なぜ知ってるのかというとバカだから。ケラトプスユウタです。
たいへんお待たせいたしました。今日はAMNH編の最終回!
なんと僕が行った時、爬虫類ホールの奥の企画展示室でやられていたんですなあ!
T.rex: The Ultimate Predator (ティラノサウルス: 究極の捕食者) という特別展が!
(何を以て究極としているのかは知りません)(トリケラトプスやトロサウルスと共存していた頂点捕食者だからかな(トリケラトプス至上主義者))
https://www.amnh.org/exhibitions/t-rex-the-ultimate-predator
👆概要はこちらの公式ホームページをご覧いただければ早いです。
今年(2020年)の8月までやってるようですね。
ではさっそく見ていきましょう。
この可愛げのある鳥っぽい恐竜が最初に出迎えてくれるわけですが、こう見えましてもティラノサウルス Tyrannosaurus の生体復元模型です。ありがとうございます。もちろん幼体です。
そして壁に映し出されたこの幼体のシルエットが成体のプロポーションに見えるというすごい演出。成長すると角の角度が変わっちゃうトリケラトプスでは難しそうです。
「なんだこれ」と感想を言いたくなる人もいらっしゃるでしょう。
このスカスカのスポンジみたいな化石は、記録上世界で初めて発見されたティラノサウルスの骨で、脊椎の一部です。実物です。エドワード・コープ博士は1892年にこれにマノスポンディルス・ギガス Manospondylus gigas と命名しましたが、後にティラノサウルスと同一であることが指摘されるわけです。
ティラノサウルス・レックスが記載されたのは1905年ですが、先に命名されたマノスポンディルスが優先されなかった理由はこの標本を見ればわかりますね…。
ですがティラノの研究史的には重要な標本です。
基盤的ティラノサウルス上科 Tyrannosauroid プロケラトサウルス Proceratosaurus の生体復元模型。「ケラトサウルス」の名がついていますが特にケラトサウルス Ceratosaurus に近縁というわけではありません。
トサカ状突起の化石証拠は鼻先のごく一部しか見つかっていませんが、グアンロン Guanlong の発見を受けてグアンロンのトサカに似たそれを戴いた復元となっております。
それはともかく、マッシヴなティラノサウルスもスレンダーな軽量級獣脚類の一部から派生したということです。
中国遼寧省の前期白亜系から知られる基盤的ティラノサウルス上科、ディロン・パラドクスス Dilong paradoxus 頭骨。
ティラノサウルスのなかまはアジア起源でベーリング陸橋が繋がっている時に北米に移って来たのかもしれないと言われています。
ディロンの生体復元模型。
そうそう、ディロンはティラノサウルス上科としては初めて羽毛の存在が示唆された例です。 シオングアンロン・バイモエンシス Xionggualong baimoensis の生体復元模型。
依然として鼻先は細長いですが、おもむろに大型化してまいりました。ちなみにこの段階ですでに速く走るための脚の構造でティラノサウルス科 Tyrannosaurid の共有派生形質であるアークトメタターサルを獲得していました。
「ティラノサウルスの架空の三本目の指」(右と左)
AMNH 5027 にもともと付けられていたという第3指。当初ティラノサウルスはより基盤的な獣脚類のように3本指だと思われていたのでそのように復元されていたのですが、2本指だとわかったので外された次第。
ティラノサウルス成体の趾骨(足指の骨)。この先に末節骨(爪先の骨)がつきます。
大腿骨。よく曲がっているのは筋肉がもりもり付いていた証拠です。
タルボサウルス Tarbosaurus の歯とアリオラムス・アルタイ Alioramus altai 頭骨。
タルボサウルスとアリオラムスは同時期のモンゴルに生息していました。タルボの歯はより厚く、アリオラムスの歯はより薄いので獲物や狩の手法の違いを表していると思われています。
アリオラムス・アルタイの上顎骨。
ティラノサウルスの下顎の骨。歯は2年で生え変わると書いてあります。
ティラノサウルスの糞石つまりウンコの化石。
角ばった骨が含まれているとのことで、動物を骨ごとバリバリいっていた事を示唆しています。
ティラノサウルスの歯がぶっ刺さったエドモントサウルス Edmontosaurus の尾椎。
刺さった後に成長した痕跡があるとのことで、このカモハシ竜はティラノに噛まれたあと逃げ延びたことを物語っています。つまりティラノサウルスが屍肉を漁るだけのスカンベンジャーではなく、生きた獲物を襲っていた事は確実と言えますね。
ティラノサウルスの皮膚印象化石。ウロコはウロコとは呼べないほど細かいもので、もしかしたら羽毛に覆われた祖先から進化したことと関係あるかもしれません。
アリオラムスの生体復元模型。
(ふくらはぎ太すぎじゃね?)
ティラノサウルス亜成体だそうです。
いわゆるナノティランヌス Nanotyrannus 段階ですか。
デスポーズのタルボサウルス幼体の産状(?)
相当美しいですが、実物なのかどうかは不明です。(ジャケットに包まれているあたりが実物くさい)
奥にはタルボサウルス大きめの亜成体の頭骨。ちなみにタルボサウルスは明確な成体が未発見で、ティラノサウルスは多くの標本が成体なんだそう。
展示の目玉、ティラノサウルス成体(たぶんAMNH 5027)の前傾姿勢マウント。
やっぱりティラノサウルスのホネはかっこいいな。
左からライオン、ヒョウ、チーターの頭骨。
大型肉食哺乳類の代表をTレックスの横に並べて哺乳類に劣等感を植え付けていくスタイルですね。
この手法は映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の終盤、動物園のライオンとTレックスが向かい合うシーンでも用いられています。
実物大の生体復元模型です。このように首の背側に(だけ)羽毛がある復元はしばしば見ますが、どうなんでしょう。
大きなスクリーン(?)で幼体と成体が動きまわっていました。
ティラノサウルスのマウント5体とか他のティラノサウルス類の標本とかがもっと充実してるかと期待してたので…あんま言うとアレか。(ちなみにティラノ5体は今年大阪の特別展で公開されます)
まあ紹介して来たように貴重な標本と共にティラノサウルスを様々な側面から紹介した内容でおもしろく拝見しました。
会期中にニューヨークへ行かれる際はぜひご覧ください。
さよなら!👋