世界で最も速いもの、それは、世界最速だ。ケラトプスユウタです。
今回もフィラデルフィア自然科学アカデミーです。
特に目玉展示というわけではないけど存在感があって人気であろう展示物を紹介します。
トサカがある方のハドロサウルス類 Hadrosaurid、コリトサウルス・カスアリウス Corhythosaurus casuarius。
大きさのわりに胴体が薄く見えるかもしれませんが、肋骨の変形というよりはこんなもんと言うべき厚み。
動物性のエサと比べて消化に時間のかかる植物を食べる鳥盤類 Ornithischia は、内臓のスペースをかせぐために胴体の横幅があることが多いですが、コリトサウルスのようなハドロサウルス類はむしろ胴体の幅は狭く、代わりに高さを増しているんですな。
二足歩行かつ走行に頼る生活をしていたので脚の可動性の面で大きなお腹をもちたくなかったのでしょう。
優れた咀嚼機能をもっていたのでそれほど大規模な内臓は必要なかったという要因も大きいと思われます。
まあ勘ですけどね。
ご丁寧に網目状の骨化腱も組み込まれています。これは多くの鳥盤類に見られる構造です。骨になった腱です。
原始的な鳥盤類から受け継いだもので、おそらく走行によるひずみなどを和らげるはたらきをしたと考えられています。
足元にはコリトサウルスに近縁なランベオサウルス・ランベイ Lambeosaurus lambei の頭骨。よく見るタイプです。
カスモサウルス・ベリChasmosaurus belli
ROM 843
世界で最もマウントが出回っているであろうカスモサウルス標本にここでも会いました。
日本にもあることはありますが、常設展示されているところは多くないので拝める機会は稀ですね。
前肢はロイヤル・ティレル古生物学博物館の横に肘を張り出した同一標本より現実的な復元になっています。
カスモサウルスはしばしば群れで生活する動物として描かれますが、化石証拠はありません。アルバータ州のダイナソーパーク層 Dinosaur Park Formation で共産する別のケラトプス類 Ceratopsid、セントロサウルス Centrosaurus は大規模なボーンベッドから知られており群れで生活した可能性が高いようですが、僕の知る限りカスモサウルスは複数個体が一箇所で発見されたことはありません。そもそもカスモサウルス亜科自体が複数個体まとまって見つかることが稀です(皆無というわけではない)。
この傾向からするとセントロサウルス亜科は群れで、カスモサウルス亜科は単独で生活するのが基本だったと言いたくなりますが、ライオンとトラのようにごく近い分類群の中でもバリエーションがあるので系統からそこまでは論じることはできないでしょう。
また、カスモサウルスは幼体と成体の形態が違うことから複雑な社会性のある動物だったとする説があります。彼ら同士が幼体と成体を見分ける必要があるという事が根拠ですが、これは例外の方が多いですよね。大半の無脊椎動物、魚類、両生類、トカゲなど枚挙にいとまがありませんね? 幼体と成体の形態が同じ生物がいったいどれほどいるというのでしょうか。幼体において角やフリルが未発達なのは単に繁殖に関わらないということに尽きるかと思います。祖先の形質を残しているという事もあるでしょう。
要するにカスモサウルスが群れを作っていたという事に対しては間接証拠すら一つもないということです。
群れを作らなかったことは、トリケラトプスTriceratops の脳(エンドキャスト)の研究で示唆されましたが、カスモサウルスのようなほかの角竜との間にその辺りの有意な差があったのかどうか調べてみたら面白いと思うのですが、いかがでしょう?!
今日はここまで。それじゃ👋