パイナップルは好きだけど酢豚の中にいてほしくない。ケラトプスユウタです。
カーネギー自然史博物館のレポートの5回目ですが、なんと1回目からとっくに1年以上経過してしまっているんですね。ほんと申し訳ないです。ちなみに行ったのは2019年。恐竜博2019の年と考えると大昔ですな。
今回はディプロドクスやアパトサウルスが聳えるメインホールの壁の一つを成すショーウィンドウの中に展示されている標本たちを紹介します。ほとんどが非常にこまかな石灰質の粒子の泥岩の中に埋めこまれたような、いわゆるレリーフ状の化石です。シソチョウ(Archaeopteryx)で有名なドイツのゾルンホーフェン石灰岩(ジュラ紀後期)のもの。ゾルンホーフェンは入江に堆積した地層であり、海洋生物、陸生動物、汽水生物の化石が見つかります。



いずれもシルエットがくっきり保存された見事な化石。扁平で幅の広い体をしており、底生生物だったことを思わせますね。これらの生物は化石エイとしては最古のものだそうですが、すでに現生のエイにそっくりです。

それぞれ「曲がった歯」、「丸い」を意味する属名と種小名です。この標本ではわかりませんが、マダイの奥歯やグロビデンス(Globidens)みたいな丸い歯を持っているそうです。画像検索すると出てきますが、実際に見てみたいですね。種小名の「丸い」は側面から見た体のことを言っています。
貝や甲殻類をバリバリ食べていたのではないでしょうか。

アナゴのような長い体にサバのような半月型の尾びれの組み合わせをもつ変わった魚。鱗の装甲など原始的な特徴も持っていますが、その鱗は原始的な魚に比べると小さく、体を柔軟に動かすことができたようです。顎は非常に発達しており、高い咬合力を持っていたと言われています。

背側から見ています。尾の先、右の翼端、胸骨および烏口骨を除き完全な標本。翼竜の翼膜が脛骨の外側に付着していることを示す最適な標本としてこの標本を扱っていますが、正直この標本を見てもよくわかりません。
また、ホーン博士の論文では“よく骨化した胸骨”(“well ossified sternum”)を持っているとも書かれています。たしかに腹面では存在するはずなのですが、僕には確認できません。一般的に、翼竜はよく骨化した胸骨(実際には鎖骨と鎖骨間が組み込まれた胸骨複合体)を持っているという意味かもしれません。

キャプションではプテロダクティルス(Pterodactylus)・ミクロニクス。
ゾルンホーフェンでも貴重な完全な小型翼竜の骨格。1970年からプテロダクティルスで通っていたそうですが、2011年のフレイ博士らによるアウロラズダルコ・プリモルディウス(Aurorazhdarcho primordius)記載後、2013年にベネット博士が「プテロダクティルス・ミクロニクスとアウロラズダルコ・プリモルディウスって同じじゃね?」と気づき、この標本は他の“プテロダクティルス・ミクロニクス”もろとも改められたそう(ミクロニクス種がアウロラズダルコになっただけでプテロダクティルス自体は有効。念のため)。第4中手骨の長さが橈尺骨の長さと同じであることや、第1指が非常に長いことなどがプテロダクティルスと違っているそう。ちなみにベネット博士はアウロラズダルコはグナトサウルス(Gnathosaurus)の幼体である可能性を示唆していますが、グナトサウルスはホロタイプの頭骨と下顎のみ、アウロラズダルコは幼体の頭骨は知られていますが、唯一の成体の標本は頭骨を欠いているので検証が難しいそうで、アウロラズダルコとグナトサウルスは暫定的に有効とみなすべきとされています。
参考文献:
ややこしい話ですが、研究の黎明期から知られている古生物にはよくあることですな!
この記事で紹介する化石はこれだけですが、もちろん実際に展示されているものはこんなものではありません。
2021年最後の記事にするつもりが2022年最初の記事になってしまいました。
今年もよろしくお願いします。