絶滅は不可逆であるが、その影響は良くも悪くも増幅し続ける。ケラトプスユウタです。
本日もこのようなブログをご覧いただきありがとうございます。
国立科学博物館の特別展『大絶滅展 生命史のビッグファイブ』の5回目、最終回になります。早速行きましょう。
※この記事は最後にネズミの剥製の画像が出てきます。苦手な方はご注意下さい。

K-Pg境界はビッグファイブの5番目、すなわちザ・ラスト(前回)の大絶滅です。この言葉は知らなくても、日本人であれば白亜紀後期の「あの恐竜を滅ぼした大量絶滅」という概念をもっている方は多いのではないでしょうか。
このキャプションにもある通り、この大絶滅は、ビッグファイブの中では4番目の規模であるにもかかわらず、生物に対してより深刻な影響を与えたワーストスリーよりも有名なのは、やはり最も最近の大絶滅ということで、記憶に新しいということではなく、おそらく最も有名かつ人気かつ強大なイメージの根強い古生物である一部の恐竜類 Dinosauria、具体的にはティランノサウルス(ティラノサウルス) Tyrannosaurus とトリケラトプス Triceratops を絶滅させた為だと僕は勝手に思っています。
そしてその原因が「地球外由来の何らかの巨大な物体の衝突と関係ある」という事も知れ渡っている感触があります。
これがそのまま氷河期に繋がって寒さに弱い爬虫類たちの多くが凍死したと誤解している方もそこそこいらっしゃるので、K-Pgイベントが有名と言ってもなかなか難しいところもあります。
真剣に、隕石が恐竜たちの体に直撃し全滅させたと理解している人にもお会いする機会を頂いたことさえあります。

本展でメインの展示イラストや図録の表紙などを手掛けられたイラストレーターのかわさきしゅんいちさんによる白亜紀後期の、環境復元というより展示物を含む生体復元集合イラスト。展示されていないケツァルコアトルス Quetzalcoatlus と思しき影も飛んでいますね。この手の作品で陸と海の様子が一枚に収められているのは珍しいと思います。
中央の羽毛恐竜はなんでしょうか?

左のマーチソン隕石なる石は、20世紀にオーストラリアに落ちたものでK-Pgイベントの隕石とは直接関係ないのですが、分類的にK-Pgのと同じタイプと考えられているらしいです。
右のデカン玄武岩なる石は、インドのデカントラップの巨大火成岩区(Large Igneous Provinces)の活動で噴火した溶岩だそうです。
小惑星の衝突は、一手で局面を大きく揺るがす「強烈なチェック」ではありましたが、K-Pg境界をまたいでデカンの大規模な火山活動による寒冷化や酸性雨といった環境変動が断続的に続いており、大量絶滅にはその影響もあったという考えがあります。
たしか火山噴火説は衝突説よりも古くから提唱されているんですよね?
結局ビッグファイブ全てにおいて、LIP (Large Igneous Provinces, 巨大火成岩岩石区)…要するに大規模な火山活動が関わっているというのは本展で初知りでした。

チチュルブ(チュクシュルブ)で採掘された国際深海科学掘削計画のコア(レプリカ)
2016年にクレーターを調べたら周辺の陸地では火災が生じた事がわかったそうです。
よくわからないですけど高度な研究をされているんですなあ。

白亜紀の異常巻きアンモナイトコレクション。
このもはや一回折り返しているだけで巻いてすらないディプロモケラス(ディプロモセラス) Diplomoceras (右端)は、電気ヒーターの熱交換フィンに見えませんか?
こういった異常巻きアンモナイトたちは白亜紀を通じて繁栄したようですが、かつて異常巻きはアンモナイトが “系統として老化”した為に現れた身体障害のようなものだと真面目に考えられ支持されていた事があるそうで、ケラトプス類 Ceratopsidae やランベオサウルス類 Lambeosaurinae の奇抜な頭部の形状なども同様に解釈されていたそうです(Masukawa, 2023)。
今では大人も驚いてしまうような話ですが、「大昔に絶滅した生物=進化の失敗作」という考えが普通だった時代からすれば、さほどおかしくないアイデアだったのかもしれません。

白亜紀の条鰭類ではおそらく最も有名で人気のあるジファクティヌス(クシファクティヌス、シファクティヌス)・アウダクス(オーダックス) Xiphactinus audax
福井県立恐竜博物館所蔵の実物ですな。
余談なんですけど検索したら、ジファクティヌスってシノニムが結構あるんですが、その中にメガロドン Megalodon とかモッササウルス Mossasaurus とかありましたよ。それだけです。

リンコニクティス(リンコンイクチス)・ウエノイ Rhinconichthys uenoi 部分頭骨
眼窩を含んでいるのはなんとかわかります。
パキコルムス類 Pachycormidae はジュラ紀中期から白亜紀後期まで栄えたプランクトン食の条鰭類とされていて、ここではジンベエザメ Rhincodon typus(キャプションでは「ジンベイザメ」)やヒゲクジラ類 Mysticeti に例えられていました。パキコルムス類はレージクティス(リーズイクティス) Leedsichthys が有名ですけど、日本で標本を観る機会はあまりないですね。
パキコルムス類もK-Pgイベントで絶滅したわけですが、他の条鰭類が空いたニッチに取って代わらず、軟骨魚類は良いとして基盤的には陸生動物である哺乳類に大型プランクトン食者の座を奪われたというのが少し不思議で面白いです。

ティロサウルス Tylosaurus 頭骨
これちょっと上顎が前に出過ぎに見えますが、こんなもんでしょうか?ティロサウルスの「ティロ(ドアノブ) 」部分が見た目的に強調される効果はありそうですが、上顎前方の歯が下の歯と対応しないので機能しなさそうに思います。
復元画はかっこいいんですが、尾が二又になっていないのは旧復元という解釈で良いんですよね?(我ながら嫌な来場者)
いや、純粋な疑問なんです。

二歯性のアリゲーター類、スタンゲロカンプサ(スタンジェロチャンプサ) Stangerochampsa

この奥の方の歯の丸さはどう見ても硬いものを噛み砕くのに使ってそうですよね。

トリケラトプス・プロルスス Triceratops prorsus LACM 59049 (右)とティランノサウルス・レクス(ティラノサウルス・レックス) Tyrannosaurus rex AMNH 5027
白亜紀後期でこの方々を外すのは逆張りがすぎるというもの。
ティランノサウルスは、本展のキービジュアルの上段中央にNHKのいつもの“羽毛の生えたジュラパ復元”が笑っているにも関わらず、比較的目立たない展示でした。とはいえ大きなスクリーンで映像展示もあったので恐竜類自体はやはり優遇されていると思います。
LACM 59049 はヤングアダルト(未確認情報ですが、科博の地球館地下一階の常設のキャプションでは亜成体とされているらしい)とはいえそれなりに大きいので、AMNH 5027と比べると「こんな体格差でどうやってトリケラトプスを襲って食べるというんだ?」と思われてしまいそう。
まあ多少体格差があってもティランノサウルスは口がめちゃくちゃ汚いと思うので、一回噛まれたらコモドオオトカゲ Varanus komodoensis みたいな感じの狩りができてもおかしくはなさそうですが。

トリケラトプス・プロルススは、長い鳥盤類 Ornithischia の歴史の中でも最も最後に登場した種であり、その存在自体がこの系統の辿ってきた時間の終端を体現しています。
ここで「長大な進化の蓄積が行き着いた一つの到達点」という見方も素敵かもしれませんが、たまたま絶滅したことで系統が途絶えてしまったわけで、状況が違って仮に生き残っていれば進化は続いていたのは言うまでもないですよね。いわゆる「生きた化石」たちですら進化は続けているわけですから。なのであたかも本種が「進化のゴール」かのように捉えるのはまた違うなと思います。
本展において重要なのは、本種が単に“最後期に登場した鳥盤類”というだけでなく、実際に白亜紀最末期まで生き延び、K-Pgイベントによって絶滅した当事者であるという点です。つまり、トリケラトプス・プロルススは絶滅の過程を遠くから見ていた存在ではなく、思いっきりその渦中にあった生物であり、急激な気候変動と生態系の崩壊を直接受けた動物の代表と言えます。ティランノサウルスもそうです。
そのため、彼らを前にすると、単なる分類群の一例ではなく、「大量絶滅とは何か」を具体的にも抽象的にも考えさせる展示として機能しているように思います。
バックグラウンドを踏まえると、トリケラトプス・プロルススはK-Pgの大量絶滅の象徴として最も適切な存在であり、この場に展示される意義は非常に大きいと感じられます。
それは単に有名で人気のある恐竜だからではなく、「長く続いた上に生態系の重要な位置に君臨した系統がどのように終わりを迎えたのか」を邪推させる、とても効果的な材料だと僕は思うからです。






白亜紀の初め頃、被子植物が誕生したと考えられています。
光合成を行う植物は生態系を下から支える最も重要な存在なのは言うまでもないですが、白亜紀の古生物といえば、どうしてもその人気は脊椎動物や軟体動物、節足動物に集中しがちで、この時代に登場した被子植物はその影に隠れがち…という点にはおおむね異論はないと思います。強いていえば、琥珀や珪化木が宝石的な側面から注目されることがある程度でしょうか。
生態系における重要性は人気と無関係なのです。
一方で、シダやソテツのような植物は、現生種が被子植物ほど身近ではないためか、むしろ高い人気を集めている印象があります。そう考えると、被子植物は「現生でありふれていること」そのものが評価を下げてしまう、いわば“現生の弱み”を抱えているのかもしれません。
たとえば恐竜やアンモナイトが人気なのは、見た目が「わかりやすく面白い」という点が大きいでしょう。どういう環境の影響でその形になったのか、この器官は何に使われていたのか、いつ獲得されたのか、といった問いが自然に立ち上がり、そこに想像の余地やタウマゼインが生まれます。形態がそのまま物語の入口になっているわけです。
そこを行くと被子植物化石は、少なくとも一見した段階では、その入口が見えにくい存在です。葉や花粉、木片といった断片的な資料が多く、動物のように「全体像から機能を読み取る」楽しさに直結しにくい。さらに、現生植物との連続性が高いため、「すでに知っているものの延長」として処理されてしまい、驚きが生まれにくいという側面もあります。
しかし実際には、被子植物こそが白亜紀以降の陸上生態系を根本から作り替えた存在であり、その登場は単なる新グループの追加ではなく、昆虫との共進化や食物網の再編成を引き起こす、大規模な生態系の転換点でした。見た目の派手さはないかもしれませんが、「なぜこれほど急速に拡散できたのか」「どのように他の生物群の進化を駆動したのか」といった問いを立てた瞬間、被子植物はむしろ最もスケールの大きなテーマを内包した存在に変わります。
つまり、被子植物化石が地味に見えるのは、面白くないからではなく、「面白さの入り口が動物とは違う位置にある」だけなのだと思います。その入口さえ見つけてしまえば、恐竜やアンモナイトとは別のかたちで、同じかそれ以上のタウマゼインを引き出せる対象であると感じられます。
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ぬるっと古第三紀 Paleogene になりました。











“K-Pg境界から10万年以内に哺乳類の多様性は二倍になり、体のサイズも絶滅前と同サイズまで回復、約8kgになった。約30万年後までには体のサイズは25kgと三倍に増加。被子植物の多様化に伴い植物食動物のニッチを支配し大型化していったと考えられる。更に70万年後にはマメ科やクルミ科の植物の出現を利用し、35~50kgまで到達。
こうして三段階で大型化が起こったと考えられている。”とのことです。
確かに被子植物の多様化 種子・果実の利用は重要そうです。一方、初期の大型化は雑食・肉食寄りの哺乳類も多いのではないかとも思います。
植物の進化と哺乳類の大型化は相互作用であって単純因果ではないはずなので、「利用可能資源の増加が、大型化を可能にしたかも知れない」くらいの理解が良いんじゃないでしょうか?

バエナ類 Baenidae 腹甲と背甲(裏返し)
暁新世の始まりに堆積したデンバー層産のカメ類らしいです。
カメに関しては外温性変温性であることがK-Pg境界を超える上で大きく関わっているのではないかと思いますが、淡水環境は地上や海と違って光合成依存の生態系ではなくベントスに依存した生態系だったという研究もありましたな。それがどのくらい確からしい話かはわかりませんが。

パラトバエナ・コヘン Palatobaena cohen
こちらも同じくデンバー層産のカメ。
上側頭窓がV字に切れ込んで、デフォルメされたチューリップのような独特な頭蓋になっていますね。
パラトバエナは白亜紀後期マーストリヒチアン期から始新世前期まで存在していたとのことで非常に成功した属という事になります。
これは属内の多様性が高かったと言うより、たまたまその時の環境に合っていたと考えるべきでしょう。
テーマという言葉は不適かもしれませんが…絶滅と生存は同じテーマの繰り返しです。

ワナガノスクス Wanaganosuchus
古第三紀暁新生前期のアリゲーター類 Alligatoridae
これ産状なんですよね? 皮骨とか体骨格(post-cranial)はばらけてますが頭の関節はそのままなのでワニの頭部の頑丈さがわかります。変形も少なくて綺麗ですね。

頭蓋がのっぺりしていて眼窩と鼻孔が正中線に近い様子が実にワニらしい。
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最後の展示区画に移動する際に通る通路の展示。箸休めのようにビッグファイブから離れて、化石発掘の現場を展示していました。
国立科学博物館は2023年にモロッコで調査を行ったのだそうです。
ここに展示されているのは砂漠から日本へ運ばれていく時の梱包された姿。
どの展示会もそうですが、展示されている一次資料は全て収集した人たちとその努力があったという事を思い出させていただきました。ありがとうございます。

2つの赤矢印の間にアンピクス・プリスクス Ampyx priscus という三葉虫の行列が保存されているのが見えるのですが、個人的にはその右の黒いレプリカが一次資料だと誤解する人が必ずいると思うので、このレプリカは母岩の上以外のところに並べた方が良いと思いました。
行列をつくる理由は、水流と関係あるという見解が主旨の研究があります。他の可能性としてフェロモン説も一応議論されていましたが、軟体動物など様々な化石も行列を作って見つかったそうなので水流説が有力のようです(Vannier et al., 2019)。
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新生代に入りました。
新生代は被子植物が多様化した時代です。
ここではマメ類が特集されていました。
最後の写真はタマリンド Tamarindus indica という現生種で、パッタイやトムヤムクンの酸味の決め手や、カレーの材料として重宝されているらしいです。
タマリンドは楽器の名前だと思ってました。ケラトプスユウタです。
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ウマ類 Equidae のなかまたち。わかると思いますが、この展示では地質時代は右から左に流れています。
ちなみにこの展示は東京会場だけの特別枠らしいです。年末年始を跨いだ開催だったため、2026年の干支である午に因んだのかもしれませんね。拝めた方はラッキーです。
この章は、今のところ大量絶滅がない新生代にはどのようなことが起こったのか、多様な哺乳類が存在する環境がどうやって形づくられてきたかを追求する区画です。

シフルヒップス(シフリップス) Sifrhippus 生体復元模型
胴体はウリボーのような模様ですが、森林生活者だった事からするといかにも自然なように思います。たてがみは直接証拠はないでしょうが、ウマっぽさを出しているかなと思います。

シフルヒップス
少なくとも、僕の世代では最古のウマ類といえばエオヒップス Eohippus ですが、19世紀に命名されたエオヒップスやヒラコテリウムは、いわゆるゴミ箱分類群で複数の属がエオヒップスに含められていたそうで、早い話が2002年に整理されヒラコテリウムから独立したいくつかの属のうち、最も基盤的な位置に置かれているのがこのシフルヒップスということのようです。
暁新世-始新世温暖化極大という温暖化現象の影響で更に小型化していたらしいです。

シフルヒップスの前足。指が4本もあってとてもじゃないですがウマには見えません。いや、撤回して、とてもとてもウマには見えませんと言い直します。

メソヒップス Mesohoppus
草原で暮らすようになったことで眼窩の位置が尾側に後退し、下顎は逞しく、両方の足の機能指・趾も少なくとも一本は減っています。

メリキップス Merychippus

ウマ Equus caballus
本展唯一の現生種。
言うまでもなく今日のウマは真の野生動物ではなく、我々の選択圧のもとで形作られてきた家畜です。野生で生息する個体であっても家畜が野生化したものであり、かつてのターパン Equus ferus ferus のように、ヒトと無関係に進化してきた真の野生馬はすでに絶滅しています。
なにぶんそういう状況ですので、今後ウマがどのように進化していくのかを考えるにあたっては、自然環境への適応というよりも、我々との関係の中でどのように変化させられていくのかという観点から考える必要があるように思われます。
品種改良が続く限り、競走能力や見栄えの良さといった要素が人為選択され続けて行くんだろうと思います。
一方で、例えば我々の絶滅後などで、管理を離れた個体群が長期的に安定して存続するような環境が成立すれば、気候や資源、捕食圧などに適応する形で、より自然選択に基づいた変化が見られる可能性もありますよね。

進化を説明する上で定番中の定番のウマ類の指の進化。ここではエオヒップスが使われています。メソヒップスとメリキップスの間(中央)に置かれているのはミオヒップス Miohipppus です。
もちろん実際にはこのようなシンプルな一直線の進化をしてきたわけではなく、この5種はそれぞれわかりやすい説明の為の形質を備えた系統の代表としてノミネートされた枝の一本であり、ウマ類の中にここでは語られざる属種の栄枯盛衰が少なからずあったという事に注意が要ります。

いろいろなミズホペクテン(ホタテガイ属) Mizuhopecten が展示されていました。
ミズホペクテンは30種ほどが知られているそうですが、現生のホタテガイ M. Yessoensis はその唯一の生き残りです。
本属の多様性減少は主に自然な環境変動によるものであり、人類の直接的責任ではないと言い切れますが、現代においてはその存続に我々が大きく関与している段階に入っています。

ステラーカイギュウ(ステラーダイカイギュウ) Hydrodamalis gigas
東京都狛江市の更新世前期の地層から見つかった化石で「コマギュウ」というニックネームがついているそうです。本種としては世界最古の標本とのこと。
本種は我々が乱獲によって絶滅させたことで有名ですが、氷期終了(完新世)による環境変化は分布縮小に確実に影響しているんじゃないかとは個人的には思います。
ただ気候変動は致命的ではなかったでしょう。氷期・間氷期を何度も生き延びている実績もありますし。
気候変動で弱体化した個体群に、人類の狩猟圧が加わり、“カイギュウの背を追った最後の一本の藁”となったというのが実情でしょう。

上の画像では頭部のないスリーピーホロウだったのですが、会期の途中で頭骨のレプリカが追加されました。ちょうど2019のカムイサウルス Kamuysaurus みたいです。
茶色い部分がコマギュウの実骨由来のレプリカで、白っぽいところは補完された部分ですね。

手前のケースにコマギュウの頭骨の実物。

世界唯一のステラーカイギュウ中手骨。
「現生種」なのに全パーツ揃ってないんですね。

『人新世 Anthropocene』に関する展示です。南極は一年中とkrないこおりで覆われているので、こういうのを取り出す事で過去のCO₂濃度について知ることができるそうです。
人新世は層序学的に定義された時代区分としては時期尚早ということで却下されたらしいですが、確かに概念的レトリックという感じはしますね。
ご多聞にもれず近年地球の気温が暑くなっているのは確かですが、氷床崩壊のようなイベントはまだ開催されていません。それがあってはじめて人新世と呼べそうです。

第一会場最後の展示です。
人間活動による環境変化で多くの種が危機にある一方、外来種駆除などの人為的介入によって回復した例もあり、自然の理解とその知見の活用が人類に求められているという主旨の展示。
聞こえは悪いかもしれませんが優等生的な展示で、環境破壊が回復可能なダメージを含む営みである点を簡潔に示しており、来場者に当事者意識を喚起する構成として優れているように思いました。
ここで“第六大絶滅”に触れると予想していたので、実際には他の展示も含めて触れられて(少なくとも僕が気づいた範囲では)無かったのは意外でしたが、その慎重さは科博には必要かもしれません。
客観的には“第六大絶滅”はビッグファイブと比較できるような絶滅イベントなのか、ヒト Homo sapiens という単一種によるバイオームの再設計を大量絶滅に強引に当てはめているだけではないのかといった指摘をされるような穴の多い考え方だと思うので、その意味では、本展示があえて“第六大絶滅”というパッケージに依存せず、個別の事例と具体的な因果関係に焦点を当てていた点は、むしろ無難かつ誠実で良かったと思います。
包括的なフレーミングは、わかりやすくなる一方で、現象の異質性やスケールの差を曖昧にしかねないですが、本展示は外来種問題や保全の成功例といった可視的かつ検証可能なトピックに絞ることで、来館者に対して「何が起きているのか」と「何ができるのか」を分離せず提示していました。結果として、抽象的な注意喚起に留まらず、具体的な介入可能性にまで思考を接続させる点で、科学展示としての節度と実効性を両立しているように感じられました。
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第二会場では音声ガイドの声を吹き込んでいたカメラマンの方の作品が展示してありました。いろんなホットスポットで実地に探検して撮影された動物たちの写真ですね。禁じられていたかどうかはおぼえていないのですが、写真の写真を撮ってインターネットに載せるということが倫理悖るかなーという事もありますし、割愛させていただきます。悪しからず。
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5回にまとめようと無理をしたので長くなってしまいましたね。ここから感想です。
了解しました。全体をですます調で統一し、論旨と接続を整理した形で整えます。
いやはや、まず圧倒されたのは実物化石の量です。科博の古生物系特別展において、実物標本の展示が乏しいということはそもそも稀ですが、本展はその中でも群を抜いており、いったいどれだけの貴重な実物化石が並んでいたのか把握しきれないほどでした。さらにレプリカの使い方も非常に見事です。大型骨格や搬入・保存の制約が大きい展示においては、レプリカを用いる方が合理的である場合が多いのですが、本展は実物とレプリカの使い分けが極めて精緻で、これまでにない完成度に達していました。
構成面では、古生物展示の主役とされがちな恐竜の扱いが比較的控えめであった点も印象的です。恐竜に依存しない展示構成はやや挑戦的とも言えますが、その分、オルドビス紀以前の標本群の質と量が圧倒的であり、時代が新しくなるにつれて結果的に“付録”的な印象すら生じていました。この非対称性は意図されたものではないかもしれませんが、展示としてはむしろ強烈なインパクトを生んでおり、非常に優れていたと思います。そして実際、会期中は平日を含め連日大盛況であったことから、「恐竜展」というよりも「科博の化石展示」そのものに対する需要の大きさを実感させられました。
一方で、K-Pg境界における生き残りの代表である鳥類がほとんど扱われていなかった点はやや意外でした。やや残念ではありますが、科博の恐竜展では鳥類はほぼ毎回取り上げられており、さらに直近で鳥類特化の特別展も開催されていることを踏まえると、展示全体のバランスや公平性を考慮して意図的に割愛されたのだろうと推測されます。このあたりのキュレーションの判断は、会議の様子が目に浮かぶようです。
また、展示全体を通して印象的だったのは、ビッグファイブすべての大量絶滅において、大規模火山活動が何らかの形で関与していることが示唆されていた点です。ここから「それならば現代の気候変動対策は無意味なのではないか」と考えてしまいがちですが、それは短絡的な結論でしょう。たとえ自然起源の巨大な気候変動が存在したとしても、それを理由に人間活動の影響を軽視することはできません。仮に将来的により大きな変動が起こる可能性があるとしても、だからといって現在の行動が免責されるわけではないのです。それは、余命を宣告された人に対して何をしてもよいとするような発想と本質的に変わりません。
近年では気候変動対策そのものがビジネス化しているという指摘もありますが、そうした動きが単なるおためごかしに終わるのではなく、将来を見据えた思考を養う契機となるのであれば、それは一定の意義を持つはずです。僕自身が、これからの地球環境がどのように変化していくのかについて、より長期的かつ広域的な視点で考え続けなければならないのです。
最後に、過去の大量絶滅を考えることは、単なる歴史の理解にとどまらず、未来を予見する試みにもつながります。いわばアルゴリズムのようなものです。もちろん、実用的な精度で未来を見通すことには限界がありますが、それでも思考の幅を広げる上で極めて重要な視点であると感じました。
レポートは以上です。
よろしければ、皆さんの感想も教えてください。
それじゃ👋
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参考文献:
- 国立科学博物館・NHK・NHKプロモーション・読売新聞社(編)(2025)『特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」Special Exhibition: Mass Extinctions−BIG FIVE』東京:読売新聞社。
- Vannier, J., Vidal, M., Marchant, R., El Hariri, K., Kouraiss, K., Pittet, B., El Albani, A., Mazurier, A. and Martin, E. (2019) Collective behaviour in 480-million-year-old trilobite arthropods from Morocco. Scientific Reports, 9, 14941.
