AMNH #15 世界を征服したトリケラトプス

無限の選択肢があった中、なぜあなたは今そこにいるのか。なぜAではなくBの道を進んでいるのか。説明しようとする程、答えを出すのに時間がかかってしまうかもしれません。ケラトプスユウタです。

今回はAMNHレポートのハイライト、偉大なるAMNH 5116 をご紹介させていただきます。

トリケラトプス・ホリドゥス Triceratops horridus AMNH 5116 は当ブログで幾度となく紹介してきましたし、これからも紹介していくことになるでしょう。なぜなら世界中の様々な博物館にキャストが展示されているからです。

トリケラトプスの頭骨の大きさはよく知られています。じゃあ体全体についてはどうでしょうか?

明確にはわかっていないというのがその答えです。理由は単純に、完全な骨格がまだ報告されていないからです。トリケラトプスは希少度で言えばかなり低い部類、つまりよく骨が見つかる恐竜の一つですが、頑丈さ故に残りやすい頭骨にバイアスがかかっています(普通の動物は逆に頭骨こそ残りにくい)。

こちらが僕が勝手にドイルと呼んでいる AMNH 5116 を含むコンポジットのオリジナルです!

このマウントは2つの州で発見された4個体分の標本で構成されています(キャプションでは6個体と書いてありますが誤植のはず)。AMNH 5116(頭)だけワイオミングで、後はモンタナだそうです。この辺りの話は以前も紹介しましたけどね。

ドイルは1923年にチャールズ・ラングさんによって組み立てられました。

マウントの全長は7.1m。体高(一番高くなっている部分の高さ)は背中の中程で2.3mらしいです。当時では思弁的だけどより妥当と思われる尾椎の数=45個になるように、38個の椎骨が補完されました。後肢の長さは、大腿骨が95cm、脛骨が61cm。

肩口および上腕と前腕の関節は、指先を前に向ける為にちょっとありえない状態で組まれています。このドイルがテンプレなので多くの施設でこういう風に組まれています(それと比べたら豊橋のドイルの方がまだ自然かも)(でも頭低い位置の方が個人的に好み)。

キャプションには、「以前は鈍足の動物と思われていたが、最近の研究では猛烈なスピードで走れた」というような事が書かれていましたが、僕は反対意見です。足首が曲がらない構造で跳躍走行できないし、脚も太短いので。もし高速で走れたとしたら、ただでさえ無敵なのに鬼に金棒が過ぎると思います。

ドイルから離れまして、こちらの巨大な頭骨!

別のトリケラトプスです。

AMNH 970

1902年にブラウン先生がモンタナ州のヘルクリーク層で採集したもの。

「トリケラトプス・セラトゥス」“Triceratops serratus” として知られていたレジェンドです。現在ではホリドゥスと思われています。serratus は「ギザギザした」の意味。この展示では確認できませんが、“セラトゥス”は頭頂骨の正中線上に連続した骨の突起があり、それが種の独自性とされたらしいです。この構造の有無は成長段階か個体差という事がわかっています。

角を欠いた標本でしてその関係か、このように下側(腹側)を向けて展示されています。

長さは1.8mもありますが、亜成体と思われます。

巨大なシールドのようなフリルが頭骨の大部分を占めていますねー! とても良く保存されています。

おそらく首の筋肉がフリルの裏側のかなり上の方(この画像でいうと下の方)に付着していたと思われます。かなり太い筋肉がつくことになりますが、大きくて重い頭を支えたり時に振り回すには必要な規模ですよね?


白亜紀に置いてきた物もあります。今も引きずっている化石もあります。どうやって荷物を抱えて行くか、一緒に考えましょう。大きなトリケラトプス級なのか、小さな昆虫級なのか、あなた次第です。