福島県立博物館 大恐竜展 #5 恐竜の社会/生き残った現代の恐竜

貴方の考えている事は杞憂です。ケラトプスユウタです。

さて!予告していた通り福島県立博物館 大恐竜展 の続きをやっていきたいと思います。

これまでは福島の恐竜、恐竜 Dinosauria とは何か、中生代という時代・環境、堅頭竜類をはじめとする恐竜類の系統なんかが紹介されて来ました。

第6章 恐竜の社会

こちらでは恐竜の生態に切り込まれていました。

中生代恐竜類では珍しく雌雄差と思われる特徴がはっきりしているコンフキウソルニス(孔子鳥) Confuciusornis

意外と角竜類 Ceratopsia は雌雄差が全然不明瞭ですからね。いまんとこ。

現生主竜類 Archosauria の卵

鳥類だけでなくワニ類との比較も、絶滅した恐竜の繁殖や卵殻などを考えるうえで重要…という展示意図ですよね。

プリスマトーリトゥス Prismatoolithus

トロオドン Troodon の卵殻と巣とのこと。2018年開催、大阪自然史博物館の特別展『恐竜の卵』ではメインの展示の一つだったものです。

卵化石は興味ない人から見れば丸い石ころと変わらないかもしれませんが、卵殻や胚の形態学的な情報だけでなく、古生物の繁殖や個体発生についても教えてくれる、一玉にいろいろな味を隠した、骨に負けず劣らずおもしろい化石とはここでは言いたいものです。でも卵そのものに限らず、いろんな事を知らないと難しい分野だと思います。いや、それは骨でも同じか。

当ブログではお馴染みかなと思います。シチパチ(キティパティ、キチパチ、シティパティ) Citipati

今や恐竜の繁殖の話題ではマイアサウラ Maiasaura よりも欠かせない存在ではないでしょうか。

真のプロトケラトプス Protoceratops のものとされる卵も今日では知られていますが、いつか拝んでみたいものです。

パラサウロロフス Parasaurolophus

これは恐竜の声に関する展示の一環です。

近くで流れていた動画では海外の博物館の展示で、人が声を吹き込むとセンサーか何かが反応して機械のパラサウロロフスがその声に対応した鳴き声を発するというインタラクティブなものが紹介されていました。どこまで科学的なものなのかと思っちゃいますが、「鳴き声が研究されている中生代恐竜がいる」という事実を体験として実感できる展示という点で良いと思いました。

あと鳴き声と関係ないんですけど、パラサウロロフスの後ろに長く伸びたクレストって天敵に首を噛まれにくくする機能もあったりしないのかなと最近思うのですが、そうだとするとハドロサウルス類 Hadrosauridae の中でクレストが後ろに伸びてるタイプのが少数すぎるかなとも思います。いかがでしょうか?

この後、当館の吉田先生が直接研究された事で知られるというか、この化石の研究が吉田先生を有名たらしめているというか、そういう標本が展示されていました。

赤みがかった黄色っぽい白色のピナコサウルス Pinacosaurus の頭骨・咽頭骨・胴体がケースの中で横たわっていたのです。

お察しの通り、SNSへの投稿はNGだったので当ブログでも掲載は控えさせていただきます。悪しからず。

これは2023年開催、国立科学博物館の『恐竜博2023』での咽頭骨のレプリカ。

この大恐竜展ではこのレプリカのように輪状骨と披裂骨にばらけておらず、一個のやじりのような形をしていました。

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7章 生き残った現代の恐竜

いわき産、漸新世の骨質歯鳥形類(オドントプテリクス形類) Odontopterygiformes

これも立派な日本産恐竜。立体構造が保存されていて美しぃ〜!

ギザギザした左右対称の偽歯も現生鳥類にはなかなかない魅力ですね。

鳥類 Aves イクティオルニス(イクチオルニス) Ichthyornis

本当の歯がある鳥類という事で骨質歯鳥形類との対比になっています。

一方、歯が全部退化した現生鳥類、イヌワシ Aquila chrysaetos 剥製

木材を磨いたような台座で仕上げている点は、自然史展示とは趣きが違い、本来観賞用のようですが、それは学術的価値がないという意味ではなく、種・採集地・採集年月日などの標本情報が残っていれば外部形態を保存した標本として十分利用できますよね。

ニワトリ Gallus gallus の胚

これらはニワトリが卵の中で形づくられていく様子を示していますが、それだけのものではありません。現代の鳥が育つ過程と化石種の形質を比べることで、鳥へ至る進化の道筋を探る「エボデボ」の重要な研究材料でもあります。

2026年、東京大学の平沢達矢先生らは、ニワトリをはじめとする現生動物の胚と獣脚類 Theropoda の化石を比較し、鳥の耳の奥へ続く深い通り道が、どのように生じたのかを調べたそうです。その結果、ニワトリでは成長の途中で下顎の後端が内側へ移動し、耳の通り道が深く入り込む形がつくられることがわかったそう。

同じ変化の手がかりは獣脚類の下顎にも認められ、鳥に見られる耳の特徴の一部は、少なくともコエルロサウルス類 Coelurosauria の共通祖先まで遡る可能性が示されたとのこと。

小さなニワトリの胚には、鳥へ受け継がれたダイナソーの体の変化を読み解く壮大な情報が詰まっているんですね。うわすっげ!(Watanabe, Novas and Hirasawa, 2026) 

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コハク

日本で琥珀と言えば岩手が有名かなと思いますが、福島県いわき市も琥珀産地なんですよね。地質時代は後期白亜紀です。映画ジュラシック・パークに恐竜の血を吸った虫入りの琥珀はドミニカ産という設定らしいですが、現実のドミニカ琥珀は漸新世のものなので、福島や岩手の琥珀の方がジュラシック・パークの恐竜用には適切かなという小ネタが使えます。いわき産琥珀から恐竜が復元(クローンとして再生)されるとしても未知の属種になりそうですが。

3つの虫入り琥珀。記録のために名前を載せましたが、昆虫の体はこの写真ではほとんど確認できず申し訳ありません。

いずれも鈴木千里さんという地元のアマチュア研究者兼化石ハンターの方が採取されたものだそうで、これら以外にも数十点もの虫入り琥珀をいわき市で採取されているそう。

キャプションによると2024年に記載されたチサトムカシホソハネコバチは既知の中で世界最小のハチ Hymenoptera で、すでに両方の性別のものが知られているそう。確か仕事仲間の一人がこれの記者会見の為に現生のハチの拡大模型を造っていた記憶があります。

クチナガフタガタカメムシは2025年に記載された新種で、体長を上回る長さの口吻をもっているという特徴があるそうです。

このあたりも微小なサイズながらザヴァケファレに負けず劣らずすごい発見ですね。福島県産であることも意義深いです。

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大恐竜展公式ショップ ZAVAYA(ザヴァ屋)

この展覧会でしか成立しない名前とエンブレムなのが良いです。新属がわずか一年で店を持ったと考えると面白いですね。

僕は図録を買わせていただきました。ありがとうございました。

これはいくらなんでも常軌を逸してるのでは。

ザヴァケファレ「本は 読んだ方がいいよ」

ぐさっ。善処します。

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さて!

大恐竜展レポートいかがだったでしょうか。5回もこのような記事にお付き合いいただきありがとうございます。

早い話がこの『大恐竜展』、世界初公開となるザヴァケファレ Zavacephale を中心に据えながら教科書的な内容に、福島県産の化石や吉田純輝先生らによる独自の研究を組み合わせた構成になっていました。特別展として非常に充実していたと思います。

一方、堅頭竜類だけに話題を限定せず、カスモサウルス Chasmosaurus やセントロサウルス Centrosaurus をはじめとする他の恐竜類全体へ視野を広げている点も、この特別展の巧みなところです。資料の限られる堅頭竜類 Pachycephalosauria だけを紹介するのではなく、恐竜の定義や進化、生態、最新研究という大きな流れの中にザヴァケファレを位置づけることで、その発見が持つ意味を誰にでも理解しやすくしています。ザヴァケファレには広すぎる展示室を生かしながら専門性と親しみやすさを両立させ、ザヴァケファレを主役にした特別展として成立させた、よく考えられた構成だったと思います。

あと途中SNS投稿NGマークの標本を2度も違法アップロードしてしまい大変失礼しました。

なんと言っても、これほど多くの堅頭竜類の実物標本を一度に見られる機会はめったにありません。堅頭竜類はもちろん、同じ地層から見つかったチョイロドン Choyrodon まで含め、これらを見るためだけでも足を運ぶ価値のある特別展でした。

福島県立博物館での開催は終わってしまいましたが、名古屋にも巡回する予定とのことなので、堅頭竜類がお好きな方には特におすすめしたい展示です。

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博物館近くの道みたいなところでいただいた『わらじカツ定食』。ソースカツ丼の一種だと思います。おいしかったです。

デザートの天ぷら饅頭。要は饅頭の天ぷらです。これも意外と醤油に合っていて(いや、醤油が天ぷら饅頭に合ってるのか?) おいしかったです。

次回は福島県立博物館の常設展示を紹介できればと思います。

それじゃ👋

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参考文献:

・福島県立博物館(2026)『大恐竜展』福島:福島県立博物館・福島民友新聞社・福島中央テレビ。

・Watanabe, T., Novas, F.E. and Hirasawa, T. (2026) ‘Evolution of the jaw joint and middle ear morphologies in the lineage towards birds’, Zoological Science, 43(1), pp. 72–80. doi: 10.2108/zs250108⁠