恐竜博2019

ここから先は私独りで行く。最後のトリケラトプスが死んだ場所だ。ケラトプスユウタです。

10月4日まで国立科学博物館(以下かはく)で開催の恐竜博2019に行ってまいりましたので、軽くレポートします。

開催概要は公式ホームページをご覧ください👇

https://dino2019.jp

まず出迎えるのはデイノニクス・アンティロプス Deinonychus antirrhopus のホロタイプの左足。

伝説によると、世界対戦中、多くの科学分野と同様に恐竜研究も低迷していたのですが、恐竜ルネサンスと呼ばれる時代が到来して再び勢いを取り戻したと言われています。その恐竜ルネサンスのきっかけとなったのがジョン・オストロム博士が記載したこの標本です。

「恐ろしい爪」を意味するデイノニクスの名付け元になった特徴的な鉤爪(シックルクロー)を備えたパーツです。シックル(鎌)と言うように刃側のエッジがきいているので、飛び蹴りと共に獲物の腹や頸動脈あたりを狙って引っ掻いたのではないかと僕は思うのですが、キャプションでは獲物を切り裂くというより押さえつけるのがせいぜいだったと書いてありました(でも図録の付録のカードでは得意技が「跳び蹴り」になっていたので、主催者側でも意見の食い違いがある模様)。

イェール・ピーボディ博物館 Yale Peabody museum の所蔵物ですが、そこでも展示されていなかった物らしいです。とても貴重な物なのでそこの館長さんも貸し出しを渋ったそうです。情報屋の話によると、展示用に整えた状態で返す事を条件に許可をもらったらしいので、恐竜博2019が終わったらこの状態でイェール・ピーボディ博物館に展示されるようになるのかもしれません。

かはくの真鍋博士は復元骨格やら何やらの後にこれを展示するつもりだったそうですが、それだと誰も見ないという指摘をデザイン屋さん(?)か誰かにされて、その方のアイデアで現在の形になったそうです。

デイノニクスの手。基本的な恐竜の手と違って、手首の骨の近位側の輪郭が丸みをおびている(よく半月状の手根骨と表現されます)ので手首を曲げることができたというのを見せたい展示。鳥の前肢(翼)の骨も手首の部分でこうなっています。

デイノニクスの尾の骨にデイノニクスの前足の爪が挟まっていました…という物。

共食い、ひいては統制のとれた群れで行動していたわけではない可能性を示唆するとの説明でしたが、ちょっと根拠が弱すぎる印象(統制のとれた群れで行動していたとも積極的には思いませんが。証拠ないので)

テノントサウルス Tenontosaurus に飛びかかる二羽のデイノニクスの図

ロッキー博物館編でも紹介した組み合わせですが、クローバリー層で共産する恐竜同士で、実際にまったく同じ産状からも見つかっています。

躍動的で観賞用としてはこっちの方が良いですね。

デイノニクスはかはくの常設の方でもよく観察できるのですが、こっちの方が最近の解釈を取り入れている分妥当な復元のようです。

まあ味は変わらないです。

テノントサウルスは基本に二足歩行の動物で、手の感じからすると四足歩行になることは得意だけどその姿勢で走ることはなかったと思われます。

幻の恐竜、デイノケイルス・ミリフィクス Deinocheirus mirificus のデイケイルス(尋常でない恐ろしい手)。

以前この会場で開催された恐竜博で展示されていたものと同じ物です。その時はオルニトミムス類(ダチョウ型恐竜) Ornithomimidae らしからぬ巨大さに吐き気を覚えましたね(誇張ではないです)。

(どうでも良いですが鏡の正面から撮っているのに撮り手が写り込んでいない(ように見える)という神業)

どうも恐竜ルネサンスから現在までの恐竜研究の歴史をざっくり追っていく流れのようで、恐竜が子育てをしていたという最初の証拠として発表されたマイアサウラ Maiasaura

デイノニクスに引き続きロッキー博物館の推し恐竜ですけども。

(リザードマンみたいなやつは割愛)

最近も紹介したばかりですが、シノサウロプテリクス Sinosauropteryx シソチョウ Archaeopteryx 以降で初めて発見された羽毛恐竜。

鳥のような短い尾椎をもち、尾の先に扇状の尾羽を発達させていたことがわかっているオヴィラプトロサウリア Oviraptorosauria カウディプテリクス Caudipteryx

この属名もそれにちなんで「尾の翼」を意味します。

デイノニクスと同じドロマエオサウルス類において、始めて羽毛の証拠を提示したミクロラプトル Microraptor

アンキオルニス Anchiornis は羽毛の色素の研究がされている恐竜。ちなみに大部分が黒で一部赤と白だったと言われています(研究内容が難解すぎてその結論の妥当性がわかりません)。左下には魚類化石。

植物食性の基盤的テラヌラ類 Tetanurae チレサウルス Chilesaurus

福井県立恐竜博物館の獣脚類展のレポートでも言った気がしまけど、他にも植物食と思われるテタヌラ類は多く知られているものの、オルニトミモサウリア Ornithomimosauria やオヴィラプトロサウリア Oviraptorosauria 、テリジノサウルス類 Therizinosaurid のような白亜紀のコエルロサウリア Coelurosauria ばかりでした。その中でチレサウルスはジュラ紀のテタヌラ類の基盤的位置付けのものとしては初めての植物食恐竜という点でユニークな存在です。今んとこ。今後の調査でチレサウルスに似た恐竜がよく知られるようになってくるかもしれません。

でもっていよいよ次は小林快次博士の輝かしいキャリアの中でも一際華やかな大発見の一つ👇

デイノケイルス 頭骨と足

先ほど幻の恐竜として腕だけ出しましたが(会場の順路通りに)、実はこの頭と手は小林さんの調査とは別に盗掘され日本に密輸され、ブラックマーケットに出され、ドイツに渡った後にモンゴルに返還されるという紆余曲折を経て今日日の目を見るに至っているという曰く付きの物。

この顛末は小林さんの「未知の恐竜を求めて(幻冬社)」に詳しいです。

これは胴椎で小林さんたちのチームが発見したものの一つ。

そして今回のために組み立てられたのが目玉展示のこのマウント。

永遠に腕だけの存在だと思っていたデイノケイルスのほぼ全身の骨が僕の生きている間に見つかると思っていなかったので僥倖です。

このデイノケイルスは今日知られるようになっている要素が発表される前々からその冗談みたいなサイズによって冗談めかして妖怪だと言っていたのですが、新たに見つかった部位や特徴の組み合わせからまぎれもない妖怪だったと確信を強めました。

鳥に近い部類の獣脚類で、二足歩行でありつつそんじょそこらの竜脚類(巨大恐竜と言われるものはだいたい竜脚類)よりも大きいだけでも十全に妖怪ですが、カモに似たクチバシ、帆のような棘突起などの組み合わせが独特すぎてメディアでもヘンテコ恐竜と言われていました。いや、実際ヘンテコと言わざるを得ません。

カモのようなクチバシと言えばこのサウロロフス Saurolophus のようなハドロサウルス類がいますが、恐竜の中ではだいぶ遠縁です。

手は恐竜には珍しく武器になりそうな構造ですが、爪はテリジノサウルス類のもののようにブレード状にはなっていません。

左膝に胃石の塊。ケラトプス類 Ceratopsid やハドロサウルス類のように咀嚼するタイプの口ではなく植物をクチバシでちぎって丸呑みにし、内臓内でこの石を使って物理破壊していたと思われます。

それにしても産状通りとはいえマウントの膝に動物の遺骸以外の物をくっつけたままにするのは良いのだろうか🤔

典型的オルニトミムス類としてアンセリミムス Anserimimus

ホロタイプ(確かアンセリミムスの既知の唯一の個体)の実物。

普通のオルニトミムス類をみると、デイノケイルスがいかにけったいなオルニトミムスかわかるんです。

(首が左右方向にS字なのはなんか嫌だ)

未記載の新種(確信) テリジノサウルス類 実物

普通のテリジノサウルス類の前肢は3本指ですが、この標本は2本。現生のナマケモノでも種によって指の数に変異があるのでおかしくはないですが、なぜ退化器官でもなさそうな構造の数をわざわざ減らしたのかとても気になりますね!

そしてまた素晴らしいのが末節骨(指先の骨)の先にケラチン質の爪が保存されていることです。これで生体における爪の長さがわかるのですが、骨よりも1.4倍は伸長されているように見えます。角竜 Ceratopsia の角やトゲの復元について考える時も、1.4倍盛っても言い訳が立つということです。

タルボサウルス Tarbosaurus は待ち伏せの姿勢らしいですが、デイノケイルスに怯んでいるようにしか見えません。

当時のネメグトにおいて、恐らくデイノケイルスの天敵だったはず。テリジノサウルス Therizinosaurus、デイノケイルス、ギガントラプトル Gigantoraptor、ネメグトサウルス Nemegtosaurus、サウロロフス、サイカニア Saichania などなど、ケラトプス類不在で植物食の大型獣脚類がのさばっていた分、タルボサウルスはティラノサウルスに比べてディナー候補のバリエーションがカラフルな感じがします。

(ヒロくんの指摘でギガントラプトルはネメグトにいたがどうか怪しいので消しました)

マクロエロンガトーリトゥス Macroelongatoolithus

つまり大きくて長い卵。

比較対象物が写ってないのでアレですが、かなり大きな輪を描いた配置です。これを産んだ動物はかなり大きなコエルロサウルス類だと思いますが、どのように保護したのかなど想像力を掻き立てるような展示です(放置と抱卵の中間と言われていますが)。

オルニトミムス Ornithomimus 幼体

羽毛を残した恐竜化石としては北米初のもの。この発見によってオルニトミムス類は羽毛を生やす復元が常識になっているフシがあります。

そういえば、少なくとも自分で身繕いできない箇所には羽毛生やさなかったと僕は思います。あとある程度のボディーサイズの種類/成長段階では保温機能としての羽毛は必要ないと思うので、NHKスペシャルのデイノケイルスも個人的にはモフモフ過ぎると思っています(ベニヘラサギを元にしたというピンク色も、サギは飛べるから目立つ色でもそんなに不利にならないから良いけどデイノケイルスは飛べないし、ピンクのような鮮やかな色はコストがかかるのでサイズ的にも問題があるという観点からしてもいただけない)。

まあ良いや。

オヴィラプトル類 Oviraptoridae のカーン Khaanロミオ Romio

同じくジュリエット Juliet

血導弓(尻尾の下の骨)の長い方のロミオがオスで、短い方(卵を産むためのスペース確保という根拠)のジュリエットがメスとのこと。骨髄骨ほどの説得力はないですが、だいぶそれっぽくはあります。やっぱりオヴィラプトル類、少なくともカーンはつがいで生活していたのでしょうか。

それにしても状態が美しいですね。

なんだっけこれ。とりあえずカーンのそれに迫る保存状態のオヴィラプトル類。(ジャケットはなんかインスタント感がありますけど)

このあと石垣先生のゴビ砂漠の恐竜の足跡の展示(撮影禁止)がありまして、それから日本というか、北海道むかわ町穂別のコーナー。

ムカワリュウ Kamuysaurus japonicus

ホロタイプ 実物。

こちらも小林さんたちの大いなる偉業の一つ。北海道の白亜紀後期の海成層から発見されたハドロサウルス類 Hadrosaur でエドモントサウルス族 Edmontosaurini とされています。

日本の恐竜化石と言えば断片的な物が(残念ながら)当たり前だったのですが、ついに数メートル級の恐竜の全身骨格が知られるようになったのが快挙です。

天井に鏡があって、全身骨格が拝めるようになってるのは小林さんのアイデアだそうです。撮影者も写ろうと思えば写り込めますね。

先月、新属新種として記載されたばかりなので日本で最も旬の恐竜の一つです。

固有の特徴は北大のプレスリリースに詳しいです。

そして造られたのがこのマウント。命名に際して頭部が挿げ替えられたそうです。

ホベツアラキリュウ または ホッピーの名で呼ばれる海棲爬虫類 エラスモサウルス類 Elasmosaurid

ムカワリュウと同じくむかわ町穂別産。実際に見つかっているのは胴体要素と四肢。

ホベツアラキリュウの実骨。

恐竜博でこういった恐竜と同時代の非恐竜動物が展示されるのは珍しいと思います。

こちらもむかわ町穂別産の海棲爬虫類。モササウルス類 Mosasaurid フォスフォロサウルス Phosphorosaurus

荒れクトロさんからご指摘いただきました。

後述のフォスフォロサウルスと間違えましたが、和歌山県有田川町鳥屋城山から出た未記載のモササウルス類 Mosasaurid

産状のレプリカ。

こっちがフォスフォロサウルス Phosphorosaurus の復元骨格。むかわ町穂別産。

モササウルス類としては初めて両眼視が示唆されたものとして話題になりました。

ケラトプスユウタとはゆかりのある鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)の離島、上甑島(かみこしきじま)(姫裏層群、マーストリヒチアン)産のハドロサウルス類の大腿骨。

日本の中生代の恐竜化石としては最も新しいものです。

(ちなみに図録中の写真でこの標本をクリーニングしている城山勝さんは知人で、載ってると思わなかったので笑ってしまいました)

だいぶ前にも紹介しましたが、同じく甑島列島に属する下甑島(しもこしきじま)からはケラトプス類の歯、獣脚類の歯、竜脚類の脚要素が発見されています。

スコッティー Scotty

2016年のかはくの恐竜博でも展示されていたカナダのフレンチマン層 Frenchman Formation 産ティラノサウルス Tyrannosaurus ですが、最近大腿骨の研究から、知られている中で最大のティラノサウルスということになっています。

(2019年9月23日 地層を間違えていたのでヒロくんのご指摘により訂正)

最後の恐竜。トリケラトプス Triceratops の下顎。

EPV.103383

モンタナのヘルクリーク層 Hell Creek Formation 産。実物。

当展唯一の角竜要素。

キャプションによるとK/Jp境界(白亜紀と始新世の境界)のすぐ下(隕石衝突の数百年前)から発見されているとのこと。

トロサウルス Torosaurus の可能性もゼロではないと思います。トリケラトプスだとすれば層序的にプロルスス T. prorsus かな。

一方こちらは境界からすぐ上で発見されている魚類。新生代最古の動物化石の一つとも言い換えられますね。

イクティオルニス Ichthyornis

白亜紀後期の鳥群 Avialae。

歯のあるカモメみたいな姿で描かれるあの恐竜。

パタゴプテリクス Patagopteryx

前肢(翼)が小さいせいでより基盤的なコエルロサウルス類にも見える鳥群。

白亜紀後期の飛ばなくなった恐竜。鳥類の進化史上でなんども飛ばないものが出現したことを物語っています。

ヴェガヴィス・イアーイ Vegavis iaai

南極産の鳥類 Aves。

白亜紀にはすでに現生のカモに似た鳥が存在していたという事でニュースになったのをおぼえています。


とまあこのように貴重で面白い標本が展示されているので、まだ行かれていない方は開期中にぜひ足を運ばれることをお勧めします。

それじゃ👋

恐竜博2019” への1件のフィードバック

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