福島県立博物館

ケラタン硫酸と同化するつもりはない。ケラトプスユウタです。

『大恐竜展』の為に訪れた福島県立博物館。当然ですが、常設にも侵入しました。簡単ですが、展示物を紹介したいと思います。

中尊寺金色堂かと思いましたが、いわき市にある国宝・白水阿弥陀堂の模型だそうです。

タイムトンネル

突き当たりには壁画のレプリカがあります。

結髪土偶「私はけっぱつ土偶と申します。寝たままで失礼します」
ハート形土偶「私はハート形土偶といいます。郡山市の荒小路遺跡で寝ていたら、発掘調査隊の人に起こされました」

縄文時代の展示室は土器や土偶などの土製品で埋め尽くす勢いです。

縄文時代の 竪穴住居の実物大復元。

中央に複式炉やロフトのようなものがあり、アイヌのヤラキタイチセを彷彿とさせます。

板碑の丘

墓地ではないらしいですけど、ゲゲゲの鬼太郎に出てきそう。

古風なヨット

天然ガスで走るバス

2011年の東日本大震災の爪痕

被害の大きさだけでなく、そこから今日まで歩みを重ねてきた地域の姿にも触れ、考えさせられました。

会津の彼岸獅子(左)とお人形様

会津の彼岸獅子は、一般的な獅子舞とは異なり、演者が1人で獅子の頭をかぶり、腰に太鼓を下げて両手のバチで叩きながら舞うらしいです。戊辰戦争では敵陣に囲まれた鶴ヶ城へ、兵士が彼岸獅子の一行になりすまして入城したという逸話も残されています。

お人形様は藁製の道祖神で、村境などに置かれ、疫病や災いが集落へ入るのを防ぐ守り神だそうです。

福島県を代表する古生物、フタバスズキリュウ Futabasaurus suzukii

ここから自然史系の展示。

この展示室では福島県を中心に集められた植物や軟体動物の化石から、かつてこの土地に広がっていた森の姿をたどることができます。フタバスズキリュウや恐竜のような派手さはありませんが、身近な植物が福島の気候と環境の変化を想像させる圧巻の展示でした。

この中では茶色と灰色の二色に分かれて保存されたブナの葉になぜか惹かれました。小さいながら螺旋状の尖塔を思わせるエゾキリガイダマシ Neohaustator fortilirata も、かっこいい貝です。

植物化石にも興味を引かれる点がいくつもありました。

化石記録上、ハンノキ Alnus japonica とムカシハンノキ A. miojaponica の存続期間が重なっていることは知りませんでした。

また、ムカシウダイカンバは、現生のウダイカンバと本当に葉だけで区別できるのでしょうか。ウダイカンバは異形葉性なので、現生種の種内変異を十分に調べたうえでも、化石の葉を一貫して別種に分けられるのかが気になります。

中新世後期のカエデ属 Acer に見られる、葉の形の豊かなバリエーションも愉快です。

貝化石からは、当時の生態まで想像が広がります。現生のイトカケガイ類は花虫類に外部寄生することで知られていますが、左上のヤベイトカケ Epitonium yabei も、当時のイソギンチャクやサンゴなどに寄生していたのでしょうか。

コベルトカニモリ Cerithium dialeucum は、吸虫 Galactosomum nagasakiense の第一中間宿主という事が今年報告されていました。この吸虫はコベルトカニモリの体内で増殖し、海中へ放出された幼生が魚に侵入して脳内に嚢胞を作ります。感染した魚は旋回しながら海面へ浮かび、それをウミネコが食べることで、吸虫の生活環が完成するのだそうです(Sugihara et al., 2026)。

これらの古生物がどのように暮らしていたのか、あるいは、博物館の同定はどこまで確かなのか。標本から新しい疑問が生まれたとき、展示を見る準備がようやく整う。僕は思います。

イスキオドゥス(イスキオダス) Ischyodus など福島県産の白亜系の軟骨魚類

イスキオドゥスの下顎骨は「強い歯」を意味する学名の通りの強靭さ。何を食べていたのでしょうか。個人的には貝や甲殻類かなと思っていましたが、調べたところそれ以外にウニも候補に上がるようです(Leuzinger et al., 2017)。

あとこの標本ではわからないですが、オスは頭にぴ硬めの軟骨でできた格納式フック(頭部クラスパー)がついていたと考えられているらしいです。

いわき象(ステゴロフォドン) Stegolophodon

右の“キャプションには“昭和60年、いわきニュータウンの造成工事現場で、ステゴロフォドン象のほぼ完全な下あごの化石が発見されました。それまでにも、いわき市からは、いくつかこの象の臼歯の化石が発見されていましたが、この下あごの発見により、ステゴロフォドン象は、下あごにもりっぱなキバをもっていたことが、はじめてわかりました。”と書かれています。発見の経緯はいわき市石炭・化石館(ほるる)で学芸員の吽野翔太さんが教えて下さった内容と一致しています。

下顎は河川・河口付近に堆積した地層から出ているため、死体が流されて分解し、骨が散らばった可能性もあるとか。造成で削られた範囲やまだ地中には、同じ個体かは別として、他のパーツも残されてそうですよね。ほぼ完全な下顎だけでも拾えたのは、鉱脈の一部を辛うじて回収できたという感じなのかもしれませんね?

ナウマンゾウ Paleoloxodon naumanni のタスク

パレオパラドキシア Paleoparadoxia 梁川標本

世界で4例目となるほぼ完全な骨格標本で、特に頭部がほぼ完全な状態で残っており、当時の姿や特徴を詳しく知ることができる、とても貴重な標本らしいです。

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さて!この福島県立博物館では、古生代から新生代へと続く福島の生命史と、縄文時代から現代に至る福島の人類史を、一つの大河として見渡すことができます。豊富な考古資料に加えて、農具や生活用品、宗教資料、戦争関係資料まで扱う守備範囲の広さも見事です。ほぼ鶴ヶ城の敷地内という立地もあって、歴史・民俗分野にはとりわけ力が入っているように感じましたが、化石展示も決してオマケではなく、一部ですがご覧いただいた通り、見応えのある質と量を備えていました。

展示には実物資料だけでなく、復元住居、ジオラマ、昔の町並みの再現などが巧みに組み合わされていました。資料を理性的に観察させる場面と、直感的に理解させる場面が交互に現れ、展示全体に適度な緩急を生んでいたんじゃないかなと思います。それぞれの展示手法が、イノシン酸とグルタミン酸のように組み合わさり、互いの魅力をいっそう引き立てています。

展示数は非常に多いものの、建物そのものが広いため圧迫感はなく、落ち着いて見学できます。もっとも、この穏やかな雰囲気については、その日の客層にも多少左右されるかもしれません。

なかでも印象に残ったのは、鶴ヶ城周辺のジオラマです。人が集まっていたため写真は撮りませんでしたが、地理や戊辰戦争の展開を、臨場感のある音声と光の演出によって伝える仕組みは、とてもよくできていました。

交通の便が良い場所とは言いにくいものの、福島県の自然と人々が紡いで来た時間を、豊富な実物資料と多彩な展示手法によってたどれる博物館です。

大恐竜展は終わってしまいましたが、ご興味ある方はぜひ侵入してみてください。

それじゃ👋

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参考文献:

  • Sugihara, Y., Iwasaki, R., Miyazaki, H., Shirakashi, S., Itoh, N., Nakano, T., Takano, T. and Ogawa, K. (2026) ‘Elucidation of the life cycle of Galactosomum nagasakiense (Heterophyidae), the causative parasite of trematode whirling disease in marine fish, with discovery of congeneric species in the gastropod first intermediate host Cerithium dialeucum’, Parasitology International, 111, 103190. https://doi.org/10.1016/j.parint.2025.103190
  • Leuzinger, L., Cuny, G., Popov, E. and Billon-Bruyat, J.-P. (2017) ‘A new chondrichthyan fauna from the Late Jurassic of the Swiss Jura (Kimmeridgian) dominated by hybodonts, chimaeroids and guitarfishes’, Papers in Palaeontology, 3(4), pp. 471–511. https://doi.org/10.1002/spp2.1085

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これは郡山駅前で夕食としていただいた『ますや本店 駅前店』の「伝(元祖郡山ブラック)」です。おいしかったです。