動物は来ては去る。ケラトプスユウタです。
長く連載してきましたロッキー博物館のレポートも今日で最終回です。よろしくお願いします。
ティラノサウルス・レックス Tyrannosaurus rex のビーレックス B-Rex ことMOR 1125はこのあいだも紹介しましたし、骨髄骨(こつずいこつ)の研究がされていることも書きましたが、それに関する展示もあったので改めて紹介します。
これね。
ちなみにキャサリン Catherine というニックネームもあるようです。そっちの方がビーレックスより名前っぽいですね。
例によって反射がやばいですが、ビーレックス B-Rex の実骨
左が中足骨で右が大腿骨(割れてます)。
大腿骨の断面、赤い印は軟組織を示しているらしいです(見てもよくわかんない)。
骨髄のカルシウム量が増えて骨髄が骨みたいになったものを骨髄骨と言うようで、現在では鳥類のメス成鳥に特有の組織らしいです。卵の殻🥚をつくるときのカルシウム供給源にするんですと。
キャサリンからは骨髄骨にしか見られないケラタン硫酸なる物質が見つかったということで、初めて科学的にメスであることが示唆された恐竜となりました。
今だとスー Sue (FMNH PR 2081) も同じ手法でメスだと示唆されてるんでしたっけ?
メスの方が血導弓(尾椎の下側の骨)が一本少ないという話もありますが、こちらは参考程度に考えています。
気になるのはより鳥類と遠縁な恐竜の場合だとどうなのかということです。特にケラトプス類。もし仮にワニのメスも骨髄骨を持っていたとしたら、主竜類のメスは基本的に骨髄骨を持っていたと考えて不都合はなくなるのですが、そうではないので一部の獣脚類(おそらく一部のコエルロサウリア Coelurosauria )だけが持っていた組織と見るべきでしょうかね。
どうあれ、こういった深い研究ができるのもティラノサウルスのすごいところだと思います。
続いてレプトケラトプス科 Leptoceratopsidae の角竜類 Ceratopsia モンタノケラトプス・ケロリンコス Montanoceratops cerorhynchos (複数のキャプションで頑なにモンタナケラトプス Montanaceratops になってましたけどシノニム?🤓)
幼体(Juvenile)
白末のヘルクリークにはトリケラトプス Triceratops 、トロサウルス Torosaurus のようなケラトプス類 Ceratopsid とは別に、このような基盤的角竜も暮らしていたんですな。ケラトプス類とは体の大きさが全然違うので生態も違っていたのは明らかですね。
この標本はまったく同じ物が御船町恐竜博物館の特別展「進化するモンタナの恐竜たち」で展示されていました。この標本、この恐竜について他に言えることは全てその時のレポート記事で書いているのでご興味ある方はご参照ください(2度も書くかよ)。
オルニトミムス Ornithomimus も紹介します。
頭骨
尾椎、腸骨、指骨と末節骨
オルニトミムスの手の爪はほとんどの肉食の獣脚類 Theropodのように鋭いですが、動物を捕まえるような物ではありません(断定)。
植物食か植物食寄りの雑食と考えられますので、木の枝を寄せるような使い方をしていたのではないかと、山本聖士さんの復元教室レポートでも書いた覚えがあります。
ヘルクリーク層でオルニトミムスの骨格が見つかることは稀ですが、足の末節骨(つまさきの骨)はよく見つかると聞きます。とか言いつつ写真の末節骨は3個中2個がアーティファクト🤓
ヘルクリークの代表的なワニ ボレアロスクス Borealosuchus 復元骨格。
トリケラトプスやティラノサウルスの時代、有名なデイノスクス Deinosuchus のような巨大なワニはすでに姿を消し、水辺のワニは恐竜たちにとってデイノスクスほどほど脅威的ではないものだけになっていたようです。
ボレアロスクス実骨。
最後の恐竜は時代を遡ってツーメディスン層 Two Medicine Formation のドロマエオサウルス類 Dromaeosaurid
サウロルニトレステス・ラングストニ Saurornitholestes langstoni
いわゆるラプトルの中でも体に対してシックルクロー(第2趾の鉤爪)が大きいことで知られていましてアグレッシブな捕食者だったのが伺えますけども、キャプションではこの全長2mほどの動物が(ダスプレトサウルス Daspletosaurus を差し置いて)トロオドン Troodon と共に当時のツーメディスンの頂点捕食者だったとの解説(!)。ダスプレトサウルスは完全な腐肉食性だったことを前提としているのだと思います(さすがモンタナ州立大学)。
さらに自慢のシックルクローで大型植物食恐竜(エイニオサウルス Einiosaurus やマイアサウラ Maiasaura)を倒すこともできたとも書いてあり二度びっくりです(否定はしてない)。
ホールの最後に展示されていたジオラマもご紹介します。
「死んでいたトリケラトプスの腐肉を漁るティラノサウルス」とはっきり書いてありました。さっきのダスプレトサウルスの話にも繋がりますが、やっぱり。
でもペックスレックスやワンケルの扱いなどを見てもティラノサウルスは大々的に展示されているので、ホーナー博士がTレックスを目の敵にしているという噂は違うような気がします。たとえ走れなくて腐肉食でも偉大な肉食動物と考えているような🤔(わかんないけど)
成長段階の異なるメンバーからなるトリケラトプスの群れ。
頭部の色のパターンが2通りあるのは雌雄差でしょうね(確信)。
頭部全体をつるっとした兜のようなモノコック状のケラチンで覆っている復元で面白いし強そうですが、知られている頭部の皮膚印象からすると間違ってそう。
川に集まるエドモントサウルスとオルニトミムスとボレアロスクス。
トロサウルスがケースの隅に。
意図的にトリケラトプスの群れから隔離されているように見えますが、どういう風の吹き回しでしょうか!!?(トロケラトプス仮説を放棄したか、成体になると群れから離れる設定か)
これにて Hall of horns and teeth は終わり!
あとは歴史と風景写真の展示がありましたが、当ブログでのロッキー博物館の紹介はここまでにします。最終回らしく雑多な記事になりましたが。
自説を疑わない展示は良くも悪くも堂々としていてある意味堂々たるヘルクリークやトゥーメディスンやクローバリーの古生物たちに相応しいものだと思いましたね。実骨やホロタイプの展示数も日本では絶対にありえない量で圧倒されました。なんだかんだ言って、万人におすすめしたい博物館です!
アメリカバイソン Bison bison の剥製でさよなら👋