こんにちは。ただいま福井県立恐竜博物館(以下FPDM)で開催中の特展(FPDMでは特別展をそう呼ぶらしい)『獣脚類2025』、遅ればせながら観てきましたのでレポートをしていっちゃいたいです。3日連続の訪問になったのですが年パスを失くしてしまったので3日とも紙のチケットを発行していただきました。コーワさん、お手数をおかけしました。ケラトプスユウタです。
以前も本館では獣脚類の特展が開催されたことがあったのですが、本展は福井県勝山市の北谷層から見つかったいくつかの獣脚類のうち、特にスピノサウルス類 Spinosauridae, メガラプトラ Megaraptora, オルニトミモサウリア Ornithomimosauria, テリジノサウルス類 Therizinosaurid の4系統にフィーチャーしたものです。なので記事を4つのチャプターに分割しようと思っています。
恐竜類中最高の多様性を誇るとはいえ、獣脚類ばっかり何度も特展が開催されて(中略)ですが早速行きましょう。

夏休み期間にはずっと開催中だったのですが、学童で大混雑するのを避けて9/14〜16で行ってきました。
復元画はChung-Tat Cheung さんというパレオアーティストによるキービジュアル。おそらく勝山のスピノサウルス類 Spinosaurid とフクイラプトル Fukuiraptor を描いたものかと思います。違ったら教えてください。

9/14は3連休中日の日曜日だったのでそれなりに人が多くいました。入り口は早速トルヴォサウルス Torvosaurus がお出迎え。FPDMの特展ではお馴染みの顔です。

スピノサウルス類を生み出したメガロサウルス上科 Megalosauroidea の「じゃない方」と言うとあれですけどメガロサウルス科 Megalosauridae の大型属。つまりスピノサウルス類に繋がらなかった方のメガロサウルス上科代表として展示されていました。歯がナイフのように薄くてスピノサウルス類とはだいぶ印象が違います。

こちらも以前の獣脚類展にもスピノサウルス類代表で展示されていたと記憶しています。スピノサウルス類の二大系統の一つ、バリオニクス亜科 Baryonychinae の代表( Baryonychinae って初めてタイプしたな)。
魚食恐竜として知られるスピノサウルス類。その化石はこれまで主にヨーロッパや北アフリカ、南米を中心に見つかっています。白亜紀の中頃、約9400万年前に絶滅。つまり白亜紀末にはすでに姿を消していたと考えられています。
2025/9/25追記: 会期中に出版された論文、Olmedo-Romaña, Mantilla et al.(2025) によると、白亜紀後期(カンパニアン〜マーストリヒチアン)の地層からスピノサウルス類の歯が報告されました。ただし、スピノサウルス類に属する可能性が高いものの確実ではないとされています。死に絶えたと考えられていた時代から、1000万年以上も長く生き延びて、後期白亜紀の後半にまで生存していた可能性があるという事で今後の研究に期待したいです。

バリオニクスの「バリオニクス(重々しい爪)」。単品では大きく見えますが、バリオニクスの身体の大きさ的には普通で、メインの武器は口であるように見えます。

これは常設のバリオニクス亜科、スコミムス Suchomimus。ある意味でバリオニクスより信用したくなる顔をしています。

スコミムスの仙椎。仙椎が帆状になってる恐竜って神経棘は前後の神経棘と癒合しないものが多い気がしますが、スコミムスは少なくともこのマウントで見ると癒合してますね。(論文で調べる気もない)

福井のスピノサウルス類(実物)。歯です。結構多く出てますね。比べてどうこう言うつもりはないですが群馬県神流町のスピノサウルス類の歯は一本だったと思います。とにかく、これがなければ本展は企画されなかったし、福井駅前のココロ社製スコミムスも誕生しなかったかもしれません。(トゥースタクソンとして)フクイスピノサウルス Fukuispinosaurus やフクイスピナクス Fukuispinax (背骨出てないのに)という裸名で呼びたいのもやまやまですが、福井駅北口のアニマトロニクス恐竜が軒並み福井県産であるところ、(人気で有名なティランノサウルスを除けば)スコミムスだけが海外の恐竜であるあたりからしても新属記載は夢という事でしょうね。

イクティオヴェナトル(公式的にはイクチオベナートル) Ichthyovenator
このマウント良いですよね。大まかなシルエットや筋肉のイメージ、そして発見部位がわかります。脊椎はかなり揃っていますね。当初バリオニクス亜科と思われたためバリオニクス亜科として復元されているようですが、神経棘の発達具合からスピノサウルス亜科に割り当てられているそう。

イクティオヴェナトルの腰まわり。仙椎の神経棘が一つだけ低く、帆がノッチ(切り欠き)状になっているのがユニークです。
これは妄想ですが、スピノサウルス亜科ならばこの復元と違ってスピノサウルス Spinosaurus に近い感じで後肢が短く、「水中では水平姿勢」、「陸上では尾が水平のまま上体は持ち上げた姿勢」にトランスフォームする関係で腰の神経棘が干渉し合わないようある程度の柔軟性を確保するためのノッチかもしれないだろ?たぶん違うと思いますけど。

みんな大好きスピノサウルス Spinosaurus
水中で泳いでいる姿をイメージして天井から吊ってあります。吊るされた恐竜としては僕が見た中では一番大きくて迫力あるものです。
また、尾がウナギみたいな感じで扁平になっているのがあそこ、いのちのたび博物館のスピノサウルスよりも新しい復元である事が一目瞭然です。


手の爪節骨(末節骨)。
僕の知る限り、スピノサウルスそのものの爪節骨は未発見だと思いますが、バリオニクスとも違う、関節付くの背側(みね側)で深くくびれていたり、その逆側の腹側(刃側)が突出していたりと奇抜な形ですが何を参考にしているのでしょうか?

スピノサウルスの右後ろ足。趾骨や爪節骨の裏面が平らになっていました。「水かき付き復元」の根拠もこのあたりにあるんでしたっけ?

エルンスト・シュトローマー・フォン・ライヘンバッハ博士がエジプトで発掘し、ミュンヘンに持ち帰り、第二次世界大戦で連合軍(イギリス軍)に爆撃され博物館もろとも消失したホロタイプ(「スピノサウルスが幻の恐竜」呼ばわりされるのはそのせい)を写真などから復元した模型。世界は全く平和ではないですが、少なくともいま日本は戦時下ではないからこそこのような物を拝んで楽しんでられるのですね。皆さん、戦いに駆り立てられていない現状に感謝しつつお近くの博物館へどうぞ。


そのネオタイプで気になったのがこれ。横突起の欠損が意図的かどうかわかりませんが補完されていない尾椎が一個あり、その神経棘も敢えて短く復元されています。また、それに対応する血道弓ではないのですが、一個分後ろの血道弓も補完されていません。会場にいらした解説員さんに尋ねたところ「悪ふざけ」だそうですが、一方コーワの友人に尋ねたところ「それはない」だそうです。
もしかすると尾の上下左右方向の柔軟性確保を意識された復元かもと邪推が捗りましたが、果たして…!?3
続きはまた今度。
なるべく早く投稿したいとは思っています。
それじゃ👋
