ヨーデルがドイツ民謡って最近知りました。ケラトプスユウタです。
今回紹介させて頂くのはゾーン4: テリジノサウルス類 Therizinosaurid のチャプターで、本展最後のゾーンとなります。
テリジノサウルス類の産出は地理的にも時間的にも限られていて、ケラトプス類 Ceratopsid と同じ地層から共産するケースはほぼないんですよね。
チューロニアン期 Turonian からコニアシアン期 Coniacian には非ケラトプス科ケラトプス上科 Ceratopsoidea がテリジノサウルス類と共存していたようですが、ケラトプス類が繁栄したカンパニアン以降ではテリジノサウルス類はほぼアジア原産、ケラトプス類はほぼ北米原産と分かれたような様子です。
Fiorillo & Adams (2012) によるとアラスカのカンパニアン〜マーストリヒチアンの地層からテリジノサウルス類の足跡が報告されていて、そこからケラトプス類はまだ出てないですが、その時期の北米ならパキリノ系がいても良いよなと思っちゃいました。いかがでしょう。
要するにケラトプス類好きからすると、「テリジノサウルス類が出てくる=そこはケラトプス類の鉱脈ではない」というニュアンスが強いわけです。テリジノサウルス類の存在は「角竜パラダイス」から外れる地層を示しやすいわけです。早速行きましょう。

フクイヴェナトル(フクイベナートル) Fukuivenator
シックルクロー(後ろ足の第2爪節骨の大きな鉤爪)が復元されなくなって久しいですね。
基盤的テリジノサウルス科 Therizinosaurid とする場合とテリジノサウルス科よりも派生的なマニラプトル類 Maniraptora とする場合があるらしいですが、まあ大差ないです。

ベイピアオサウルス(ベイピャオサウルス) Beipiaosaurus 生体復元模型
The isle というコンピュータゲームで一躍人気者になった(そんな事はない)この恐竜。どうもゲーム中では半水棲動物としてデザインされているそうで、Youtuber の顔面さんがペンギン呼ばわりしていましたが、僕の知る限りなんかそういう(半水棲という)データがあるわけではないと思います。
この模型だと飛べそうな翼ももっていますが、もちろんジェットパックでも背負わない限り空を飛ぶこともなかったでしょう。
ちゃきちゃきの陸棲動物と思われます。

アルクササウルス(アラシャサウルス) Alxasaurus
この恐竜ってテリジノサウルス科の中では相当保存が良い方らしく、このマウントもいろいろな場所でよく拝みますし僕も仕事で組み立てた事もあるのですが、実物は写真すら見た事ないので具体的な保存の感じがわからないのがキモいんですよね?(きくな)

一次資料としては本展最後の展示物。
テリジノサウルス Therizinosaurus
いつも「常設の恐竜の展示室じゃない通路の木箱」の中に入ってる標本ですな。
テリジノサウルスは多分、サブカルチャーではサイコパスのイメージを重ねられやすい存在です。きっと肉食恐竜から派生した草食恐竜(FPDMでは「植物食」は使用できないそうです。たぶん「動物食」も。)、言うなれば「殺戮者から更生したヴィーガン」。でも手には大きな凶器を持ったまま。なんならほぼその凶器だけで知られていますしね。その“信用したくない感じ”がサイコパスっぽいのだと推理しました。
イメージはどうあれデイノケイルス Deinocheirus のように再発見によって解明が進む事に期待したい古生物の一つです。

5種類のテリジノサウルス類を、系統樹において基盤的な順に右から並べた図です。
右からフクイヴェナトル、ファルカリウス Falcarius、ベイピアオサウルス、アラシャサウルス、テリジノサウルスだそうです。
ベイピアオがテリジノに話しかけていて、テリジノが聞いてあげているように見えます。またフクイヴェナトルがそれに興味を持って駆け寄っているようでかわいいです。
この中ではファルカリウスのみ展示がありませんでしたが、大人の事情で兵庫や熊本から借りる事ができなかったのではないかと邪推が捗ります。
前回の獣脚類展には来てたんですけどね。

これは館内のレストランの厚揚げのライスバーガーね。

今回も大変お世話になりました、恐竜博士。
と言うわけで以上を持ちましてFPDM2025年夏の特展『獣脚類2025』のレポートとさせていただきます。
改めて今回フィーチャーされたのは、スピノサウルス類、メガラプトル類(ティランノサウルス上科)、オルニトミモサウリア、テリジノサウルス類という「福井から出た獣脚類像」をフィーチャーしたラインナップでした。
これは明らかに「フクイラプトル一辺倒」ではなく、前期白亜紀の生態系の複雑さ、多様なニッチを強調する狙いがビリビリ伝わりました。
スピノサウルス類は魚食・半水生の可能性をひっさげ、中生代獣脚類としては異質なライフスタイルを日本で語れるのは暁光です。
メガラプトル類はカルカロドントサウルス類 Carcharodontosauria と並んでティラノサウルスに置き換わる前の頂点捕食者の一角として存在感を出して来ているのを感じました。
オルニトミモサウルス類は、かつては似たようなシルエットで描かれ、おしなべて俊足の象徴でしたが、オルニトミモサウルス類内の多様性も解き明かされ始めたのも良い!
テリジノサウルス類はもはや異端者として展示映えする時代ではなくなりましたが、日本で見つかったフクイヴェナトルがこの依然ミステリアスな系統の初期の進化について教えてくれる事がすごいなと思います。
一方でフクイプテリクス Fukuipteryx 、鳥類はキャプションでの言及はあったものの、展示で無視されたも同然でした。ここに多かれ少なかれ疑問を覚えた来館者も多いと思います。本来なら「恐竜から鳥類への進化」の重要な証拠として、大々的に語って良い存在です。「派手で分かりやすい肉食恐竜の多様性」を重視したので、地味な小型鳥類は教育的な機会損失になるとわかった上で切り捨てられたのでしょうか? それは前回の獣脚類展でやったからもう良いのでしょうか?
結果、フクイプテリクスから現生鳥類までの、本特展の最終ゾーンにも相応しい視点が薄くなり、「巨大で異形な恐竜たちの見本市」に見える側面がありました。「やりたい展示」や「やるべき展示」は「やれる展示」とは違うのは経験からもわかります。今回の4系統に寄せた特展は、「来館者に見せられる現実的ライン」で組まれたという事になります。
それでも我々は圧倒され、「福井はまだまだ出るぞ」と感じます。
獣脚類の派手なバリエーションを北谷での発見に準えて見せる展示としては大成功と感じました。
本展の関係者の皆さまにお礼申し上げます。
まだ行かれていない方でご興味のある方はぜひ足をお運びください。『獣脚類2025』は福井県立恐竜博物館で2025/11/3まで!
それじゃ👋
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これは宿泊先ペンションUPOのふわふわミルクのキノコスープ的な感じのスープです。

これは福井駅で買った恐竜発掘プリンという名の地層の中から発掘したトリケラトプス型と思しきチョコレート。

福井なのにジュラ紀。マイケル・クライトンばりのネーミングセンスが光ります。石灰を連想する「白亜紀」よりも「ジュラ紀」の方がジューシーな感じがしてアップルパイに合ってますよね🤓

絶滅動物を保護してるらしいです。


福井駅のLEGOフクイラプトル。
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参考文献:
