恐竜博2023 #2 ズール

国境ないね。恐竜に。ケラトプスユウタです。

ズール・クルリヴァスタトル Zuul crurivastator。それは、アメリカ合衆国モンタナ州の白亜紀後期カンパニアン期の地層であるジュディスリバー累層から発見された鎧竜類 Ankylosauria アンキロサウルス科(類) Ankylosauridae に属する恐竜の一種である。ウィキペディア風ですが引用ではないです(どのみち初版投稿したのケラトプスユウタですけど)。

本展の主役恐竜、ズールの頭。カナダのロイヤル・オンタリオ博物館(ROM)が貸してくださった貴重な標本です。

口を閉じても前方に隙間ができるような形になっていると思われるかもしれませんが、上下方向の圧力を受けて上顎が変形しており、鼻先がまっすぐになってしまっている関係でそう見えます。本来は上くちばし(前上顎骨)の縁が下くちばし(前歯骨)の縁に合うような形だったと思われます。とはいえ素晴らしい保存状態で、頬骨突起も大きくてかっこいいです。

ズールの胴体としっぽの実物。しっぽが左に向いています。

当展のキャッチコピー「今度の主役はトゲトゲだ!」の“トゲトゲ”を担うものです。鎧竜類が日本の特別展の目玉展示を担うのは僕の知る前例がなく珍しいですが、この標本はそのくらい特別で科学的にも経済的にも形而上学的にも影響力が大きい存在と言えます。いろんな意味で再度来日する事は難しいと思われます。これら以外に左わき腹のブロックも知られているのですが、それ以外は発見されたブツが全て来てくれたみたいです。

全長は約560cm, 体長は300cmくらいでしょうか。鎧竜なので背は低く小顔ですが、背中が広く、生きている姿はそれはそれは迫力があった事でしょう。

皮骨がよく保存された背面。これ自体がバッドランドのよう。

腰付近の折れた皮骨はテールクラブによる種内闘争の証拠として扱われていました(Arbour et al., 2022)。個人的にはあんな物騒かつ尾の先についている物を身内に使うのかなと疑問も感じますが……..なんとも言えません。

この論文で図示されていた状態からさらに剖出が進んでいて、母岩に隠れていたトゲが新たに観察できるようになっています。これによって未だ謎の多いアンキロサウルス類の皮骨の配置についてかなり研究が進む(進んだ)ことでしょう!

胴体部の腹側。実物は下向き(うつ伏せ)に展示しているのでレプリカで裏側に相当する部分を見せてくれるという親切展示です。

ROMで展示されていたズールとゴルゴサウルスのマウント(図面では『恐竜対決バトル』と書かれていました)は、ROMの展示(参考画像)同様、ゴルゴサウルスの脛の真後ろにテールクラブが来るような配置になっており、まさに後ろからクルリヴァスト(脛破壊)をする直前の様を表現しています。

余談ですが、このズールの大部分は、別のアンキロサウルス類 Ankylosauridae であるエウオプロケファルス Euoplocephalus だかスコロサウルス Scolosaurus だかのよくあるマウントの頭と皮骨を付け替えた代物だそうです。

ゴルゴサウルスの方はロイヤル・ティレル古生物学博物館で拝んだのと同じタイプだと思います。そこでもこの手の鎧竜を襲っていました。

歯が通るはずのない所を噛もうとする無謀な若者。現在のペリカンもキリンを食べようとするくらいなので、このくらい蛮勇なゴルゴサウルスもいたかもしれませんね🤓

マウントのゴルゴサウルスの実物の方。ROM 1247 という方で一部では有名なようです。

変形が少なく立体保存が良好で美しいです。涙骨の窪みと鼻骨の血管神経孔に、生命の実在を禁じ得ません。

きりが良いので今回はここまでにします。

それじゃ👋

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参考文献:

Arbour V. M., Zanno L. E., Evans D. C., 2022. Palaeopathological evidence for intraspecific combat in ankylosaurid dinosaurs. Biol Lett, 18 (12): 20220404 .