絶滅したのは鳥類ではなく鳥盤類だ。その違いをどうかわかってほしい。ケラトプスユウタです。
本展最後の展示区画、『巨大恐竜の終焉』は竜脚類以外の植物食恐竜がメインでたぶん全て福井県立恐竜博物館(FPDM)の所蔵物で構成されていたかと思います。

同年開催の『オダイバ恐竜博覧会』からの続投らしいです。
竜脚類は他の植物食恐竜を凌駕する巨体を誇っていたわけですが、必ずしも中生代の陸上生態系の中で他の植物食恐竜よりも優勢だったわけではないのは御多分に洩れないところだと思います。植物をよく噛んで食べる事に特化したこのチンタオサウルスをはじめとするハドロサウルス類 Hadrosauridae も白亜紀世界で栄華を極めた存在です。

以前、福井県立恐竜博物館(FPDM)のレポートで紹介した記憶がありますが、保存良好なミイラ化石が複数見つかっているハドロサウルス類 Hadrosauridae の中でもかなりよく保存されているもののうちの一つです。
これはレプリカですが、2023年から実物が福井県立恐竜博物館(FPDM)に展示されているものです。とにかく福井県立恐竜博物館がこのレプリカを作ったのが偉業です。グレートプレーンズ恐竜博物館所蔵の実物が期間限定(2033年まで)なのですが、それがすぎても我々はFPDMでこの精巧なレプリカを拝むことができるわけです。

エドモントサウルス・アンネクテンス Edmontosaurus annectens (左)とトリケラトプス Triceratops horridus
トリケラトプスはケルシーの愛称で知られる保存状態も有数の一体(TCM 2001.93.1)の頭骨のレプリカです。ケルシーは完全度の高さのわりにトリケラトプスの中では人気が低い印象があるのですが、やはり化石化の過程で左右から激しく潰されている事が不人気の要因として大きいでしょう。その点は T. Horridus の LACM 59049 と通ずる物があります。
ケラトプス類にしろハドロサウルス類にしろ大型のものほど咀嚼能力が高く、たいへん成功した動物たちでした。
なので、大型草食獣は次々エサを食べ続けなければ生命を維持できないから長々咀嚼なんてしていられないとよく言いますが、そんなことはないのではないかと感じます。
むしろ絶えずエサを食べ続けなければ死んでしまうという問題がつきまとうのは、(高代謝の)小型動物の方ではないのでしょうか。
まさにトウキョウトガリネズミがそうだったはず。
むしろよく噛んで食べる事が、消化効率を向上させ、ひたすら大量に食べ続ける事と同等かそれ以上に生命維持にとってすばらしい効果をもたらすのではないでしょうか。僕は思います。

クリクトンペルタ(クライトンペルタ) Crictonpelta
これFPDMの常設のと同一の標本ですよね?
これ背中の皮骨が剣竜のプレートみたいに立ってるのおかしいらしいですぜ。
元クリクトンサウルス(クライトンサウルス) Crictonsaurus で、展示上の名前が修正されてから(2023年以来) 観るのは初めてでした。

デンヴェルサウルス(デンバーサウルス) Denversaurus
これも常設組の一体なんじゃないかなと思うのですが、同じレプリカを2体所蔵しているわけではないですよね?
元エドモントニア Edmontonia で、展示上の名前が修正されてから(2023年以来) 観るのは初めてでした。
この章ではこの標本のみ回り込んで周囲を観察できる配置になっており、この章の主役のような立ち位置でした。

獣脚類展2025でも紹介した標本です。ち
植物食性だった可能性があるのは鳥盤類だけではない事を説明するための展示。
オルニトミモサウリア Ornithomimosauria は種によってクチバシで植物や節足動物などを食べたりプランクトンを食べていたりしたのではないかと考えられていて、雑食性と説明される事も多いですね。


K/Pgイベントを生き残った恐竜たちの一部が我々の手によってあっけなく消え去ったという事実は、確かに恐ろしい警鐘です。
恐竜類 Dinosauria を提唱したリチャード・オーウェンがモアを原記載したというのは知りませんでしたが、それが本展の「ラスト」に据えられる構成は、確かにこの恐竜展全体を締めくくる象徴的役割を果たしています。共通祖先ルカ L.U.C.A. からモアまで続いていた系統の未来を我々が永遠に奪ったという事実に向き合わなくてはなりません。
2025年頃からアメリカのバイオ企業Colossal Biosciencesが、マオリ族と協力してモアの脱絶滅プロジェクトをスタートさせています。ゲノム編集技術(CRISPRなど)で、キーウィ Apteryx australis のDNAにモアの遺伝子を混ぜて蘇らせる試みです。まだ初期段階ですが、倫理的配慮が問題になるでしょう。
たとえば、遺伝子編集・クローニング・代理出産の試行錯誤の過程で、多数の胚・個体が奇形・病弱・早期死・苦痛を強いられるのは必然です。過去の類似実験(bucardoクローンなど)では失敗率が極めて高く、成功しても肺奇形などで生きられないケースが普通ということが知られています。
生まれた個体も正常な生理が再現できず、生涯にわたり苦しむ可能性が高いと言われています。
また、本物のモアを復活できない欺瞞性もついてまわりますよね。キーウィをベースにした遺伝子操作でしか作れないという事は、それは「モアに似せて改造された遺伝子組み換えキーウィ」でしかないと僕は思います。
これを復活と呼ぶのは詐欺じゃないですかね。絶滅種の尊厳に対する冒涜と言っても良いと可能性があります。皆さんも映画『ジュラシック・パーク』は観たでしょう。
野生動物のアイデンティティを我々のエゴででっちあげるのは、生命の尊厳を踏みにじる “ゴッドごっこ” なんじゃないですかね?
今日、地球上で100万種以上が絶滅を危惧されています。そんな中で既に失われてしまった種のネクロマンシーに投資をする余裕があるなら、キーウィやカカポなどの現存種の保全にリソースを回すべきだと思いませんか。
モアの“復活”は「絶滅させたら蘇らせればいい」という誤った発想を生み、積極的な保全をしようという気概を損なわせること請け合いです。
「ウナギも食い尽くしたら蘇らせますか? 」という事です。種を絶滅させる事は、その種がいなくなる事が最大の原因ではないじゃないですか。再び地球上に絶滅種を誕生させたところで、生態系に人工的に開けた穴は放置されてしまいます。
種の絶滅は個体の死と同軸でありながら比べられないほど不可逆の厳粛な事実であり、我々がそれをなかったことにできるという態度は、責任を不当に軽くするものだと思います。
さらにそうして生み出されてしまった個体は野生復帰させることは、環境保護の観点からタブー中のタブーでないでしょうか。たとえベースとモデルの両方が在来種であっても(遺伝子的な意味での)キメラは、自然物ないと思うんです。そういった個体は、囲い込み・施設で飼育され、せいぜい観光PRの道具になるのかもしれません。まさに『ジュラシック・パーク』シリーズで描かれて来たディストピアです。
加えて、仮に完全無欠のモアが真の意味で復活させられ、それを野に放ったとして、彼らが絶滅した理由は生息地の破壊なんですよね? まず巨大な鳥類が生きられる環境を復旧しない事には、二度目の絶滅を経験させる事になるのは目に見えています。
これらの倫理的理由から、モア復活は決して正当化できないものです。
我々の責任で起きた絶滅。それを技術でなかったことにするのは浅薄な逃げ道です。
気候変動や生息地破壊で、今も多くの種が消えゆく中、モアの絶滅は教訓です。
説教っぽくなってしまいましたが、こんなような話題は今後も尽きないでしょうね。
という事で以下、巨大恐竜展の感想です。
巨大恐竜展を見終えてまず感じたのは、「期待を超える展示ではなかった」という率直な印象でした。目玉であるパタゴティタンを含め、展示されている標本の多くはこれまでに別の機会で見たことがあるものが中心で、新鮮な驚きや強い高揚感は正直なところほとんどありませんでした。タイ産の竜脚類シリーズは比較的目新しさは感じられましたが、もともと個人的には竜脚類という分類群に強い関心があるというわけではないですし、世間一般的な価値観で言っても竜脚類って大きさが魅力であるわけで、いくら実物で学術的価値があったとしても、パーツを陳列されただけではアトラクションとしては弱く感じてしまいました。そうした中で一番印象に残ったのはモサイケラトプスでした。すでに見たことのある標本ではあるのですが、展示の中で改めて振り返と小さいながらに存在感を放っており、今回の会場ではダントツで最高の展示だったと思います。
パタゴティタンの骨格展示については、マウントの設計として、もともとケーブルなどに頼らず自立する構造で造られているので、最初に感じたのはもったいなさでした。やはりマウントは外部から支えられすぎているとその恐竜が印象として弱く見えるものです。ただ、日本で展示する以上はロンドンと違って地震というリスクを無視できませんし、標本自体も借り物であり、その後の巡回展示なども控えている事を考えると、安全性を優先した現在の設置方法はむしろ最善の判断だと感じます。迫力よりも保全と安全を優先するのは、展示として非常に誠実な判断だと思いました。
また全体構成については、「恐竜の巨大化」が一つのテーマとして設定されていたのだろうとは思うものの、会場を回っていると各チャプターのつながりがやや弱く感じられました。過去の展示で使われた内容や標本を再構成した、キメラ的な構成になっている感じで、それぞれの展示自体は良くても、ストーリーとしての流れは少し薄く感じられたように思います。
とはいえ、この規模の展示を実現するためには多くの人の努力が必要だったはずです。大きな骨格を安全に設営し、会期中の管理を行い、そして撤収まで無事故で運営することは簡単なこととは思いません。巨大な標本を実際に目の前で見る機会を作ってくださった関係者の皆様、展示を支えたスタッフの方々には敬意と感謝を表したいと思います。展示を通して動物・化石・自然・科学なんでも良いですが、何かに興味を持つ方が大勢増えた可能性は高いと思います。その意味でも十分に意義のある企画だったのではないでしょうか。
以上です。
それじゃ👋
