バッドランドの恐竜たち 〜北アメリカの1億年〜 パート1

当ブログでは「ロマン」、「冒険」、「夢」、これらの単語の仕様はやむをえない場合を除き、使用を控えさせて頂いております。ケラトプスユウタです。

ご無沙汰しております。

表題の通り、福井県立恐竜博物館、2023年のリニューアル後初の特別展(特展)、バッドランドの恐竜たち 〜北アメリカの1億年〜 の表側へ侵入する事に成功しましたので紹介させて頂きたく思います。よろしくおねがいいたします。

最初に命名された恐竜メガロサウルス(Megalosaurus)。本年2024年はその記載からちょうど200周年ということで、北アメリカのこれまでの恐竜研究を振り返るというような企画展です(支離滅裂)。我々の預かり知らぬ紆余曲折の末、最善の選択としてこのテーマが選ばれたのです。

展示順は中生代を三畳紀から順に進んでいくスタイルです。最初は三畳紀代表で、有名なAMNHのコエロフィシス(Coelophysis)。
ニューメキシコ自然史科学博物館所蔵のゴーストランチのコエロフィシスのボーンベッドから特に密集しているところから切り取ってきたやつのレプリカ。7体含まれています。本当です。
三畳紀はすぐに終わりでジュラ紀後期。画像はトニ(TONI)の愛称で親しまれている、きれいな竜脚類の赤ちゃん。

キャプションではブラキオサウルス(Brachiosaurus sp.)。確かに頭はブラキオサウルスとして復元されているようです。

「世界最大の恐竜博2002」では頭がカマラサウルスになっているバージョンの標本が見られたものです。またブラックヒルズ地質学研究所の商品ではディプロドクス(Diplodocus)になっています。議論が続いていたようですが、福井県立恐竜博物館によると現在はブラキオサウルスという事で落ち着いているそうです。

「巨人たちの大陸」の展示。東海大学の古いディプロドクス(左奥)とパレオサイエンスさんのカマラサウルスの子ども(中央手前)。トルヴォサウルスやスーパーサウルスも見切れていますね。
ディプロはお腹の下が動線になっており、去年惜しまれながら閉館された東海大学自然史博物館のオマージュ展示となっています。
頭骨化石は穴が多いので残りにくく、竜脚類も頭骨が残らないことで定評がありますが、モリソン層では6体分ものカマラサウルスの頭骨が発見されているそうです。このDINO 28 もその一つで、腐敗によってばらけた為、変形を受けずに保存されているという奇跡的な標本です。

カマラサウルスの頭骨。こちらの商品の詳細は BHIのカタログ をご覧下さい。

これら全部ディプロドクスsp. の実物とのことですけど同一個体のパーツという解釈で良いのかな?
福井県立恐竜博物館の出張組、顔馴染みのステゴサウルス(Stegosaurus)
ステゴサウルスの大腿骨(実物)。小さいので成体ではなさそう。第四転子は発達していないですが、吻側に低い隆起があって多少筋肉がつく場所を稼いでいる感じがします。
ステゴサウルス(Stegosaurus sp.)幼体の四肢、腰回り、肋骨の実骨。ステゴサウルスらしい要素は何も残ってない。いやはやいやはや貴重な物を見せていただきました。
某ジュラ紀を代表する鎧竜類。
ケラトサウルス・ナシコルニス(Ceratosaurus nasicornis)実物頭骨。

聡明な恐竜玄人の方々がケラトサウルスについて語られる場合、安直に「角」ではなく歯に注目されるのでしょうが(イジワルなオタク)、僕は鼻の上にある隆起がけっこう獣脚類のこの手の飾りみたいな器官にしては厚みがあるなと感じましたのでこの標本については安直に「角」に注目させてもらいました。とても武器になるとは思いませんけどね。

アロサウルス・フラギリス(Allosaurus fragilis)。こちらも先ほどのステゴサウルスと共に巡業で忙しく活躍されている標本ですね。ステゴとは良いコンビです。
ジムマドセニのホロタイプってこんなに完全だったんですね。気に入りました。
アロサウルス・フラギリス。DINO 2560。UUVP 6000 としても知られます。以前はフラギリスとは異なる種、アロサウルス・アトロクス(Allosaurus atrox)に割り当てられていたものですね。アトロクスは以前は華奢型のフラギリスに対してがっしり型のアロサウルス第2の種として知られいましたが、フラギリスにランプされ、今日ではそのシノニムとなっています。歴史の中だけに登場する学名になったわけですね。恐竜ではよくあることです。アロサウルス・ジムマドセニが有効になった今日では、アロサウルスが北米に少なくとも2種存在したという認識だけは結果的に妥当となっていますね。
サウロファガナクス・マキシムス(Saurophaganax maximus)爪節骨。サウロファガナクスって怪しいわりによく名前は見聞きしますよね。
トルヴォサウルス・タンネリ(Torvosaurus tanneri) 命名200周年のメガロサウルスが模式属となっているメガロサウルス科最大種。親戚の抜擢に目立ちたがりのメガロサウルスも納得、とはならないのでしょうね。
手前のケースにはホロタイプの頭骨要素がいろいろありました。

ゴニオフォリス類アンフィコティルス・ミレシ(Amphicotylus milesi)。

1993年にワイオミング州で見つかってこれまで群馬県立自然史博物館に収蔵・展示されていたのですが、2021年に吉田純輝先生らによって記載されたことで少し話題になった新種のアンフィコティルスですね。

巡業組の華。アクロカントサウルス(Acrocanthosaurus)のフラン。あ、ここから下部白亜系(アントラーズ層とか)の恐竜ですね。

恐竜博2019ぶりのテノントサウルスに襲いかかるデイノニクス。

アビドサウルス(Abidosaurus)の見事に保存された頭骨(実物)。
モアボサウルス(Moabosaurus)のいろんな骨(実物)。アビドとモアボは全身骨格も見れたらより良かったのですが、これだけでもすごいことです。
白亜紀になると装盾類の中では衰退した剣竜類に取って代わるように鎧竜類が台頭してきます。という事ですよね。
北米最古の角竜類(Ceratopsia)、アクイロプス・アメリカヌス(Aquilops americanus)

遥かな時の悪地に埋もれし
北米最古の影、地に残る
角竜の先駆者、アクイロプス
小さき体に大地の野心抱く

鋭き目は、未来を見つめ、
白亜の風感じ、進み続けた
大地に刻むその骨、くちばし、
時の流れに耐え、語り継がれる

暴君の王国広がる前に、
小さな声で大地に囁く、
「私はここに、生命の証。
遥か未来へ、記憶を繋ぐ。」

角を持たぬ、しかし強く、
その存在は歴史の礎。
アクイロプス、風に乗らず、
ララミディアの跡地に蘇る

はい。

続きはまた次回。

それじゃ👋

参考文献:

Berman, David S. and John S. McIntosh. 1978. Skull and relationships of the Upper Jurassic sauropod Apatosaurus(Reptilia, Saurischia). Bulletin of Carnegie Museum of Natural History 8: 1-35.

Carpenter, Kenneth. 2018. Rocky Start of Dinosaur National Monument (USA), the World’s First Dinosaur Geoconservation Site. Geoconservation Research 1(1): 1-20.

Foster, John R. 2020. Jurassic West. Indiana University Press. 

Gilmore, Charles W. 1925. A nearly complete articulated skeleton of Camarasaurus, a saurischian dinosaur from the Dinosaur National Monument, Utah. Memoirs of the Carnegie Museum 10:347-384.

Lay, M. 2018. Norman H. Boss – A Near “Indispensible Man”. History of the NMNH Paleobiology Department. https://wayback.archive-it.org/org-660/20180716194432/https://paleobiology.si.edu/history/boss.html

McIntosh, John S. 1981. Annotated catalogue of the Dinosaurs (Reptilia, Archosauria) in the Collections of the Carnegie Museum of Natural History. Bulletin of Carnegie Museum of Natural History 18: 1-67.

Miller, Ben. 2012. Extinct Monsters: Diplodocus and Camarasaurus. Extinct Monsters. https://extinctmonsters.net/diplodocus-and-camarasaurus/

Telfer, A. 2015. When Camarasaurus Went to Texas. Digging the Fossil Record: Paleobiology at the Smithsonian. https://wayback.archive-it.org/org-660/20180208010003/http://nmnh.typepad.com/smithsonian_fossils/2015/01/camarasaurus-went-to-texas.html

White, Theodore E. 1958. The Braincase of Camarasaurus lentus (Marsh). Journal of Paleontology 32(3): 477-494