タイプ標本がほかの標本と比べて特別価値があるとは思わない。ケラトプスユウタです。
ユタ州立自然史博物館は僕の知る限りでは、最も角竜 Ceratopsia ひいてはケラトプス類 Ceratopsidae の展示数が多いのですが、そのほとんどが以下に紹介する「角竜の壁」を構成するメンバーです。
これがそれです! どうですか!
このためにはるばるユタまで来たと言っても過言ではないのです。
壁に系統樹を表す線が引いてあり、各種角竜の頭骨が適当と思われるっぽいところに配置されています。

プロトケラトプス類 Protoceratopsid からおなじみゴビ砂漠のプロトケラトプス・アンドレウシ Protoceratops andrewsi
ケラトプス類はコロノサウリア Coronosauria のプロトケラトプス類に似た動物から派生したと考えられていますが、プロトケラトプス類から進化したというわけではないことにご注意。
ズニケラトプス・クリストフェリ Zuniceratops christpheri
MSM P 4185
フリルの様子はまだプロトケラトプス類に似ています。すでにケラトプス類を特徴づける二重歯根を備えちゃぁいますが、分岐学的にはセントロサウルス亜科 Centrosaurinae とカスモサウルス亜科 Chasmosaurinae の分岐点(ケラトプス科)よりも前の段階のタクサなのでケラトプス科には含めません。
最初のケラトプス類より以前に目の上の角が獲得されていた事を示唆する、かなり重要な恐竜です。
再び登場 ディアブロケラトプス・エアトニ Diabloceratops eatoni
UMNH VP 16699
ディアブロケラトプスは既知のケラトプス類の中での最基盤で、原始的なセントロサウルス亜科です。鱗状骨(フリルの両脇を構成する骨)はまだシンプルな形でプロトケラトプス類の縁を感じます。
ディアブロケラトプスを見るとホーンレット(フリルのトゲ)の派手さは派生の度合いに依存しないことがわかります。
ナストケラトプス・ティトゥシ Nasutoceratops titusi
UMNH VP 16800
セントロサウルス亜科のナストケラトプス族 Nasutoceratopsini 模式属。いつも言ってますが、ウシのように側方に伸びてから大きく曲がって前を向く上眼窩角と大きな鼻孔が特徴的でかっこいい!
標本はまだ3個体分しか知られてませんが、強いスター性を感じます。さらなる発見に期待しています!
ナストケラトプス族は2017年、2018年と連続で新属新種が記載されているのでケラトプス類界隈では旬のタクサと言えます(言い換えるとこの2年間でナストケラトプス族以外のケラトプス類が記載されていない)。
スティラコサウルス・アルベルテンシス Styracosaurus albertensis
CMN 344 (参考文献)
セントロサウルス亜科の中でもより派生的なエウセントロサウラ Eucentrosaura という、立派な鼻角と派手なホーンレットを備えたタクサの一員です。20世紀にはエウセントロサウラのセントロサウルス亜科しか知られていなかったので、エウセントロサウラのイメージこそが以前のセントロサウルス亜科のイメージと言えるでしょう。
スティラコサウルスは渋いと評価する人もいますが、僕にとってはむしろ華やかなド派手角竜の代表!
記載以来100余年に渡り、前線でセントロサウルス亜科の本質を定義づけ続けて来た存在 セントロサウルス・アペルトゥス Centrosaurus apertus
AMNH 5239 (元“モノクロニウス・フレクスス” “Monoclonius flexus”)
よく鼻角が前傾した様子で復元されたり描かれたりしている個体ですが、このキャストだとどちらかというと後傾気味に見えるのがよくわからないです(未発見とも思えないですが…)。
2020年2月1日追記: 👆ナチュラルに違いました。
正しくは、ROM 767 という標本でした。ご教示くださいましたヒロくんにお礼申し上げます。
エイニオサウルス・プロクルヴィコルニス Einiosaurus procurvicornis
MOR 456 と MOR 373 のコンポジット
基盤的パキリノサウルス族 Pachyrhinosaurinae。パキリノサウルス族はエウセントロサウラの派生的なタクサで、鼻角が瘤状に進化しつつある者たちです。
僕の想像ではエイニオサウルスは曲がった鼻角の先で突き合うよりは、鼻角の峰側(背側)をぶつけるか押し付けあうなどの方法で力比べをしていたんじゃないかと思います。
アケロウサウルス・ホルネリ Achelousaurus horneri
MOR 845
エイニオサウルスよりも派生的なパキリノサウルス族。鼻骨だけでなく後眼窩骨(目の上の骨)の上面なんかも非常に粗いテクスチャーになっているので、生きている時は角質のヘルメットみたいになっていたのではないかと思っています。つまり鼻の瘤だけでなく顔の大部分が打撃に用いられたのではないかしら?
パキリノサウルス・ラクスタイ Pachyrhinosaurus lakustai
TMP 1985.55.258
カナダではおなじみだった顔ですが久しぶりですね。パキリノサウルスはパキリノサウルス族の模式属で最も派生的位置付け。要するにセントロサウルス類の進化の頂点を極めし者。
幼体の時から鼻角はすでに瘤状ですが、代わりにフリル正中線上に角状の構造があるのが特徴。生体において鼻骨が角質で覆われていたのは間違いないでしょうけど、それがサイ的な角状だったのかほぼ骨のアウトラインを覆った程度の瘤状だったのかで議論がされます。僕は祖先系がわざわざ瘤状に進化させて来た構造を再び角状にする意味がわからないので、瘤状だったのではないかと思っています。
最も新しい時代のセントロサウルス亜科ですが、白亜紀の終焉を待たずに絶滅しました。そのことでもいろいろ妄想できますが、それはまたの機会と言うことで…。
くだを巻いてしまいました。カスモサウルス亜科はまた明日!