ロイヤル・ティレル古生物学博物館 #12 タンケ博士と気高い騎士たちの行伝

見慣れない料理は食べる主義。ケラトプスユウタです。

前置きは抜きにしてさっそく始めたいと思います。

スティラコサウルス・アルベルテンシス Styracosaurus albertensis 頭骨。

TMP 2005.12.58

州立恐竜公園で1991年にダレン・タンケ博士によって発見されたものですが、その時は鼻角だけだと思われたそうです。なので、それは「やることリスト」に記入されただけでしばらく発掘を待っていました。

2000年代頭にようやく採集が行われ、そこで鼻角だけではなかったことがはじめてわかったそうです。

顔とフリルはバラバラでしたが、近くに存在していて、再びアッセンブルされました。左眼窩後部が石膏で補修されてるそうな。

アンキケラトプス・オルナトゥスAnchiceratops ornatus

TMP 1983.001.0001.

今回紹介できる唯一のカスモサウルス亜科。

1983年に6ヶ月かけて補修された頭骨で、何千もの小片を水洗いし、乾燥させ、接着したらしいです。

かはくのアンキケラトプスもこの方でしょうか?

セントロサウルス・アペルトゥス Centrosaurus apertus

TMP 1997.085.0001 (TMP 97.85.01)

こちらも州立恐竜公園産。

老齢の個体。上下に圧縮されていて典型的なセントロサウルスのイメージとはかけ離れた形なので、横から見ると(1枚目)ブス。

フリルの裏の石膏が化石と似た色になっているせいで開口部があまり目立たないですが、よく見るとふつうに大きく開いています。

参考文献: https://peerj.com/articles/252/

アルバータケラトプス・ネスモイ Albertaceratops nesmoi

この標本についてはタンケ博士が詳しいエピソードをFacebookの角竜のコミュニティ上で紹介されていたので、そちらから大いに参考にさせていただいた情報を紹介しちゃいたい!

1993年かそこらでダレン・タンケ博士たちはカルガリーのカナダフォッシルという化石業者のところに行きました。カナダフォッシルはその時、大型ケラトプス類の組立骨格を手がけていて、その為に多くの骨を準備していました。頭骨は完全にバラバラになっていたので、パーツを識別してそれらを組み合わせて望みうる最高の復元頭骨を作成する事がタンケ博士たちの責任でした。

タンケ博士の2人の同僚は頭骨要素の断片の数々で、2つの山を作り始めました。

博士は彼らに尋ねました。「お前たちいったい何してるんだ」と。

彼らは「カスモサウルス亜科とセントロサウルス亜科でパーツを二つの山に分けているのさ」、「どっちの山がより大きくなるか、賭けをしているのだよ」と言いました。

「ばかかよ!」タンケ博士は笑いながら抗議しました。「骨は全て単一のボーンベッドからのもんで、単一の種で構成される群れのもんだぞ!」

競るほどの数のカスモサウルス亜科とセントロサウルス亜科が単一のボーンベッドから見つかったことは未だかつてありません。

また、タンケ博士は両方の分類群の特性を持っているように思われたアヴァケラトプス Avaceratops を思い出しました。

直感的にアヴァケラトプスがこの動物の幼体である可能性を考えました。

彼らは、大きな目の上のツノはカスモサウルス亜科の物でなければならず、短くて広い鱗状骨はセントロサウルス亜科であると指摘しました。実際、当時はその点についての議論が難しいものでした。

カナダフォッシルが持っているパーツは、アヴァケラの成体、またはこれらの両方の特徴を持った新種であると主張していましたが、しょうがないのでタンケ博士は黙って、そして辛抱強く、頭骨要素の山作りを手伝い、そして首から後ろの骨もやりました。

しかし「存在しない何かを創造しているのではないか」との疑念は募るばかりでした。

タンケ博士は後にそれをキメロケラトプス “Chimeroceratops” と仮称しました。

最後に、カスモサウルス亜科の頭骨要素の山が大きかったので、それをもとに一つの復元頭骨を作ることになりました。

この時点で、自分たちがしていたことが間違っていることを強く確信していたので、責任を負いたくないタンケ博士は自分の名前をその製作にあたったスタッフクレジットからはずしてもらいました。

カナダフォッシルは福井県立恐竜博物館のために謎のカスモサウルス亜科の頭を持った素晴らしい恐竜のマウントを作り続けました。

ですから、福井には間違った“アルバータケラトプス”がいます(参考記事)。

3人はドラムヘラーへのドライブ中に議論をしました。しかしタンケ博士の考えは一笑に付されただけで受け入れられませんでした。その後、2001年に「カスモサウルス亜科的な上眼窩角」と短い「セントロサウルス亜科的な短い鱗状骨」を兼備したケラトプス類が発見されました。ここでタンケ博士の言っていた事が立証されました。

それは後に、新種の基盤的セントロサウルス亜科としてアルベルタケラトプスとして記載されました。

長い上眼窩角と短いフリルを持つ角竜という考えが1993年に却下されたこと。そしてその後、アルベルトケラトプスが 7、8年後に記載された事について、タンケ博士は見返した気分で誇らしく思っているようです。

また少なくとも2017年4月9日の時点で、アヴァケラトプスの存在は依然としてタンケ博士を困惑させ続けていました。そして、彼はそれがトリケラトプスの系統と関係があるとも考えています。ちょっと変わった考えですが、ケラトプス類のエキスパートであるタンケ博士の「直感」によるものは軽視できませんね。

「それが証明された場合、あなた達は私が正しかった事を思い出す事になる」と同氏は述べています。

おそらくすべての幼若なセントロサウルス亜科の頭骨は基本的には似ていて、成熟と共に突然それぞれの属らしい形態に変わったということも示唆されています。

アルバータケラトプスは『何事においても枠に囚われてはいけない!』と我々に教えてくれている、とタンケ博士は言います。偉い人は良いことを仰いますね!

それじゃ👋