YPM #3 トロサウルスに癒されて生きる:男性古生物学者の心の旅路

ありがとうトロサウルス、だが独りでやっていける。ケラトプスユウタです。

今日はブロントサウルス Brontosaurus 以上にYPMが推していて、トリケラトプス Triceratops と並んで偉大なケラトプス類 Ceratopsid のトロサウルス Torosaurusを紹介します!

(トロサウルスとトリケラトプスの名称問題については過去の記事があります。ご興味ある方はこちらをご覧ください)

YPMがどのくらいトロサウルスを推しているかこれでおわかりいただけるでしょう。

さて!

1891年、トリケラトプスの頭骨を研究する流れの中で、ジョン・ハッチャー氏は2つの頭骨をイェールに送りつけました。2つの巨大な頭骨はよく見ると違った特徴がありました。その2つの頭骨はワイオミング州南部の互いに2kmと離れない場所で発見されたそうです。

同年、マーシュ博士はそれらの頭骨に基づいて新属トロサウルスを設立しました。

この角竜トロサウルスの名はしばしばスペイン語で「雄牛」を意味する「Toro」に由来すると解釈されますが、マーシュ博士は古代ギリシャ語で「刺し貫かれた」の意であると述べています(フリルの開口部にちなんで)。ですがミスター陰険と呼ばれるマーシュ博士のことですのでウィットを効かせたダブルミーニングかも知れませんね?

トロサウルスの頭頂骨の開口部はトリケラトプスとの大きな差異です。古典主義者ベン・クライスラー氏は、トロサウルスは堅固なフリルを持つトリケラトプスに対してわかりやすい対比になっている(Simply forms a contrast with solid-crested Triceratops)と、もっともらしい解釈をしました。

トロサウルス第1の種、トロサウルス・ラトゥス T. latus は二つのうちより完全な方に基づいて記載されました。それがこの標本です!!👇

YPM 1830

(ウソくさい頭頂骨に味がある)

(ちなみにもう一方の頭骨はトロサウルス・グラディウス T. gradius として記載されましたが、現在はラトゥスと同種と考えられています。“グラディウス”の頭頂骨はより完全で鱗状骨はより長いそうです。)

マーシュ博士はまず頭頂骨の開口部に注目しました。この穴は100余年の研究の積み重ねの上に立つ現代の角竜ファンにとってはお馴染みのものですが、マーシュ博士にとっては違いました。当時、トロサウルス以外では頭頂骨に穴のないトリケラトプスだけが、唯一参考にできる角竜だったんです。

マーシュ博士はこの穴によってトロサウルスのフリルは不完全なものであると考えました。けれども今日よく知られて来てわかっている事実では、むしろトリケラトプスの方が頭頂骨の穴を欠いていて特殊化しているんですな。

マーシュ博士はトロのフリルはトリケラのものより薄く軽く、広く平らであり、正中線上に隆起がないことに気づきました。

また独特であることおびただしい鱗状骨は、長く狭く、トゲやコブなどのホーンレットで装飾されていないことも指摘しました。その鱗状骨の長さは1.2m。

鼻角はどちらかというと短く、上眼窩角は不完全であるもののトリケラのものより勇壮であると見られました。

マーシュ博士はトロはトリケラよりも“初期のもので特殊化が進んでいない”(Earlier and less specialized)と述べましたが、実際は両者は同時に存在していました。

残念ながら、トロサウルスの標本は珍しいもので、よく知られたケラトプス類 Ceratopsid とは言えません。次の標本が報告されるまで50年くらいかかったらしいのですが、それはまた別のお話。

それにしてもYPMで拝むYPM 1830は格別ですね。YPM 1830の名は「イェールピーボディー博物館の“癒され”トロサウルス」でおぼえましょう。

今日はここまで。それじゃ👋


参考文献:

  • Dodson, P. (1996). The Horned Dinosaurs. Princeton University Press, Princeton, New Jersey, pp. xiv-346

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