自動車の運転上手い人多すぎ。ケラトプスユウタです。
今回は大絶滅展レポートの3回目です。早速行きましょう。

ようやく第2章に辿り着きました。
F-F境界は、正式には Frasnian–Famennian境界 といって、デボン紀後期を フラニアン期 Frasnian とファメニアン期 Famennian に分ける境界で、年代でいうと 約3億7200万年前と言われています。
デボン紀と石炭紀の境界じゃないのがキモいですよね?
かなり乱暴に整理するとこうです。
* 海洋の環境が崩壊(特に無酸素化)
* サンゴ礁がほぼ壊滅
* 多くの海洋生物が消滅…ストロマトポロイド(礁形成生物)、サンゴ(四放サンゴなど)、有顎魚(特に板皮類)、アンモナイト類は大きく入れ替わった。
特に、デボン紀の特有のサンゴ礁世界がここでリセットされたみたいです。
主な仮説は複合的で、陸上植物の繁栄からの、陸から海への栄養塩流入→富栄養化→酸欠。火山活動などがあげられています。
このF-Fイベントはビッグファイブに含まれますが、特徴的なのはだらだら長く続く絶滅(パルス型)で、オルドビス紀みたいな「2連撃」ではなく何回も環境悪化が重なってジワジワ削る「重ねがけ」の構築だったようです。

ディクラヌルス・モンストロスス Dicranurus monstrosus (中央)やアカントピゲ Acanthopyge (左)のように長いトゲをたくさんもつものがさまざまな異なるグループで現れ、奇妙な見た目をした三葉虫が繁栄したそうです。
ところでこういう化石って酸処理でクリーニングするんですよね?

デボン紀最強! 板皮類 Placodermiドゥンクレオステウス(ダンクルオステウス)・テルレリ Dunkleosteus terrelli 復元頭骨

モロッコ産ドゥンクレオステウス D. sp.
北米のイメージがありましたがモロッコでも見つかるんですね。
上のレプリカはしばしば見ますが、実物は初めて観ました。皮骨 Osteoderm なだけあって、恐竜や我々の頭骨要素とは全然違うという事と、下顎だけははっきり認識できますが、あとは難しいです。

デボン紀中期のシダ植物類 ワッティエザ Wattieza (幹と葉)
高さは最大8mと推定されていて、後ろのパネルのワッティエザのシルエットが実際8mあるのかはよくわかりませんでしたが、高さを表現していてとても良かったです。
幹はまっすぐ伸びてますし、葉らしきものもありますが、これは裏表がなく厳密には「葉体枝」と呼ばれるものだそうです。
しかも長いこと誤解されていたそう。1870年に見つかったとき、幹の化石が別の生き物と考えられ、「エオスペルマトプテリス(Eospermatopteris)」と呼ばれていたそう。それが130年後の2005年になって「全部つながるじゃん」となり、ワッティエザはエオスペルマトプテリスから生えていた事がわかり、この木は先取権でワッティエザと呼ばれるようになったとのこと。古生物あるあるですが、僕の大好物です。
そのおかげで、彼らは最初に森を作った奴らの一員ということが知られるようになったわけですね。地面に根を張って、地上を独占して、過剰な栄養を海にもたらし、海洋生物に深刻な影響を与えた可能性があるというものです。

あ、石炭紀になりましたね。F-Fイベントで板皮類が絶滅した後、ニッチを奪ったのが軟骨魚類と条鰭類です。
ファルカトゥスは背鰭が吻側に伸びていて、何状と言ったら良いかわからないですが、とりあえず左右に扁平な鰭状ではない形に進化しています。これが性的二形でオスの特徴だったと言いますから何らかの形で繁殖に関係するものだったと思うのが人情です。
僕はあてずっぽうで考えると、一番ありそうなのはディスプレイじゃないですか。あとはこの標本で言うと、他の部分と比べるとこの背鰭と頭だけが黒っぽくて頑丈そうなのと、吻端近くまで伸びていることから、種内闘争用の武器とかあり得そうですよね?
いかがでしょうか?皆さんの意見もぜひお聞かせください。

シーラカンス類 アレニプテルス・モンタヌス Allenypterus montanus
一見シーラカンスらしく見えないですが、図録によると「シーラカンス類のなかでもとびぬけて奇妙な形態をしている」との事。まあシーラカンスの中ではそうなのかもしれないですが、サカナ基準だと“奇妙”は、「おい!ちょっと言い過ぎじゃないか?」と思いました。

ちょうど真上から左右のバランスよく潰されたような形で全身が保存されています。
分類不明ですが、ナメクジウオ Leptocardia に似たクリアな姿で復元されていることが多い気がします。
僕は、妥当かどうかは別として緑色のタリーモンスターが好きです。
この展示台ではイリノイ州の石炭系で有名というより、タリーモンスターで有名なメゾン・クリーク Mazon Creek の化石が多数展示されていました。メゾン・クリークは生物の軟組織を保存したノジュールが多産するそうです。

エタキュスティス(エタシスティス)・コンムニスEtacystis communis
アルファベットのHを横に伸ばしたような見た目から “The H”とか“H animal”と通称される正体不明の動物。もしかしたら“エ”かもしれないですよね? 向き的に。

クラシックスタイルのスパイダーマンの背中のクモマークにそっくり。鉢虫類 Scyphozoa のクラゲだそうです。結構触手が太短く、しっかりしているように見えますね。

長らくクラゲだと思われていたそうですが、近年の研究でイソギンチャクだとわかったそう。
この基底部の下から触手が伸びると解釈されていたのでしょうか。それならわかります。

ティランノフォンテス(ティラノフォンテス)・テリディオン Tyrannophontes theridion
シャコ類ですが「暴君的な殺し屋」を意味する属名はやや侮蔑寄りですが、シャコの捕食特化のイメージが現れています。
メゾン・クリークでは多種多様な甲殻類化石が見つかっているそう。

なんらかのシダ種子類 Pteridospermatophyta (時期によってキャプションがアレトプテリス Alethopteris だったりペコプテリス Pecopteris だったりしていました)

ネウロプテリス Neuropteris
これらの美しい葉は生命の星・地球博物館の所蔵物ですが、これもメゾン・クリークだったんですね。

みんな大好きアルトロプレウラ(アースロプレウラ) Arthropleura 生体復元模型
嫌いな人もいるかもしれない多足類なのでかわいい顔のアップだけにしておきます。

アルトロプレウラ
関節していない背板。しかもこれ見えてるのって前後どっちかの縁か断面ですよね。発見されるアルトロプレウラ標本のほとんどはこんな感じらしいです。形態的特徴や足跡化石などから復元が試みられているわけですが、いつもながら古生物復元というのが非常に高度な営みということがわかります。

アミニリスペス・ウォルテニ Amynilyspes wortheni
タマヤスデのなかまだそうです。

ムカシザトウムシ類 Phalangiotarbida
復元画は初見ではダニ Acari かと思いました。検索したところ、クモガタ類 Arachinida の中では特にザトウムシ Opiliones に近縁というわけではないようです。
ちなみに Phalangiotarbida の tarbi はタルボサウルス Tarbosaurus の Tarbo と同一語源で「恐ろしい」とか「脅かす」というニュアンスらしいです。
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続けてチャプター3『P –T境界(史上最大の絶滅)』です。

約2億5200万年前のシベリアでの火山活動で急激な寒冷化、からの長期的な温暖化→海水表面温度が80万年間で13℃上昇。酸性雨とオゾン層破壊で陸上生態系が97%が絶滅。海面上昇、海洋無酸素化で海生生物にも大打撃、三葉虫がついに絶滅したと、こう説明されています。生きてる僕らは奇跡の申し子だなまったく。まだ言うの早いか。

腕足類 Brachiopoda はロフォフォアの形状(螺旋・ループなど)、殻の内部空間の間取り、触手の並び方などによって水の流路が決定されるらしいじゃないですか。あたかもデザインされたかのような流体構造に水を通しているのが面白いです。
P-Tイベントを生き延びた腕足類のグループとしてスピリフェリナ類 Spiriferina スピリフェレリナ Spriiferellina などが展示されていました。

ステージが赤いことも相まって宗教的な匂いを感じます。教祖シカマイア Shikamaia を取り巻く信者たちのよう。
ここでは岐阜県の金生山の化石を展示していました。金生山はペルム紀末に近い時代の海成層が横たわっているので、この直後に海洋生物が大打撃を受けたという事実、いや、絶滅直前の繁栄を見ている感覚を味わうことができます。
ちなみに各境界ごとにテーマカラーが設定されていて、P-T境界のカラーが赤なんです。火山のイメージにも合いますし、最も被害深刻だった大量絶滅という意味でも納得ですね。
たぶんO-Sが海のイメージで青、F-Fが陸上植物およびビッグファイブの中では比較的小規模だったので緑、T-Jの黄色とK-Pgの紫は余った色という感じがします。違ったらすみません。
とにかく、地質時代の変遷を非言語的に感じさせる工夫が見えます。

ベレロフォン Bellerophon 最大の州、B. jonesianus 。
炭酸塩プラットフォームの名脇役。この脇役感が大切でしてね、当時の浅海生態系のリアリティを補強する展示になっています。

ベレロフォンが対称的で巻貝っぽくないのに対して、ニッポノマリア・ヨコヤマイ Nipponomaria yokoyamai ははっきりした美しいアシンメトリーの螺旋殻で現生の腹足類に通じる形態です。
特にこの標本は繊細な部分もきれいに残っていて、貝好きでなくても見惚れてしまいますね。

手足と胴体が巨大で頭が小さい事で一度見たら忘れられない単弓類 Synapsid コティロリンクス Cotylorhynchus romeri
AMNHでも同じ形のを観たことがあるんですが、それのレプリカですよね。

火山から噴き出した溶岩が時代を引き裂くという演出。向かって左が絶滅組で右側が生存組という事になりますが、P-Tイベントを待たずしてペルム紀中期ですでに絶滅していたディメトロドン Dimetrodon を持ってくるとは勇敢なことです。
溶岩が冷やされて収縮することでできる柱状節理も良い味付けになっていると思います。

柱状節理の袂に展示されているのは石巻市を代表する三畳紀生物、ウタツサウルス Utatsusaurus
魚竜形類 Ichthyosauromorpha が出てくるといよいよ中生代という感じがしますね。

ウタツサウルス
對比地先生によると、「大沢層の魚竜形類は片っ端からウタツサウルスという事にされているが、再検討しないとあかん」(大意)とのこと。

『生き残った単弓類』
キノグナトゥス Cynognathus (奥) とバウリア Bauria

オリビエロスクス Olivierosuchus parringtoni
爬虫類のような属名ですがこちらも単弓類です。
このあたりの展示は2023年の葛生化石館の企画展『ペルム紀という時代』の展示物と同じもののようです。
葛生化石館といえばペルム紀後期のイノストランケヴィア Inostrancevia ですが、あれはシンボル展示なので借用できなかったのかもしれませんね。
単弓類の中でも一部の小型〜中型のやつはかなり生き延びて、三畳紀初期の環境ではむしろ優勢だったわけですよね。ただ結果的には三畳紀の途中くらいから主竜類 Archosauria が台頭してきて、単弓類は主役の座を譲ることになります。でもその裏でキノドン類の系統はちゃんと続いていて、そこから我らが哺乳類 Mammalia が出てくると。

ギュロナウティルス(ギロノウチルス)・プラエヴォルトゥス Gyronautilus praevolutus
アンモナイト Ammonoidea かと思ったらオウムガイ類(目) Nautilida のようです。
このような“巻きが解けた” 異常巻きオウムガイは三畳紀最前期特有らしいです。
どんな影響を受けて巻きが解けたりするのでしょうか?

アンモナイトはもともと殻がツルツルだったのに、三畳紀以降になるとトゲやイボみたいな装飾が増えていくという進化の流れを紹介していて、それを単なる見た目の変化じゃなくて、「捕食者が増えて防御が必要になった結果」とか、「ペルム紀末の大量絶滅で崩れた生態系が回復してきたサイン」みたいに解釈してるのが面白かったです。その説明自体はすごく納得感あるんですけど、一方で本当に捕食圧だけで説明していいのかとか、水の流れの影響とか成長コストみたいな別の要因もあるんじゃないかという疑問もあって、そのあたりをもう少し詳しく聞いてみたいってこのブログに書いても大丈夫ですかね?

小葉植物類 Lycophytina プレウロメイア・ハタイイ Pleuromeia hataii
P-T境界を生き延びて世界中に拡散した生物だそうです。

プレウロメイア・ハタイイ生体復元模型
根元付近は葉が落ちているので何年かは生きている個体を想定しているみたいです。
そして下の方の葉同士は間隔が狭く密に生えていますが、半分より上の方の葉同士は間隔が広く、短期間で急成長したという説を反映しているみたいですね。

シダ植物類パラカラミテス・タカハシィ Paracalamites takahashii の茎(左)とネオカラミテス Neocalamites

プロトプテリス Protopteris 幹
こんな感じになります:
ペルム紀末の大量絶滅で森林がほぼ壊滅したあと、しばらくの間はちゃんとした森が戻らなかったという話なんですよね。
その期間は「コールギャップ(Coal gap)」と呼ぶそうで、石炭になるような湿地林が世界的に存在しない時期が続いたらしいです_φ( ̄ー ̄ )
で、その間はプレウロメイアみたいな、乾燥とか貧栄養に強いちょっと特殊な植物が広がっていて、いわば「まともじゃない森」状態が長く続いていたと。
そのあと三畳紀中頃になると、シダ類とか裸子植物が回復してきて、また湿地林が形成されるようになる…つまり、絶滅後すぐに元の生態系に戻るわけじゃなくて、一回かなりシンプライズされた状態を経由してから、ようやく複雑な森林が復活するっていう流れを説明しています。
これも面白いのは、単に「植物が絶滅しました→回復しました」じゃなくて、「石炭ができない=湿地林が存在しない」という地質的な証拠から、生態系の状態を読み取ってるところですよね。
いやーいかがだったでしょうか。これもちろんすべての展示物を紹介しているわけではなく、むしろ紹介してない方が多いんじゃないかなと思うんですが、これどの展示会でもそうなんですが、展示されている時点でプロによって厳選された存在なんですよね。つまり外せない存在として選ばれし者たちの中から、さらに取捨選択を僕がしちゃっていると言うそんな驕り昂ったブログが当ブログになっています。
というわけで続きはまた次回。
それじゃ👋
***
参考文献:
- 国立科学博物館・NHK・NHKプロモーション・読売新聞社(編)(2025)『特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」Special Exhibition: Mass Extinctions−BIG FIVE』東京:読売新聞社。
- 矢部 淳 (2025) 『化石が語る植物の進化5億年史』丸善出版。
