福島県立博物館 大恐竜展 #3 多様化する白亜紀の恐竜たち

失敗は選んだ時点では確定しない。ケラトプスユウタです。

表題の通り、福島県立博物館のレポート3回目です。

石川県白山市産の基盤的周飾頭類 Marginocephalia アルヴァロフォサウルス・ヤマグチオルム Albalophosaurus yamaguchiorum

手前が頭骨産状、奥が復元頭骨。

以前もどこかで紹介しているかなと思います。

本種は石川県の角竜類 Ceratopsia と紹介される事があるんですけど、角竜類かどうかを確認できる部分が保存されてないし、記載論文でも角竜だなんて一言も言ってないんですよね。

角竜類にしろ何にしろ、アルバロフォサウルスの存在は(他の)アジア産の基盤的角竜類やザヴァケファレのような堅頭竜類と共に、周飾頭類の起源と初期進化を知る上では重要とされています。

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以下、ザヴァケファレと同じフルンドホ層から見つかった恐竜たち。

チョイロドン(コイロドン)・バルスボルディ Choyrodon barsboldi ホロタイプ実骨

2018年に記載された比較的新しく知られた イグアノドン類 Iguanodontia です。発見された標本たちは幼体のもので、同層からは近縁なアルティリヌス Altirhinus も知られ比較されやすいのかなと思いますが、独立した属ということでコンセンサスが得られているようです。

このプシッタコサウルス・モンゴリエンシス Psittacosaurus mongoliensis はうつ伏せのような姿になっていますが、命を落とした後に徐々に力が抜けていったとすると、これが寝姿を表している可能性があるのかなと思います。

プシッタコサウルスでは他にもうつ伏せ姿勢で見つかっているものが複数知られています。

あとすみません、図録によるとここまでが第4章『新種恐竜の大発見』らしく、前回は第4章の途中で終わらせていたみたいです。

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第5章 多様化する白亜紀の恐竜たち

福島県双葉層群の主竜類 Archosauria 化石

左上から獣脚類 Theropoda 左脛骨(フタバリュウ)、ティタノサウルス形類 Titanosauriformes 歯(ヒサノハマリュウ)、ハドロサウルス類 Hadrosauridae 胴椎(オオヒサリュウ)、鳥脚類大腿骨、ワニ形類 Crocodylomorpha 皮骨、鳥脚類胸骨(初公開)。最後の鳥脚類の胸骨はいわき市アンモナイトセンターで体験発掘の際に発見されたそうです。

いずれも断片的な標本とはいえ、これだけ多様な脊椎動物化石が双葉層群産の標本として一堂に並ぶ光景は圧巻です。福島県立博物館ならではの展示ですね(と言いつつ愛知での巡回展でも展示されるのかな?)。

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エドモントサウルス・アンネクテンス Edmontosaurus annectens

いわゆる「アナトティタン Anatotitan 型」の個体ですね。

いわき市石炭・化石館のプロサウロロフス・マキシムス Prosaurolophus maximus

プロサウロロフスのトサカは鼻骨と前前頭骨と前頭骨で構成されているらしいのでランベオサウルス亜科 Lambeosaurinae と比べるとシルエットも構成要素もシンプルで安心感があります。

こちらもいわき市石炭・化石館所蔵のアメリカ産ハドロサウルス類尾椎。

こちらもいわき市・石炭化石館のハドロサウルス類下顎。上記の尾椎ともども、見たところ変わった様子はないですが、産地・年代等も詳細不明なだけに気になります。

写真が斜めですみません。

こちらもいわき市石炭・化石館の所蔵物。おそらく化石産状とは何かを説明するための模型のようなものに見えるのですが、デザインとしては、頭骨と脊椎などが完全に関節したハドロサウルス類を取り巻くようにばらけた何種類かの恐竜の骨が散らばっているという状況が描かれています。キャプションではエドモントサウルス・アンネクテンスとアルバートサウルス・サルコファグス Albertosaurus sarcophagus とされていましたが、どちらも疑わしいです。言及されていませんでしたが右下は前歯骨を欠いたケラトプス類 Ceratopsidae の下顎に見えます。

プロトケラトプス・アンドレウシ Protoceratops andrewsi 立派な成体の頭骨。

そういえば、2025年に発表された研究で、本種とバガケラトプス Bagaceratops について、幼体から成体までの頭骨と下顎の形が比較されたのがあったんですけど、比べた結果、エサを取り込むための基本的な構造が幼体の段階ですでに整っており、幼体も自力で採食できた可能性が指摘されたんですよね(Yun and Czepiński, 2025)。

一方、成長すると吻が長くなり、顎の筋肉が付着する部分も相対的に発達するのは前からよく知られています。

これは幼体は比較的柔らかい植物をえり好みし、成体になるにつれ、より硬いファイバーリッチな植物まで処理できるようになったってことかもしれません。

まあ、胃内容物や歯のマイクロウェアの研究結果などの後押しがあるわけではないのでそう言い切るにはまだ弱いと思いますけど。

あと従来、モンゴルのジャドフタ層には本種、中国・内モンゴルのバヤンマンダフ層にはプロトケラトプス・ヘレニコリヌス P. hellenikorhinus が分布し、両種は地理的に隔離されて暮らしていたと理解されてきました。ところが、2025年の日本古生物学会で(林原自然史博物館とモンゴル科学アカデミーによる共同調査標本の再検討から)、ジャドフタ層の一部の産地で両種が共産していた可能性が示されているそう(千葉,2025)。

更なる研究によって確認されれば、両者の違いは地域差ではなく、近縁なプロトケラトプス同士が同じ地域で何らかの棲み分けをしていたなんて話が飛び出すかもしれません。

安直に、好んでいた植物の違いなどが、その共存を可能にしていたのかなと邪推が捗りますが、まだそこまでの話ができる段階ではないですね。

ようやく僕の大好きなケラトプス類(科) Ceratopsidae が登場。と言ってもこの2体分の頭だけですが。

左からそれぞれセントロサウルス亜科 Centrosaurinaeとカスモサウルス亜科 Chasmosaurinae つまりケラトプス類の2代系統の模式属。

セントロサウルス・アペルトゥス界の優等生、Centrosaurus apertus USNM 8897のレプリカ

この方、いわき市石炭・化石館のショップにいましたよね。

カスモサウルス・ベリ Chasmosaurus belli 界の征服王 ROM 843のレプリカ。

意外とこの2種(だけ)が並べて展示してあるのは初めて拝んだと思います。そもそもセントロサウルスの展示自体が日本では少ないですね。

セントロとカスモは、分類体系を説明するうえでは便利な「代表」ですが、形態的には決して平均的なケラトプス類ではないと僕は思います。むしろ、どちらもかなり癖の強い異形です。

両者は、比較的早くから研究され、しかもセントロサウルス亜科とカスモサウルス亜科の模式属として選ばれているため、しばしばケラトプス科を代表する二つの典型として扱われます。しかし、僕はそんなことはないと言いたい。成長とともに鼻角が前方へ湾曲し、P1だけが前方へ鉤状に曲がって頭頂骨窓を中途半端に覆うセントロサウルス。一方、頭頂骨窓が著しく大型化した結果、残された頭頂骨のソリッド部分がほとんど外枠だけのような構造になり、しかも成長とともに上眼窩角が退縮していくカスモサウルス。個々の形質をほかの属と共有しているとしても、ケラトプス類全体を見渡せば、どちらの形態も少数派です。なにより、その形質の組み合わせが独特すぎるのです。分類上の基準点と、形態的な平均像を混同しないように生きていきたいですね。どこにいようと。

誤解のないようにお伝えしておくと、当展でセントロサウルスとカスモサウルスが典型的ケラトプス類として扱われていたわけではありません。悪しからず。

お馴染みアンキロサウルス Ankylosaurus AMNH 5214 のレプリカ

僕の勤め先に同じものがあるのですが、上顎と下顎がそれぞれ展示台に直置きなので、ちゃんとこういうベースに設置して展示してみたくなります。

貴重な鎧竜類 Ankylosauria 3点セット。

特に奥の夕張産鎧竜類の部分頭骨は最近(2026年8月)に命名されたばかりの新種、ニッポノペルタ・イェゾエンシス Nipponopelta yezoensis のホロタイプのレプリカなのでザヴァケファレよりもタイムリーな標本です。

ニッポノペルタは個人的には勝手に「ユウバリペルタ」と心の中で呼んでいましたが、もっと良い名前になりましたね。「日本の盾」という意味なので我が国を守ってくれそうです。

パウパウサウルス Pawpawsaurus はどこかで見た事があるかもしれませんが、記憶にはないので珍しいと思います。所蔵は栃木県立博物館らしいです。

開口部が少なくシンプルかつ頑丈そうでかっこいいです。

今日はここまで。続きはまた次回。

それじゃ👋

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参考文献:

* Yun, C.-G. and Czepiński, Ł. (2025) ‘Craniomandibular ontogeny of protoceratopsid dinosaurs indicates the possibility of an ontogenetic dietary shift’, Lethaia, 58(3), pp. 1–17. doi: 10.18261/let.58.3.8⁠.

* 千葉謙太郎(2025)「モンゴルのケラトプス類:その進化と意義」『日本古生物学会2025年年会予稿集』日本古生物学会,p. 3. Available at: https://www.palaeo-soc-japan.jp/events/PSJ250626_Abst.pdf⁠(Accessed: 28 September 2026).

* 福島県立博物館(2026)『大恐竜展』福島:福島県立博物館・福島民友新聞社・福島中央テレビ。

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