MOR #19 HALL OF HORNS AND TEETH / TAKE THE TRIKE BY THE HORNS

世界には2種類の生き物がいる。トリケラトプスと、トリケラトプス以外の生き物だ。ケラトプスユウタです。

正味の話、トリケラトプス Triceratops は2種が有効とされています。

そうそう、よく恐竜図鑑には「トリケラトプス Triceratops 」「トロサウルス Torosaurus 」「レガリケラトプス Regaliceratops」といった単位で載っているのでそれより細かな分類があるとはご存知ない方もいらっしゃるかと思うんですが、これらは「属(ぞく) genus 」と呼ばれる分類階級でして、この下位分類(より細かい分類)として「種(しゅ) species」があります。

(生物群集を勉強したことがある方は下の境界線まで読み飛ばしてください)

現生動物で例を出すと「ヒョウ Panthera pardus」「ライオン Panthera leo」とか「トラ Panthera tigris」などが種の階級です。これら3種はヒョウ属 Panthera の構成メンバーです。同一属のメンバー同士は必ず祖先を共有していて別の属の生き物よりも近縁です。ゼッタイに!

要するに、極端なことを言えば、多くの図鑑における恐竜の扱いは、動物図鑑にライオンの図(だけ)が代表して載せてあってそこにヒョウ属と書いてあるような感じです。(もしティラノサウルス・レックスと表記してあるならティラノサウルス属レックス種ということなので、以上の限りではないです)

なぜそうなのかと言うと、現生動物は現代という一瞬に生息している動物だけ載せれば良く、属と種の差が(比較的)明確であるのに対し、恐竜の場合、約2億3000万から約6600万年前の長きに渡る期間に生息していた恐竜たちをなるべく包括的に載せたい事と、属と種の差が現生動物ほど明確ではないという説明がされます。簡単に言うと、しょうがないからです。

(属と種は今まで何の説明もなく用いて来た概念なのでこの説明は今更すぎるんですけども…🤓)


でもってトリケラトプス属に2種が知られているという話に戻りたいのですが、その前にあのエピソードもやりましょう。

別におぼえておかなくても良いことですが、トリケラトプスという単一の属の中に10以上にものぼる種が内包されていたことがあります(キャサリン・フォスター博士の論文によると16種)。

参考までに列挙しますと…

ホリドゥス T. horridus

プロルスス T. prorsus

アルベルテンシス T. albertensis

ブレヴィコルヌス T. brevicornus

ブレヴィロストリス T. brevirostris

カリコルニス T. calicornis

エラトゥス T. elatus

エウリケファルス T. eurycephalus

フラベラトゥス T. flabellatus

ハッチェリ T. hatcheri

オブトゥスス T. obtusus

セラトゥス T. serratus

(…まだあります🤮)

もちろん記載者はむやみやたらと乱立したわけではなく、それなりの根拠をもって新種としたわけですけど、なにぶんにもトリケラトプスは頭のバリエーションがワクワクするほど豊富なもんですし、この手の混乱は古生物の研究黎明期においては蓄積されている知見がほとんどないか、とても乏しいので仕方なかったと言う他ないですね。非常にね。うんうんうんうん。

それに例えば「ブレヴィコルヌス型のあの方」のような表現ができて便利な面もないではないです。

で、最初に述べたように、現在有効とされているのはホリドゥスとプロルススの2種だけです。ホリドゥスはプロルススの約100万年前に栄え、ホリドゥスが時間をかけてプロルススへと移行(系統進化)して行ったと考えられています。

スキャネラ氏らの論文によると、ヘルクリーク層 Hell Creek Formation 下部からはホリドゥス、中部からは中間型、上部からはプロルススが産出するとされていますが、それほどわかりやすく明確に分かれていたということもないと思います(実際例外も知られています)。(その研究では例によってトロサウルス・ラトゥス Torosaurus latus をトリケラトプスに含めて考えられている点に注意が要ります)

「そういう傾向もあるのかな」程度の認識で良いと思います。

中間型もあると述べた通り、両者の形態的な差も絶対なものではありません。10種以上が2種に統合された際には、具体的ないくつかの差異が定義づけられたんですけど、ロングリッチ先生の論文以降、一部の特徴が無視されることが普通になっているフシがあります。

それらを踏まえた上でケラトプスユウタが勝手に主要な種差だと思っている特徴を紹介します!

書いてあるとおり、左がホリドゥスで右がプロルススの頭骨のつもりですが、説明のために違いを強調して描いてます。

ホリドゥスは鼻角が上向きで小さい。 プロルススは前向きで大きい。(赤い⭕️)(ちなみに prorsus は「まっすぐな」という意味でこの特徴に因んでいるようです)

②ホリドゥスは吻部(鼻角とクチバシの間)が長い。プロルススは吻部が短い。(青い線/矢印)

③ホリドゥスはフリルの立ち上がりが急で、縫合線がL字に曲がる。プロルススはフリルの立ち上がりが緩やかで、縫合線の曲がりがなだらか。 (緑色の線)

④ホリドゥスは鱗状骨外縁部のカーブが小さい。プロルススは鱗状骨外縁部のカーブが大きい。(黄色い線)

特に重要なのは①で、ロッキー博物館のキャプションでも種差についてはそれしか書かれてませんでした。

以上を踏まえてようやく展示物の写真をご紹介。

トリケラトプス・ホリドゥス 亜成体

MOR 1120 またの名をゲッタウェイ・トライク Getaway Trike

(ホロタイプのYPM 1820 と逆で記憶してたのは絶対に秘密だ!)

ゲッタウェイ・トライクの頭骨はヘルクリーク層下部の泥岩の中で、ばらけた状態で発見されました。

シトゥー・バット・サッドと比べると両方の上眼窩角が前に伸びています。でも先端がわずかに後ろに反っているので亜成体だとわかります。

トリケラトプス・プロルスス Triceratops prorsus

MOR 2923 またの名を ジョーズ・トライク Joe’s Trike

2007年、ヘルクリーク層上部で映画ジュラシック・パーク3 Jurassic Park Ⅲ の監督であるジョー・ジョンストンさんが発見した頭骨。

無骨でかっこいいのですが、正直保存されている部位的に鼻角しか参考にできないのが惜しいです。ですが、それだけでプロルススなのがよくわかる標本ではあります。

ゲッタウェイ・トライクとジョーズ・トライクが両種の代表として展示されていたわけですが、それについてどう思われますか!

まあ一つ言えるのは、プロルススにしろホリドゥスにしろ、トリケラトプスの偉大性は変わらないという事です。

かつてホリドゥス・プロルスス以外の種とされていた標本についてもいずれ機会があれば紹介したいので、そのうち展示されている施設へ行きたいと思います!

画像に対して文字が多く、いつにも増して旅行ブログ離れしてしまった事を反省しつつ、進み続けます。ずっと。

完(つづく)


参考文献:

Forster, C.A., 1996. Species resolution in Triceratops: Cladistic and morphometric approaches. Journal of Vertebrate Paleontology, 16(2): 259–270.

Longrich, N.R., Field, D.J., 2012. Torosaurus is not Triceratops: Ontogeny in Chasmosaurine Ceratopsids as a Case Study in Dinosaur Taxonomy. PLoS ONE, 7(2): e32623.

Scannella, J.B., Fowler, D.W., Goodwin, M.B., Horner, J.R., 2014. Evolutionary trends in Triceratops from the Hell Creek Formation, Montana. Proceedings of the National Academy of Sciences,111(28): 10245–10250.

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