海 生命のみなもと

「面白い事やって」ってとんでもない無茶振りだよね。それで何かやって見せたら「この人はそれを少なくとも自分では面白いと思ってやっている」という前提で相手は見るからハードル上がってるわけだし。ケラトプスユウタです。

さあ始まりました。ケラトプスユウタの恐竜旅行ブログ。今回もここのところ続いている『過去の国立科学博物館の特別展邂逅レポートシリーズ』(今考えたタイトル)

第3弾となる今回は『海 生命のみなもと』(以下海展)です。2023年夏の特別展です。

ちなみに初めて言いますが、海洋生物資源生産管理学研究室出身の僕にとっては(専攻していたという意味では)専門内といえば専門内です。

そういえば大学の探検部の先輩がほぼ初対面で僕に出題してくれたお遊びの心理テストがありまして、「海で連想する形容詞」を好きなだけ答えよというのがありました。それで何がわかるかを最後に発表します。それが今回のオマケコーナーです。

前置きが長くなってすみません。見ていきましょう。

地球に生命が最初に誕生した経緯は諸説あるんですが、そのうちの一つに海底の熱水噴出孔という自然のチムニー(煙突)のような物の付近で爆誕したという説があります。チムニーから供給される地球の内部由来の成分(こういう時に出てくるのは大抵、硫化水素か…なんかだ)を利用することで、光合成に頼らない生態系を築いていたという考えです。現在も実際にそのような生態系が存在しています。

これは確かロストシティを再現したミニチュアだったと思います。ロストシティ。太平洋の真ん中、アトランティス海山の山頂付近にあるたくさんの、しかも高さ何十メートルもあるチムニーたちが、まるで深海に沈んだ白亜の都市のように見えることからそう呼ばれているのです。

これは…ロストシティ由来の鉱物だと思います。

化石なども使用しながら、脊索動物の進化がざっくりと説明されていました。あまり知られていませんが、我々脊索動物は海で誕生したのです!🤓

非脊索動物型動物 Non-Cordata animalia ディッキンソニア Dickinsonia

さすが、お前明らかにHOX遺伝子持ってないよねという姿をしているのでホクソゾア Hoxozoa よりも基盤的な動物とわかります。HOX遺伝子というのは簡単に言うと、生き物の体の前後左右を決める遺伝子…という認識であってますよね?

これは有名なカンブリア紀 Cambrian の基盤的脊索動物 Chordata ピカイア・グラキレンス Pikaia gracilens

ナメクジウオ Branchiostomaと同じ頭索動物 Cephalocordata だと教わったんですが、その外群に位置付けられていました。

基盤的な脊索動物の話をする時にだけ出てくるナメクジウオ。吊るされているのは拡大模型。

尾索動物 Urocordata 代表、ホヤ Ascidiacea の液浸標本。

液浸標本は研究標本としての完全性を保持できるので保存には優れているかと思いますが、液浸標本よりもホヤランプの方が色彩も形も保存できて一時的な展示には良さそうです。

ホヤは、幼体の時は泳ぎ回るので脳に相当する神経中枢が発達していますが、成体はイソギンチャクのような固着性なのでその神経中枢が退化して、かなりシンプルな神経節だけが残る状態になるのが面白いです。つまりホヤにしてみれば我々成体でも脳が発達している動物は幼稚に思える事でしょう。

基盤的脊椎動物 Vertebrata ユンナノゾオン(ユンナノズーン) Yunnanozoon

知らない人のために説明すると、約5億年前のミミズのような形の生物ですが、体の前方に並ぶ構造がサカナの鰓弓と一致することが最近わかり、「脊椎はまだない脊椎動物」 である可能性があり、我々の祖先が背骨を獲得する直前の姿もこんな感じだったのではなかろうかというそんな化石かもしれません。

これはなんだ?

ハイコウイクティス Haikouichthys

ここではユンナノゾオンよりも派生的な基盤的脊椎動物とされていました。

明確な背骨はまだないものの、筋節・えら・背側の神経索など現代のサカナと同じ基本構造をすでに備えており、サカナらしい体を完成させた最古級の脊椎動物のひとつだそうです。よく見ると“おっとっとのサカナ型のやつ”くらいはサカナらしいシルエットです。

石炭紀の円口類 Cyclostomata マヨミゾン(マヨマイゾン) Mayomyzon

誰がコーヒー豆だ。

現代のヤツメウナギとほとんど同じ吸盤状の口や鰓構造がすでに完成しており、背骨を持たない基盤的な脊椎動物の体の基本形が、少なくとも3億年はほとんど変わっていない」ことを示すらしいです。重要な化石ですね。

ミツバヤツメ Entosphenus tridentatus

現生の円口類 Cyclostomata

コノドント類 Conodont のクラルキナ(クラーキナ) Clarkina

めちゃくち顕微的な化石なのでこの画像では何もわかりますまいが、歯だけが大量に化石として見つかる動物です。これはいわゆる「歯のような構造」という意味の「歯」ではなく、我々と同じリン酸カルシウムでできた真の歯だそうです。彼らは最初に歯を進化させた脊椎動物だった可能性があります。

ドレパナスピス Drepanaspis

デボン紀の無顎類 Agnatha 翼甲類 Pteraspidomorphi

これもゆるキャラみたいな生体復元模型がヘルシンキかそこらに展示されてたら人気者、ひいては海展の客寄せパンダだったかもしれませんよ。そもそもかなり横幅があって扁平な面白い見た目をしていますし。

欠甲類 Anaspida ビルケニア Birkenia

完全に体を覆う装甲が何もないわけではなく、微細な皮骨の痕跡が確認されており、これは装甲の名残が縮小したものと解釈されています。わざわざ装甲を退化させてまで機動力を高める方に舵を切ったと解釈されます。これは翼甲類の装甲を鎧うという選択が進化の方向性として間違っていたというより戦略の違いで、たまたま装甲がないものがその時の環境では生存において有利だったという話です。

歯鱗類 Thelodonti ロガネリア Loganellia

例によってこの画像では何もわかりませんが、体が無数の微小な歯のような鱗で覆われており、脊椎動物の歯がもともと口の中ではなく、体表の鱗として先に進化し、後に口の中へ移動したという説の証拠の一つとされています。

骨甲類 Osteostracan ゼナスピス Zenaspis

例によってこの画像では何もわかりませんが、頭部の装甲の内側に現代のサカナと同じ左右一対の鼻孔がすでに存在しており、嗅覚を使って周囲の様子を把握するという我々にも通ずる感覚機能が、この段階ですでに確立していたことを示す重要な化石です。

板皮類 Placodermi ボトリオレピス Bothriolepis

硬い装甲に覆われながらも関節のある、つまり可動性のある前肢のような構造を持っています。これがブレード状でかっこいい。ゾイド ZOIDS にいそうでいない、はず。

軟骨魚類 Chondrichthyes ヒボドゥス類 Hybodontiformes エゲルトノドゥス(エガートノダス) Egertonodus

例によってこの画像では何もわかりませんが、ずっと時代を登ってジュラ紀。鋭い歯と平たい歯の両方を備える二歯性であり、初期の軟骨魚類の中に、スペシャリストではなく、サカナから硬い殻をもつ動物まで幅広く捕食していたものがいた事を教えてくれます。

これもエゲルトノドゥス。このアングルだとちょっとだけ先の方に歯が見えます。

ファルカトゥス Falcatus

性的二形の軟骨魚類で、オスだけが頭の後ろに前方へ湾曲した大きな突起を持っているとされています。これはディスプレイに使われたと考えられていることから、脊椎動物における性的二形と求愛構造、つまりルッキズムが4億年以上前には進化していた証拠とされます。

ベランツェア(ベラントセア) Belantsea

ヒレの側面積が広くてユニークな見た目をしています。

軟骨魚類ですが、サメみたいな刺して裂く歯ではなく、すり潰す歯しか持っておらず、全員が包丁を持ってる厨房に一人だけ石臼を持って来た料理人のような方です。

全頭類 Holocephali エキノキマエラ Echinochimaera

化石でキメラ(合成化石)とは縁起が悪いですが、この場合の Chimaera とはギンザメのこと。

全身に皮歯性の突起を多く備えていて、カサゴ寄りの精神状態になってしまったかのようなギンザメのなかまです。

硬骨魚類 Osteichthys ケイロレピス Cheirolepis

現代のサカナと同じように機能する顎・歯・ヒレを備えた能動的な捕食者であり、硬骨魚類の基本的なボディープランがデボン紀の時点ですでに完成していたようです。

今に始まった事ではないですが、反射がきつくてすみません。会場が悪いんです。

肉鰭類 Sarcopterygii ウィテイア(ワイティア)・オイシイWhiteia oishii

三畳紀に生きていたシーラカンス類 Coelacanthiformes で、現生のシーラカンスと似た肉質のヒレ構造を備えており、これが陸上の動物の四本の足と相同というのは言うまでもないですな。

一方、脊椎骨はなく、脊柱も保存されていないようです。

それにしても種小名が「オイシイ」だと?(化石魚類の権威、大石滋博士への献名です)

ハイギョ Dipnoi のなかま、スカウメナキア Scaumenacia

少し立体的で、生きていた時の姿からほとんど変わってなさそうなきれいな化石ですね。

デボン紀に生息していた初期のハイギョで、すでに肺を使った空気呼吸が可能だったと考えられているらしいです。

エウステノプテロン(ユーステノプテロン) Eustenopteron

これは説明不要かもしれませんが、流れ的に解説行かせてください。デボン紀の肉鰭類で、ヒレの中に上腕骨・橈骨・尺骨にあたる骨が並んでおり、サカナのヒレが我々の腕へと転用されたことをはっきり示す重要な化石の一つです。例によってこの画像では何もわかりませんが。

パラエオスポンディルス(パレオスポンディルス) Palaeospondylus

これ、近くにあった復元画もユーモラスだったので撮れば良かったです。

デボン紀の小型の脊椎動物。頭骨と脊椎は保存されているにもかかわらず顎・歯・鰭の決定的特徴が欠けているため、無顎類・顎口類・四肢動物のどの系統に属するのか150年以上「正体不明の魚」とされてきましたが、科博標本のCT解析により肺魚や四肢動物につながる系統に属する可能性が高いことが判明し、「魚から陸上動物へ進化する直前の段階」を示す存在として再評価されているらしいです。

インドネシアシーラカンス Latimeria menadoensis 液浸標本

アクアマリンふくしま(福島海洋科学館)所蔵の標本。本展の目玉展示の一つでもあります。少なくとも僕はそう記憶しています。

現生シーラカンス類であるラティメリアは2種知られていますが、このインドネシアシーラカンスの方がラティメリア・カルムナエ Latimeria chalumnae より珍しいらしいです。

ナガスクジラ Balaenoptera physalus の模型。知人のS氏が作ったらしいです。

ここは全体的に「海のスケール感」を体感させる構図になっているように感じます。床面の青い導線と、壁面の海中を模した背景で空間全体が「海」なっており、イルカなどの吊り展示の浮遊感も効果的です。

ナガスクジラは裏から見るとこのように実物頭骨が使われています。

タイヘイヨウアカボウモドキ Indopacetus pacificus 頭骨

ちなみにアカボウモドキに近縁ではない為か、ロングマンオウギハクジラと呼ぶ人もいます。

本種の記録は完全に漂着個体のみではないですが、科学的知識のほぼすべては漂着標本に基づいているという珍しい動物です。

2002年にも我が第二の故郷、鹿児島県薩摩川内市で漂着個体が見つかり、後に本種と認められました。

ホホジロザメ Carcharodon carcharias

よく映画の影響で過剰に危険視、乱獲されて絶滅危惧種(IUCNでは Vulnerable 危急種)になったと説明され、まあそれは事実かもしれませんがニホンウナギ Anguilla japonica やヨーロッパウナギ A. anguilla などの多くの食用とされるウナギの方が深刻です。

ニホンウナギは Endangered(絶滅危惧IB類)、ヨーロッパウナギはさらに深刻な Critically Endangered(絶滅寸前=絶滅危惧IA類)に分類されており、保全状況は明らかにウナギ類の方が深刻です。特にウナギは、稚魚(シラスウナギ)の過剰採捕 河川環境の改変(ダム・護岸) 海洋環境の変化 密漁・国際取引といった複数の要因が同時に作用しており、回復が極めて困難な状況にあります。

奇しくもホホジロザメは「恐れられた結果として減った生物」であるのに対し、ウナギは「愛された結果として減った生物」であるという対比になっていますね。

前者は偏見による駆逐、後者は利用による消費という、我々と野生動物の関係の両極端を示しています。

メガマウスシャーク Megachasma pelagios は口がでかいサメです。(何も言ってないのと同じ)

モノノケトンガリサカタザメ Rhynchobatus mononoke って、ふざけてるみたいな和名。

顔がかわいい アカウミガメ Ceretta ceretta

透明の太い筒状の支柱で、遊泳感を出しているのが良いですね。

マンボウ Mola mola を中心とした黒潮の魚類展示。

親潮の魚類展示。

これは海洋環境による収斂進化を見せる展示です。親潮という低温・高栄養環境では、細長い流線型(回遊型) 、底生型の頭部拡張、岩に擬態した体形といった、異なる系統の魚がある程度似た形態へ収斂します。

系統だけでなく環境が形質を決めることを示す生態学的展示という事ですね。

岩の上に配置しているのも、彼らを生態系の構成要素として効果的に見せています。

ダイダラボッチ Alicella gigantea

ヨコエビのなかまなのにクルマエビくらいあります。ヨコエビって普通このくらい🤏ですよ。なんでそんなに大きいんですか?

枝状、塊状、板状など、異なる形のサンゴが同じ基盤上に共存している展示。

おそらく自然界でこれだけ多様な種類のサンゴが一箇所に集まることはないだろうとは思いますが、光の争奪、水流への阿り、成長速度の違いといった、まるで植物のような競争と共存を動物がやっている面白さが伝わります。

ご覧のイルカの頭骨コレクションは、マスストランディング(集団座礁)の理解につながる展示です。

ご存知の通り、イルカは高い社会性を持つ動物で、単独行動することはあまりないそうです。この性質は通常は生存に有利ですが、マスストランディングの際には致命的に働きます。たとえば、病気や方向感覚の異常を起こした個体が浅瀬に入り込むと、仲間はそれを追従し、結果として群れ全体が座礁してしまうことがあるそうです。

マスストランディングという現象は研究にとって極めて重要な機会でもあると言います。イルカ類は沖で命を落とすと、死後すぐに沈むため骨格が回収されることは稀ですが、ストランディング個体であれば回収・解剖・標本化が可能になります。実際に博物館に収蔵されている多くのイルカ頭骨は、こうしたストランディング由来らしいです。

潜水艇

多くの博物館において、この手の展示会では自然物の展示しかない事が多いかと思いますが、さすがは国立科学博物館。実際に深海調査に使っている機械類も見せてくれました。

進化は基本的に不可逆ですが、ヒト Homo sapiens は潜水艇という名の装備を獲得する事で、エラやヒレとは異なる戦略で海中に戻ったばかりか、海洋生物だった祖先でも侵入できなかった深みにすら到達可能になっているのです!

深海探査機ハイパードルフィン

深海生物の多くは圧力の変化で浮上時に変形してしまったり、生きたまま回収できなかったりします。

この探査機は最大深度4,500mまでの潜航が可能な無人探査機で、カメラで深海生物を撮影したり2本の腕で作業したり資料を採集したり管で海水を採取したりできる代物らしいです。

ところでドルフィンってイルカって意味ですよね?

ヨコヅナイワシ Narcetes shonanmaruae の液浸標本。

大型のセキトリイワシ類 Alepocephalidae で駿河湾深海の頂点捕食者。

2021年に新種として記載されニュースになったのをおぼえています。その時にイワシのなかまではない事も知り、がっかりしたのもおぼえています。

とにかく、これほど大きな動物がそれまで知られずにいたことに、海の深さを感じます。

ネアンデルタール人 Homo sapiens neandeltarensis の頭骨。

水に潜って耳が冷やされた人ならではの病変があるとかで、15万年前には人類が海を利用していた証拠とされているそう。

本展で最も重要なメッセージ。海洋生物のレッドリストを語るうえで重要なのは、「減っている種」そのものよりも、なぜ減っているのかが我々の行動と直接結びついている種に注目することだと僕は思います。ニホンウナギ Anguilla japonica とサラサハタ Epinephelus fasciatus とスケーリーフット Chrysomallon squamiferum がここでは代表的な絶滅危惧種として選ばれていました。

ニホンウナギ減少の問題の本質は、完全養殖が成立しているかどうかではなく、現在流通している個体の大部分が天然由来であることです。

ウナギはマリアナ海嶺付近で生まれ、日本の河川へ回遊して成長します。この生活史は一見広範で安定しているように見えますが、実際には複数の人為的要因に同時に晒されています。

地球には16種のウナギ属が生息していることが知られています。このうち12種がICUNによって保全状況を評価されており、10種が絶滅危惧種ないし準絶滅危惧種に指定されています。

ウナギは食材としての人気が高いだけでなく、「謎の生物」としてその暮らしぶりにも関心が集まっています。日本列島においては指標種としての優れた性質があり、ウナギをシンボル種とする事で、失われつつある水圏の生物多様性の再生を促すことができると考えます。

ウナギと彼らを含む生態系を保全するために必要な考え方が生態系保全です。

生態系保全は保全の対象を特定の種に限定しません。さまざまな生態系サービスを担うウナギを中心に、広く生態系の豊かさを取り戻す方向へと向かうことができれば、人間社会にとってもいかにも有益です。

ウナギの持続的利用の実現に努める事は、単に文化や一つの属種を保全する以上の意義をもち、海をはじめとする自然と我々が共存し続ける未来への投資となるのです。

説教くさくなってすみませんごめんなさい。

ではここでオマケのお遊び心理テストの結果発表です。「海で連想する形容詞」を好きなだけ答えよ。それこそが「あなたの人生を現す言葉」だそうです。信じるかどうかはあなた次第です。僕は信じません。

さて!いかがだったでしょうか。ちゃきちゃきの陸生動物だったトリケラトプス Triceratops は、海とは無関係な存在のように見えるかもしれません。しかし実際には、トリケラトプスの存在そのものが、海によって成立していました。

まず、陸という環境自体が、海面の位置によって規定されています。海面が高ければ大陸の多くは水没し、陸生動物の生息地は制限されます。トリケラトプスは西部内陸海路によって東西に分断された北アメリカ大陸の、より狭小な西側の土地に暮らしていました。

逆に海面が低ければ、広大な陸地が露出し、陸上生態系が築かれる余地が増えます。つまり、トリケラトプスの分布面積は、海の状態によって直接的に制御されていました。

さらに重要なのは、陸上の環境条件そのものが海に支配されている点です。海は巨大な熱の貯蔵庫として機能し、地球全体の気候を安定化させています。この熱容量の大きさによって、極端な温度変化は緩和され、液体の水が安定して存在できる気候が維持されます。液体の水は陸上植物の存在を可能にし、その植物がトリケラトプスのエネルギー源となっていました。したがって、海は陸上の食物連鎖の最下層を間接的に支えていると言えます。

また、陸上の土壌も海と無関係ではありません。降水は海から蒸発した水に由来し、その水が岩石を削って栄養塩を供給することで土壌が形成されます。この土壌の上に植物が生育し、それを基盤としてトリケラトプスが成立していたはずです。もし海が存在しなければ、水循環も成立せず、安定した陸上生態系は形成されません。

さらに時間スケールを拡張すれば、前半で見た通り、脊椎動物の一角であるトリケラトプスの進化そのものも海に依存しています。脊椎動物はもともと海で誕生した生物であり、四肢、肺、感覚器官といった陸上適応の基盤はすべて海洋環境の中で形成されました。その後、一部の系統が陸へ進出したに過ぎません。したがって、トリケラトプスは進化的にも海の延長線上にある存在です。

このように、トリケラトプスは海から物理的に隔離されている存在ではなく、海面、気候、水循環、土壌形成、そして進化の歴史という複数の階層を通じて、常に海と結びついています。全ての陸生動物は海から独立した存在ではありません。

生命の起源であり、栄養循環の要でもある。「海ー生命のみなもとー」はダブルミーニングでした…。

次回は鳥展のレポートの可能性があります。

それじゃ👋

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* 国立科学博物館(2023)『特別展 海 ―生命のみなもと― 展示図録』東京:国立科学博物館.

* Miyashita, T., Arbour, J.H. and D’Anastasio, R. (2021) ‘Neurocranial anatomy of Palaeospondylus and its implications for early vertebrate evolution’, Nature, 593, pp. 408–412.

* Jacoby, D. and Gollock, M. (2014) Anguilla japonica. The IUCN Red List of Threatened Species.

* Tsukamoto, K. (1992) Discovery of the spawning area for Japanese eel. Nature, 356, pp. 789–791.

* Sadovy de Mitcheson, Y. et al. (2013) Fishing groupers towards extinction. Fish and Fisheries, 14, pp. 119–136.

* Domeier, M. and Colin, P. (1997) Tropical reef fish spawning aggregations. Bulletin of Marine Science, 60, pp. 698–726.

* Jackson, J.B.C. et al. (2001) Historical overfishing and collapse of coastal ecosystems. Science, 293, pp. 629–637.

* Dalebout, M.L., Mead, J.G., Baker, C.S., Baker, A.N. and van Helden, A.L. (2002) A new species of beaked whale Mesoplodon perrini sp. n. Marine Mammal Science, 18, pp. 577–608.

* 塚本勝巳 (2006) ウナギの産卵場と回遊. 日本水産学会誌, 72, pp. 205–209.

* 田中秀樹 (2014) ニホンウナギの完全養殖と資源保全. 日本水産学会誌, 80, pp. 1042–1045.

* 海部健三 (2016) ウナギの保全生態学. 東京大学出版会.

* 環境省 (2017) 『レッドリスト2017 汽水・淡水魚類』, 環境省自然環境局.

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