飯田市美術館 特別陳列 驚異の部屋 -長谷川義和コレクション-

今日は2026年9月3日です。ケラトプスユウタです。

2023年9月17日に飯田市美術館へ侵入し、『特別陳列 驚異の部屋 -長谷川義和コレクション-』という展示会を拝見させていただいたんです。レポートが遅れた事に特に理由はありません。

関東からレンタカーで走って行きました。

飯田市美術館。よーく見ると常設のスピノサウルス Spinosaurus が見えます。

飯田市美術館は地方都市の街中にあるんですが、ちょっと高台の歴史公園みたいな場所に建っている博物館という感じです。飯田城跡の二の丸跡らしいです。

企画展示室はワンフロアで、現生有羊膜類のアタマの骨を中心に、たくさんの長谷川義和先生のコレクションが展示されていました。

よくご存知の方も多いかと思いますが、長谷川善和先生は、日本で恐竜類 Dinosauria を含む大型脊椎動物の化石研究が盛んではなかった時期から、業界を長い間牽引されてきた大先生です。フタバスズキリュウ Futabasaurus suzukii の研究で有名ですが、日本列島の哺乳類化石の研究を長年にわたって進めて来られた研究者としても知られています。

恐竜類ディプロドクス Diplodocus

この時の僕は後頭顆を撮りたかったようです。

アメリカアリゲーター(ミシシッピワニ) Alligator mississippiensis

見栄えのするハモ Muraenesox cinereus の頭

歯は付け根側が太くなっているんですね。

フタバスズキリュウの実際に産出した頭(吻側半分)。

1968年、鈴木直さんから連絡を受けて現地へ向かい、その後の大規模な発掘や研究を中心となって進めたのが、当時国立科学博物館の研究員だった長谷川先生です。

発見から38年後の2006年、フタバスズキリュウは佐藤たまき先生らによって新属新種 Futabasaurus suzukii として記載され、長谷川先生も共著者となりました。

フタバスズキリュウのアーティファクトで補完された頭。

ケヅメリクガメ Centrochelys sulcata 腹側

スマトラサイDicerorhinus sumatrensis

下顎の一対の門歯が前に出ているのが面白いです。オス同士の闘争の際には、頭の角だけでなく、この鋭い下あごの門歯で相手に切り傷を負わせて武器として使うとか。

イボイノシシ Phacochoerus aethiopicus

牙はこんなに発達するものなんですね。「なんと偉大な牙だろうか!」

ニアラ Tragelaphus angasii

生きるために伸びた角が、死後は我々が生き物を知るための標本になる。そう思って見ると、この角はずいぶん遠くまで伸びているように見えてきます。

エゾシカ Cervus nippon yesoensis

詳しくないのですが、この個体は第1枝角の吻側がノコギリ状になっていて個性的なように感じたのですが、これは普通に見られるものなのでしょうか?

ダツを彷彿とさせる長い吻部をおもちのムカシクビナガイルカ Allodelphidae sp.,indet. なる鯨類の化石。

「クビナガ」と言いますが、生体でも(一部の)プレシオサウリア Plesiosauria のように頸が長かったのか、頸椎が胸椎として振る舞っていたのか。それが気になりました。

さて、この企画展は単に長谷川善和先生が集めた化石を陳列しただけではなく、長谷川先生が古脊椎動物学にどう取り組まれていたのか、その研究思想そのものまで展示しようとしているのを感じました。

展示によると、長谷川先生は発掘、プレパレーション、ひいてはレプリカ作製も研究工程に含められています。教科書的にはプレパレーションは「化石を研究または展示可能な状態にするための準備」とされる事が多いかと思いますが、実際には標本からどの形態情報を取り出せるかを左右する研究の一環なんだと感じました。

展示構成で良かったのは、いきなりアトラクション的な標本を見せるのではなく、化石収集、プレパレーション、複製、現生動物との比較、古生物の解釈というワークフローを見せていたことです。

「長谷川善和の業績(の一部)展」であると同時に、デジタルスキャンも3Dプリンターもない時代の20世紀後半の日本の古脊椎動物学がどのように成立していたのかを伝える展示となっていたように思います。

最後に、貴重なコレクションを公開して下さった長谷川善和先生、貴重なお時間を割いてご同行・ご指導下さった骨の伊藤こと伊藤恵夫先生、ありがとうございました。

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長谷川善和先生のご冥福をお祈り申し上げます。