巨大恐竜展 Giant Dinosaurs 2024 #1 生物の巨大化

たしかにあくタイプとゴーストタイプは物理特殊が逆の方がわかりやすかったと思う。ケラトプスユウタです。

今回は2024年夏に神奈川県のパシフィコ横浜で開催されていた『巨大恐竜展』に侵入したときのレポートです。

この展示会は2023年に大英自然史博物館で開催された企画展『Titanosaur: Life as the Biggest Dinosaur』の国際巡回展でなのですが、日本での巡回に際して展示物はかなり追加されています。

僕もいくつかの欧米の博物館の特別展に侵入した事がありますが、日本の特別展と比べて展示物の頭数が明らかに少なかったです。つまり、海外のパッケージ企画をそのまま持ってきても日本人には物足りないのかなと想像できます。

具体的には2015年の『メガ恐竜展』と『ギガ恐竜展』そしていつもの福井県立恐竜博物館の出張組の一部が『Titanosaur: Life as the Biggest Dinosaur』のアタマとケツにくっつけられた構成です。

メガ恐竜展は「恐竜の巨大化」がテーマかつ内容も古すぎないので『Titanosaur: Life as the Biggest Dinosaur』と組み合わせるにはうってつけだったのかなと思います。

入場料は平日と休日で事なっていたようで、平日:一般2400円、高校・大学生1800円、小中学生1200円、三歳以上の未就学児700円。休日:一般2700円、その他200円増しだったらしいです。

前置きが長くなりました。展示物紹介行きましょう。

メガ恐竜展の目玉だった前半身だけのトゥリアサウルス Turiasaurus

この「煉瓦造り塀風のパネル」は良いですね。

レンガ塀の向こうから首が覗く竜脚類。この動物の巨大さを人間社会との対比で見せているわけです。骨格単体よりも比較できる建築物があると来館者にはいかにも直感的です。

また、レンガという積み重なった文明の高さを有史前の恐竜が越えて行く…という視覚的インパクト。これですよ。

科学的展示というより、映画的怪獣出現と地続きの演出とも感じられます。

2024年は世界で初めて学名が与えられた恐竜類 Dinosauria であるメガロサウルス Megalosaurus 命名200周年だった関係で最初にこのホロタイプ(レプリカ)が展示されていました。

なんと申せば良いのか…おめでとうございます。

ステップマンモス Mammuthus trogontherii

「マンモス大学」「マンモス団地」と言うように、日本において「マンモス」という単語は「巨大」の同義語として使われており…とかキャプションに書いてありそうですね。おぼえてないですが。

なおステップマンモスはそんなマンモスの中でも最大種らしいです。ちなみにミュージアムパーク茨城県自然博物館のシンボル展示「松花江マンモス」”Mammuthus sungari” も本種らしいです。

大きさもさる事ながら、長く湾曲したタスク、尖った頭頂部、盛り上がった肩がかっこいいです。

地上最大級哺乳類その2 パラケラテリウム Paraceratherium 頭骨

補完の状態からすると科博の常設のと同一標本でしょうか。

欲を言えば全身骨格のマウントだったらステップマンモスと大きさ比べができて楽しかったんですけどね。

ナガスクジラ Balaenoptera physalus

史上最大級の動物として展示されていました。やっぱりヒゲクジラ類ほど巨大になれるのはプランクトン食性が効いてますよね。

図録によると、この骨格は2020年5月に福井県美浜町に座礁した体を元に作られた標本で、全長18メートルのオスとのこと。

後方(画像向かって左)2本の肋骨に骨折の治癒痕があります。クジラ稼業も楽じゃないという事でしょうか。

おそらく最も有名な大型翼竜類 Pterosauria プテラノドン Pteranodon longiceps

個人的に見慣れているのが着地姿勢なので飛んでいる姿を見ると毎回「意外と大きいな!」と感じます。かっこいいのは着地姿勢で迫力があるのは飛行姿勢ですね(主観)。

大半の翼竜類は我々の体と比べて小さいものが多いですが、プテラノドンはウィングスパン 7〜8mと妥当性の評価が可能な翼竜類の中では屈指の巨体を誇ります。

そんなプテラノドンも推定体重はしばしば20kg、重くても50kgは越えないそうで、信じられないほど軽量だったらしいです。

信じるか信じないかは貴方次第です。

ケツァルコアトルス Quetzalcoatlus

ケツァルコアトルスといえば世界最大級の翼竜類として名高いわけですが、この標本は見下ろすようなサイズで、本属の小型種とでも言うべき Q.ラウソニ Q. Lawsoni なのでしょうか? 違う?キャプションでは種不明扱いでしたが。


ご存知の方も多いと思いますが、最大級と言われるのはケツァルコアトルス・ノルトロピ Q. northropi で、どちらかというとそちらの方が目にする機会は多いのではないかと思います。

しかしながらより完全な骨格が知られているのはラウソニの方で、より不完全な骨格で知られるノルトロピのプロポーションの復元はラウソニを参考にしているわけです。

それぞれの種は現状同属とはいえ、かなり体格差があるので、僕がイメージするケツァルコアトルス・ノルトロピのシルエットは実際とはいくらか違う可能性を忘れずにいたいものです。どこにいようと。

アルダブラケリス・ギガンテア Aldabrachelys gigantea

とここで種名で言うと古生物のようですが、現生のリクガメ、アルダブラゾウガメです。ここの展示物の中では小さい方ですが、現生カメ類の中では相対的に大きいです。

IUCNレッドリストでは絶滅危惧種Ⅱ類(危急)に指定されており、ニホンウナギ Anguilla japonica ほどではないですが危機的状況のようです。

現生ワニ類 Crocodilia ナイルワニ Crocodylus niloticus

ワニは現生爬虫類の中では相当大きくなるグループとはいえ、どんな種類も大型の恐竜類と比べると長さも高さも小さく感じます。

それでも彼らはしぶとく生き残っていることによって、絶滅ワニ類、ひいては恐竜などの他の化石主竜類についてさまざまなヒントをくれるという存在価値そのものが何よりも大きいですよね。

白亜紀前期のワニ形類 カラワン(チャラワン)・タイランディクス Chalawan thailandicus

キャプションには“全長10mほどのゴニオフォリス類”として記述されていました。当時、僕の知る限り同科の最大全長は3mほど。この時調べたら、本展の図録中のクラドグラムを含む、ほとんどの文献で本種はフォリドサウルス類 Pholidosauridae (ようはサルコスクス Sarcosuchus のなかま)になっていました。キャプションの復元画もフォリドサウルス類として復元されていますしね。

ただし、かつてゴニオフォリス類スノスクス Sunosuchus に分類されていた事があり、いつぞやの福井県立恐竜博物館の特別展では「スノスクス・タイランディクス」“Sunosuchus thailandicus” として展示されていたこともわかりました。キャプション等は福井県立恐竜博物館の先生が書かれたものなので、その関係で混乱が生じていたと思われます。

どうあれ、ワニ形類も全長10mにもなると環境中のほとんどの恐竜がランチの候補になったかもしれませんね。

いわゆる“人新生”の絶滅の象徴の一つ、「現生」の絶滅古顎類 Palaeognathae 恐竜 アエピオルニス(エピオルニス) Aepyornis

現生最大の恐竜類はもちろんダチョウ Struthio camelus ですが、それよりもさらに大きくゴツい体をもっていました。推定500kgとも言われ、最も体重の重い鳥という事になっています。

僕が1000年くらい早く生まれていれば会えたかもしれないのですが……島嶼性の巨大鳥類が我々の手から逃れるのは難しい道理です。

アエピオルニス 胴体のクローズアップ

鉤状突起のない肋骨は典型的な恐竜そのもの。飛ばなくなった事で二次的に失ったと説明できそうです。

始新世の大型鳥類 ガストルニス Gastornis 生体復元模型

頭の大きさと尖ったクチバシから、伝統的には捕食動物として復元されがちですが、植物食性のオウム類も体のわりに頭が大きくクチバシが尖っているので根拠として弱いんですよね。

また複数の研究から植物食性の可能性を示唆する結果も報告されています。

アラトコンカ類 Alatoconchidae

これ岐阜県産のペルム紀のアラトコンカ類との事ですが、シカマイア Shikamaia とは違うんですかね? まあ同じ生物相いろんなのがいた可能性はあるのでしょう。

軟体動物はサイズが大きくなるほど濾過だけでは摂食効率が悪化するので、これだけのサイズがあると濾過食とは別に、なんとシャコガイのように(褐虫藻ではないにしろ)何らかの光合成生物を共生させて栄養をもらって生きていたという説がどうも主流らしいです。

ていうかシャコガイが褐虫藻と共生しているなんてはじめて知りました。

北海道上部白亜系産の巨大なアンモナイト類 Ammonoidea メソプゾシア Mesopuzosia

表面がつやつやしていてきれいです。

この標本は、欠損部を補完すると推定直径は1.2mになるそう。

それほど巨大でも「殻を手放さなかった」という事実は海棲爬虫類の捕食圧の高さを思わせますが、ジュラ紀にはイカ、白亜紀にはタコなどの殻をもたない頭足類もすでに登場していたのでそういうわけではないんですよね。

世界最大級のアンモナイト パラプゾシア Parapuzosia

この標本は直径1.7mあるそうです。

化石の重さはどのくらいあるのでしょうか?そこらの竜脚類の大腿骨一本よりも重そうなので腰に来そうです。

既知の中で現生最大にして史上最大の頭足類 ダイオウイカ Architeuthis dux左から触腕、口器、眼球。ちょうどアンモナイトでは残りづらいパーツばかりです。顎器は見たことありますが。

動物ギネスブックによると、鰭の後端から触腕の先端までの長さが14.3mになる個体が記録されているそうです。おそらくそんな長さになるアンモナイトやオウムガイは過去にはいなかったのではないでしょうか。

化石記録はないと思うんですけど、ダイオウイカクラスのサイズのイカって中生代にいた可能性ってあるんですかね?

昆虫の中では大きい方、メガネウラ・モニイ Meganeura monyi

もっぱら石炭紀の高い酸素濃度が節足動物を巨大にしたと説明されますが、彼らを狙う捕食者がまだ登場していなかった事も重要で、あと高湿度環境も気門から水分が失われるリスクが低いので、拡散呼吸をする彼らには有利に働いたという指摘も存在します(Clapham et al. 2012)。この説はペルム紀の高酸素・乾燥環境で陸上節足動物のサイズが小さくなっていった事と整合的な気がしますが、いかがでしょう?

今日はここまで。続きはまた次回。

それじゃ👋

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参考文献