恐竜王朝 Dinosaur dynasties #7 恐竜時代の支配者 進化するモンタナのトリケラトプス族

いつかこの場の挨拶で失言するんじゃないかと怯えているが怯えているうちはやらかさないと高を括ってもいる男、ケラトプスユウタ!

今日で「恐竜時代の支配者 進化するモンタナの恐竜たち」の展示物紹介は最終回です。

さて、トリケラトプス Triceratops もまたアクリスタヴス〜ブラキロフォサウルスのように漸次進化を遂げた動物として紹介されていました。つまりトリケラトプス・プロルスス T. prorsus からホリドゥス T. horridus に時間をかけて変わっていったという解釈です。

トリケラトプス・ホリドゥスの亜成体とされるMOR 1120。ヘルクリーク層下部。

短い鼻角、鼻角と吻骨の間の段差(くびれ)、長い上眼窩角、急激に立ち上がるフリル…完全無欠のホリドゥス。ヘルクリーク層のトリケラトプスの属差を説明した論文でホリドゥスの代表として扱われるだけのことはありますな(参考画像)。

モンタナ産の明確なホリドゥスで、この標本ほど完全で美しい物は僕の知る限りでは存在しません。

亜成体とされる根拠は上に反った目の上の角とホーンレットが尖っている事と言われてて、僕は賛成。

ホリドゥスと来たら次はプロルスス。

※こちらのお写真はアキヒコさんのご厚意で頂戴したものです。なぜなら僕が撮り忘れていたから!(アキヒコさんありがとうございました)

MOR 2878 実物

こちらも大きな鼻角、鼻角と吻骨の間の狭さ、短めの上眼窩角、緩やかに立ち上がるフリルとプロルススらしいプロルスス。左右からの圧縮を受けちゃいますがね。

トリケラトプスはホリドゥスとプロルススの中間型のような個体も知られていて(ヨシズトライクもそうですが)、はっきりしない標本が多いのですが実際層序的にも中間期くらいの地層(ヘルクリーク層中部)から見つかるもののようで、進化が連続的なので線引きが難しくなっているんですね。(まあ進化ってそういうものですし、線引きをするのは我々が理解しやすいようにするための恣意的な行為ですし)

キャストとはいえ貴重な標本に乗るケラトプスユウタ(乗ってない写真がなかった!)

このニスで塗りたくられたようにテカっているトリケラトプス・プロルススは MOR 004 。ご覧の通り上下に圧縮されていてブサイクですが、サイズが大きいのと太短い上眼窩角、広いフリルなんかはカッコいいです。

かなり老成した個体と思われますが、なんども言うようにホーナー博士の息がかかっていて「トロケラトプス仮説」に基づいた展示(この後も成長してトロサウルス型に変わる余地のあるライフステージとして想定されている)なので、キャプションでは亜成体という扱いでした。

最後の展示物、何をトチ狂ったか貴重な MOR 981 の実物を(またしても)アメリカから日本まで輸送した人々がいる証拠が横たわっておりました。ええ、ええ、ええ。

トロサウルス・ラトゥス Torosaurus latus

先述の仮説のため、キャプションではトリケラトプス(ただし何か(トリケラトプス属の別種であることに?)配慮してか種小名まで書いてなかった)

フリルの左半分がごっそり失われているものの迫力はご健在です。


というわけでMOR(というかホーナー氏)のかっこいいまでの自説ゴリ押しに胸焼けを覚えつつも、改めて見るとすごい恐竜たちが熊本くんだりまで来てくださったもんですよ本当に。御船町恐竜博物館にはこの調子で特別展を開催して行って頂きたく思います。


そしてまた自動車で20時間かけて帰るのですが、その前に熊本城へ寄りました。熊本市内に聳えていた熊本城が大打撃を受けた事はよく知られています。

例えは悪いですが怪獣に破壊された大坂城を思い出しました。ゴモラに。ウルトラマンの。

言うまでもなく、怪獣はフィクションですが災害はノンフィクションです。この城には以前一度訪れた事がありましたが、見る影もありませんでした。噂通り、城をはじめ塀といった建造物はどれも大きなダメージを受けて営業を停止していました。再建には20年かかる見込みだそうですが、建築会社の方は「必ず再開させます」と力強く話してくれました。その言葉通り、再建に向けて足場を組んでの作業に追われていました。

帰りの車内でヨシズトライクやMOR 981、アクロカントサウルスの威容を想いました。気高い姿に感じ入ると共に、熊本の人々の復興への力強い決意を思い出していました。

熊本は元気です。美しい自然が今も僕たちを迎えてくれます。既に地域の大多数の施設は平常に営業しています。

ぜひ熊本を、御船を訪ねてみてください。