大絶滅展 生命史のビッグファイブ #1 カンブリア爆発とオルドビス紀の海

「環境が悪い」などと考えてはならない。それは惨敗なんだ。ケラトプスユウタです。

今回から東京都・台東区・上野の国立科学博物館で最近(2026年2月23日)まで開催されていた『特別展 大絶滅展 生命史のビッグファイブ』のレポートを始めます。ビッグファイブなので全5回くらいを目標にやっていこうと思います。

余談ですが、設営・撤収を含めず4回侵入しているので、個人的な特別展史上最多の侵入回数でした。

読者の中で行かれた方も多いんじゃないかなと思うのですが、僕のレポートをぜひ見ていってください。

ビッグファイブというのはこの場合、タイランテス、エディー、トライク、ガーディアン、タイタンの5人の事ではなく、顕生代に起きた5回の大量絶滅イベントの総称です。

最初は背景絶滅(通常絶滅)と大絶滅(大量絶滅)の違いや、大酸化イベント、全球凍結、農耕革命の解説がありました。

『カンブリア紀の農耕革命』は要するに、海底の泥の中に潜ったり掘り進んだりする動物が現れた事で、海底が耕されるような効果が生まれ、海水中の栄養や酸素が泥に含まれるようになった事で堆積物を利用する生物の繁栄につながっていったというような説明だったと思います。

今更言うことではないですが、まさに生物と環境は互いに影響し合っているという好例ですね。

ワンネリア Wanneria walcottana

初期の三葉虫。

画像編集で歪めたかのような変形を受けていますね。

ディッキンソニア・コスタタ Dickinsonia costata

プテリディニウム・シンプレクス Pteridinium simplex

エディアカラ紀の化石。動物に近い生物だそうです。

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『三葉虫と大量絶滅』は、要するに三葉虫にはいろんな種類がありそれぞれ大繁栄したんですけど、古生代の間に栄枯盛衰を繰り返して来ましたと。そして生命史上の最初の3回の大絶滅すべてで大打撃を受け、3回目の大絶滅ではついにすべてが根こそぎ地球上から姿を消しましたという話でした。

何らかの三葉虫の生体復元模型。

これは嫌がってる来場者が何人かいましたね。まあ、わからなくはないです。

後ろのクラドグラムはなんとなく「枝」の横幅で目内の種の多様性を表現していてわかりやすいです。

レドリキア類 Redlichiidae はオルドビス紀の大量絶滅が始まる前にすでに絶滅していたそうです。

アサフス類 Asaphidae って目がカネゴンみたいに飛び出しているものばかりじゃないんですね。そしてよく見るアサフス Asaphus と比べて相当大きいです。

オレヌス類 Olenidaトリアドトルス・エアトニ Triadthrus eatoni

(ディアブロケラトプス・エアトニ Diabloceratops eatoni と同じ種小名)

三葉虫の脚が鰓と歩脚のふたまたになっていることがわかる標本…らしいですが、よくわかりません。

こちらもオルドビス紀の大量絶滅が始まる前にすでに絶滅していたそうです。

モロッコヌス・ノタビリス Morocconus notabilis とハマトレヌス・ヴィンケンティ Hamatolenus vincenti

これは会場の真ん中らへんでおもむろに右回転していた球体。表面に映像が明るく映写され、地球環境やある時期の地球地図、アイコニックな展示標本が映し出されていました。

本展は動線が少し変わっていて、各ビッグファイブに対応する展示区画がこのスフィアを取り巻くように放射状に近い形で展開されており、一つの大絶滅を見終える毎にこの周囲に戻ってくる形になっていました。これで説明になっていると良いのですが。

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『カンブリア爆発とオルドビス紀の海』

小さくも貴重そうな化石がずらっと並んでいました。全てを紹介.……します。写真と名前だけ。

最初は三葉虫形類が続きます。

バヴァリラ・ゼンモウレンシス Bavarilla zemmourensis

メギスタスピス Megistaspis hammondi

通常残らない軟体部である脚が保存されています。

エオレドリキア・インテルメディア
Eoredlichia intermedia

アタバスキア・ビトゥス Athabaskia bithus

これはポジ(左)とネガですね。

タリッコイア・アルルセンシス Tariccoia arrusensis

これもネガ(左)とポジ。

ミスゾウイア(ミスチョウイア)・ロンギカウダタ Misszhouia longicaudata

一見、脊椎があるように見えてちょっと笑っちゃいます。

スキオルディア・アルドナ Skioldia aldna

シルエットは一見して三葉虫っぽいですし、実際三葉虫形類のなかまではあるようですが、三葉虫と違ってかたい殻をもっていません。それでもこんなにきれいに残っているのがすごいですね。

ドゥスリア・インシグニス Duslia insignis

めりはりのある凹凸がかっこいいです。

ドゥスリア・インシグニス Duslia insignis

キンダレラ・エウカラ Cindarella eucara

胴の縁がキール状に鋭くなっていて恐いですね。多少は後ろから襲われるのを防いでいるのでしょうか。それとも流体力学的なアレでしょうか。

シドネイア・イネクスペクトゥス Sidneyia inexpectans (レプリカ)

この個体ではないですが、シドネイアの中から三葉虫が見つかった例があり、三葉虫を捕食したと考えられています(Zacaï et al., 2016)。カンブリア紀バージェスではアノマロカリス Anomalocaris を差し置いて頂点捕食者だったのではないでしょうか。

レティファキエス(レティファシエス)・アブノルマリス Retifacies abnormalis

隣のシドネイアと比べるとやや小さいですが、澄江で最大級の節足動物らしいです。

光楯類(アグラスピス類)の一種 aglaspidid gen. et sp. indet.

細長い尾があるので鋏角類と思われていましたが、今日では三葉虫類と同じアルティオポダ類 Artiopoda に含められているそうです。

トレマグラスピス Tremaglaspis sp.

これも光楯類。やや立体構造を保存しているように見えます。

セタペディテス・アブンダンティス Setapedites abundantis

2024年に記載された鋏角類らしいです。

種小名は「見捨てられた」という意味だと思われますが、記載されたということは最終的には見捨てられなかったようで良かったです。

カブトガニ類の一種 Xiphosura gen. et sp. indet

頭部の甲皮は現在のカブトガニ Tachypleus と似たような感じですが、その後ろの甲皮や剣状の尾は未発達だったのでしょうか。

それにしても、この手の動物がビッグファイブを5回とも生き延びている事実に感動しますね?

カスマタスピス類の一種

chasmataspidida gen. et sp. indet

これどういう見た目してるんですか?

カスマタスピス類はウミサソリに似た感じの鋏角類なのですが、この化石は肢の断片でしょうか。

ハベリア類の一種

Habellida gen. et sp. indet.

顎と触覚のような機能をもっていたとされる器官は、多くの節足動物の歩脚と相同らしいです。

モリソニア Mollisonia sp.

すみません。染みにしか見えないです。よく見ると、この画像で言うと下側が生物らしきパターンがあるようには見えます。

大顎類の一種 Mandibulata gen. et sp. indet.

どうなってるかわからないです。

カナダスピス Canadaspis

少なくとも5個体が含まれています。

フキシアンフイア(フーシェンフイア)・プロテンサ Fuxianhuia protensa

ちょっと泳げそうな体に見えます。

エノシアスピス・ルングニル Enosiaspis hrungnir

なんらかの果実に似てると思っちゃいますが、マルレラ形類らしいです。フェゾウアタ(カンブリア系)産で果実なわけないんですが。

マルレラ類の一種 “Furca mauretanica”

マルレラ類 Marrellidae はいつ見ても「アイデア貧困な人がデザインしたエイリアンのような姿(主観。もちろん主観)」です。生体復元だと構造色で虹色に輝いている事が多いですが、懐疑的な意見もあるんですよね?まあどっちにしてもそのような議論がなされる事自体が何よりも素晴らしいですし、化石種の醍醐味だと思います。

レアンコイリア類の一種?

Leanchoillida gen. et sp. indet.

左側が吻側(前)という事はかろうじてわかります。

レアンコイリアの一種?

Leanchoillida gen. et sp. indet.

レアンコイリア・スペルラタ Leanchoillia superlata

鞭みたいな構造がついた腕が特徴かと思いますが、これでは確認できないですね。

レアンコイリア・イレケブロサ Leanchoillia illecebrosa

葉足動物の一種 Lobopodia gen. et sp. indet.

葉足動物というのは要するにハルキゲニアのなかま。

葉足動物の一種 Lobopodia gen. et sp. indet.

これはちょっと難しいです。

ハルキゲニア・フォルティス Hallucigenia fortis

この化石ですと脚ははっきりわかりませんが、背側のトゲは体に対して大きく、勇壮に見えます。

オニコディクティオン・フェロクス Onychodictyon ferox

かなりファジーな見た目をしていて、この展示群の中でも目を惹きます。添えてあった生体復元画ですとカギムシの頭にガを彷彿とさせる触覚のようなものがついた個性的な姿で描かれていました。

ガマスコレクス(ガマスコレックス)・ヴァンロイ Gamascolex vanroyi

クリココスミア・ジンニンゲンシス Cricocosmia jinningensis

ガマスコレクスやクリココスミアを含むパラエオスコレクス類 Palaeoscolecidae は、図録によるとエラヒキムシに近いとされる場合が多いそうですがそのエラヒキムシがわかりません。

パラエオスコレクスは直訳すると「太古のミミズ(Ancient worm)」的な感じで非常に直感的ですね。

アイスクリームのピクトグラムではなく、ハプロフレンティス・レエセイ Haplophrentis reesei

生体復元画だと貝蓋のあるタニシとウメボシイソギンチャクのキメラにカールした一対の細長い牙(ヘレンと言うらしい)があるみたいなイメージでした。

パウキシリテス Pauxillites sp.

これはヘレンとやらがきれいに残っています。

カルヴァピロサ・クロエゲリ Calvapilosa kroegeri

軟体動物有棘類らしいです。つまりヒザラガイにAcanthopleura に比較的近い動物のようです。

“バビンカ(ババンカ)” “Babinka” sp.

キャプションでも引用符がついていたのです。これは、“Monoclonius lowei” 的な意味の引用符でしょうか。つまりこの場合、バビンカではないのだけど伝統的に他の学名で呼ばれた事がないので便宜上ここでは“バビンカ”とさせてください的な。

ウィワクシア・コルルガタ Wiwaxia corrugata

有名どころが来ても大したコメントはできません。

シルエットで言うと軟体動物版イソギンチャクみたいな感じですけど、上に突き出た突起って硬かったんですかね?

オドントグリフス・オマルス Odontogriphus omalus

右足でも左足でも履けるスリッパの靴跡のように左右対称なのがわかります。

ヒプセロコヌス(ヒプセロコーヌス) Hypseloconus sp.

これは全体がヒプセロコヌスなのか、真ん中の白いところだけがそうで他は母岩なのかわかりません。

スカエヴォギュラ・スウェゼイ Scaevogyra swezeyi

これは巻貝ですよね。

ペレキュオギュラ・フェゾウアタエンシス Pelecyogyra fezouataensis

殻の右の赤紫色の部分もペレキュオギュラの軟組織か何かの化石なのでしょうか?

トラリスピラ Thoralispira cf. laevis

上二つは母岩から露出した部分のほとんどが失われています。そんな保存状態のものがわざわざ展示されているということはですよ? かなり珍しいタクサなのでしょう。

プラエシオミス・スブクアドラタ Plaesionys subquadrata 背殻

プラエシオミス・スブクアドラタ 腹殻

こんな現代でもいそうな腕足類 Brachiopoda がオルドビス紀からいた事がすさまじいですね。まあ実際、彼らのようなオルチス類 Orthida はペルム紀の間に絶滅してるんですが。

ヘリオメドゥサ(ヘリオメドゥーサ)・オリエンタ Heliomedusa orienta

化石は平面的で、クラゲっぽい学名ですがこれも腕足類です。どうも殻が溶けて軟組織だけ保存されているみたいで、逆にすごいことのように感じるのですがヘリオメドゥサあるあるらしいです。

リングレロトレタ(リンギュレロトレタ)・マロンゲンシス Lingulellotreta malongensis

小さくて見えにくいですが、軟組織である肉茎と触手冠が保存されておりアメイジングです。

環形動物の一種 Polychaeta gen. et sp. indet.

ウミケムシのようなものでしょうか。これも保存良好で美しいです。

なおキャプションにおいて和名は環形動物どまりなのですが、学名では下位分類の多毛類 Polychaeta まで同定されているのが気になっちゃいます。

プルムリテス・タフェンナエンシス Plumulites tafennaensis

図録によるとサシバゴカイ類 Phyllodocida らしいのですが、現在のサシバゴカイって細長いイメージなのでちょっと難しいですね。

ただこうやってよーく観ると、体に無数の分岐のある繊維状の構造があり、情報量が多い事だけはわかります。

環形動物の一種 Polychaeta gen. et sp. indet.

頭部がないから詳しく同定できないのでしょうか。たくさんの脚がよく保存されていて、ゴカイのなかまという理解は誤解ではなさそうです。🤓

カナディア・スピノサ Canadia spinosa

見るに耐えない画像ですみません。

エルドニア・エウモルファ Eldonia eumorpha

輪郭がくっきりしているから”eumorpha (「真の形」、「著しい形」的な意味)”でしょうか。

エルドニア・ルドウィギ E. ludwigi

エルドニア・ベルベラ E. berbera

これこそクラゲみたいで生体復元画でもまさに触手のない底生のクラゲのような姿に見えるのですが、今日では刺胞動物ではなく水腔動物 Coelomopora (ウニ、ナマコ、ギボシムシなどを含むグループ) とされているそうです。

アラネオグラプトゥス(アラネオグラプタス)・ムルライ Araneograptus murrayi

図録によると“1個体につき1本の硬い管をつくりその中にすむ固着群体性のフサカツギの仲間(フサカツギ綱)”とのこと。

エラフサカツギ属の一瞬 Cephalodiscus sp.

貴重な現生のフサカツギ標本も一緒に展示していただけるのは大変ありがたいです。文字だけでこれは想像できないですから。

管状のものが複数ありますが、これ一つひとつに対応する一個体が棲みついているという解釈でいいのでしょうか。

筆石類の一種 Graptolinthina gen. et sp. indet

古生代の示準化石として教科書にも載っているフデイシもフサカツギ類なんですね。知りませんでした。

コニュラリア類の一種 Conulariida gen. et sp. indet.

四角錐型という特異な形の殻をもつ刺胞動物らしいです。僕の知る限り、現生の刺胞動物にそういう殻をもつものはいないのでなぜ刺胞動物と考えられているのか気になりますので後で個人的に調べます。

アルキサッコフィラ(アーキサッコフィラ)・クンミンゲンシス Archisaccophylia kunmingensis

化石がどうなっているのかわかりませんが、展示されてされていた生体復元画はきれいな緑色のエピゾアントゥス・コウキィ Epizoanthus couchii(外部リンク)って感じでした。

現生のスナギンチャクは群生するのですが、本種もそうだったとするとこの標本は一個体だけっぽく見えるので少し不思議です。

とにかく、軟組織しかない刺胞動物が化石に残ってしまうラーガシュテッテ効果とそれを発見できる人がいるのがすごい事です。

コイアエラ(チョイアエラ)・ラディアタ Choiaella radiata

カンブリア紀前期の普通海綿類 Demospongiae 。名前からすると有名なコイア(チョイア) Choia にちかい種類なのでしょうか。

コイアエラ C. sp.

図録の写真だと中央付近も鮮やかなオレンジ色なのですが…彩度あげてるのかな?🦝

ポリゴニエラ・トゥルレリ Polygoniella turrelli

六方海綿類(ガラス海綿類) Hexactinellid いわゆるガラスカイメン類。これはカンブリア紀のものですが、六方海綿類はエディアカラ紀後期から記録があるそうです。普通海綿類はカンブリア紀からなので、現在より普通だとしても基盤的位置に近いのは六方海綿類の方みたいですね。

“ハンプトニア”

“Hamptonia” cf. christi

引用符とconfer の合わせ技という、この同定に謙抑的なところが誠実で好きです。ハンプトニアも普通海綿類のようです。

あー疲れた。

アエギロカッシス Aegirocassis まで行けなくてすみません。おかげでサブタイトルを「O-S境界」にできません。

続きは次回。

それじゃ👋

***

参考文献:

  • Zacaï, A., Vannier, J. and Lerosey-Aubril, R. (2016) ‘Reconstructing the diet of a 505-million-year-old arthropod: Sidneyia inexpectans from the Burgess Shale fauna’, Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 283(1834), 20161775.
  • 国立科学博物館・NHK・NHKプロモーション・読売新聞社(編)(2025)『特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」Special Exhibition: Mass Extinctions−BIG FIVE』東京:読売新聞社。

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