかっこいいです。

多くのシカが細い線で闘争するのに対し、ションブルグは角同士の接触点の多さから、さながら面に近い形で受け止める構えにて戦っていたようにも見受けられます。それはわかりませんすみませんごめんなさい。

この形を有せしもの、今はこの世に生きてあらず。その優れたる系統の失われしさまは、まさに地の宝ひとつ忽然として消え失せたるがごとく、わづかに残れる標本と記録のみぞ、彼らが在りし証なり。

シフゾウ Elaphurus davidianus

野生絶滅したものとして知られる稀少なシカ類 Cervidae の一種。

天を穿つように垂直に立ち上がり、長く前方へ突き出す眉枝。そして後方へと優雅に流れる細く長い主幹。分岐を最小限に留めたそのストイックな形は、静謐な森に引かれた二条の稲妻のような指向性を持ち、見る者に“四不像”の神秘を突きつけます 。「角はシカに似ているがシカではない」と謳われる所以の一つは(僕はシカで良いと思いますが)、この前後軸の逆転とも取れる特異な構造にあるそうです。

アカシカ Cervus elaphus

基部から鋭く前方へ突き出す眉枝。その上に立ち上がる第2枝。下から上へと積み上がる枝の序列は王位へ至る階梯のよう。太い主幹は後方へ流れ、全体を一つの王冠としてまとめ上げます。その統率された輪郭は特定の角竜類 Ceratopsidae の鱗状骨を彷彿とさせ、進化の面白みも感じられます。先端はイバラのように鋭く尖り、張り詰めた緊張が細部にまで宿り、かっこいいです。

現生最大のウシ、ガウル Bos gaurus

巨躯に見合った洞角は、太く、長く、ゆるやかに湾曲。基部は淡色に太り、そこから先端へ向かって一気に黒く締まり、三日月のように鋭く尖っていてかっこいいです。

左右へ張り出しながら上方へ持ち上がるラインは、森林に「侵入禁止の範囲」を描くようで、近づく者に距離を強制する形です。装飾や誇示よりも、攻撃に重心が置かれた構造と言えそうです。

実際、インドではプランテーション開発によって生息域が人の活動圏と重なり、人身事故や死亡事故が報告されています。ガウルの角は、その膂力を二点に集める装置であり、見た目のシンプルさに関わらず、危険性を如実に示す形でもあります。

僕もアメリカバイソンに威嚇されたことくらいはあるので恐ろしさだけはわかります。

現生最大のシカ、ヘラジカ Alces alces

左右へ大きく張り出す掌状の枝角は、枝というより「面」で空間を押し広げるつくりです。主幹から先端にかけて平たく展開し、縁に並ぶ突起がささやかな起伏を与えています。その輪郭は2枚の板が広がるようでありながら、近づけば短い枝が整列し、遠目には塊として、近くでは複雑な表情として愛でる事ができます。

この角の魅力は、まるでフリルのような面積・存在感にあります。力を端点に伝えるのではなく、広がりそのもので圧倒する、他のシカ類とは一線を画す「面」のかっこよさです。

一方、人間社会との関係で問題となるのは角そのものの危険性というよりも、その巨体のようです。ヘラジカは目立つ見た目に関わらず、道路や線路を横断する際に自動車や列車との接触事故が発生するそうです。深雪を掻き分ける力はありつつも、冬のカナダ・アラスカは「動物が道路に出てくる」のではなく、車道や線路のような人間の為の線状インフラが、野生動物にとって最も歩きやすい回廊になってしまい、事故に繋がっています。ヘラジカとヒト、両者にとって悲しい事故ですが、「排除」ではなく誘導して安全に横断させるのが筋かなと思います。

本種は直接的な脅威というよりも、思わぬ形で人間社会と衝突してしまう存在としても象徴的です。

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次の展示も角をテーマにしていますが、角の危険性そのものというより、バリエーションの紹介を目的としたものになっていました。

再び登場、キリンの頭骨

頭骨由来の骨芯に角質の鞘ではなく皮膚が被さっている「オシコーン(骨角)」という形質は質素なように思いますが、意外とキリン独自の珍しい構造です。

プロングホーン Antilocapra americana

僕にとってはサウスダコタの思い出の一つです。

天へと立ち上がる主幹の途中から、前方へ鋭く突き出す一本のブレード状の短いプロング(枝)。この単一の分岐が、全体の印象を決定的に変えます。単純な一本角でも多枝でもない、途中で一度だけ枝分かれするそのさまが、この動物の表面的な個性です。

そしてこの角はシカ科ともウシ科とも異なり、骨芯に鞘を被る構造で、外側が生え替わるという点でもユニークです。そのわずかな逸脱が、そのまま魅力になっています。

このように哺乳類の4通りの角が紹介されており、上記2種が「変わり種」として扱われていたのですが、種数が少ないだけで構造としてはそこまで突飛ではないように改めて感じました。それよりも、純粋な特殊性はシカの角の「樹木のような多分岐」「動物の骨界隈で最速の成長速度」「毛皮が剥がれて骨が剥き出しになる」「癌と関係ある」といった要素にあると思いました。現代では角をもつ偶蹄類の中でたまたまシカの種数が多く繁栄しているに過ぎず、仮にシカの種数が少なく分布も限られていたら、形質・気象性ともにレアな珍獣中の珍獣とされていた事でしょう。その場合、20世紀中には乱獲されて我々が生きたシカを目にする事もなかったかもしれませんね。ブラックジョークではなく現実的に考えて、そうじゃないですか。

『集団型』の区画の2種のサスライアリ Dorylus

科博の特別編に行かれた事のある方はおわかりいただけるかと思いますが、トイレ前の比較的狭い通路が『集団型」のために使われており、意外と僕にとっては目新しい標本が集中していました。

そこまで恐ろしい生き物には見えませんが、動けない老人が食べられた事例があるそうです。

『ゾーン2:特殊攻撃系』の『猛毒型』の区画。

セイブガボンアダー Bitis rhinoceros 頭骨

カタカナだと意味不明な呪文みたいと感じる方もいるかもしれないので念のため説明すると、“ガボン共和国西部のアダー Adder というヘビの一種”ということです。

この標本は細い構造も残されていて見事です。

歯の違いによるいろいろな毒蛇の類別が説明されていましたが、なんとなくの理解でいろいろ忘れました。すみません。

この一見ちょっと笑ってしまう剥製の組み合わせは過去の特別展『毒』(以下『毒展』)で印象的だったものです。おそらくこれに限らず『猛毒型』の展示には『毒展』からの流用がいくつかあったはずです。

ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus は、ヒキガエルBufo japonicus を独占的に食べられるようになっただけでなく、その毒を自らの第2の毒にすることに成功していると言われています。

自然界では現実にこの剥製のように、ヒキガエルは自分より細く小柄に見えるヤマカガシに無抵抗に飲み込まれてしまうそうです。その光景はグロテスクかなと思いますが、一回観てみたいですね。

ダイオウサソリ Pandinus imperator

“必殺技:やさしい”

やさしさが武器なのかと思いきや、単に比較的おとなしいというだけのことでした。

それは必殺技なのか?

必殺技と言えば、それぞれの技のネーミングも気になりました。気になったのは、一部はプロレス技っぽかったり、一部は学術的にも使われている用語そのままだったり、一部は口語的な文章だったり、一部は技や特性ではなくキャプションのタイトルに過ぎなかったりと、キャプションごとに方向性やトーンがばらついていて、同じ展示の中なのに世界観が統一されていないことです。その不揃いさに、これも生物多様性かと感じ入りました。キャプションだけでもそれだけ多くの専門家が関わっている証拠ですね。

『化学攻撃型』のヒメコンドル Cathartes aura

「化学攻撃=毒」ではないものの、毒は化学攻撃の一部かと思うのですが、ここでは相手の体内に直接ぶちこむタイプの化学攻撃を“猛毒型”、環境中にぶちまけるタイプの化学攻撃を“化学攻撃型”と定義の上、区別していました。

腐肉を食べるコンドル。彼らの消化液は非常に強力で、腐肉に含まれる様々な病原体を黙らせる威力を持ち、炭疽菌すら処理してしまうとキャプションに書いてありました。ところで皆さんは中生代にこのレベルの消化能力をもつ主竜類 Archosauria はいたと思いますか。コンドルのこの強力な消化液はやはり腐肉食と結びついているという前提で考えると、効率よく動物の死骸にありつくには飛翔能力が必須というと言い過ぎかもしれませんが、そのくらい高い機動力が必要かと思うので、中生代の恐竜類の中にはコンドル並みの遺産の持ち主はいなかっただろうと妄想しています。いたとしたら空を飛べた何らかの翼竜類がせいぜいだろうとは思うのですが、いかがでしょうか。

さて、コンドルは威嚇・防御の一環としてこの消化液を含むゲロを吐くことがあるらしいという事でこの『化学攻撃型』のところで紹介されているわけです。たまったもんじゃないですね。さぞ強烈な臭いでしょうから、受けた側としては精神的ダメージも伴うタイプの攻撃です。飛翔のために体を軽くするという意義も兼ねているようです。

また、自分の脚に排泄物をかけるという行動も知られていますが、これは攻撃とは関係なく、気化熱を利用した体温調節と言われています。

床に吐瀉物が表現されています。科博らしい遊び心です。

サハラゾリラ Ictonyx libycus

キャプションに「最も美しいイタチ」と書かれていたました。本展では他にも主観が混じったキャプションが散見されましたが、それが一番目新しかったです。大学の博物館展示論では、少なくとも美術館のキャプションは主観を交える事は推奨されていたような気がします。自然史系でもこのように主観だとわかる範疇であれば問題ないのかなとは思いますが、それはそれとして、このサハラゾリラの剥製は体毛がボサボサで模様もランダムに見えるのでとてもじゃないですが「美しい」とは僕は感じませんでした。生体だと美しいのかもしれませんが。

『電撃型』の展示です。

何やら新しい技術で発電器官が可視化されている特殊な標本だそうです。

それにしても「見えないのに一瞬で筋肉に効く!」そんな攻撃は本能的に怖いですよね。

『吸血型』からナミチスイコウモリ Desmodus rotundus

吸血生物は体液を抜かれる事そのものよりも、感染症を媒介するというのが本当に恐ろしいです。危険性がしゃれにならないと共に、純粋に分野として面白くもあります。

吸血という行為そのものは量的には小さいのに、病原体というある種のシステムを運ぶことで脅威レベルが跳ね上がるわけです。ここに恐さと面白さが同居しています。

ネッタイシマカ Aedes aegypti 拡大模型

デング熱、ジカ熱、黄熱などなどの病気の媒介者で熱帯から亜熱帯に生息とのこと。なのですが、気温の上昇や都市環境の変化によって分布を広げる可能性があるんじゃないかとよく言われていますよね?

別種にはなりますが、日本ではデング熱の媒介能力をもつヒトスジシマカがすでに定着しているという前例があります。

地球温暖化が進むと、越冬可能な地域が北上し、活動期間も長くなるため、感染症リスクが相対的に高まるというのはよく知られていますね。

せいぜいボウフラ発生を防ぐために止水を作らないよう気をつけたいです。

ダニ類の一種、アカツツガムシ Leptotrombidium akamushi 拡大模型

蛍光グリーンのライトが下から上に動いてドレインされる体液を表しています。

ツツガムシは一対の鋏角で宿主の皮膚を刺し、唾液中で組織を溶かし、スタイロストーム(吸収管)という管を形成して、血ではなく細胞間の体液を吸収するそうです。吸着後数時間で管ができ、数日かけて伸びて真皮に達するらしいです。満腹になると自然に離れる一方、スタイロストームは皮膚に残り、その後、皮膚の再生によって排除されるとのこと。いやー、そんな生き物がいるとはなかなかタウマゼインです。

必殺技は“ツツガムシ病リケッチア媒体”だそうですが、スタイロストームの方が技名っぽくないですかね。まあ文字通り死ぬほど怖いのはスタイロストームではなくリケッチアの方なので今の案が採用されたのかもしれませんが。

ちなみに漫画『ワンピース』の恐竜島こと『リトルガーデン』で航海士が感染したケスチアという架空の病気はリケッチアがモチーフのようです。

第二会場の生体展示。『Don’t touch pool』は素晴らしいネーミングセンスだと思います。

危険生物たちも同じ地球で暮らす仲間たちだと気づく為の展示とのことで、言ってることは優等生感が出てしまっていますが、本展の締めくくりに相応しい展示ですね。

サシハリアリ(パラポネラ、弾丸アリ) Paraponera clavata の“アリの巣セット”

見た感じ、部屋はアリが作ったのではなく最初から大家さんが用意した間取りっぽいです。アリの巣箱は全部そうですが、終わりのないミニチュア社会のリアリティショーの生放送のような感じで、情報が濃すぎず薄すぎずちょうどいい密度で更新され続けるので延々と観ていられますよね。

トノサマバッタ Locusta migratoria の群生相

蝗害はアフリカのサバクトビバッタによる被害が有名ですが、日本でもトノサマバッタの相変異が起こる事があるそうです。

この展示で気になったのは、彼らは人工的に相変異させられた個体たちなのか、それとも単にたくさんの個体を過密状態で展示しているだけのことなのかという事です。

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我々は人が他の動物により危害を被ったという事例に触れたとき、適切に恐れることすらあまり得意ではないはずです。危機感を増幅するか、希釈するか、そのどちらかに寄りがちです。だからこそ、本来はもっと無装飾で面倒な理解、つまり「事故の成立条件を具体的に把握し回避できる部分だけを確実に削る」という姿勢に責任を持つべきなのだと思います。それはアニマルパニック映画のようにドラマチックではないし、ストーリーとしてもエキサイティングではありませんが、少なくとも次に同じ条件が揃う確率を下げる方向には働くはずです。

では感想行きます。

まず、主軸に据えている“危険”という概念の範囲が広すぎるようで、科博の特別展には多々ある事ですが、今回もまとまりの弱さを感じました。序盤に危険性の種類を定義し、その脅威を独自の分類を使って解説していましたが、それが一部の展示では採用されておらず、考えた結果、間接的にでも危険性と関係あれば展示物間の共通点なんて必要ないという境地に至りました。ありがとうございます。動物の危険性の種類がそれだけ多様という事であり、ひいては多様ゆえに自然は我々が理解する為の概念という枠に収まらないという事を改めて思い知らされたという事なんですよね。

また、キービジュアルは子ども向け寄りで、クオリティ面にはそこまで期待していなかったのですが、間口を広く取りつつ伝えるべきポイントを押さえるという、僕の言うところの“ジュラシック・パーク方式”の設計として納得感のある内容でした。この点に関しては、ある意味で期待通りです。

少し脱線になりますが、次回の特別展『いきもの超ワールド展』のキービジュアルに登場している動物たちと、今回の展示内容に重なりが見られる点も気になりました。一部は据え置きで回していくのではと経済的な戦略について邪推が捗ってしまうところです。既視の標本中心の展示であっても、テーマ設定と見せ方次第で使い回せるという事は今回証明されていますし、資料保護の観点からもそう何度も筑波と上野を行ったり来たりするのも良くないでしょうから、そういう面も含めて資料を連続で使い回すのは、ある程度は有益な試みかなとも思います。いや、実際に会場に置きっぱなしにするのかはわかりませんが。

残念というわけでは全くないですが、コンテンツ面では予想が外れた点がありました。第二会場あたりで、ヒトやノネコのような純粋な野生動物ではないもの、菌類や植物といった動物以外の生物といった、別のグループの危険生物が並ぶのでは、と予想していたのですが、実際にはあくまで野生動物にフォーカスした構成でした。「危険生物」という言葉から想像する射程の広さに対して、やや対象は絞られていた印象です。「危険動物展」と言い切ってしまった方がスッキリしたのでは、とも思いましたが、そもそもそういう言い回し自体あまり一般的ではないのかもしれません。

タイトルの「超」については、“生物が超危険”という意味合いかと思いきや、むしろ“展示規模が超大”という意味と理解しました。実際、他館ではなかなか再現できないスケール感でした。

そして個人的には、「興味」と「好き」は別物だと再認識させられる展示でもありました。“キラーバイト型”の動物たちは好意的に感じられる存在ですが、彼らに知的好奇心はそこまで向きませんでした。そして“特殊攻撃系” の生き物たちは非常にインタレスティングという意味で面白いですが、個人的な嗜好に照らし合わせて「大嫌いか普通か」で言えば、はっきり言って嫌いです。そんなケラトプスユウタ自身の感覚に改めて気づけたのも、この展示の収穫の一つです。

総じて、入口を広く取りつつ、一定の満足感はしっかり担保された特別展でした。まだ開催中ですので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

それじゃ👋

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最後に、上野駅近くの大戸屋の『ばくだん丼』と『ざるそば』

ソバは超危険生物展で重要な役割を果たされている川田伸一郎先生が恐れる生物という事で、超間接的に本展ゆかりの品ではあります。

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参考文献:

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