どさくさと浅草は一字違い。ケラトプスユウタです。
今日は新潟県立自然科学館で2019年3月から5月まで開催されていた「恐竜展 〜科学が解き明かす恐竜のすがた〜」のレポートをやりますね。
とっくに終わってるわけですが、開催概要はこちら。
展示会場の外にデイノニクス Deinonychus の生体復元模型が三体。
プロトケラトプス Protoceratops の生体復元模型も。(尾はもっと断面が縦長の楕円形になるような形じゃないかな)
生体復元の変遷を模型で紹介。
イグアノドン Iguanodon は左から恐竜研究黎明期のサイイグアナの脚をまっすぐにしたような物→ズェデニック・ブリアンさんのカンガルー型復元→最近の解釈。基本的には二足歩行で、摂餌中や水を飲む時とかゆっくり移動する時などに四つ足になったと考えられています。四つ足のまま走るということはないでしょう。
ティラノサウルス Tyrannosaurus もいわゆるゴジラ立ち→バランス型。
ブラキオサウルス Brachiosaurus の復元は尻尾を引きずらなくなった事以外は大きく変わってないように見えますが、首の角度が緩やかになったのかな。鼻周りの復元の違いは新旧というより、鼻骨を覆う生体組織の解釈による差だと思います。
続いて恐竜記念硬貨のコレクション。こういう文化面にフィーチャーした展示はあまりありませんので敢えて紹介します。(「科学が解き明かす恐竜のすがた」と言いつつ早速科学ではないという意見はたぶん受け付けてなかったと思います)
これはモンゴルの記念硬貨でプロトケラトプス。
1シエラレオネドルのステゴサウルス Stegosaurus
同じくティラノサウルス。
2種類とも1エリトリアドルのトリケラトプス Triceratops
……1ドル?
おいトリケラなのに1ドルだと?
ちなみに、いずれも旧復元でモンゴル以外は少なくともその恐竜の化石産地ではないですね。
切手コレクションもありました👇
なかなか骨が出てこなくてすみませんが、次は角竜 Ceratopsia の展示コーナー。
あらかじめ言っておきますと、いずれも2014年の大阪府立自然史博物館の「恐竜戦国時代の覇者!トリケラトプス展」の巡業組です。
ジュラ紀の基盤的角竜類、インロン Yinlong (左)とそれよりは派生的な白亜紀のプシッタコサウルス Psittacosaurus の生体復元模型。
どちらもアジアの角竜ですが、角竜がアジアで誕生したことはほぼ確実です。北米のケラトプス類 Ceratopsid もアジアの角竜を祖先に持っているのは確実でしょう。最近はケラトプス類自体もアジアで誕生した可能性がほのめかされています。
それにしてもかわいく作る気は毛頭なかったみたいですね。
やっと骨が出ました。プロトケラトプス生体復元模型と成長段階別の頭骨。
プロトケラトプスは成長段階が最もよく知られている恐竜だと思います。成長と共にフリルが広くなるのはこれを見てわかりますが、フリルには性的二形(雌雄差)がある事もわかっていて、性的なディスプレイだったと言えそうです。
ズニケラトプス・クリストフェリ Zuniceratops christpheri
MSM P 4185
ズニケラトプスは見ての通り体は小さいですが、立派な角とフリルを備えている上、「二重歯根」と言って歯の歯茎に埋まっている部分が二股になっているというケラトプス類に共通の形質を持っているんですが、分岐学的にはセントロサウルス亜科 Centrosaurinae とカスモサウルス亜科 Chasmosaurinae (この2つのタクサでケラトプス類を構成する)が枝分かれする前のポジショニングである関係で普通はケラトプス類ならざる動物として扱われます。
ですが味的には十分ケラトプス類のそれですよね。
さて、いよいよ角竜もとい恐竜界の華! ケラトプス類のショウ・アップ!
(てか脈略のない並べ方だなぁ)
ディアブロケラトプス・エアトニ Diabloceratops eatoni
UMNH VP 16699
ラストチャンス・スカル Last Chance Skull
キャストが量産されているので目にする機会は多い方ですね。
P1(頭頂骨のホーンレット)は標本だと横向きに伸びていますが、変形の結果そうなっているだけで、らえらぷすさんによると前に向いて伸びるのが妥当とのこと。
復元と言えば、ラストチャンスが発見されたユタ州のワーウィープ層 Wahweap Formation はティラノサウルス類 Tyrannosaurid のリトロナクス Lythronax やハドロサウルス類 Hadrosaurid のアクリスタヴス Acristavus も産出しているので(ドリベンタスさんの言葉を借りれば)カップリングの参考になります。
ナストケラトプス・ティトゥシ Nasutoceratops titusi
UMNH VP 16800
ジュラシック・ワールドの世界観で撮られた短編「Battle on the Big rock」にてJシリーズ初登場を果たしたことでにわかに話題になっていますこのケラトプス類。僕は前回紹介した時に「強いスター性」を感じると言いましたがどうです! 映画屋さんはさすがどんな恐竜がダイヤモンドの原石かわかっておられる。
まあ造られた人気はさておき、ナストケラトプスを模式属とするナストケラトプス族 Nasutoceratopsini は今後も新種の報告が相次ぐ見通しですので、そんな意味でも注目のタクサです。
パキリノサウルス・ラクスタイ Pachyrhinosaurus lakustai
TMP 1985.55.258
パキリノサウルスを取り上げるのも何回目でしょうかね。このキャスト自体も初めての登場ではありません。日本で常設しているのは国立科学博物館しか思い当たりませんが、パキリノの本場カナダでは普通に展示されていましたからね。
パキリノサウルスはカナデンシス P. canadensis が模式種(属を設立する根拠となった種)ですが、パイプストーンクリークで第2の種となるラクスタイの大規模なボーンベッドが発見された関係でラクスタイがよく知られるようになっています。
そして最近第3の種、ペロトルム P. perotorum が記載されたことにより今日最も種の多いケラトプス類となっています。ペロトルムは近いうちにご紹介する予定です。
ユタケラトプス・ゲッティー Utahceratops gettyi
UMNH VP 16784
頭骨のクリーニングが完了する前に復元頭骨が作られてしまった関係でこの頭骨のフリルは実物と形が違います。
ロングリッチ博士によると、ユタケラトプスは基盤的カスモサウルス亜科の位置付けで、ペンタケラトプス Pentaceratops の姉妹群とされています。
(ウィリアムズ・フォークのカスモサウルス類 Williams Fork Chasmosaur とはどういう関係なの? あなた)
コスモケラトプス・リカルドソニ Kosmoceratops richardsoni
UMNH VP 17000
ご覧の通りのエキセントリックかつ印象的な頭なもんで静かな人気を集めています。
目の上の角は横向き、鼻角は先端が尖っておらず板状なので種内競争で相手を傷つけづらいという憶測から「思いやり恐竜」なんて言われたりもしていますがどうなんでしょうね。
ちなみにここに展示されているナストケラトプス・ティトゥシ、コスモケラトプス・リカルドソニ、そしてユタケラトプス・ゲッティーの3種は全てカイパロウィッツ層から発見されていて、実際共存していたと思われます。生物相を共有していた恐竜にはテラトフォネウス Teratophoneus 、グリポサウルス Gryposaurus、パラサウロロフス Parasaurolophus 、アカイナケファルス Akainacephalus なんかがいました。
コアフイラケラトプス・マグナクエルナ
Coahuilaceratops magnacuerna
CPC 276
知る限りコアフイラケラトプスの頭骨キャストはこのタイプしか製造されていません。
この動物の偉大性はメキシコ初の角竜および既知の唯一のカスモサウルス亜科であること。そしてケラトプス類最大の武器である角、その長さが1.2mと史上最長であること。それにつきます。
今日はここまで!
続きます。
==関連記事==
今日紹介したケラトプス類は全てユタ州立自然史博物館編でも解説しているのでご興味のある方はご参照ください。