恐竜VS哺乳類

神奈川出身だからって神奈川語が通じると思うなよ。ケラトプスユウタです。

今日も貴重なお時間を割いてこのようなブログを見ていただきありがとうございます。

今回は2024年3月から6月までミュージアムパーク茨城県自然博物館でやっていた特別展、失礼、企画展『恐竜VS哺乳類−化石から読み解く進化の物語−』のレポートです。

ちゃんとした博物館の催し物なので、恐竜と哺乳類のファイティング・スキルの比較ではない事はおわかりでしょう。

最大級のトリケラトプス・プロルスス Triceratops prorsus (トリケラジジイ) MWC 7584 (BYU 12183)とティランノサウルス Tyrannosaurus

これは企画展示室の外に展示してあり、この2体は他の時期にもここにあったのですが、周囲のキャプションやパネル等は明らかにそれ用で、企画展の一環なのかどうかはよくわかりませんでした。

当館の企画展は毎回入口の壁紙が豪華です。

そうですそうです。生命史の中で、多様な種の栄枯盛衰があったわけです。

この企画展では、そんな悠久の時、そして数多の種の中から、特にペルム紀から現代までの爬虫類と単弓類に展示を絞っています。

ツク之助さんのイラストが使われている“系統樹”

各地質時代が等間隔で明らかに枝の長さが進化量と比例していないので、分岐図ではあるけど系統樹ではないですね。

あと哺乳類にディメトロドン Dimetrodon が含まれてしまっているように見えるので、赤で示された分類群は哺乳類というよりむしろ単弓類ですね。

あとこの手のやつで鳥盤類 Ornithischia の枝が省略されているのも珍しいです。

ペルム紀の蛙形類 Batrachomorpha 迷歯類 labyrinthodontia (広義の両生類)

ベントスクス・ススキニ Benthosuchus sushkini

立体的に保存されていて美しいです。北九州市立命の旅博物館で観たことある標本かもしれません。

頭頂眼(松果体)の説明にも便利に使えそう。

本展は展示台の色に意味があり、オレンジが短弓類、青が爬虫類になっていました。ベントスクスのような白い展示台はそれ以外という事でしょう。

ディメトロドン Dimetrodon

ディキノドン類 Dictbidontidae

牙が歯ではなく上顎骨の突起に見えるのでプラケリアス Placerias のなかまかなと思います。

台の色でわかる仕組みになっているからか、キャプションには分類が書かれていません。

キノドン類 Cynodonteae ドヴィニア Dvinia

哺乳類の頬骨弓が張り出して幅広の頭になっているのはキノドン類譲りです。

もうジュラ紀か。

ナンヨウスギ属の化石種、アラウカリア・ミラビリス Araucaria mirabilis

(キャプションはスペルミスしてますね。)

現在も生存している植物の属がジュラ紀にもいたというのがミラビリス(素晴らしい、驚くべき)ですね。

ただし現生のナンヨウスギ属の一部の種も乱伐、再生が遅い、気候変動などの影響で、IUCNレッドリストでニホンウナギと同じ絶滅危惧ⅠAと評価されているので全然余談を許しません。

ジュラ紀のクビナガ竜類 Plesiosauria

もう白亜紀か。

イクティオルニス Ichthyornis

科博の鳥展の標本は頭を下げた姿勢でしたが、頭を上げたバージョンもあるんですね。この手の棒を突き刺す形のマウントで角度可変ということはないはずです。

アルカエフルクトゥス Archaefructus 生体復元模型。

最古級の被子植物として有名なアレです。この青さが食欲をそそりますね! これを見ると、柔らかい茎と細長い軸状構造が想定されます。近縁イメージで言えば、ミズニラ、クレソン、タデ科の若芽あたりが参考になるでしょうか?

水生植物は一般に、そのまま食べると青臭くて不味い可能性が高いので、若芽だけを採取、ごま和えもできますが、今だったら……天ぷらかな。または軽く炙って香り出し、青臭さを飛ばし、ぶつ切りにしたシファクティヌス Xiphactinus と一緒にスープ。これですよ。

代表的なベネティテス類 Bennetitales キカデオイデア Cycadeoidea 北海道産

ソテツに似ていますが、ジュラ紀に最盛期を迎え、K-Pg境界は越えられず絶滅しました。

アルカエアントゥス Archaeanthus 生体復元模型

これはカンザス州の下部白亜系(ダコタ層 Dakota Formation)から知られる初期被子植物の花の化石をもとに造られたものです。

これを見る限り、U字状と言うのでしょうか、切れ込みの深い独特な葉をしていますが、花はモクレンやホオノキに似ていますね。

花言葉をつけるなら「顕花への転換点」なんてどうでしょう? もしくは「革命 revolution」とか。それは安直か。

サンタナ層 Santana Formation 昆虫類化石

下部白亜系のサンタナ層でとくに有名なのは湖成層のクラト部層 Crato Member と翼竜やサカナで有名な海成層のロムアルド部層 Romualdo Member ですが、昆虫化石が多いのはクラト部層らしいです。

白亜紀前期には昆虫類の現生グループがすでにそろっていたと考えられています。

ミャンマー産、花入り琥珀。

ミャンマー産化石に関する倫理的・社会的課題は多面的で慎重な検討を要するため、本件についての見解表明は控えさせていただきます。

他にも白亜紀の植物の実物化石が充実。

クビナガ竜類 Plesiosauria

タラッソメドン Thalassomedon

モササウルス類 Mosasauridae プリオプラテカルプス Plioplatecarpus

本属の標本を拝むのはフィラデルフィア自然科学アカデミー以来4年ぶりかと思われます。その時観たのは亜成体で小さかったので、この標本は相対的に大きく見えます。これが成体かどうかはわかりませんが。

長方形の大きな眼窩が恐ろしげですが、生体ではかわいい目をしていたと思われます(主観)。

白亜紀日本近海の覇者 イノケラムス(イノセラムス) Inoceramus

通称イノセラ(軟体動物屋さんは “ce” を「セ」と発音します)

巡検で行きましたが北海道の蝦夷層群ではとにかく大量に出ます。地層によってはほぼイノケラムスだらけらしいです。

ここではモササウルス類の食べるものとして紹介されていましたが、プリオプラテカルプスのエサの候補としてはというよりグロビデンス Globidens のような歯が丸くて頑丈なモササウルス類のエサですよね。

このイノケラムスは大きく見えます。やはり水温の低いところの方が大型化するのでしょうか。

いわゆる異常巻きアンモナイト ノストケラス類Nostoceratidae ディディモケラス Didymoceras

これがいちばん小学生が好きそう(偏見)。

スブプティコケラス(サブプチコセラス) Subptychoceras

母岩に複数種くっついているようですが、赤矢印で示されている個体だけがスブプティコケラスらしいですね。

白亜紀の翼竜類 プテラノドン・ステルンベルギ Pteranodon sterbergi

キャプションではゲオステルンベルギア Geosternbergia

正直どっちでも良いと思いますが、なんか旧来通りプテラノドン属とする方がコンセンサス得られている感触なのでここでは暫定プテラノドンとします。

キャプションによると、翼竜類は白亜紀に大型化した一方、多様性は減少していたとのこと。

すりつぶす

コリトサウルス Corythosaurus こども

本展唯一の鳥盤類のマウント。

(参考画像)でいうところの右から2番目くらいの成長段階のように思います。

恐竜の歯や食性についての展示がこのあたりに固まっていました。

かみ切る

トリケラトプス Triceratops 下顎骨

この商品は最近も紹介したばかりでしたね。

歯がない

オヴィラプトル・フィロケラトプス Oviraptor philoceratops

かつてオヴィラプトルとされていたものが整理されてキティパティ(キチパチ、シチパチ、シティパティ) Citipati などの別属になった関係で、現状、ホロタイプのトサカが不完全な標本だけが確実なオヴィラプトルだと理解してるんですけど…まあいいや。

胃石。書いてないけどモリソン層 Morrison Formation の竜脚類 Sauropoda のものでしょう。

あとこのカルノタウルス Carnotaurus もいました。まったく同じマウントです。この会場では撮っていなかったので別の時に撮ったものですが、すみませんごめんなさい。

古第三期の肉食恐竜(ツル目) メッセロルニス Messelornis

各部が関節したレリーフ状の全身骨格。なんと実物です。でも趾の保存はよくないですね。

その名の通り、ドイツのメッセル採掘場で発見された鳥類化石の代表。
ツル目の中でもクイナ科により近縁らしいです。

つーたかたったったー

こんな走ってるみたいな形で残ってる化石は初めて見ました。

古第三紀始新生の鳥 ガリヌロイデス Gallinuroides

古顎類の特徴をもつ基盤的キジカモ形類らしいです。

この標本は尾椎だけどうなってるのか僕にはわからないです。

お馴染みガストルニス Gastornis

鞍のような腸骨、これは跨がれと言っています。

いつもながら、頭の巨大さと足腰の逞しさはティランノサウルスTyrannosaurus を彷彿とさせなくもないですが、首の長さがティランノサウルス以上にアンバランスに見えます。

始新世の哺乳類 アイルラヴス・マクルルス Ailuravus macrurus

これもメッセルから知られる化石動物。

「リスに似たネズミのなかま」として紹介されていました。

種小名は「大きな尾」の意味ですが、確かにネズミだと思うとゴツく見えます。

古第三紀の霊長類 アダピス Adapis

木を土台としていてダイナミックな展示。「こいつは樹上生活者だ」という思想が見える展示は好きです。

プレシアダピスはプレシアダピス Plesiadapis 自身よりもよく知っていますが、肝心のアダピスを知らなかったとは、我ながら順番がおかしい。プレシアダピスという名は直訳すれば「Adapis に近いもの」。アダピスがいなければ、プレシアダピスは名乗れない。いわば「家系ラーメン」があるのに、「家」を知らなかったみたいなものです。

名前の中にすでに“他者への言及”が含まれている。考えてみれば、なかなか主体性に欠ける属名です。自己紹介が他力本願すぎる。でも洋の東西関係なく、比較を大切にする分野ではこういう命名は多いんですよね。パラサウロロフス Parasaurolophus とかエオトリケラトプス Eotriceratops とか。

新第三期の鳥類 ペラゴルニス Pelagornis

断片的ですが骨質歯鳥類 Odontopterygiformes の特徴がよくわかる実物標本。

古い沼地の住民 パラエロドゥス Palaelodus

フラミンゴ目 Phoenicopteriformes に近縁だそうです。

これは巣に帰って来た親鳥に姿でしょうか。卵化石も報告されているようです。

中新世の海棲哺乳類、デスモスティルス(デスモスチルス)・ヘスペルス Desmostylus hesperus の歯

岐阜や北海道などの D・ジャポニクス D. japonicus ではなくアメリカ産の模式種の方。

タールピット岩塊 Natural asphalt

ロサンゼルスのランチョ・ラ・ブレアの有名なタールピットで掘り出される岩塊。

酸素が遮断されているなら分解は進みにくいはずですし、保存状態が良いというのは理にかなっていますよね。

具体的に何の骨が入っているのかよくわからないですが、もしかしたら大型哺乳類だけでな昆虫やトカゲ、植物片までそのまま閉じ込められているのかもしれません。

ちゃんと処理してみないと分からないのでしょうけど、それにしても、都市下で冥界の扉口が氷河期から閉じられないまま残されていようとは。

これは特別展ではなく、この時に同館の常設展で撮影したラ・ブレア・タールピット産のスミロドン Smilodon

漆黒の骨格。その保存状態は見事で、骨は沈黙していてもその完全度が生む躍動的な迫力に圧倒されます。

ガラスケースも特別仕様で大事にされているのがわかります。

爪の鞘のような構造も残っています。

新第三紀中新世のヤマモモ類 コンプトニア・ナウマンニ Comptonia naumanni

茨城県大子町産なので、同県という意味では地元の化石ですね。

コンプトニアは現生属ですが、現生は北米の C. peregrina のみ。化石種は古第三紀〜新第三紀に北半球へ広く分布していたそうです。その後の寒冷化で日本から姿を消したと考えられています。

大宮の中新世のカエデ類 アケル・トリクスピダトゥム Acer tricuspidatum

本種の葉は現生種の5つ山より少ない3つ山で、シュッとして尖っている現生種よりも単純で、やや丸みを帯びています。

本種は中新世に広く分布したカエデ属(Acer)の化石種で、日本各地の中新世層から知られています。

画質が悪くてすみません。

新第三期鮮新世のイネ科 Poaceae

これも茨城県(常陸太田市)産。

イネ科の繁栄=草原化。草原化は偶蹄類の拡散、草食哺乳類の多様化とリンクする意味で重要です。

さまざまな剣歯虎(猫)の頭骨。

ホモテリウム Homotherium ってこの左右から潰された頭骨しか見たことないんですけど、マシな標本ないんですかね。

右はボロファグス Borophagus で見切れているのがティラコスミルス Thyracosmillus です。以下で紹介します。

中新世のイヌ科、ボロファグス。手前の下顎と歯は実物のようです。

「貪り食べる者」というような意味の野生的な名前の通り、頑丈な顎と歯を持ち、獲物の骨を噛み砕いていたと考えられています。

ティラコスミルス。上顎の長いサーベル用の鞘のような奇妙な下顎で有名なアルゼンチンの有袋類です。ボロファグスと同じくらいの大きさで、剣歯“虎”と呼ぶにはだいぶ小さいです。

無効名で呼ばれる生物第一位のマストドン Mammut

現生ゾウやマンモス Mammuthus と比較したいですね。マンモスは頭頂部がもっと尖ってるかなとは思いますが。

ゾウ類、進化のフラッグシップモデル。最大の特長は、摩耗に強い臼歯へと世代交代していくベルトコンベアー・システムの採用。これにより森林から草原まで安定したパフォーマンスを発揮します。さらに多機能ノーズを標準装備し、採食・吸水・操作を一台で完結。大型ボディと広域展開対応で、新生代のあらゆる環境にフィットする高拡張性モデル…でした。

ブラマテリウム Bramatherium

シヴァテリウムのなかまは何度見ても信じられない頭をしています。前方のY字状の角の基部の幅広さが醜くも逞しい、そんな魅力があります。

新第三紀のゾウ類、恐獣 ディノテリウム Deinotherium のDeino(恐)たる所以の下顎。これ何に使ってたんですか?

枝を引き寄せるためと読んだことがありますが、鼻ではいかんのでしょうか?

恐角類 Dinocerata ウインタテリウム Uintatherium

この牙も種内闘争用の可能性が高いとは思うのですが、同種に使う武器がこんな鋭利で良いのでしょうか? あと角だけで十分のように思うので非常に奇妙で興味が尽きません。

現生の恐竜(鳥類)VS哺乳類

モモイロペリカン Pelecanus onocrotalus

展示物の紹介は以上です。

さて!いかがだったでしょうか?

『恐竜VS哺乳類』このタイトルは挑発的でとてもキャッチーです。「VS」の二文字から、同館のいつもの企画展と比較するとエンターテインメント色を前面に押し出した印象を受けます。

しかしご覧いただいた通り、実際の展示内容は恐竜と我々の対立構造を煽るものではなく、古環境や古生態の紹介に重点を置いた誠実な構成であり、学術的態度は一貫して真摯です。

描かれていたのはコンテストでも勝敗でもなく、地球環境の変遷と生態系の再編という時間の物語です。

恐竜と哺乳類を競わせるのではなく、同じ舞台の上で彼らがどう進化していったのかを丁寧に提示していました。煽りに逃げず、安易なドラマ化もしない。貴重な実物化石・剥製も数多く、古環境・古生態に軸足を置いたその姿勢は誠々実々。タイトルの派手さを逆手に取った、知的な企画でした。

ただし、マウントは最小限。「恐竜展=大きな骨格の連続」という期待をもった来場者もいたと思います。視覚的インパクトよりも文脈と解釈を優先する構成は、本能を刺激するというより、明らかに考えさせる展示です。

派手さを控えた分、展示の質は高いですが、その誠実さが、博物館利用者の評価にどう作用するのかは気になりました。

この記事は以上です。

また近いうちにお会いしましょう。

それじゃ👋

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参考文献:

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