有料だからって無料のものと比べて優良とは限らないと思いますけどね。ケラトプスユウタです。
東京都足立区北千住にOIOIと書いて「マルイ」と読む百貨店があるのですが、本来の会期終了後(少なくとも表向きは“ご好評で期間延長”にされたらしい)の2026年1月21日に侵入してきました。

もともと行く予定はなかったのですが、トリケラトプス Triceratops のホーマー HOMER が観やすいという事で、急遽荒らさせて頂く事に決めました。
入場料:一般1,200円、小中高生600円、未就学児は無料
早速行きましょう。


もふもふの羽毛つきのヘルレラサウルス(ヘレラサウルス) Herrerasaurus はまあまあ前衛的ですが、翼竜類 Pterosauria の中にも羽毛が知られているものもいるのでヘルレラサウルスにも生えてた可能性はあります。
これはいろいろな場所で巡回している『羽毛恐竜展』でも使われた生体復元模型で、これの仲間たちがミナノザウルスではそこそこの数が待ち受けていました。
2009年の幕張メッセで見たことがある気がするので、作られたのはだいたいその頃だと思われます。

時代も産地も系統もばらばらでどういう意図がある選抜かわかりません。
この3体は看板犬のようなもので入口の外に立っていました。
なお、よく見るとインキシヴォサウルス以外はキャプションにミスがあります。

すでに恐いです。

①「知る」ゾーン
“進化年表をもとに、恐竜の種類や特徴を楽しく学べるゾーンです。”とのこと。


ヘルレラサウルスの頭骨。よく見るやつと違って眼窩や前眼窩窓の前後長がまあまあ長いんですが、もしかして樹脂が弛緩してやしませんかね?

ヘルレラサウルス・イスキグアラステンシス Herrerasaurus ischigualastensis が正しいのですが、 このキャプション、誤字でHerrerasaurus ischisaurus (イスキサウルス)になってしまっています。残念。
なおイスキサウルスはヘルレラサウルスのジュニアシノニムで、無効名ではあるものの、適格名として一応実在する属名です(Reig, 1963)。それがあるせいで間違えてしまったんですね。

アオサギ Ardea cinerea を極端に青くしたようなコエロフィシス Coelophysis 。今思うとニューメキシコ自然史科学博物館の公式グッズのTシャツの復元に酷似しています。

産地(化石発見地)と時代にそれぞれジンバブエと前期ジュラ紀が含まれているので何かなと思って調べていて初めて知ったのですが、早い話がこのキャプション、コエロフィシス類 Coelophysidae の異なる二つの属種であるメガプノサウルス・ロデシエンシス Megapnosaurus rhodesiensis とコエロフィシスを混同しています(Ezcurra & Novas, 2007)。
この誤解には、3種ものコエロフィシス類の間で起こった分類の混乱が関わっている可能性があります。それを今からがんばって説明します。
まずコエロフィシスの原記載はコープ、1889年(マーシュがトリケラトプスを記載したのと同年。骨戦争の最中でした)。模式種はコエロフィシス・バウリ C. bauri で、キャプションに明記されている種名もこれ。
1969年、アフリカのジンバブエの下部ジュラ系でコエロフィシスっぽい獣脚類が発見され、シンタルスス・ロデシエンシス Syntarsus rhodesiensis と命名されました。
それから19年後の1988年、あのグレゴリー・ポールがシンタルススとコエロフィシスの間に属差はないと言い出し、シンタルスス・ロデシエンシスをコエロフィシス属(コエロフィシス・ロデシエンシス)として扱い始めました。コンセンサスは得られなかったようですが、この解釈がミナノザウルスのキャプションに直接影響していると思われます。
翌1989年、Rowe という人が、アリゾナ州カイェンタの下部ジュラ系から知られていた「コエロフィシス」をシンタルススの新種、シンタルスス・カイェンタカタエ C. Kayentakatae という舌を噛みそうな種名で記載しました。
12年後の2001年、シンタルスス属がゴミムシのなかまに先取されていた事が発覚、2種のシンタルススは無効名となりました。それに伴って新属メガプノサウルスが設立され、2種はその属に割り当てられました。
その後現在に至るまで、アリゾナのカイェンタカタエに関してはコエロフィシスとする説とメガプノサウルスとする説、一部の標本はどちらでもないとする説が飛び交い議論中のようです。
要するに大事な事は・・・
①ジンバブエ(ジュラ紀前期)のやつ(ロデシエンシス)はメガプノサウルスでありコエロフィシスではない。
②アリゾナ(ジュラ紀前期)のやつ(カイェンタカタエ)はコエロフィシスかもしれないしメガプノサウルスかもしれない。
③カイェンタカタエの属が何だろうと、コエロフィシスは現状アメリカ限定。“化石産地:ジンバブエ”は誤り。
④カイェンタカタエがコエロフィシス属だとすると、コエロフィシスの生息年代が三畳紀後期-ジュラ紀前期だった可能性はあるが、このキャプションではコエロフィシス・バウリと明記されているので“時代: 三畳紀後期-前期ジュラ紀”も明らかに誤記。
これで説明になっていますかね?
いやー、まさに開巻有益。
あとこの展示会において、このキャプションの「前期ジュラ紀」だけが「◯期◯◯紀」のスタイルで、あとは全部「◯◯紀◯期」でした。統一した方が良いと思います。

アウロルニス Aurornis
鳥類の定義が人によって違うのでアレですが、これを広義の鳥に含める人もいます(Godefroit, 2013)。その場合、アルカエオプテリクス(始祖鳥) Archaeopteryx よりも年代が古い鳥という事になるのですが、正味の話、鳥に含めようが含めまいがアウロルニスは何も変わらないのでこの話題は本質的じゃないですね。すみません。(でもキャプションでもそれに関わる話をしてるな)

「地球生命進化年表」なるもの。要するに普通の進化年表のことです。
被子植物の登場が僕の理解よりやや遅めですが、現代の教科書レベルに妥当な内容だと思います。
こういうのはたいてい時間の進行が左から右に向かうよう描くのがセオリーですが、順路が右から左ですし、そこは必ずしもセオリー通り作る必要はないかなと思います。

こういう復元画ありますよね。特に前眼窩窓の形がユティランヌスらしさ皆無です。

最初からずっとそうですけど、科 family だけリンネ式分類階級を表記しているのは、例えば「ティランノサウルス類」みたいな表記だと、上科 Tyrannosauroidea なのか 科 Tyrannosauridae なのか亜科 Tyrannosaurinae なのか族 Tyrannosaurini なのかわからない(属名はキャプションに書いてあるので属とはさすがに誤解する可能性はないですよね)ので、プロケラトサウルス類 Proceratosauridae のように誤解がありえない分類群だろうがなんだろうが、統一してた方が美しいため、「科」に関してのみ表記を統一していると言うことでしょうかね?珍しいことのように思いますが。
なおユティランヌスがプロケラトサウルス類に含まれるかどうかは議論の余地ありなので、ティランノサウルス上科にした方が無難だったと僕は思います。
あと細かいですが、「原始的(plesiomorphic)」は本来分類群には使えないと僕は学校で習ったんですよね。
誤解を恐れずに易しく言うと、分類群に「原始的」を用いると、「原始的」という形質をもっている分類群=その全ての子孫も共有派生形質として「原始的」をもっているという意味になってしまうかららしいです。
「原始的」は 形質に対して使われる専門語であり、 「祖先が持っていた特徴」という意味でなら正しく使えますが、この「原始的な形質を持つ」という理由で特定の分類群を「原始的な分類群」と呼ぶことは、 分岐学の議論では適切ではないそうです(渡部, 1991)。
まあ古生物学か何かでは「基盤的」の意味で「原始的」と言うのかもしれませんが。

よく見る細長いスピノサウルス Spinosaurus の頭骨に似ている気がする生体復元模型(首のみ)。
これには羽毛生やさないでおいたんですね。

縦の皺が老人みたいで…親しみやすいですね。

ティランノサウルス(ティラノサウルス) Tyrannosaurus


上眼窩角が大げさに後傾している事(おそらく個体変異で説明がつくレベル)、縁頭頂骨がP3以外無視されている事(好意的に、吸収と考えても角質の痕跡もないのは考えにくいのではないでしょうか?)、縁鱗状骨が1対多い事(これは個体差の範囲であり得そう)、色が精彩すぎる事以外は素晴らしい作品だと思います。
僕の知る限りこの頭骨サイズで上眼窩角がこれほど長い個体はいないのですが、角を盛りたくなる気持ちはわかります。

キャプションはパーフェクトでござる。

目当てのホーマー (BMRP 2006.4.1.)
トリケラトプス・ホリドゥス T. horridus 大きめの亜成体です。情報通り、低い位置で観察しやすく文句なしの展示方法です。
実物もこのレプリカそのものも、イリノイのバーピー自然史博物館や日本国内の複数の展示会で拝んだことがあるのですが、全方位から拝めた経験は初でした。

骨格図用にどうです?
がっしりしつつ緩くS字を描くかっこいい上眼窩角、控えめで若々しさ溢れる縁鼻骨(鼻角)、鼻角と吻骨の間のホリドゥス然としたくびれがよく復元されている頭骨です。
サイズでいうと小さめの成体より大きいのですが、各部の癒合が全然進んでいないので亜成体だとわかります。
それでも亜成体トリケラトプス最大というわけでは全然なく、ヨシズトライク Yoshi’s Trike (MOR 3027)と比べると小さいです。というかヨシズトライクがバケモノすぎなんですけど。

少なからぬトリケラトプス頭骨は派手に変形を受けています。ホーマーは立体構造が比較的保たれている方で、これが復元精度を底上げしています。

上顎骨 maxilla と歯骨 dentary 周辺。歯がこのレプリカだとなんか骨質歯 pseudotooth みたいになっていますが、実際は違います。

頭骨の背後、特にケラトプス類特有の球形に近い後頭顆をホーマーで拝める事はそうそうないことです。

「フリルの骨に穴が開いていないことが特徴です。」
確かにトリケラトプスの特徴はそうなのですが…👇

ホーマーの場合、保存の関係で頭頂骨に穴が空いていて補完されていない上、左右一対みたいになっているので解説文との相性が良くないです(Mathews et al., 2009)。
***
②「観察する」ゾーン
“発掘から復元までの流れや、恐竜研究の歴史を学べるゾーンです。化石の一部を、研究者の視点でじっくり観察!クイズ形式で化石の観察ポイントを楽しく学べます。”との事。

段ボールだけど明らかにAMNH 5116 の顔。フリルはハドロサウルス類の足跡みたい。なお市販品の模様。



こういうインタラクティブな展示は簡素ですがこどもたちには良いかもしれません。

始祖鳥 アイヒシュテット Eichstätt 標本だと思うのですが、原標本ってこんなに羽毛印象はっきりしてないですよね?

コンセンサスは得られていないかと思いますが、吻端に小さいクチバシがあったという説も去年出ましたね(O’Connor, 2025)。

一見子供向けの展示のように見えますが、「開梱」以外はふりがなが一切ありません。

「重たいしっぽを持ち上げられない」と考えられていた」と言うより「2本の足だけで立てると思われていなかった」の方が正確かと思いますがまあまあまあまあまあまあ。
あと復元のこと「再現」って言わない事はないかもしれないですが、個人的には正解の姿形を知っているものを再び同じように作ったり表したりする事を再現というんじゃないかと勝手に思ってますが、それはわかりませんすみませんごめんなさい。

奥の模型がジュラシック・パーク復元じゃなくてうれしいです。

いかめしい表情のインロン Yinlong。
手指の本数と爪の有無の解釈が妥当で驚きました。四足歩行で復元されているのは妥当かどうかわかりませんが、基本的には二足歩行の動物だっただろうと思います。

プシッタコサウルス Psittacosaurus は復元模型でありながら“種不明”とされています。モデルになった特定の標本があると言うことでしょうか?顔の形からするとモンゴリエンシス P. mongoliensis ように見えます。
こちらも手指の解釈がおそらく妥当です。プシッタコサウルスは基盤的な角竜類 Ceratopsia ですが、手指が4本ずつに退化しており手の形質のみについて言えば最も進化的です。
インロンの手指も含め、詳しい方は初歩的な事と思うかもしれませんが、この部分は間違っていることの方が圧倒的に多いじゃないですか。

ここでは Ceratopsia を「ケラトプス類」と和訳していますが、今日の日本では Ceratopsia はもっぱら角竜類(あるいは角竜下目)と表される事が多く、またケラトプス類と言うとケラトプス科 Ceratopsidae の事を指す事が多いので、間違いではないですが知識のない人に誤解を与えやすくなるので無難ではないですよね。また、それとは別にこの説明文の中に Ceratopsia の意味で「角竜」を用いている部分もあります。同一の分類群の対訳が統一されていないのは論外です。
「進化の通り道の途中」も古今東西全ての種がそうです。絶滅した系統の最後になってしまった種も結果的に子孫が続かなかっただけで、それ以上進化しない“完全体”ではないですし、生きた化石も時間分の変化量が少ないだけで進化は続けています。
あと“プシッタコサウルスはインロンよりも派生的な角竜類”という主旨の内容が書かれていますが、これは大きな誤解です。確かにプシッタコサウルスは白亜紀前期に栄えたのでジュラ紀後期のインロンよりも新しい時代に生きていましたが、プシッタコサウルスは非新角竜類型角竜類 Non -Neoceratopsian Ceratopsia、インロンは新角竜類 Neoceratopsia、つまりプシッタコサウルスよりもインロンの方がトリケラトプスに近縁(Morschhauser et al. 2019)なんです。このキャプションでは現在主流の解釈と真逆の事を言っています。これは“より新しい時代に登場したものは、より古い時代に登場したものより派生的である”と誤解してしまっている典型例です。
「角竜らしい体つきがほぼできあがっている」も、キャプションを書いた方がどういう形態を「角竜らしい」と想定しているのかは知りませんが、プシッタコサウルスが“角竜らしい体つきがほぼできあがっている”のであれば、インロンもそうです。


うんちをバランスよく積み上げて何になるんでしょう。

踏み潰されかけるケラトプスユウタの図。
(参考画像)をやりたかったのですが、自分が大きすぎました。

少し第4転子ありますよね。

なんとこのお絵描きスペースの卓上に実物化石シリーズが登場。
竜脚類 Sauropoda の骨化石の断片を切ったもの。

キービジュアルに使われている謎の爪節骨(末節骨)。情報ではカルカロドントサウルス Carcharodontosaurus らしいです。なんか直感的には合成樹脂っぽいテクスチャーに見えますけど、実物化石と書いてあるのでそうなんでしょう。

獣脚類の趾骨。これも関節部が石油製品で埋まっていますが、実物と書いてありました。

トリケラトプス・ホリドゥス下顎。これは100%レプリカです。恐竜科学博で展示されていた所十三さんの私物のレプリカと同型のやつです。

おそらくスピノサウルスの歯。なにかしらの固体材料に埋め込まれていますが、なぜ“実物化石”にそんなことをするのでしょうか。

③ソウゾウするゾーン
“これまでに得た情報をもとに、想像力を広げて自分だけの恐竜を生み出す体験「ミナノザウルスを描こう」へご参加いただけます。想像しながら自由に描き足すことで、創造や発想を育むことができます。”だそうです。

感想でコメントするので一旦スルーさせてくださいませ。

同じくティランノサウルス上科プロケラトサウルス科のユティランヌスのキャプションは「竜盤類獣脚類プロケラトサウルス科」だったのにこっちのキャプションは「竜盤類獣脚類ティラノサウルス上科」でした。間違ってないんですけど、なんなんや。

『本物の化石発掘にチャレンジ』のコーナー。
一回700円、3分間だそうです。僕はやってないです。
手を洗うための設備はなかったので、その関係か土砂の類ではなくコルクのような物がその代わりに使われていました。

我は逃さじ。
写真は異常です。
***
④「感想を述べる」ゾーン
SNSで見ていると褒めている人ばかりでしたが、僕的には「おいおい」です。OIOIだけに。
忖度ありで言おうと言うまいと、このミナノザウルス2025、有料展示としての水準には達していません。入場料は1ケタ行くはずがないということです。
商業施設内の展示会なので規模が小さいこと自体は問題ではないですが、その小規模さを補うだけの密度や質、それから恐竜、研究者、そして子どもたちへの敬意が伴っていない点は問題です。有料展示会のクオリティではなかったです。
空間は限られているにも関わらずスッカスカで、展示の大半をホーマーとAMNH 5027とご覧いただいたような模型に依存しています。恐竜を客寄せパンダにして店舗で買い物してもらう事を期待するだけの無料の展示会というのも世の中には普通にありますが、そういう形態にしてようやく容認されるかどうかというクオリティです。有料展示会のクオリティではなかったです。
わずかに「実物」とされる展示もありましたが、出所や標本情報の明示がなく、信頼性を担保しようという誠意が見えません。僕の目が悪いのかもしれないですが、実物としての説得力を欠いていました。有料展示会のクオリティではなかったです。
ご覧いただいた通りキャプションも深刻です。どなたが執筆されたのかは存じ上げませんが、誤字が散見され、内容的にも勉強不足以前の初歩的な誤りが含まれています。簡潔であることと薄っぺらいことは違います。本展示の解説は圧倒的に後者です。むしろ無い方が良いのではないかと思うキャプションが多いこと多いこと。来場者の知識を補強するどころか、理解を妨げ、誤解の助けになる内容では、教育的価値などどこ吹く風ですか。有料展示会のクオリティではなかったです。
輪をかけて問題なのは「自由」という言葉の扱いです。「新しい発見に繋がるかもしれない」と煽りながら、子どもたちにオリジナルの恐竜を描かせることが、いったいどのように学術的発見へ接続するというのか説明してほしいです。復元はバウプランや古環境といった制約の上に成り立つ高度な技術であることは僕でもわかります。無制限の創作とは本質的に違うと思うんです。そこを曖昧にしたまま「自由」を称揚するのは、体制を軽視し、新発見という言葉を安売りしていると言われても仕方ないですよね。しかも「今までにない」と銘打ちながら、実際にはスイソミルの2019年の恐竜イベントやベネックス恐竜博物館(長崎市恐竜博物館)のワークショップで既に行われている内容と同じです。今までにあるんです。心は広くとも行動範囲も見識も狭い僕が前列を2つも知っているという事は、「子どもたちにオリジナル恐竜をデザインさせる」という擬似教育はきっと世界中にあるんでしょう。意地悪な見方かもしれませんが、「ソウゾウするゾーン」は、展示物の少なさを補う創意工夫というより、展示物不足を覆い隠すための小手先のテクニックに見えてしまいます。体験型という言葉をフリルにして、展示の質と量の不足を正当化するとどうなるのか?
総じて、どの要素を取っても入場料に見合う完成度には遠く到達していません。有料展示会のクオリティではなかったです。
ですが、評価すべき点も皆無というわけではないです。まず何より、企画展を頓挫させずに最後まで開催し、(おそらく)大きな事故もなく終了させたこと自体が、当たり前の事ではありますが、誰でもできることではないです。展示というのは内容の良し悪し以前に、企画・調整・搬入・安全管理・動線設計・スタッフ運営といった膨大な実務のアセンブリーです。それを形にし、会期を全うした(その上延長した)という事実はそれだけで僅かながら、いくらかの価値を持つということには否定の余地はありません。結果として内容に不満があったとしても、「開催された」という事実は尊重に値します。でも有料展示会のクオリティではなかったです。
また、仮に展示の完成度が十分でなかったとしても、その空間に足を運んだ来場者の中に、恐竜を熱狂的に好きになるまで至らずとも、疑問や興味を持った人がいた可能性もあります。アカデミックな視点だろうと別の視点だろうと、恐竜が何かの入口として機能した瞬間があったかもしれないという可能性は無視できません。でも有料展示会のクオリティではなかったです。
そして展示の密度が高くなかったからこそ、良い意味でスペースの使い方が贅沢で逆にホーマーの展示が非常に見やすかったです。その点には素直に感謝したいです。一定以上の密度のある展示では観察する余裕が失われがちですが、今回は空間的余白があった分、ほぼ全方位を落ち着いて確認できました。結果的に、単一の標本とがっこり向き合える時間が確保されていたことはありがたいです。でも有料展示会のクオリティではなかったです。
また、設営・撤収を担当された(株)パレオサイエンスの皆さまには労いの言葉を送りたいです。そして企画を立ち上げたマルイさんについても、次回はより高い水準を目指してくれることを…期待したいです。僕から批判が生まれるということは、それだけ僕の関心を集めたということでもあります。議論を呼ぶ展示は、凪で終わる展示よりも良くも悪くも社会的には影響力があります。完成度が未熟だったとしても、1200円の料金に見合う優良展示とはどんなものかを考えるきっかけを生んだという点で、意義があったと言えます。でも有料展示会のクオリティではなかったです。
以上です。
それじゃ👋
***
参考文献:
- Reig, O.A. (1963) ‘La presencia de dinosaurios saurísquios en los “Estratos de Ischigualasto” (Triásico superior) de la República Argentina’, Ameghiniana.
- Ezcurra, M.D. & Novas, F.E. (2007) ‘Phylogenetic relationships of coelophysoid theropods’, Journal of Vertebrate Paleontology, 27(4), pp. 1039–1054.
- Godefroit, P., Cau, A., Yu, D.-Y., Escuillié, F., Wu, W. & Dyke, G. (2013) ‘A new Jurassic avialan dinosaur from China resolves the early phylogenetic history of birds’, Nature, 498, pp. 359–362.
- 渡部真人(1991)「CLADISTICSの紹介」『化石研究会会誌』19(2), 38–44.
- Mathews, J.C., Brusatte, S.L., Williams, S.A. & Henderson, M.D. (2009) ‘The first Triceratops bonebed and its implications for gregarious behavior’, Journal of Vertebrate Paleontology, 29(1), pp. 286–290.
- O’Connor, J. et al. (2025) Chicago Archaeopteryx informs on the early evolution of the avian bauplan, Nature, 641(8065), pp.1201–1207.
- Morschhauser, E.M., You, H., Li, D. & Dodson, P. (2019) ‘Postcranial morphology of the basal neoceratopsian (Ornithischia: Ceratopsia) Auroraceratops’, Journal of Vertebrate Paleontology.

エンドクレジット後のオマケ画像: 拙作の『エオトリケラトプス Eotriceratops とトリケラトプス Triceratops の仮想的な中間型の種の想像図。右鱗状骨どうなっとんじゃ。』です。
エオトリケラトプスがトロサウルス Torosaurus 寄りなのかトリケラトプス寄りなのか僕にはわかりませんが、ここではトリケラトプスにより近縁なものとして仮定しました。
