デイノニクスはめっちゃでかいテノントを群れで襲っている姿が描かれるけど、実際そんな体格差はない。 山本聖士
(参考画像)
どうもケラトプスユウタです。今日は復元教室レポートです。
デイノニクス Deinonychus は標本数も多くまだまだ(クローバリー層を)探せば出てきそう。
既知のドロマエオサウルス類 Dromaeosauridae は推定体重1t未満。足の凶器を使うのは相手に組みつかないといけないので、デカいことは有利にはたらかない。
デイノニクスはドロマエオサウルス類の平均ちょい大きいくらい。
前肢は羽状。通常は鳥の翼のように折りたたんで保持していた可能性が高い。
腿と腿の間にお腹がおさまる。
獣脚類は基本的に恥骨が垂直か前傾だが、マニラプトラ Maniraptora では後傾するものが増えている。
尾は骨的には重心バランスをとるのに大して役立っていない。
胴体は前後に短く、段面はけっこう丸っこい。短いから膨らんでいるのかもしれない。
獣脚類の中では比較的コンパクトなプロポーションだが厚みはある。
腰の幅は獣脚類の中では広い方。
オルニトミムス類 Ornithomimiidae のように速く走るための進化はしていない。
体に対する脚は長い方ではある(グレゴリー・ポールのは短く描かれている)。
シックルクローもあるので高速疾走には不利。獲物を追い回すのではなく、待ち伏せ短期決戦型のハンターだったっぽい。取っ組み合いになったら狩りとしては失敗。
首は長くしなやか。マニラプトラとしては棘突起が発達している。S字の長い首はパワーのある構造。オオトカゲくらいの太さで復元してもいいが、ワニくらいの太さはやりすぎ。
群れで行動していたかは定かではない。群れる必要性はないかな。
テノントサウルス Tenontosaurus の周りで複数のデイノニクスが発見された産状が有名だが、死骸が集まりやすい場所に溜まっただけの可能性が高い。群れでテノントサウルスを襲ったにしては反撃で殺されすぎだろ笑
【後肢】
中足部はアルクトメタターサルではない。
足の爪で獲物を殺す事は現生の猛禽類がやるが、運ばないといけないのでデイノニクスのようなブレード状ではなく段面は丸い。ブレード状の爪は持ち運ぶのには不適で切り裂くのに適している。
樹上性と思われるミクロラプトル Microraptor では第1趾が小さいのに、デイノニクスはでかいのが謎。幼体の時は樹上性だった可能性がある。
3、4の長さが揃っているので4が横向きに描かれがちだが、実際は普通の獣脚類のように前向き。
脚はガニ股気味。膝に対して脛が内側に向く。
ヴェロキラプトル Velociraptor は前肢も短くなっているし、より地上性に適している。全体的に足の爪先が曲がっている。
木の幹にひっかけるのはできそう。
おそらく祖先は樹上性だった。
角質でいくら鋭くしても歯ほどの切れ味は望めないので、獲物の皮膚の硬さを考慮すると相応の脚力も必要。
ドロマエオサウルス類は第四転子は失われている。オストロム(記載者)は、尾の筋肉はなかったと指摘。
普通の獣脚類よりは歩幅が狭かったかも(大腿骨が長いので鳥類よりは広い)。
ミクロラプトラは脛骨近位端の前側の突起が発達していない。陸上適応したドロマエオサウルス類はそれが発達していて脚の筋肉量が増している事が示唆される。
シックルクロー以外の足の爪の断面はかまぼこ型で普通の獣脚類と同じだが、第1は前肢の指のように中程でくびれた楕円。
【頭】
頭はポールの復元したような吻端の反った“ヴェロキラプトルタイプ”ではなかったと思われる。
上顎と前上顎骨のつながりの様子がよくわかっていない。
そこそこ眼は大きく見えたと思われるが、眼球が眼窩いっぱいに入っていたとしても外形に表れるのは虹彩だけなのでそこまで大きく描く必要はない。
顔の羽毛はあったとしても綺麗に成形されていたはず。感染症対策として裸の皮膚だったかもしれない。
唇があったかどうかは謎。
ドロマエオサウルス類全般そうだが、口先がトロオドン類 Troodontidae のようなU字形ではない。
一様な歯がずらっと並んでいる(歯の長さが場所によって変化しない)のは獣脚類では珍しい。
【手】
半分翼みたいなつくり。
肩帯が鳥類的。肩甲烏口骨が恥骨と間違えられたくらい特殊な形。
肩帯と胸骨だけで籠状の構造を造っている。
上腕骨付け根の関節面が後方向き。腕ははばたくような方向に動かせる構造。
鳥の羽ばたきで水平より下に動くのは手首より先だけ。上腕骨は大きく下には動かない。
デイノニクスは鳥よりは下向きに動かせたと思われるが程度の問題。
滑空者の翼だが、羽ばたきに全適応している。
羽毛を取ったら手羽先みたいな形をしていたはず。
デイノニクスは上腕よりも下腕の方が短い。
半月状手根骨があり、前後方向に鋭く曲げるような動き(鳥のように畳むような動き)ができた。
第1指は広げると外側に向き、閉じると内側に向く構造。
【尾】
神経突起と血導弓が前に伸びて重なっている。滑空する祖先から受け継いでいると思われる。つまり滑空時にバランサーの機能をもっていた物の名残。
尾の付け根は突起の間隔が空いていて柔軟。
横突起は長くなっていないので横方向には柔軟に動く。
ユタラプトル Utahraptor は陸上に適応して二次的に長い突起を退化させた。
尾の断面は付け根以外は縦長の楕円形。ミクロラプトルにおいても楕円形だとすれば、陸棲ドロマエオサウルス類にも尾羽があったかもしれないが、ミクロラプトルは化石がレリーフ状なので現状わからない。
デイノニクスとミクロラプトルの差は、腰の前後長と胴の長さに尽きる。
デイノニクスの胴椎は頚椎化して減っているのではなく、胴椎自体が短くなっている。
以上だばーろー