いわき市石炭・化石館(ほるる) 恐竜時代の海の支配者 首長竜

のび太は鼻でスパゲッティを食わなければならない。ケラトプスユウタです。

いわき市石炭・化石館(ほるる)では、7月18日から8月31日まで、フタバスズキリュウ(フタバサウルス・スズキイ) Futabasaurus suzukii 命名20周年を記念して、企画展「恐竜時代の海の支配者 首長竜」が開催されていました。

僕は8月11日に侵入したのでその時の様子をレポートします。

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当館の学芸員で友人の吽野翔太さんに、非番かつ台風にも関わらずご足労いただき案内していただきました。

この企画展も吽野さんがメインで企画・製作されたものです。

むかし石炭・化石館で展示されていたというジオラマの一部を構成していたフタバスズキリュウ(右)とモササウルス Mosasaurus の生体復元模型。味があります。

いわき市はフタバスズキリュウが有名すぎますが、このように断片的ですがモササウルス類も産出しています。

イギリス産のイクティオサウルス(イクチオサウルス) Ichthyosaurus

見事な状態ですが、尾が途中で切れているのもあり身体が短く見えます。

アメリカ産 ティロサウルス Tylosaurus

イギリス産 プレシオサウルス Plesiosaurus 歯骨

この左側に当展メインの「イギリス産の首長竜類全身化石(実物)(恐らく世界初公開)」が展示があったのですが、撮影禁止の代物。吽野さんによるとどういう経緯で所蔵に至ったかは記録がないそうで(そのような標本は多いそう)、以前からバックヤードに存在していたとか。

頭骨は完全ですが頸椎の中程を欠いており、頸が長かったのか短かったのかがはっきりしないそう。

そう言われると頭骨もプレシオサウルス類にもプリオサウルス類にも見えてくる不思議。

今後なんらかの形で研究される事を望むものです。

白亜紀
ジュラ紀

2枚とも(僕にとっては1990年代に発売されていた『学研の図鑑 恐竜』でお馴染みの)田中愛望さんの手による、当館のために描かれた古環境復元画の原画。中生代のいわきの海を復元したものだそうで、特に水の表現が巧みです。

クリプトクリドゥス Cryptoclidus

造っている部分もありますが、大部分が実骨の見事な標本。

現生の水棲生物でここまで頸部が長いものが知られていないこともあり、プレシオサウルス類 Plesiosauridae のこの頸の長さは不思議で、どういう適応なのかはっきりしていないようです。

水中の洞窟に頭をつっこんで何かを捕らえていたのか、体を水面近くに浮かべながら頸だけを動かして水中や水底を漁っていたのか、印象的な旧復元のように頸を上に持ち上げるのは不得意というか難しかったと思われるという事も手伝って、邪推が捗ります。

前からのアングル。

クリーニングで母岩がすべて除去されてしまっているのが惜しいと吽野さんが仰られていました。

クリプトクリドゥス 下顎骨と歯

イギリス産 首長竜類 歯

鋭さが生きています。

ロシア産 プリオサウルス Pliosaurus

強暴な力にさらされる形をしています。

以下、首長竜の食性に関する展示。

北海道小平町産 エラスモサウルス類 Elasmosauridae 胃内容物

コウモリダコの顎器が含まれているとか。

べレムナイト類 Belemnitida (上)と顎器付きアンモナイト類

いつもながら写真が悪くてすみません。

首長竜が食べていたかもしれない貝や海老、硬骨魚類。

以下、福島県大久町入間沢産首長竜の実骨コレクション。

1968年のフタバスズキリュウの発見を受けて、1981年にいわき市教育委員会が大久町入間沢の双葉層の発掘調査を行い、複数個体の首長竜化石を発見したそうで、これらがそれらです。

一部は県指定の天然記念物です。

エラスモサウルス類 上腕骨(若年個体)
エラスモサウルス類
エラスモサウルス類
エラスモサウルス類
エラスモサウルス類
ポリコティルス類 Polycotylidae
ポリコティルス類 歯

展示室中央に佇むフタバスズキリュウの産状レプリカ。

当館のエントランスにも同じようなレプリカがあるのですが、発掘段階別で3度レプリカが造られているらしく、エントランスのものより前の段階のとの事。

比較する事で発掘過程がある程度わかるという代物ですね。

共産したサメの歯も含まれています。

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さて!!今回の企画展を振り返ってまず感じたのは、やはり、いわき市石炭・化石館はとんでもないものを持っているということでした。

同県産の首長竜類やモササウルス類、海外産の海生爬虫類、復元画の原画、発掘当時の様子を伝える資料まで揃っていて、さらに今回、収蔵庫から頭骨を含むイギリス産首長竜類の全身実物化石まで出てきたわけです。しかもこの標本、ただ「全身が揃っていて見栄えが良い」というだけではなく、調べればまだ色々なことが分かりそうな雰囲気を漂わせています。いやはや、こんなものが眠っている収蔵庫。聞けば氷山の一角のようですよ。

だからこそ、気になることもあります。これだけの資料を持っている施設に、それらを整理し、保存し、研究し、展示し、次の世代へ残していくための人材と予算は、本当に十分に与えられているのでしょうか。現在は指定管理者制度によって運営されていますが、その仕事には資料の収集・保存・展示そのものが含まれています。つまり、ここにある化石は単なる観光施設の飾りではありません。いわき市自らも、市内で発見された化石だけでなく“いわき市内で発掘された化石をはじめ、世界的にも大変貴重な化石が展示されております”と紹介されています(いわき市)。だったら、それに見合った扱いをしてほしいと思うのです。

これは別に、ほるるだけの話でもありません。昨今、博物館について人手が足りない、収蔵庫が足りない、予算が足りないという話を聞くたびに思うのですが、博物館という場所は展示室を開けておけば維持できる施設ではないですよね。化石はバックヤードに置いておけば勝手に研究されるわけでも、勝手に未来に残ってくれるわけですらない。収集から始まる博物館の基本の営み、必要に応じて修復し、研究者が利用できる状態にして、そこから得られた成果を展示や教育へ戻すという、その一つ一つの行為に専門家とタイムとマネーが必要です。

この首長竜展の化石そのものの重みが強かったからこそ、そこは強く感じました。

限られた条件の中でより良い展示を作ったことを「現場の頑張りで何とかなった、めでたしめでたし」で片付けて良いのでしょうか。むしろ、これだけ素晴らしい標本を持っているのなら、もっと人と予算を投入したら一体どんな面白いものが出てくるんだ、と期待してしまうのです。

いわきにはフタバスズキリュウがいます。それだけではありません。双葉層群にはまだ研究されるべき化石が眠っており、収蔵庫には今回のイギリス産首長竜類のような標本まで眠っている。これは間違いなく、いわき市が持っている財産です。

もし、その価値に対して十分な人員や予算が用意されていないのだとすれば、いわき市には改めて考えてほしい。

あなたたちの街、ものすごいもの持ってますよ。

今回の企画展は、それを改めて実感させてくれる実に良い首長竜展でした。

お昼に吽野さんと共に侵入した中華料理店『大王』のラーメン。ショウガ Zingiber officinale がきいておいしかったです。

それじゃ👋

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参考文献:

いわき市(発行年不明)「石炭・化石館(ほるる)」『いわき市公式ホームページ』.(2026年9月20日閲覧)

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