カナ転写するから齟齬が生まれる。ケラトプスユウタです。
今回も福井県立恐竜博物館の特展『獣脚類2025』のレポートです。よろしくお願いします。
第3章はオルニトミモサウルス類 Ornithomimosauria のゾーンです。

ペレカニミムス Pelecanimimus
いつぞやのFPDMの特展、カスティーリャ・ラ・マンチャ(スペイン)の恐竜展ぶりの再会のはず。
荒木一成先生による生体復元模型。P.ポリオドン P. polyodon の種小名の通り歯を有するという、オルニトミモサウルス類としては基盤的な形質をもつ一方、この模型ではまるで派生的オルニトミモサウルス類のように第1趾のない姿で復元されているのが気になりました。

タイのオルニトミモサウルス類、キンナレーミムス(キンナリーミムス) Kinnareemimus のホロタイプのレプリカ。
中足骨の真ん中のやつの上の方の左右幅が狭くなっていてサブアークトメタターサル構造(Subarctometatarsal)、つまりアークトメタターサル構造の前段階の形なってます。なのでオルニトミムス類 Ornithomimid に繋がる系統に近いと思いきや、デイノケイルス類 Deinocheirid に近縁という説もあるとの事。
ところでサブから真正のアークトメタターサルって連続的に進化してると思うんですが、真ん中の中足骨(Ⅲ)の近位端が左右の他の中足骨から挟み込まれて細くなっていて、前面視で完全に隠れていない状態なら、近位端が「やや細いありさま」でも「かなり細いありさま」でも、どっちでもサブアークトメタターサルらしいです。つまり「まぁサブアークト化してる状態」もあれば「がっつりサブアークト化してる状態」もあるようです。

2023年に記載されたばかりのデイノケイルス類、ティランノミムス(ティラノミムス) Tyrannomimus
直訳すると「暴君もどき」。
「フクイミムス」にしなかったのは「福井もどき」という意味になってしまうので、名前なんてただの記号でアフロミムス Afromimus (アフリカもどき)などの前例があるとはいえ、やっぱり「福井もどき」はあんまりだということで考え抜かれた学名な感じが出てますね。まして「フクイ」の代わりに「ティランノ」が属名につくことで、あの恐竜にあやかってなんか目立つ感じになるでしょうし、種小名の方に fukuiensis である事によって福井県の地域振興に貢献する事も忘れていません。


ティランノミムスの「ティランノ部分」(腸骨の縦に垂直なリッジがティランノサウルス上科 Tyrannosauroid っぽいと思われたそう)。

デイノケイルス類ばかりの中で唯一のオルニトミムス類(キャプションではガリミムスの一種 Gallimimus sp.)
これ神流町恐竜センターにもある「ガリミムス・モンゴリエンシス(Gallimimus mongoliensis)」のマウントと同じ標本のレプリカですよね? どこから来たの? 確実にガリミムス属ではないものの新属記載待ちという曰く付きの方です。

オルニトミモサウルス類としてはそこそこの大きさですが、次に紹介する怪物には遠く及びません。

窮屈そうなデイノケイルス Deinocheirus のウォールマウント。
デイノケイルスの全身骨格は科博の恐竜博2019ぶりです。
その時の骨格よりも良い物を作ろうという試みで作られているそうですが、どうも未完成らしく今後更に手を加えられるとか。楽しみですね。
デイノケイルスは既知のデイノケイルス類、ひいてはオルニトミモサウルス類の中で文句なしの最大の巨魁なわけですが、デイノケイルス以外のデイノケイルス類は僕の知る限り軒並みガリミムスより小さい俊足タイプなので「快速のオルニトミムス類、重厚のデイノケイルス」と言ってしまうのは違和感があります。
デイノケイルスも祖先から派生していきなり巨大な姿になったわけではないでしょうから、普通サイズのデイノケイルス類からデイノケイルスに至るまでの中間サイズの過渡的な段階のデイノケイルス類たちがいたはずですよね。皆さんにはそれを見つけてほしいです。
と要望を言ったところで今回はここまで。次回は最終回です。
それじゃ👋
