東海大学海洋科学博物館(海の博物館)

「深海魚の出現は地震の前触れ」という伝承は迷信。ケラトプスユウタです。

2023年3月31日に有料見学が惜しまれながら終了された東海大学海洋学部博物館の、「海の博物館」の方の博物館である「東海大学自然史博物館」に行ってまいりましたのでレポートします。(博物館って言い過ぎ)

名前からわかる通り、東海大学が運営していた博物館です。世界的にもあまり例を見ない業態の博物館ですよね?

さらに、半分は生体展示が占めていて博物館というよりは水族館と言った方が正確に伝わると思います。(厳密には水族館も博物館ですが。)実際にバス停の名前は「東海大学三保水族館」という名称でした。

静岡県静岡市清水区三保というところにあります。半島が三つ重なったみたいな形をした地形のほぼ先端に位置しています。

入口はこんな感じです。

東海大学の創始者、松前重義先生が若人に向けたありがたい言葉があります。

一階部分は水族館となっております。最初に出会うことになるのは「きらきらラグーン」と呼ばれる展示室で、サンゴ礁やその周辺にすむ多種多様な生きものたちを展示しています。

小さな水族館と侮るなかれ。「海洋水槽」という水量600立方メートルの大型水槽もあります。人気のロウニンアジ、シロワニ、エイなんかが緑色に照らされていて綺麗です。また、見る場所によって「サンゴ礁」「海藻」「砂底」「岩礁」の4つの景観に分かれ、坂を上がると上層を、階段を下りるとトンネルの窓から水槽内を見上げることができます。

全長約5メートルのリュウグウノツカイの液浸標本がつがいで展示されています。ペアで展示しているのは世界でも見たことがありません。あとこの近くにあるラブカの展示も有名です。
奥に進むと駿河湾の生き物たちが待っています。マイワシの群れもかぶりつきで観れて楽しいです。

順路を進むにつれて、生息水深が深くなっていきます。

ガラスにへばりついたミズダコが親しそうに話しかけてきます。
タカアシガニ水槽。この中に一緒に飼育されていた未記載種のサメを食べてしまった犯人がいるかもしれません。

東海大学海洋科学博物館と言ったら深海魚です。日本一の深さを誇る駿河湾に面しているだけのことはあり、150種もの深海生物標本がずらりと並んでおり圧巻でした。

このチョウチンアンコウは全長約50cmの標本で、本種としてはほぼ最大サイズだそうです。

こちらは標本収集および保管の大切さを説明した展示でした。2021年から博物館法を改正する議論が文部科学省で行われているそうですが、これは70年ぶりの大幅改正になりそうです。このきっかけは、博物館に関する行政上の所管が、文部科学省から文化庁に移ったことがきっかけらしいです。おそらく我々が普段博物館に慣れ親しんでいるのは、博物館の義務のうち展示の部分だろうと思いますが、それは博物館の一部に過ぎません。コレクションを未来へ伝える事はもとより、それらの活用を含めて博物館文化のさらなる普及と発展が求められています。それゆえにこの展示は、見栄えはしないものの大事な展示だと思いました。

餌の時だけ上の方に集まるクマノミたち。

クマノミ専門エリアでは複数水槽でさまざまなクマノミ類が展示されています。クマノミ類の展示でも日本一なのではないでしょうか。

2階のマリンサイエンスホールは生体展示ではなく、海洋物理学的な展示やバイオミメティクス的な展示などがあります。もはや一匹の魚もおらず、シンプルに海洋の知識に特化した展示になっているのです。

4月からはこの2階部分が一般公開される事がなくなるそうです。写真はピグミーシロナガスクジラなるクジラの骨格標本。展示開始から50年以上経ってもまだ鯨油が滴っているということで生命感を感じられるものです。

地図の歴史コーナーがありました。このヴィンランド地図をはじめ16枚の昔の世界地図やアジア地図が年代順に展示されています。日本列島にのみ注目してみても、時代が進むにつれて徐々に現在の形に近づいてきて面白いものでした。北海道などは長い間、ヨーロッパからは存在すら認知されていなかったようです。

ユーモラスな顔をしたメガマウスシャークの模型。

この「海の博物館」に来てみると、魚を見せることに主眼を置いた多くの水族館とは異なり、魚や標本はすべて海を知るための手段に過ぎないという事がわかります。

来館者に海を教える為だけに、手を尽くしている。それが東海大学海洋学部なりの海洋に対する誠実さなのかもしれません。

このような展示が無くなってしまったのは残念ですが、清水区内で2026年4月の供用が開始されるという「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」という未来の為の前向きなシー・チェンジと捉えて、今は感謝の意を表すにとどめたいと思います。

海の大切さをたくさん発信していただきありがとうございました。
関わったすべての皆様に感謝したいと思います。
53年間お疲れ様でした。

次回は「恐竜の博物館」こと「東海大学自然史博物館」を紹介します。

それじゃ👋

コメントを残す