東海大学自然史博物館

「善戦」などありえない。なぜなら戦いそのものが悪の形だからである。ケラトプスユウタです。

去年3月に惜しまれながら閉館された東海大学自然史博物館のレポート。前回は海洋博物館の方を紹介しました。今回はかなり間が空いてしまって申し訳ない事おびただしいのですが、後半となる「恐竜の博物館」こと「東海大学自然史博物館」の方を紹介します。

東海大学自然史博物館。中学生の時に静岡県内の別の場所の同名の施設に行った事があるのですが、2002年に移設・リニューアルしたそうで、この建物に足を運んだのは初めてでした。その中学生の時が2001年頃だったはずなので、移設直前に行っていたようです。

外観はこんな感じ。この中にトリケラトプス(族) AMNH 5116 が隠れています。本当です。
たしかケティオサウルス(Cetiosaurus)名義の竜脚類像。歴史を感じる佇まいです。
AMNH 5116 の嘘産状。かっこいいですね。こんなものをフィールドで拝んでみたいものです。
現生のコーナー。サメの口に関する展示。展示方法がユニークです。
脊椎動物の前肢を集めた展示。
アオサギの尺骨乳頭がよく観察できました。
ペルム紀から、ドビノサウルス・プリムスなる両生類の頭骨。
重厚な体つきでガニ股のスクトサウルス。
お馴染みペルム紀のアイドル生物、ディメトロドン。
エステンメノスクスの頭骨。この動物はこの角のような突起や牙を使って何をしていたのでしょうか。

ここから「恐竜の世界」で中生代に入っていきます。白亜紀末のトリケラトプスが出迎えてくれるので、時間の流れはけっこう大雑把にデザインされている事を感じます。
恐竜の多様性が直観的にわかる展示になっているんだと思います。
このトリケラトプス・プロルススの頭骨は LACM 59049 です。
国立科学博物館の立っている方のトリケラトプスの姉妹レプリカですが、こちらは肘を横に張り出す形の前足の復元がノスタルジックです。(科博のはもちろん藤原慎一先生の研究を反映し、「小さく前へならえ」になっています。)また、科博のプロルススの前肢は別個体由来のキャストを使っていますが、このマウントではLACM 59049本来の前肢要素が使われています。
血道弓のないタルボサウルスとプロバクトロサウルス。個人的には恐竜学名辞典 の表面にプリントされている事で馴染みがあります。
まるで典型的大型獣脚類のような胴体幅の狭さですが、若さゆえかもしれませんね?
プロバクトロサウルス。棘突起も血道弓も復元されていないも同然なので尾がネズミっぽい印象ですが、それは言わないとして、福井県立恐竜博物館のプロバクトロサウルスと比べて鼻先がほっそりしています。これも成長によって変化する部分なのでしょうか。
当館最大の生物ディプロドクス・カルネギィ。
ディプロドクスの前足の間にはデイノニクス。ジュラ紀の竜脚類と白亜紀の獣脚類がこのように近接して展示される例はかなり珍しいです。大きさや骨格の対比をして、静的な恐竜と動的な恐竜を見せたかったのでしょうか。
ディプロドクスやステゴサウルスの背後には大きな鏡があります。限られたスペースの中で展示物の背後に通路を設けずに、展示物を多角的に観察できるようにとの配慮かもしれませんが、恐竜達が移転してくる前の展示の為の鏡がそのままになっているだけかもしれません。
エウオプロケファルス名義のマウント。本当はスコロサウルスかもしれません。たしか四肢はズールのマウントに使われているものと同じ標本のキャストだったはず。
変形で過剰にダックビルされた有名なサウロロフス頭骨。大きくて迫力があります。
プロトケラトプス。一番気になるのは膝関節が外側に張り出している事ですが、なんともいえない不思議な魅力があります。
恐竜の卵化石。キャプションは新しい情報になっていました。
トリケラトプスなんかと比べると下顎に対して歯が大きく、本数が少ないです。
ユタラプトルの足だそうです。
イグアノドン、アロサウルス、エドモントサウルス、カマラサウルスの頭骨コレクション。頭だけでもスター恐竜が並ぶと壮観です。
よく見る形ではないけど見覚えのあるパキケファロサウルス頭骨。おそらくBHIの商品で、世界ベスト4の保存状態のパキケファロサウルスの一つと言われている頭骨のレプリカと思われます。完全無欠のパキケファロサウルス・ワイオミンゲンシスですが、トゲの様子からするとサンディに近い成長段階なので、ロッキー博物館では「スティギモロクの成長段階」に相当する個体とされそうです。
羽毛恐竜のコーナーにはコンプソグナトゥスの有名な標本のレプリカ。キャプションは情報が旧く、最も小さい恐竜と記載されています。
プレシオサウルス。海中を生き生きと泳ぎ、魚を追いかける姿で復元されていて良いですね。
これは2階・氷期の世界のプラティベロドン。シャベル状の下顎をもつゾウみたいなやつです。
エンボロテリウム。鼻の骨が大きく隆起してこんな感じになっていますが、生体では鼻の穴はどこにあいていたのでしょうね。
下顎の一対の牙が目を引くサイのなかま、キロテリウム。これらアケラテリウム類は角の代わりに牙を備えていたわけですが、使い方については未知です。
よく長大な角をもった毛深いサイの姿で復元される、エラスモテリウムの頭骨。鼻先ではなく眉間に使い位置に角の基部があるんですね。
メッセル産の美しいヘビの化石。
これはシンボル展示の一つと言ってよいものでしょう。崩れ落ちるマンモス。マンモスにとっては低い天井の中で膝を折らせる事によってダイナミックな展示に仕上がっています。
足元の土やバックの風景もワイルドな味付けになっています。天井には丸い鏡があって背面が観察できるようになっていて、いろいろなところに展示の工夫が見られます。
ケースに入れられライトで照らされたスミロドンの頭骨。これもレプリカですが、このように神のように祀られる事によって特別な展示と化します。
ケサイ(Coelodonta antiquitatis)の頭骨。後ろの図によって、角に骨芯がない事が誰でも視覚的に理解できるようになっていますね。
オオツノジカ(Megaloceros giganteus)。このやりすぎた角がかっこいいですね。あと8000年早く生まれていれば生きている姿を拝めたという意味で、会えなくて残念な生き物の一つです。
ステラーカイギュウ(Hydrodamalis gigas)
我々が絶滅させた動物ですね。ジュゴンやマナティーと違って歯が目立ちませんが、そういう動物らしいです。胴体が巨大なのでヨロイ竜のように腸内細菌に依存した食生活だったのでしょうか。ステラーカイギュウはしばしば優しすぎて絶滅とか傷ついた仲間を助けようとしたなどと説明されますが、絶滅しちゃったからといって美化されていやしないかと疑っています。ケラトプスユウタです。真偽はどうあれ、ステラーカイギュウを絶滅させたことは、現代の保護活動への教訓が含まれています。我々にステラーカイギュウがかわいそうだと思う心があるなら、同族嫌悪で人類の傲慢さを揶揄するのではなく、現生種の保護活動や持続可能な生産活動の推進を一緒にして行きましょうということですな。

東海大学博物館の閉館という事で、残念に思う人も多いでしょう。
ここには人々の思い出がたくさんつまっていたのがわかります。


どのような事情で閉館されるかは把握しておりませんが、閉館というのは非常に寂しいことです。

読者の皆さんは恐竜たちとはもうなかなか会う機会もなくなると思いますが、もしどこかで見かけたときにはどうぞお声をかけてください。

本当に長い間有り難うございました。

さよなら!