恐竜復元教室レポート 角竜の成長編

「これはちょっと山で出会いたくないサイズ。」 山本聖士

ご無沙汰してすみませんね。今年もよろしくお願い致します。ケラトプスユウタです。

今回は2020年9月20日に開かれた山本聖士さんの恐竜復元教室、角竜の成長編のレポートと称してメモした事を載せていきます。よろしくお願いします。

プロトケラトプス Protoceratops は角竜の中では最小の子供の化石が知られている(参考画像)。卵とエンブリオも最近出てきた(FYI)。以前プロトケラトプスのものだと言われていたものはオヴィラプトル類 Oviraptorid のものだったことが判明している。

京都市青少年科学センターのオヴィラプトル類の卵。キャプションはプロトケラトプスのまま。

プロトケラトプスの卵は柔らかい物だったらしい。(恐竜を内包する主竜類の卵は基盤的には殻が柔らかいものだったと考えられています)

プロトケラトプスは成長段階がよく知られている。ケラトプス類 Ceratopsid は幼体は出ているが孵化直後の幼体や卵はまったく知られていない。

角竜の成長を考える上でプロトケラトプスは避けて通れない。

柔らかい卵だとヘルクリーク層では(水辺だったから)保存されづらい。成体が普段暮らしていた場所と卵を産む場所が違った可能性がある。大型動物は産卵のために有利な場所へ移動することができる。

プロトケラトプスの見つかるジャドフタ層は営巣地だった。同じゴビ砂漠でも、タルボサウルス Tarbosaurus などの見つかるネメグト層は当時湿潤な環境だったと言われている。草原はない。イネ科は存在したが、ガマなどの生える水辺がメインだったと思われる。

昔は恐竜の子供が見つかっていなかったので、ホーナー博士は、当時乾燥した高地だった場所に営巣地があったのではないかと推定し、その場所を見事に見つけてマイアサウラ Maiasaura やヒパクロサウルス Hypacrosaurus の幼体を発見した。

角竜はプロトケラトプスも含めて集団営巣の証拠は皆無。そういう証拠があるのはオヴィラプトル類。オヴィラプトル類は産卵に適した環境を見つけてよってたかって産んでいた(?)

プロトケラトプスは同サイズの個体が複数まとまって見つかることが多いが、成体がまとまって出るのは稀。

最近はケラトプス類であるシノケラトプス Sinoceratops が山東省で発見され、アジアにもケラトプス類がいたことがわかった。アジアにはマーストリヒチアンの陸成層があまりない。トリケラトプス族 Triceratopsini がアジア側にいたのかは地層がないからわからない。

幼体のボーンベッドが発見された場合は、単一の巣から生まれたものと思って良い。しかし一頭のメスが産んだものかどうかはわからない。サイズからすると、そうだとしても不自然ではない。

プシッタコサウルス Psittacosaurus の親と仔がまとまっている標本は捏造かも(?!?)(参考画像)

角竜は硬い植物を食べていた。下顎が若干前後に動く。トリケラトプスは83日で歯が生え変わる。

ヌーやダチョウなどの幼体は成体より脚が長いプロポーションで親について回れるようになっているが、プロトケラトプスはそうではない。

乾燥地帯だと親が動物を与えたり、子供が自分で昆虫などを捕まえて食べていたかも。

ケラトプス類の幼体の完全な化石が複数体分まとまって見つかった例はない。

ツカツクリの子育ては、恐竜のやっていた事に近いかもしれない。ツカツクリは立派な巣を作って孵化したらヒナが自活できる状態になっている(参考画像)。

プロトケラトプスの孵化幼体にはフリルがほぼない。フリルの元となる構造はあるが、外形としてフリルを成していない。ホーンレットはあった可能性が高い。ホーンレットの基部は成体の化石から知られているので、プロトケラトプス自体にホーンレットがあったのは確実。インロン Yinlong でも鈍いトゲがあった(?)。そういう構造が発達してケラトプス類のホーンレットになった。

ケラトプス類は既知の全ての幼体の標本でフリルが見られる。孵化幼体の段階でフリルを持っていたかはわからない。ホーンレットは鋭かったはず。

幼体の体型は、カスモサウルス Chasmosaurusの幼体の化石(UALVP 52613)からすると成体とそんなにプロポーションが変わらない。トリケラトプスの成体は幼体と比べて顕著に脛が短かい可能性が高い。

UALVP 52613(ベイビーカスモ)

トリケラトプス亜成体のレイモンド(NSM-PV 20379)は成体より少し脛が細長い。成長すると太短くなっただろう。

レイモンド

トリケラトプスは脳の研究から嗅覚が弱く平衡感覚が鈍いことが示唆されたがそれに関して:爬虫類は脳函が脳の大きさや形を表していない。そして哺乳類も大型のものは脳函内にみっちり脳が入ってない。REQ(爬虫類脳化指数)も体重の推定値で左右される。嗅覚がそこまで弱かったということはない。平衡感覚が鈍いのは二足歩行の恐竜と比較している。四本足はそもそも安定している姿勢なので、より不安定な二本足の方が平衡感覚が鋭いのは当たり前。

ハーリーズ・ベイビー(UCMP 15442)は生まれてから数週間のサイズ(?)。ハーリーより成長しているベイビーカスモも孵化後数週間の個体。

ハーリーズ・ベイビー

小型角竜のレプトケラトプス Leptoceratops は小型獣脚類からすれば容易には襲えない動物。

反射がひどいレプトケラトプス頭骨

角竜は幼体の時は敵が多い。ケラトプス類の幼体は成体とあまりプロポーションが変わらないが、少し脚が長くフリルが小さい。角は大きくないが、上向きにニョキっと突き出している。

角竜の鼻角は卵角が起源だったかもしれない。

コエロフィシス Coelophysis は成熟が、恐竜としては若干遅いと言われている。現生のワニは半水棲になるために二次的に内温性恒温動物から外温性変温動物に進化した(!?)

幼体のフリルは比較的短めだが、ホーンレットは成体と比べて尖っている。カメの中には幼体の時に背中にある棘状の突起が、成体になると退縮するものがいくつかあるが、それと似ている。首を噛もうとするヤツにイチゲキ喰らわせられそう!顔の大きな鱗もそれなりにトゲトゲしていたかも。頬骨突起も角質で尖っていた。全体的にパンキッシュ。眉角は後方に反る。鼻角は短く子供らしい。ベイビーカスモで目の後ろや頬の外縁に大きな鱗が知られていて、おそらくトリケラトプスにもあったと思われる。

眉角は角質でどのくらい延長されるかわからないが、顕著なのは上向きに反ること。プロトケラトプスサイズ(全長2.5〜2.8m)のアフタヌーンディライトほどにもなると、眉角が著しく伸びる。ナノティランヌス Nanotyrannus あたりのドテッパラをブチヌキそう!種内競争に用いるには危険すぎる。頭頂骨正中線上のトゲも目立つ。顔立ちは既に大人びて来ている。全体的にこの段階でも装飾が多くてパンキッシュ。コイツはちょっと山で出会いたくない相手だぜ。

トリケラトプスの寿命は30〜60年。成体サイズになる前に15、6年。横に大きくなることも踏まえると18年前後。トリケラトプスは老成してくるとふとましくなってくる。骨の成長が完了するのは更に後。

ヨシズトライク(MOR 3027)は脊椎の上下が全然つながっていないが、大きさは相当なもので大型成体並のサイズ。大きさの割に細身。頭骨も巨大だが、癒合は全然完了していない。鼻骨も先端が欠けているが縫合線が明瞭。トリケラトプス成体は眉角の付け根の下側付近が空洞。トリケラトプスは成体になると頭骨が完全に癒合して縫合線がわからなり、目の周りもいかつくなり老成感が出る。だがヨシは全然その段階ではない。角は後傾せず前方を向く感じになっている。

Yoshi’s Trike MOR 3027

ガンディー Gundy も亜成体だが鼻骨が癒合している。

Gundy

レイモンドも亜成体。ホーンレットもいくつか保存されているが本来の位置からずれている。

若い頃は眉角の反りが発達し、成長すると付け根側だけが大きくなって緩いS字を成す。

トリケラトプス・プロルスス Triceratops prorsus は鼻角の上に皮骨のトゲが乗っかる。

眉角は老成すると付け根から立ち上がり気味になる。遠位端の後傾はなくなる。再吸収が行われている可能性がある(?)。ただし成体で角がちゃんと残ってるものが僅か。みんな折れてしまっている。また生体では角質が取り残されて、角質だけで後傾しているように見えている可能性はゼロではない。骨の形状が外形を繁栄しているとは限らない。ジャクソンカメレオンの角は骨芯よりも角質でかなり伸長されている。少なくとも骨で見る限り、老成したトリケラトプスの角はS字ではなく上方前向きになる。S字の角をもつ個体は中間的な成長段階。対捕食者用の武器だったものを、捕食者から狙われる機会が減ると共に繁殖に参加するようになるために、種内競争用に修正しているようにも見える。

カスモサウルスだけは成長すると眉角が退縮することが知られている。“カスモサウルス・カイセニ” (“Chasmosaurus kaiseni”)は長い眉角を持った亜成体。頭は成体より全然小さい。

アメリカ自然史博物館の“カスモサウルス・カイセニ”

トリケラトプスの眼窩周りは基本的に盛り上がっているが、老成するとこれがエラが張ったように張り出してくる。大きな鱗を支えるような骨のボコボコは老成個体だとほぼ見られなくなる。

CCMのトリケラトプス

亜成体の段階で眉角の長さは決定し、顔の他の部分が大きくなるので相対的に角は短くなる。太さは増して来る。もしかしたらカスモサウルスのように再吸収で絶対的に短くなっている可能性もある。ホーンレットもかなりトゲトゲしい状態からだんだん緩くなる。これも角質では角状だった可能性もゼロではないが、まあ中央の突起も鈍くなっているのでホーンレットの角質も鈍くなってるかなと。

成体で上眼窩角が後方に反ったものは初期ケラトプス類に多い(ズニケラ Zuniceratops もそうなのでケラトプス類の基盤的形質でしょうね)。

鼻骨はほぼ鼻骨に癒合する。ケラトプス類の中でプロルススだけは鼻骨に皮骨由来の骨(縁鼻骨)が乗っかっている。ちなみに眉角は皮骨由来ではないと言われている。ホリドゥス T. horridus とプロルススは鼻角の様子が違うのはさておき、どっちも概して角が癒合しがち。無骨なイカつさが増していく感じはあるが、全体的に丸くなっていく成長をする。スパイキーな感じが少なくとも骨格上では無くなってくる。こういう角の向きや鋭鈍の変化はセントロサウルス亜科 Centrosaurinae でも見られる。

ホーナーやスキャネラが述べたような、成長と共にフリルが薄くなって開口しトロサウルス Torosaurus の形態になるという事実はない。

鱗の構造について:でかい鱗とそれを取り巻く小さい鱗のバリエーションが作られる。一説には次第に鱗と鱗の境がなくなってモノコック状ヘルメットのような表皮になると言われているが、皮膚印象化石からは肯定されない。

目の周りは、いかつくなっているのでそのあたりはトゲトゲしい感じにしても良いかも。これは頭のぶつけ合いの時に目を保護する役割があったかもしれないだろ?両眼視野なんてない。真正面からトリケラトプスを描いた時に目が見えるのはナンセンス。

成長による体形の変化も実際起こっているが、トリケラトプスは大腿骨に対する上腕骨の長さは既知の標本では、成長による長さの比率の変化は認められない。

カスモサウルスは少し前足が長くなる傾向があるが、ベイビーカスモの前肢は未発見。

角竜は頭骨ばっか研究されているが、角のある動物は成長と頭骨の変化に関係があることが多い。

フィリップ・J・カリー恐竜博物館のパキリノサウルス幼体と称されるマウント。

パキリノサウルス Pachyrhinosaurus の幼体ははっきりした角が出ていないので、幼体の時はどんな角だったのか、瘤状だったのかどうか明確ではない。(ちなみにアケロウサウルスの幼体の鼻角は角状です)

アケロウサウルス幼体の鼻先だよ。

以上だばーろー。

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