USNM #2 ケラトサウルス、 ステゴサウルスにやられるの巻

人造バランって必要かな。ケラトプスユウタです。

スミソニアン自然史博物館の2回目です。

昨日はティラノサウルスにやられたトリケラトプスをご紹介しましたが、今回は肉食恐竜が植物食恐竜にやられているという、一風変わった展示をご紹介できそうです。

視認性が悪いかもしれませんが、ステゴサウルス Stegosaurus の尾で打ち倒されるケラトサウルス Ceratosaurus の図です。

右側にステゴサウルスの特徴的な4本のトゲの生えた尾の先が確認できると思います。

ケラトサウルスは頭を奥にして仰向けに倒されています。

肉食恐竜と植物食恐竜が対決セットで展示されることは珍しくもなんともないどころか王道中の王道ですが、植物食恐竜側が捕食者をこのように倒している様子を描いたものはだいぶ珍しいもので前衛的です。

これは僕が勝手にそう思っているだけの事ですが、ケラトプス類 Ceratopsid の角や瘤、パキケファロサウルス類 Pachycephalosaurid のドームは頭部に備わっていることなどから同種同士の闘争が一義的な用途だったように思えるのですが、ステゴサウルスのようなステゴサウルス類 Stegosaurid のスパイクやアンキロサウルス類 Ankylosaurid のクラブは尾の先に付いている上に身内に対して使うには危なすぎる形状をしていて専ら護身用の武器だったのではなかろうかと言った装いです。

剣竜の場合、多くの鳥盤類に見られるような骨化腱が尾椎に付いていないので、尾の柔軟性もかなり高かったのではないかと想像します。

ジュラ紀後期のアメリカでは実際にステゴサウルスが捕食者を撃退する様子が見られたのかも知れませんね。

USMNのものすごいステゴサウルスの化石も近いうちにご紹介したいと思っています。

今日はここまで。

それじゃ👋

USNM #1 トリケラトプスのハッチャー、ティラノサウルスに食われるの巻

マスク届かないんですけど(要らないけど)。ケラトプスユウタです。

前回の投稿から日が空いてしまい申し訳ありません。

今日から首都National Museum of Natural History (国立自然史博物館) USNM の展示物紹介を始めちゃいたいと思います。

ここはスミソニアン博物館群の一つで、首都中心部のナショナル・モールと呼ばる大きな公園沿いにあります。

(半リアルタイム日記もご参照ください。)

最初に紹介するのはこちらの展示。

ティラノサウルス Tyrannosaurus にフリルを噛まれるトリケラトプス Triceratops

2019年のリニューアル後から公開されている新しい展示です。

この二大恐竜のマウントが共に展示されている例は世界の常設展でも特別展でも、いくつもの例がありますがこのように直接コンタクトしているものは珍しいでしょう。

ティラノサウルスはスタンと並んでよくいろいろな所で展示されているワンケルこと MOR 555。

トリケラトプスは USNM 4842 をコアとし、BSP 1964 I 458 などで補完されたコンポジットです。恐竜の完全な骨格は珍しく、発見される恐竜化石全体の1%未満と言われているので、見つからなかった部分を同種や近縁種、あるいは想像(暗黒)で補うのは普通のことです。USNM 4842の頭骨要素は目の上の角だけで種は不明ですが、四肢要素と骨盤はよく保存されています。

このコンポジットはハッチャーの愛称で親しまれています。ハッチャーとはトリケラトプス やトロサウルスの発見で有名なジョン・ベル・ハッチャー氏への献名です。

こちらはリニューアル前からこの博物館にいるハッチャーで、二階の白亜紀後期のアメリカの部屋に今もこうして展示されています。

このハッチャーは古い展示で、もろもろプロポーションに問題があったので、新しい方のハッチャーは実骨をデジタルスキャンしてサイズを整合した上で組み直されているそうです。

“Dueling Dinosaurs”(決闘する恐竜)と呼ばれる展示で、人気なのは良いのですが、もう決着ついちゃってるので「決闘」って言わないですよね。

トリケラトプス史上主義者として良い気はしませんが、どうあれ恐竜のダイナミックな復元は生き様を垣間見るようで好みではあります。こうなると「ティラノサウルスを打ち倒したトリケラトプス」という逆バージョンも見てみたくなるのが人情ですが、所詮はトリケラトプスは食われる者でTレックスは食う者。ティラノサウルスが生きたトリケラトプスを襲っていた証拠も知られており、逆にトリケラトプスがティラノサウルスを殺したという直接証拠はなく、博物館が科学の名の下にある以上は非現実的ですね。

続きはまた次回!

それじゃ👋


参考文献: Erickson G, Olson M, Kenneth H. (1996-03-19). “Bite marks attributable to Tyrannosaurus rex: Preliminary description and implications”. Journal of Vertebrate Paleontology16 (1): 175–178.

ANSP #11 ダイナソー・アラウンド・ザ・ワールド

鳩時計の鳥は(本来)カッコウ。ケラトプスユウタです。

サムネイルでこう見えましても今回もフィラデルフィア自然科学アカデミーです。最終回になります。

今回紹介するのは Dinosaur around the world と題されたもの。

一応特別展の扱いで、マルデイキテイルカノヨウナ某中国産恐竜ロボットの生息する中生代の地球を探検しました。

監修されたのは著名な古生物学者グレゴリー・エリクソン博士らしいです。

入場料は確か10ドルくらい。

2020年1月まで開催されていました。

最初に訪れるのは三畳紀のパンゲア超大陸で、これはヘレラサウルス Herrerasaurus。…四角い頭がヘレラサウルスっぽくは、あります。

この特別展では、プレートテクトニクス、陸橋、火山活動、海面変動などの環境の変化によって恐竜たちがどのようにして世界中に放散することができたのかをね、説明しています。

ジュラ紀中期の中国のモノロフォサウルス Monolophosaurus

恐竜時代の一大ハイライトの一つであるジュラ紀後期をすっ飛ばして次は白亜紀前期です。

イグアノドン Iguanodon

(プシッタコサウルス Psittacosaurus だと思った僕はまだまだだな)🤓

オーストラリアのラエリナサウラ Leaellynasaura

ミンミ Minmi を名乗る鎧竜。

ハドロサウルス Hadrosaurus を語る謎のランベオサウルス亜科 Lambeosaurinae。

ちなみにここはオウセンティックなハドロサウルスが展示されてる唯一の博物館です。

(念のため誤解のないように記しておきますが、ハドロサウルスはランベオサウルス亜科ではないです)

白亜紀後期のアジアのプロトケラトプス Protoceratops

ここでも伝承のグリフォンの元ネタと説明されています。

プロトケラトプスといえばその好敵手、ヴェロキラプトル Velociraptor (Mienai)

巣をまもるオヴィラプトル Oviraptor

彼の毛をむしったバージョンが神奈川県大和市の某レストランにいます。

レプリカですが、いくつかのカモハシ竜の標本も陳列されています。

サウロロフス Saurolophus と書いてありますが、クリトサウルス Kritosaurus とかそっち系ですよね。

ガチャガチャのフィギュアを拡大したようなランベオサウルス亜科 Lambeosauridae

(キャプションではコリトサウルス Corythosaurus)

やる気のないシックルクローを備えるヴェロキラプトルの左足とエロンガトーリトゥス型の卵。


…さて!

全11回の連載でANSPの展示物を紹介して参りましたがもちろんこれらはごく一部です。

ANSPは、1868年に世界で初めて恐竜の全身骨格を展示した場所であり、今日も人々と自然科学をパワフルに結びつける展示を行うという教育的な役割を継承し、さらに強化されています。

古生物以外もすごい展示がたくさんあるので、フィラデルフィアに行かれた際にはぜひお立ち寄りください。

ANSP #10 春に聞こえし最初の雷鳴

こんにちは。ケラトプスユウタです。

今日もフィラデルフィア自然科学アカデミーです。今回見ていただきたいのは恐竜ホールの奥にあるクリーニングルームです。目立たない位置にあるので「ある!」と思って行かないと見過ごしてしまいます。

この整然とした部屋が当館のクリーニングルームです。クリーニングというのはフィールドから持ってきた化石についてる余計な土砂などの鉱物を削り落とす作業であって、洗剤をつけて水洗いしたりアイロンをかけたりするとかそういうことではないですよね。

竜脚類 Sauropod の椎骨らしきものが置いてありますが、これはクリーニングの余地が残されてなさそうのでお飾りでしょう。

そして今日お見せしたいのがこの標本。スウワッセア・エミリエアエ Suuwassea emilieae の尾椎(しっぽの骨)です。

キャプションによると、竜脚類ディクラエオサウルス科 Dicraeosauridae の一種、強大なスウワッセア・エミリエアエはモンタナ州カーボン郡ビッグホーン盆地のモリソン層(後期ジュラ紀)でANSPの探検隊によって1999に発見された。推定全長は15m。長く柔軟な尾は捕食者から身を守る強力な武器になったとのこと。

ちょっと盛ったような表現ですな。

元記載ではディプロドクス科 Diplodocidae アパトサウルス亜科 Apatosaurinae に配置されていましたが、後の系統解析でディクラエオサウルス科に改められたそう。

既知の中で唯一の北米大陸で発見されたディクラエオサウルス類のようです。

ついでにティラノサウルスの大腿骨。上半分です。お触りOKな実骨。


今日はここまで。それじゃ👋

ANSP #9 何かに似た恐竜たち

何かの魅力について語る時はそれにしか言えないような内容である必要がある。ケラトプスユウタです。

フィラデルフィア自然科学アカデミーの展示物を今日もやっていきます。短い間ですがお付き合いください。

植物を食べる恐竜のグループの一つとして知られる鳥盤類 Ornithischia の中にはユニークな特徴を持ったものも多いですが、そんな鳥盤類から3種類の特徴的なパーツを紹介していますね。

左からおなじみトリケラトプス Triceratops の目の上の角。サイに似た恐竜と書いてあります。どちらもなかま同士の戦いや捕食者から身を守る武器として使うものと思われますが、サイの角は毛の塊であるのに対し、トリケラのような角竜の角は骨の芯があるので構造がけっこう違います。どちらにもメリットとデメリットがあるかと思いますが、一緒に考えましょう。(ちなみにどっちも癌には効くという事は科学的に証明されていません)🤓

中央はアルマジロに似た恐竜と書いてあります。エウオプロケファルス Euoplocephalus か…なんかとりあえずアンキロサウルス類 Ankylosaurid の尾のクラブが展示されてます。アンキロサウルス類のような曲竜類(ヨロイ竜) Ankylosaur とアルマジロは体を覆う装甲が共通した特徴ですね。尾のクラブは今生きているアルマジロにはありませんが、絶滅したアルマジロのなかまには尾の先に似たような打撃武器を備えていたものも知られています。

その右にはゾウに似た恐竜としてハドロサウルス類 Hadrosaurid のパラサウロロフス Parasaurolophus の頭骨が展示されています。あまりゾウに例えるのは読んだり聞いたりした事はないのですが、歯が半永久的に生え変わるという特徴は同じですね。ゾウの場合、古い歯が奥から手前に押し出され、奥から新しい歯が次々生え変わるようになっています。ベルトコンベアーに例えられる交換システムです。ハドロサウルス類は無数の機能歯の一本一本に対し代用歯が鈴なりに密集していてます。この交換システムはロケット鉛筆に例えられることがあります。あとはパラサウロロフスのような恐竜は声でコミュニケーションを取った可能性が示唆されていますが、それもゾウと同じといえばそうですかね。そんな動物いっぱいいますけど。

こちらは写真左下をよーく見るとヒツジが写っているんですが、ヒツジと同じように頭突きをしていたかもしれない鳥盤類、パキケファロサウルス Pachyrhinosaurus

有名なサンディー Sandy という標本で東京・上野の国立科学博物館にも展示されているパキケファロサウルスと同じ個体に基づくレプリカです。

パキケファロサウルスが頭突きを行ったかどうかは諸説ありまして、中身が今流行りの「密」な構造になっている、つまり割れやすい構造であり見せびらかすだけのディスプレイに過ぎないというのが否定材料の一つなんですが、逆になんでそんなただの飾りの密度を増す必要があるのかと思いませんか? まして若い時は「粗」、つまりスカスカな構造なので、わざわざ成長と共に密になっているわけですよ。

この続きは次にサンディーが出てきた時に取っておきます。

恐竜の卵。

エロンガトーリトゥス Elongatoolithus

以前はプロトケラトプス Protoceratops のような角竜の卵と考えられていたタイプのものです。今日ではおそらくオヴィラプトル類 Oviraptorid のものと考えられています。

スフェーローリトゥス Spheeroolithus

何の恐竜の卵かはよくわかりませんが、とりあえず中国で発見された丸い卵です。とりあえず。

マクロエロンガトーリトゥス Macroelongatoolithus

産み主は大型のオヴィラプトロサウリア Oviraptorosauria と言われています。

ステゴサウルス Stegosaurus の生体復元模型とも人体模型とも言いづらい半身の模型。

歯の構造からして消化しづらい植物を、ハドロサウルス類や角竜と違って咀嚼せずに飲み込んでいたようなので、大規模な腸を持っていたことは間違いないはずですが、具体的な大きさや形状、配置を問うのは激ムズ恐竜クイズですね。

怪しげなコンプソグナトゥス Compsognathus

コンピーです。映画でご存知の方も多いでしょう。

ニワトリほどの大きさで、ひと昔前の図鑑では最小の恐竜と言われていましたが今ではもっと小さい恐竜がたくさん知られています。

こちらも怪しさあふれるシソチョウ Archaeopteryx

シソチョウもレリーフ状の化石でしか見つからないのでマウントの正確性を見極めるのが素人目には難しいものです。

トリケラトプスの大腿骨。

よく見ると噛み跡のような傷があります。キャプションではティラノサウルスが噛んだのかもしれないとされていますが、いくつかのドロマエオサウルス類 Dromaeosaurid も共存していたことがわかっているので、そちらも候補に入れても良さそうです。

どちらにせよわざわざ足の骨をかじるということは殺した獲物というよりは、死んでいたトリケラトプスにあり付いたか、別の動物が殺したもののおこぼれを頂戴したか、といったところでしょうか。

ダチョウに似ていると言われる恐竜、ストルティオミムス Struthiomimus のウォールマウント。前足を前に伸ばして後ろ足を思い切り後ろに引いたような姿勢で印象的です。最速の恐竜の候補の一つですが、脚のプロポーション的にはダチョウの方がさらに速く走るのに適した比率になっています。青は藍より出てて藍より青しと言いたくなりますが、別にストルティオミムスとダチョウの間に直接系統的な繋がりはありません。


今日はここまで。

続きはまた次回👋

ANSP #8 お前はトロサウルスがなきゃ生きられないのか?

ブログを自粛する必要がどこにある? ケラトプスユウタです。

こんにちは。フィラデルフィア自然科学アカデミーの8回目です。

今日も再び偉大なケラトプス類 Ceratopsid が紹介できます。

トロサウルス・ラトゥス Torosaurus latus の補完された実物頭骨。

ANSP 15192

これまでに9体分未満のトロサウルス・ラトゥスと断定できる頭骨がアメリカ西部の後期白亜系マーストリヒチアン階から報告されています。ANSP15192 はそのうちの一つでサウスダコタ州のヘルクリーク層 Hell Creek Formation で発見されたものです。トロサウルス・ラトゥスの第3標本です。

フリルの開口部(頭頂骨窓)と頬骨の一部、吻骨が石膏で補完されてます。十分長大に見えますが、補完された状態で吻端から頭頂骨の縁までの長さが177cmとトロサウルスとしては小さめで、明らかな亜成体であると考えられます。

“トロサウルスが成熟したトリケラトプスである”とするスキャネラ氏やホーナー先生の仮説の否定材料となる標本の一つですね。

幅広い頭頂骨に比して目立たないながらも個々の存在は明瞭な縁頭頂骨、包丁のような鱗状骨、トロサウルスらしいまっすぐな上眼窩角にまっすぐに近いマズル、狭い口先、初々しさのある鼻角、これらの組み合わせが特徴的で非常に魅力と気品あるトロサウルスです。

それにしても頭骨一個だけでこれだけ大上段な威圧感があるのも大型トリケラトプス族 Triceratopsini ならではの醍醐味と言えるでしょう!

生きて頭を振りかざしていたら、さすがのティラノサウルス Tyrannosaurus も怯んだに違いありません。そう、ティラノサウルスと渡り合っていた角竜はトリケラトプスだけじゃないのです。

今日はここまで。それじゃ👋


参考文献:

McDonald A., Campbell C., Thomas B., 2016. A New Specimen of the Controversial Chasmosaurine Torosaurus latus (Dinosauria: Ceratopsidae) from the Upper Cretaceous Hell Creek Formation of Montana, PloS one 11 (3)

・Sullivan R.,Boere A., Lucas S., 2005. Redescription of the ceratopsid dinosaur Torosaurus utahensis(Gilmore, 1946) and a revision of the genusCambridge University Press.

ANSP #7 あの荒波

ステラサウルス・アンケラエ Stellasaurus ancellae が記載されましたね。ケラトプスユウタです。

今日もフィラデルフィア自然科学アカデミーの展示物紹介です。今日は恐竜時代の海の生き物をやります。早速見ていきましょう。

イクティオサウルス・ソメルセテンシスIchthyosaurus somersetensis

2017年に記載されたイクティオサウルスの新種で、キャプションによるとこの標本はこれまでに発見されたイクティオサウルスの中で最高のものだそうです。

この美しいのは種不明のイクティオサウルスの部分的な前半身。

イギリス産。ジュラ紀前期。

大きい眼窩は光を取り込みやすくするため、つまり暗い水中への適応だそう。

モササウルス類 Mosasaurid ティロサウルス Tylosaurus (たぶん)と魚類ジファクティヌス Xiphactinus。カンザス産。

別のモササウルス類、プリオプラテカルプス Plioplatecarpus 復元骨格。

モンタナ産。

この個体は2mほどの亜成体ですが成長すると12mほどにもなるそう。

ウミガメ、トクソケリスToxochelys

カンザス産。

これも未成体のようで24cmほどですが、1.25mほどに成長する動物らしいです。

プロトステガ Protostega

これも小さい個体ですが1tに達するほど大きく育つウミガメです。

下から見たプテラノドン Pteranodon

水棲生物じゃないですが、海で魚を獲って生活していたと考えられていますね。

ささやかな内容ですがここまでにしましょう。

今日もありがとうございます。

それじゃ👋