特別展『鳥』

最近のSNSで流れて来る動物系の映像、10割生成AI。ケラトプスユウタです。

今回は『過去の国立科学博物館の特別展邂逅レポートシリーズ』第4回となる今回は2024年冬〜2025年春にかけて開催されていた特別展『鳥』です。鳥を表に立たせてゲノム解析によって進化の道筋を調べるという分野を紹介する狙いもあったように思います。

科博では幾度となく恐竜展(恐竜博)が開催されていますが、ここまで分類群を狭く限定した恐竜展は初めてですね。とは言えさすが鳥類、現生の強み。既知の恐竜類約13000種のうち、12000種(諸説あり)、約85%が鳥類、その中で長い時間をかけてそれなりに多様化しているので、狭いようで狭くないんですね。では簡単にですが、見ていきましょう。

絢爛なインドクジャク雄成長が出迎えてくれます。

復活しつつある鳥としてトキ Nipponia nippon が紹介されています。水をさして申し訳ないですが、そうは言っても現在日本にいるトキは中国の系群。同種ではあっても日本のトキが絶滅した事実は変わりません。

アロサウルス Allosaurus
デイノニクス Deinonychus
始祖鳥 アルカエオプテリクス(アーケオプテリクス) Archaeopteryx

立て続けにご覧頂いたのは3種類の獣脚類の脳エンドキャストです。それぞれは祖先・子孫関係ではないですが、デイノニクスの脳がアロサウルスとアルカエオプテリクスの中間のような形態のような気はします。

非鳥類型獣脚類 Non-avian theropod トロオドン類 Troodontidae の巣と卵の化石との事。

トロオドン類の巣というと、卵が2つ1組で、地面を浅く掘ったU字型で縁が低く盛り上がっているイメージが強いんですが、これは何とも言えないランダムな産み方をしているように見えます。種によって違ったのかもしれませんが。

コンフキウソルニス Confuciusornis

性的二形を示唆する恐竜の稀有な例として有名な標本です。

コンフキウソルニスの別の標本。

尾端骨をもつこと以外は腕に爪があったり歯が生えていたりと、かなり非鳥類型寄りの“鳥”に見えます。

これもコンフキウソルニス。

羽毛がくっきりと残っており匂い立つような生々しさです。尾羽は目立たないのでメスでしょうか。

ネウケノルニス( ネウケンオルニス)・ヴォランスNeuquenornis volans

種小名 volans はラテン語でグライダーとかトビウオという意味だったと思いますが、この段階でもまだ羽ばたき飛行ができなかったと考えられているのでしょうか?

化石では頭骨の大部分が未発見である為、生体復元画ではこのとおり翼で顔を隠した姿で描かれていました。誠実。

現生鳥類に近い位置にある基盤的真鳥類  euornithean イクティオルニス Ichthyornis

学名に関して、たまに「魚を食べる鳥」という意味と説明されている事があります。これは誤りで、確かにイクティオルニスは魚食性だっただろうとは思いますが、記載時、サカナのような歯を持つとマーシュが考えたので「魚のような鳥」というニュアンスで命名されたのです。

イクティオルニスの復元骨格。

ここまで来ると手の爪もなく、現生鳥類と変わりませんが、先述の通りまだしっかり歯を残しています。

ヘスペロルニス Hesperornis

完全無欠の「海の恐竜」。

鳥類なのですが、こうやって口先を隠してみると頭は典型的な小型肉食獣脚類のイメージに近いです。

ガストルニス Gastornis

何を思ってこういう写真を撮ったか。それは、1年前の事なので忘れました。

ハセガワグンカンドリ Limnofregata hasegawai

化石種のグンカンドリで長谷川善和先生に献名されたもの。

2600万年前に生息した絶滅鳥類、飛べる鳥の中で史上最大級、ペラゴルニス・サンデルシ Pelagornis sandersi の生体復元模型。

鳥展ではウイングスパン7mとされています。

骨質歯鳥類 Odontopterygiformes ということで、クチバシの縁がギザギザして歯が生えているかのようになっていますが、角質だけでなく顎の骨が進化して歯状の構造が発達しているのです。歯なんか退化してもどうとでもなるんですね。

ヒクイドリ Casuarius casuarius の雛。

細長い爪が生えているテリジノサウルス類 Therizinosauria かアルヴァレスサウルス類 Alvalezsauridae みたい。

カンムリサケビドリ Chauna torquata

翼に2本ずつ爪があり、闘争するという変わった鳥です。他にもいろいろ変わったところがあり、すごく興味があります。

手前はヒシクイ Anser fabalis

ヒオドシジュケイ Tragopan satyra 雄成鳥。

求愛の時だけ青い肉垂を広げ、一対の肉質の耳状の軟組織を伸ばすらしい。モテる…!

キャプションによるとヤマドリ(亜種アカヤマドリ) Syrmaticus soemmerringii soemmerringii

鳥好きの先輩によると、アカヤマドリは通常、白色斑が全くないらしいです。でもこの標本は思いっきり白色斑があります。なのでどこの採集品なのか先輩ともども気になっております。どなたか教えてください。

通行人を見下ろす恐竜。

ムナオビクイナ Hypotaenidia torquata のキャプション。これによると本種がヤンバルクイナに系統進化した風に読めるのですが、だとしたらヤンバルクイナ H. okinawae は分岐学的にムナオビクイナの亜種として内包され、その学名は H. torquata okinawae になるべきと思うのですがどうなんでしょう?

これが一番印象的な展示でした。常識らしいのですが、カッコウという種は生まれつきそれぞれに托卵先の鳥の種類が定められていて、その托卵先の鳥の卵に似た模様の卵を産むようにできているんだそう。これはそのバリエーションを示しています。こっちの五臓六腑の調子が悪くなるレベルで面白いです。

構造色が美しいミノバト Caloenas nicobarica

日本画を鑑賞するカワラバト Columba livia

メスの方が派手な動物として有名なタマシギ Rostratula benghalensis のペア。

向かって左がオスで右の白い模様がある方がメスです。なお一妻多夫制らしい。

ズグロカモメ Saundersilarus saundersi

1990年代に3000羽余りにまで減少し、IUCNレッドリストで絶滅危惧種に指定されましたが、近年は1万種を超えて危急種になったそう。この事例はウナギ、ひいては第6大絶滅に対して、我々にできることがあることを教えてくれます。

アカオネッタイチョウ Phaethon rubricauda (上)とシラオネッタイチョウ Phaethon lepturus 仮剥製。

ネッタイチョウ類は足の形態からペリカン目のメンバーとされていましたが、ゲノム解析の結果、ジャノメドリ目の姉妹群ということになったそうです。

機動力が高いので集団の分化が起こりにくく、3種しかいないらしいです。貝類の逆ですな。

カツオドリ目 Suliformes

ネッタイチョウ目同様、2008年にペリカン目から独立したグループ。遊泳と飛行の両方が得意なカワウ Phalacrocorax carbo や奇妙な喉袋をもつオオグンカンドリ Fregata minor、鳥ロケットのカツオドリ Sula leucogaster などが含まれます。

猛禽の中の猛禽タカ目 Accipitriformes

これだけ揃えば圧巻です。

この中でも小型哺乳類を捕食する者、もっぱら腐肉専門の者、有鱗類を好む者、魚食性の者、昆虫を主食とする者など多様性を誇っています。

オオタカ Accipiter gentilis

ハヤブサ Falco peregrinus

伝統的にはタカ目 Falconiformes 含められていましたが、2000年代以降の分子系統研究(Hackett et al. 2008 など)で、ハヤブサはタカよりも、インコ類やスズメ類に近縁であることが示されています。当時センセーショナルに報道されていたのでよくおぼえています。

叡智の象徴ワタリガラス Corvus corax

スズメ目最大種を誇る巨体で他を圧倒するぞ!

ハシブトガラス Corvus macrothynchus の気嚢の骨格標本なるもの

気嚢って、恐竜やってると頻繁に概念としては出てきますがこうして観察する機会はレアです。

青みがかっているのはラテックスの色らしいです。

ツリスガラ Remiz consobrinus

随分と目が吊り上がっているのが気になって撮影しました。クチバシも短いながら鋭利でヨシの茎の鞘を剥いで中にいる昆虫を捕食するのも納得です。

これらの美しいフウチョウ類 Paradisaeidae の写真は川辺洪という方が撮ったもので、この方が先述の鳥好きの先輩です。展示を見て初めて関わっている事を知ったので驚きました。川辺先輩は Birder誌にも寄稿したりしているので、なんだ、よろしくお願いします。

さて!皆さんは鳥展どうご覧になったでしょうか。そもそも行かれたでしょうか?

想像してみてください。中生代の大地を駆けたあの獣脚類どもが、K/Pg境界を飛び越えて、いまも我々の頭上を飛び回っていると知ってどうですか?

鳥展を歩きながら、僕は思いましたね。

獣脚類、あなた方は地球の生ける宝だ。なぜならあなた方は生存した。羽毛をまとい、空へ飛び、ゲノムを未来へ引き渡した。研究者たちはいま、DNAを読む、発生を追う、行動を観察する、呼吸を測定する。化石と現生をつなぐ二重の視点で進化を解き明かすことができる。それが妬ましい!

かたや鳥盤類、特にトリケラトプス!偉大なるトリケラトプスよ!あなた方は壮麗だ。完璧な機能形態、圧倒的な造形美。

しかしながらあなた方のゲノムは読めない。呼吸は測れない。その行動は骨から推定するしかない。それが悔しい!だがそれもまた一興だ!

鳥展はこう語っていました。「生命ある者だけが、未来を手に入れる。」

獣脚類は進化のクロスオーバーイベントを勝ち抜きました。鳥盤類は過激に生きましたが壮絶に逝きました。

しかし物語は続きます。なぜなら化石生物は世代を超えて共有できる公共資産として保存・継承される限り、それもまた地球の宝と言えるからです。

東京の鳥展は終わりましたが、今年(2026年)3月14日から大阪自然史史博物館で巡回が始まる予定です。ご興味がありましたらぜひ足を運んでみてください。

それじゃ👋

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参考文献

  • 国立科学博物館(2023)『特別展 鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~』東京:国立科学博物館。
  • Hackett, S.J., Kimball, R.T., Reddy, S., Bowie, R.C.K., Braun, E.L., Braun, M.J., Chojnowski, J.L., Cox, W.A., Han, K.L., Harshman, J., Huddleston, C.J., Marks, B.D., Miglia, K.J., Moore, W.S., Sheldon, F.H., Steadman, D.W., Witt, C.C. & Yuri, T. (2008) A phylogenomic study of birds reveals their evolutionary history. Science, 320(5884), 1763–1768.
  • Jarvis, E.D., Mirarab, S., Aberer, A.J., Li, B., Houde, P., Li, C., Ho, S.Y.W., Faircloth, B.C., Nabholz, B., Howard, J.T., Suh, A., Weber, C.C., da Fonseca, R.R., Li, J., Zhang, F., Li, H., Zhou, L., Narula, N., Liu, L. & Edwards, S.V. (2014) Whole-genome analyses resolve early branches in the tree of life of modern birds. Science, 346(6215), 1320–1331.
  • Mayr, G. & Rubilar-Rogers, D. (2010) Osteology of a new giant bony-toothed bird from the Miocene of Chile, with remarks on the relationships of Pelagornithidae. Journal of Vertebrate Paleontology, 30(5), 1313–1330.
  • Kennedy, M. & Spencer, H.G. (2004) Phylogenies of the Pelecaniformes based on mitochondrial DNA sequences. Molecular Phylogenetics and Evolution, 31(1), 31–42.
  • バードリサーチ(2013)『Bird Research News Vol.10 No.1』2013年1月28日発行,バードリサーチ,東京.Available at: https://www.bird-research.jp/1_newsletter/dl/BRNewsVol10No1.pdf (Accessed 19 Feb 2026).

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