食糧自給率が低いのにフードロスとかやってる場合じゃないでしょ。ケラトプスユウタです。
ワシントンDCのスミソニアン国立自然史博物館の展示物を紹介しています。
タイトルの通り今回はアロサウルス Allosaurus という恐竜を取り上げます。
アロサウルスは後期ジュラ紀の代表的な肉食獣脚類です。ごく最近もアロサウルス属で共食いに関する研究が発表されて話題になりましたね。このアロサウルス・フラギリスA. fragilis の USNM 4734 はそんなアロサウルスの中でも特に有名な標本です。
なぜなら長い間、これが唯一の一個体分のみで構成されたアロサウルスのマウントだったからです。
フラギリスのホロタイプが不完全なのでこの標本をネオタイプにするという案もあると聞いたことがあります。
アロサウルスの標本は世界中いたる博物館に展示されていますが、ほとんどは数体分の骨を組み合わせたコンポジットおよびそのレプリカです。
リニューアル前は胴体ががっしりしすぎていましたが、新復元ではより妥当な華奢さになりました(参考画像.以前の様子)。
前回紹介したステゴサウルスとケラトサウルスと全く同じロカリティで発見された標本だそうです。
新復元ではアロサウルスにしては珍しく大人しい姿で復元されています。卵を守っている様子です。
不勉強で卵の形質や積み方がアロサウルスのものとして妥当なのかどうかはよくわかりません。すみません。
どうあれ獰猛なイメージばかりが独り歩きしがちなアロサウルスの違った生態を描こうという試みは素晴らしいですね。ハッチャーとワンケル、ステゴとケラトもそうでしたが、他の博物館では行われていないような前衛的展示をスミソニアンのような老舗の名門が率先して実現させて行くところにアメリカン・スピリッツを感じませんかそうですか。米しか食わなさそうな昭和日本男児風情がアメリカン・スピリッツを語るなと言われそうなのでこの辺にしときましょう。
余談ですが、マーシュ博士が1879年に記載したラブロサウルス Labrosaurus という属があります。これは単一の下顎の骨だけで知られています(参考画像)。
その骨は前端部が膨らんでいる事が固有派生形質、つまりアロサウルスとの違いと言われています。これは前歯を2本欠いており、そこに膿瘍があるそうです。今日ラブロサウルスの固有派生形質とされたものは病変に過ぎず、したがってアロサウルスのシノニムだと広く信じられています。そしてスミソニアンにある両種の標本は、同じ場所から発掘されたものです。しかもスミソニアンのアロサウルスは、ラブロサウルスのホロタイプとちょうど同じ部位が欠けているらしいです。つまり、この骨はUSNM 4734のものかも知れないと言われています。
今日はここまで。それじゃ👋
参考文献:
Madsen, James H.; Welles, Samuel P. (2000). Ceratosaurus (Dinosauria, Theropoda), a Revised Osteology. Miscellaneous Publication, 00-2. Utah Geological Survey.
Holtz, Thomas R., Jr.; Molnar, Ralph E.; Currie, Philip J. (2004). “Basal Tetanurae”. In Weishampel David B.; Dodson, Peter; Osmólska, Halszka (eds.). The Dinosauria (2nd ed.). Berkeley: University of California Press. pp. 71–110.