骨格(復元)に独創性は要らんのですよ(・∀・)
山本聖士
どうもケラトプスユウタです。今回はロッキー博物館の展示物紹介はお休みして、9/1の山本聖士さんの恐竜復元教室 アズダルコ類編に出席させていただいたのでそのレポートをやります。
【全体のお話】
アズダルコ類 Azdarchidae は白亜紀末に栄えた翼竜類の一分類群で、ケツァルコアトルス Quetzalcoatlus などの大型翼竜を内包する。
アズダルコ類の翼面積はふつうの鳥類より広い。
先端よりも付け根側の方が長い翼はサーマルソアラー(熱上昇風を捕らえて高度を稼ぐことで広範囲飛行をする動物)の特徴。
世に出回っている図は先の方が短く描かれすぎ。
第4指が長く、1〜3も長いが、1〜3は靭帯でぐるぐる巻きで、実際に体重を支えていたのは4だけ。
前肢が長いので上体を起こし気味で、地上姿勢で胴体は水平ではない。
後肢は前肢と比べると短いが、他の翼竜よりは長く、地上での姿勢が比較的高い。
翼の付け根が足のどのあたりまであったかは不明。皮膚印象は知られていない。
半世界的に化石が出ている(どこにでもいた)。空を飛んで分布を広げた。
鳥類のバイオロギングの研究から大型翼竜は飛べなかったという説が提唱されているが、十中八九飛べた。飛ばないなら地上では邪魔でしかない翼が退化するはず。
プテラノドン Pteranodon (画像) やランフォリンクスRhamphorhynchus (非アズダルコ類翼竜)は第4指が著しく長いタイプで、それらと比較して第4指が短い=飛べないとは言えない。むしろアズダルコ類の第4指は標準的な長さ。長く発達している部分が違うだけ。
翼竜類の各タクサはトサカだけでなく翼のプロポーションでも区別される。ケツァルコアトルスのプロポーションは翼竜の中では標準形。
ケツァルコアトルス.sp として知られる亜成体の標本は(パーツがたくさん)出てることは出てるけど潰れている。
骨は含気骨。鳥よりも含気化が進んでいる。鳥はある程度の大きさになると骨よりも羽の方が重くなるが、翼竜の骨も同じくらい軽量化されている。
アズダルコ類は首が長い。歯をもっている翼竜は首が短い。コウモリもみんな歯をもっているから首が短い。歯を失ったおかげでトサカなど、頭部を工夫できるようになった。
プテラノドンは見かけほど重心は前寄りではない。
前の方に重心があると飛ぶ時の安定性が高くなる。
ケツァルコアトルスのトサカの形は証拠がない。
全体的に遠位にある物は軽い構造。
首はそこまで柔軟ではない。頸椎一つ一つの関節には上下方向の柔軟性がない。
首は頭に対してほぼ90度で関節している。首を少し下げると口先が地面につく構造。
今あるアズダルコ類の復元は頭骨がでかすぎ。
エサに関する証拠は何もない。嘴をピンセットのように使って魚や甲殻類を捕まえたのかもしれない。
こういうクチバシで何ができるだろうと考えることが重要。
胴体を堅固にするためのカゴ状構造として腹肋骨があるので、腹は膨らむ構造ではない。そのためそれほど大きな獲物は食べなかっただろう。
胴体だけでヒトのボリュームを超えているので、推定体重70kgは軽すぎる。でも見た目よりはずっと軽い。
陸上でティラノに噛まれたら一撃で死ぬ(・∀・)
ジェジャンゴプテルス Zhejiangopterus は首の長さがケツァルほどではない分頭がでかい。
首の長さは摂食と関係ある。
鳥類も骨格を見ると前方が重そう。
首を太くするのは面抵抗を増やすので考えづらい。現代の首の長い鳥もその首は細い。
脚が短く貧弱なのは地上での活動性を捨てて飛行に特化した証。
アズダルコ類の子供は無能で、おそらく親が子育てをした。(プテロダクティルスは生まれてすぐ自立したと言われるが、すぐ飛べたわけではなく樹上生活をしていた(?))
派生的な翼竜ほどランフォリンクスのような基盤的翼竜類と比べて胸骨が小さい。
胴椎の上の方にくぼみがあって肩甲骨に関節するという他に例を見ない構造をしている。普通肩甲骨は他の骨に関節しない。
強固なカゴ状構造という意味では翼竜が頂点を極めし存在で、胴体は全くと言っていいほど動かない。
広背筋はめっちゃ分厚い。それが翼をもちあげるときに使われていたのか、下げるときに使われていたのかはわからない。鳥類は翼を持ち上げる動力も胸側で担っている。翼竜は上下(背と胸)に均等に筋肉が配置されている。
鳥類は、大腿筋という飛行のためには邪魔になる重りを持っているが、翼竜は歩行器官と飛行器官が同じなので、必要以上に筋肉を胸につけなくて良い。歩行器官と飛行器官が同じである分、地上での機動性は鳥類に劣る。
ケツァルコアトルスは飛行生物として限界のサイズ。ケツァルコアトルスより大型化するとなると内燃機関やジェット噴射で飛ぶか、気嚢に水素やヘリウムを充填させるしかない(・∀・)
翼膜は羽毛と違ってくるくる巻いてコンパクトにできる。
首が長い翼竜が現れたのは、手首が長いものが現れて以降。
脚の自在性が高く、足で身繕いできたかもしれない。
飛ぶ時寒いので、羽毛はおそらく生えていた。体重100kg程度の哺乳類にも毛があるので保温面での不自然はない。
翼先の翼面積は広い方が翼面荷重(翼に加えられる単位面積あたりの重量)が下がるので、広い構造だった方が有利。つまりそう復元した方が好ましい。
【頭部】
視葉は鳥類と比べても大きく、目が良かったと思われるが、派生的な翼竜は眼窩が小さく、目を必要最小限のサイズにとどめている。
ハツェゴプテリクスの頭部は丸っこく描かれることが多いが証拠はない。
ケツァルコアトルスは下顎が他の翼竜に比べると並外れて細長い。幅広く作られている復元頭骨があるがそれは誤り。
翼竜のトサカの構成要素は種類によって違うが、いずれも骨の外形よりは大きく発達していたはず。
ケツァルコアトルスは未成体の頃からトサカが発達している。
目が低い位置にある。それが重要な特徴で、おそらくアズダルコ類の共有派生形質。そうなっている翼竜は他にいない。
現状アズダルコ類の頭骨で参考になるものは二つ(ジェジャンゴプテルスとQ.sp.)しかない。基本的に関節ががっちり癒合していてあそびがない。下顎も爬虫類本来の骨は全て残っているが、ほぼ一つの骨だけで構成されている。
【首】
翼竜は首を鋭いS字に曲げることはできなかった。彼らの首の関節突起の構造は上下に板状構造が重なっていて、サギのように曲げる動きは不得意。左右方向の柔軟性はある。
ケツァルコアトルスは両眼視をせず、透明度の低い水中に嘴を突っ込んで触れた生物を捕まえる狩をしたかもしれない。
頸椎は第1と2が完全に癒合している。よくキリンと比較されるが、頸椎の数で言うとそう。
【前肢】
肩甲骨と烏口骨は完全にくっついて肩甲烏口骨になっている。
鳥類同様翼を下ろした時に水平より下になるのは手首より先だけ。上腕をそのまま下げることは構造上できないし、もし飛行中にそれをやったら揚力を失って落ちる。
翼竜の肩甲烏口骨のゴツさを見ると鳥類のそれは大したことないように見える。
第4中手骨と第4指が重なるくらい第4中手骨の関節が深く曲げられる。
足跡からすると前足の指は横向きで、第3指は後ろ向き。1、2は先端しか接地していない。
ニクトサウルス Nyctosaurus (という翼竜)は高所から飛び降りて落下スピードで揚力を稼ぐと思われる。アズダルコ類は肘から先の筋肉群を使って歩いていた。ウィットン氏の印象的な絵が誤解を生んでいるが、普通はホッピングではない。
足跡の左右幅は前肢と後肢で差がない。肘をガニ股のように開いて歩くのは間違い。
地上では肘は側方向き。肘をまっすぐにすることはできない。飛べることによって制約を受けているから。上方にはよく動かせる。
第4中手骨が長く伸びている。それが背の高さを稼いでいる。
指先で立っていたのは確実。指先は背面に反らない構造。
初期翼竜は爪が鋭いが、アズダルコ類は既にそういう感じではなくなっている。体幹膜を支える突起も退化している。
翼の可動域は鳥も翼竜も変わらない。ってかある程度は同じじゃないと物理的に飛べない。
皮膜の痕跡はアズダルコ類からは知られていない。翼全体の痕跡が残っている翼竜は、ジュラ紀の小型のものだけ。一番よく知られているのはランフォリンクス。
第4指の翼膜は細長かったはず。斜めにコラーゲン繊維が走り、畳みやすい構造になっている。鳥の羽軸のようなもの。この多数の芯で構成された翼は相当破れにくい構造。死んだ組織である鳥の羽毛と違って血管が通っているため、傷ついても早く治る(昔から言われていたこととは逆)。
地上で邪魔にならないように相当小さくたためる。
上腕と下腕は死ぬほどゴツい。肘と手首がゴツいので普通のサーマルソアラーみたいに飛ぼうと思ったら抵抗を生みやすい作り。動翼であり、ミズナギドリのような華奢で長いグライダータイプの翼ではない。
飛んでいる時に指を前に突き出している復元があるが、翼を広げると指は内側に隠れる構造だった。
飛膜には毛が生えてない方が好ましい。
【後肢】
足裏は地面にべったりつく。
アズダルコ類は骨盤の関節が水平で、後肢は後ろに流すしかない。
ソルデス Sordes は足首まで翼膜がある。
【胴体】
胸郭は高さもあるけど幅もある。鳥類は幅はなく、明らかに高さの方がある。
胴体は幅がないように描かれることもあるが、そんなことはない。このあたりはコウモリとも違う。翼竜は逆三角形(ドリトス)の体型。
以上だばーろー