YPM #6 ホーンドモンスター/カスモ・セントロ

僕はある面においてインドの地質学者に匹敵します(入社試験で言ったら一撃で不採用になるような事)。ケラトプスユウタです。

旅ブログと言いつつ一週間以上に渡ってこの展示コーナーから離れていないのはどうなんだとお思いのあなた!

おっしゃる通りです。

なんでこんな展示品の一つ一つにまつわる研究史を紹介しているのかと言うと、このイェール・ピーボディー自然史博物館はかなり歴史の古い施設でして、少なくともその展示物も僕が行った当時(2019年10月)の段階では良い意味で歴史を持ったものばかりでした。そういった歴史というのは展示物を見ただけではわからない側面であることもあり、それを踏まえた上で見るのと踏まえずに見るのとでは味が変わってくると思うからです。

恐竜(のみならず生物)には人それぞれ無限に近い接し方がありますから、その中で研究史が重要になってくる接し方をしている人は多くはないでしょう。でもだからと言ってここでそれを書かないとなると取り立てて書くことなくなっちゃうのでね!

じゃあ今日の偉大なるケラトプス類 Ceratopsid を紹介していきましょう!

カスモサウルス・ベリ Chasmosaurus belli

YPM 2016

実は過去の記事で上眼窩角が退縮したカスモサウルスとして名前だけ登場しております。

「ヴァガケラトプス」”Vagaceratops” (カスモサウルス・イルヴィネンシス Chasmosaurus irvinensis)ほどではないですが前方に曲がった縁頭頂骨が目を引く頭骨です。

セントロサウルス・アペルトゥス Centrosaurus apertus

YPM 2015

(キャプションではモノクロニウス・フレクスス Monoclonius flexus)

P1(第1縁頭頂骨)が大きく頭頂骨窓をガードするかのようで特徴的です。

有名なケラトプス類ですが、復元骨格を見る機会は少ないです。

「イェールの神セントロ」と言ったらこの標本のこと。

カスモサウルス・ベリとセントロサウルス・アペルトゥスと言えばそれぞれケラトプス類の二大系統であるカスモサウルス亜科 Chasmosaurinae およびセントロサウルス亜科 Centrosaurinae の模式属(分類群を設立する根拠となる属)の模式種(属を設立する根拠となる種)です。

あ! たまに勘違いされている方もいますが、模式というのはそのグループでもっとも原始的とか基盤的ということではないです。『独自性が確かなものの中で研究史上もっとも古くから知られている』という程度の認識で差し支えないかと思います。

さて! そんなことはさておき、これら二つの標本は同じ年(1914年)に同じ地層(カナダ、アルバータ州のベリーリバー層 Belly River Formation)で発見されたものです。

カスモの方がチャールズ・モートラム・スタンバーグさん、セントロの方がバーナム・ブラウンさんによる発見です。

ミスター・ボーン(おそらく Brown とBoneの発音が似ている事と化石骨を集めていたことにかけたニックネーム)ことバーナム・ブラウン氏は、1900年頃からアメリカ自然史博物館の仕事で北米西部を中心に大規模な発掘調査を繰り広げていました。

Tレックスやアンキロサウルスなんかを発見するなどの伝説的な功績から「世界最高の化石ハンター」(The Greatest Fossil Hunter)とも言われるミスター・ボーンには強力なライバルいました。

それがスティラコサウルスやハドロサウルス類のミイラを複数発見するなどの偉業を成し遂げたスタンバーグ一家です。

ライバルとは言え、恐竜研究史の黒歴史、「骨戦争」を巻き起こしたエドワード・コープ氏とオスニエル・マーシュ氏と違い、競い合いつつも互いに情報交換をするなど友好的な関係だったそうです。

まあ要するに、偶然にも競い合う化石ハンターたちがそれぞれケラトプス類の二大系統の代表選手を同年に同地域で見つけたというだけのことですな。

スタンバーグ一家は父チャールズ・ヘイゼリアス・スタンバーグさん率いる実の父子で、チャールズ・モートラム・スタンバーグさんはその長男です。モートラムさんはパキリノサウルスやエドモントニアを記載するなど古生物学者としても著名です。思えばそれまではフリルの大きさだけで区別されていたカスモサウルス亜科とセントロサウルス亜科を、ホーンレットや上眼窩角の発達具合に基づいて区別するという、それぞれをより自然分類群に近い分類法で整理したのもモートラムさんでしたね。それまではフリルが比較的小さいトリケラトプスはセントロサウルス類に含まれていました(トリケラトプスはフリルの見かけ上の大きさが二次的に小さく進化したカスモサウルス亜科)。

現在では上眼窩角が発達しているのはケラトプス類の基盤的形質であり、基盤的なセントロサウルス亜科(ディアブロケラトプス、ナストケラトプス、アルバータケラトプスなど)は発達した上眼窩角をもっていることがわかってきたので、上眼窩角の発達度合いはカスモサウルス亜科とを区別する指標にならなくなって久しいです。けれどもモートラムさんが二分した際の両グループの構成メンバーの所属については、今も変わっていません。

今日はここまで。それじゃ👋

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