僕は、科学を疑いたい、と思う自分の心を疑う。ケラトプスユウタです。
さて! 去る2024年10月27日、岐阜県瑞浪市の『みずなみ化石フェスタ』に合わせて瑞浪市化石博物館に行ってきたんです。
岐阜県瑞浪市やその周辺地域には、瑞浪層と呼ばれる新生代中新世の地層が横たわっており、当時生息していた多くの古生物の化石が産出していることで我が国の化石界隈では有名です。
この博物館はそんな化石の街、瑞浪の化石をたくさん展示している素敵な施設です。
※なお、2025年3月にリニューアルしており、今回紹介する展示内容はリニューアル前、つまり現在とは異なる部分がありますのでご注意の上、せいぜいご参考にしていただければ幸いです。
博物館へ行く前に土岐川(ときがわ)の河原を探検しました。




不勉強で名前はわからないですが貝の化石がいくつか見られました。
以下、博物館レポートです。
入館料は高校生以下無料、一般個人200円。

今回唯一の恐竜類 Dinosauria 要素。キャプションによるとカマラサウルス Camarasaurus だそうです。後方の尾椎でしょうか。

シンボル展示の2種類の束柱類 Desmostylia


確かに、上顎の奥に束のようになった歯が見えますな。

瑞浪市明世町というところで見つかったというデスモスティルス化石のレプリカ。

別の束柱類パレオパラドキシア Paleoparadoxia
カバ Hippopotamus amphibius に似ていると言われるのも理解できますが、頭はカバの方がずっと恐ろしげな見た目ですよね。

束柱類の発見で影が薄くなってしまったらしいです。
右奥は瑞浪Mioという当館のイメージキャラクターのパネル。

イサナケトゥス(イサナセタス) Isanacetus
イサナ(勇魚)とはクジラの別名。つまり学名の意味は「クジラクジラ」。
屏風みたいな絵画は小田隆先生による作品。上の方を覆う貝たちが幻想的です。

やっぱり水棲生物で、推定される巨体の割には大型の陸生恐竜と比べて椎骨が小さい印象でした。





中新世に特徴的な吻の伸びたタイプのイルカだそうです(岡崎, 1976)。

いわゆるムール貝。現生種で現代では北海道などの寒冷な海に生息していますが、中新世には北海道以外にもいたようです。はっ!ダジャレだよ!

これはオオミツバマツ Pinus fujii ?違いますか。

原油、生痕化石、珪化木、月のおさがりなどいろいろな化石。


ゴンフォテリウム・アンネクテンス Gomphotherium annectens 下顎と左脛骨
キャプションでは「アンネクテンスゾウ」名義でした。そんな和名があったんですね。ゴンフォテリウムは10種以上が有効とされているみたいですが、それぞれ、 G. hannibali はハンニバルゾウ、G. subtapiroideum はスブタピロイデウムゾウといった感じの和名になるのでしょうか?



軟骨魚類の歯化石コレクション。
一見、鏃のような文化財に見えます。

現生の軟骨魚類の顎の骨。

イシナギの一種 Stereolepis (左)と甲骨魚類の鱗とカマスサワラAcanthocybium solandri
中新世の魚類化石の美しいと思うところは、すでに現生種と同定される程に現生種と変わらないものが存在していることです。このイシナギややカマスサワラは現在も日本近海で普通に見られる魚種です。
当時はメガロドン Otodus megalodon や絶滅したクジラ、現在とは異なる海牛類 Sirenia などが生息していましたが、その一方で市場に並ぶような現代の魚も今と同じ姿で泳いでいたことになります。
つまり中新世の日本の海を想像すると、2300万〜530万年前でありながら、ちょっと現代的な景色が広がっていたことになります。
この事は魚類の進化史の特徴も示していて、多くのサカナは白亜紀末から古第三紀にかけて現在のバウプランをほぼ完成させ、その後は形を大きく変えずに長く生き残る系統が多いという話にも繋がります。

これは博物館の近くにある元防空壕の見学通路。貝化石がたくさん出てきたという事で、それを活かした展示にしているんですね。
写真はないですが、このあとムカシアシカの発掘地を見学しました。
以下、感想です。
当館の展示の中心は貝類や哺乳類で、いわゆる恐竜博物館のような派手さはなく、展示区画も企画展示室以外はワンフロアで決して広大とは言えません。
しかし、ここはほぼ瑞浪層の化石だけで勝負している博物館というところに高い価値を感じました。つまり表に出ているだけでも3000点以上にものぼる資料の大半が、瑞浪層で実際に見つかった化石なのです。
多くの博物館が世界中から標本を集めて展示を構成するのに対し、瑞浪市化石博物館は、意図したか結果的にそうなっているだけか、ローカルという事が徹底されています。
県外どころか、基本的には瑞浪市とその周辺の地層から出た化石だけで一つの古生物学博物館を成立させている。その点ではカナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館に比肩、あるいはより優れています。
これは実はとんでもなく贅沢なことであり、同時に極めて気高い姿勢だと思います。なぜなら、それだけで一つの地域の古環境を丸ごと妄想できるほど、瑞浪層の豊かな化石相を証明しているからです。
展示を見ていくと環境の移り変わりが、貝や植物、哺乳類などの化石から読み取れます。
規模の大きさや派手さではなく、「一つの地域の地質と生態系を徹底的に掘り下げる」という点で、この博物館は非常に純度の高い古生物学博物館だと思います。
ワンフロアの小さな展示室の中に、2000万年前の瑞浪の海と湖が保存されている。その意味で瑞浪市化石博物館は、規模ではなく地域性で勝利を収めている、日本でも屈指の深さをもつ古生物博物館だと感じました。
次回はみずなみ化石フェスタのレポートです。
それじゃ👋
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参考文献:
- 安藤佑介・徳川広和・甲能直樹 (2022) Reconstruction model of a pinniped (“Mizunami Mukashi-Ashika”) from the Akeyo Formation, Mizunami Group. 瑞浪市化石博物館研究報告(Bulletin of the Mizunami Fossil Museum), 49, 167–173.
- 岡崎美彦 (1976) Miocene long-snouted porpoise from the Mizunami Group, Central Japan. 京都大学理学部地質学鉱物学教室. 25-39.
