去年の夏に古生物クラスタが現れて以来警察の巡回が強化された新興住宅地の夜道にルベオサウルスが現れました。
「お兄さんどうもこんばんは」
「あ、どうもこんばんは」
「え? 今何中?」
「あ、や、ちょっと山菜探してたとこなんですけど」
「あ〜、最近この辺じゃ山菜もなかなか見つけるの大変だよね〜笑」
「ほんとっすね〜笑 ふふふ」
「何の山菜?」
「シダとかソテツですよー笑 え、なんかあったんすか?」
「え? なんかって?」
「いやいや笑 こんなところにお巡りさんがいるなんて珍しいな〜と思ったんで笑」
「あーそっかそっか笑。びっくりさせちゃった?笑」
「あー笑 いやまあ別にびっくりてほどじゃないんですけど、ただどうしたのかな〜って笑 ははは」
「いやなんかあったわけじゃないんだけどね…。え、なに? お兄さんここら辺住んでんの?」
「あーまぁ、そうっすね」
「ちょっとお手数なんだけどさ、名前教えてくれる?」
「名前?」
「うん」
「学名で良いですか?」
「あ、お兄さん学名ついてるの。すごいじゃない。全然学名で良いよー」
「ルベオサウルスです」
「ルベオザウルス…_φ(・_・ ) 下の名前は?」
「下の名前? 種小名はオヴァトゥスですけど」
「…お兄さん古生物クラスタでしょ?」
「古生物クラスタ? 違いますね笑」
「じゃあ何クラスタなの?」
「いや、なんでクラスタに属してること前提なんですか笑 古生物そのものですよ〜笑 ルベオサウルス。恐竜です」
「あーお兄さん角竜㌠!」
「サンチーム?」
「道理でお兄さんオシャレだと思ったんだよね〜」
「えー? そうっすか〜?笑」
「いやオシャレだよ〜。今またこういうの流行ってんだ〜」
「え?え?何?こういうのってなんすか?」
「いやぁその角竜みたいなツンツンした髪型。お巡りさんが若い頃もこういうの流行ったのよ。いやぁ流行は巡るっていうけど本当だねぇ」
「いや、みたいじゃなくて角竜なんで、これホーンレットなんで、別にスパイキーヘアじゃないんで笑」
「あー! そうそうスパイキーヘア! そう今ツンツンヘアって言わないんだよね! あとあれだ、モノクロニウスも言わないでしょ」
「え? 何がっすか」
「モノクロニウス知ってるー? モノクロニウスー笑」
「ははは。まー知ってますけど」
「あー、なんだモノクロニウスでも一応通じることは通じるんだ?」
「いやちょっと待ってください!笑 なんの話ですか!?笑」
「いやいやだってほらモノクロニウスって言わないでしょ、今時の人は? あのー今なんていうのーあれ、ケントロじゃねぇ、えーと…」
「セントロサウルス?」
「それだ! そうそうセントロザウルス! “モノクロニウスは実在しない!”」
「いやーまー、モノクロニウスって言わなくもないと思いますけどぉ。ぇだって、疑問名ですよね? ホロタイプの独自性が不確かなだけで無効名じゃないですよね?」
「古生物クラスタだな」
「ルベオサウルスですよ」
「ごめんごめん笑 はぁ確かに無効名じゃないねえ! え? じゃあトロオドンもそうか!?」
「いや、だからそうですよ!笑 ホロタイプの歯がステノニコかラテニかわからないからトロ….ってだから何の話なんですか!?」
「何が?」
「え、なんか用事があって声かけてきたんすよねえ!? トロオドンの話どうでもいいじゃないっすか!」
「はっはっは、悪い悪い笑。なに?急いでた?」
「いや別に急いでるわけじゃないっすけど、特に用事がないんだったら帰りたいなと思ったんですけど」
「いやいや、用事がないわけじゃないんだよ。お兄さんもほらニュースとか見てて思ってるかも知れないけど、最近世の中物騒じゃない。 だから古生物クラスタがいたらこうやって声をかけて、犯罪を未然に防ごうってまあそういうことなのよ」
「え〜? え〜? え、え、え、え、え! えぇっ?! じゃあなに!? 僕が古生物犯罪者ってことっすか!? 」
「いやいやいや、そういう風に受け取ってもらっちゃうとお巡りさんも仕事しづらくなっちゃうじゃない。もう勘弁してよ〜、お兄さんオシャレなんだから〜」
「いやオシャレじゃないですよ〜!」
「え、その中央に寄ったホーンレットってのはオシャレなの?」
「いやオシャレかどうか分かんないっすよ! 元からこういう形態なんで!」
「えっ? 元から!?」
「…」
「元から!?」
「…そうっすよ?」
「そっか。えええ!? ということは!? 元からオシャレってこと!?」
「いや知りませんよ! いや僕がオシャレって言ってるわけじゃないんだから自分で判断してくださいよ〜!」
「いやそっかお巡りさん騙されたな〜」
「いやちょっとその騙されたって言うのやめてもらっていいですか!?」
「いやいやいや騙されたよ〜。だってこんな生まれつきオシャレだなんて思わないもの〜。この生れながらの古生物クラスタ詐欺師!」
「いやちょちょちょちょちょちょちょっと!ちょっと!だからやめてくださいって!お巡りさんに言われたらほんとに詐欺師みたいじゃないっすか〜!」
「んんん? なんか今、変に動揺したねぇ?」
「え?」
「なんかやましいことでもある? ん? ルベオザウルスなんてほんとは無効名なんじゃないの〜?」
「いや有効っすよ…」
「だって今ちょちょちょちょちょちょとか言って慌てただろ」
「ちょっと、違いますって〜!何これ〜? 超ズルくない!?」
「いやズルくはないよ。だって独自性に自信があれば別に何言われたって平気でしょ? お巡りさんだってねダテにこんなとこに立って声かけたりしてないよ? 不審な素振り見せたらもうビビビビーって来るんだから。だいたいお兄さん、完全な頭骨出てるわけじゃないでしょ?」
「いや固有派生形質はありますって!」
「だってお兄さんブラキケラトプスにそっくりだよ〜?」
「いやブラキケラトプスですよ?」
「ほーら見ろ! やっぱり! お巡りさん最初から怪しいと思ってたんだよ」
「いやブラキケラトプスが僕の未成体って説があるんですよ!」
「未成体? でも先に命名されたのはブラキケラトプスな訳だから先取権があるのはブラキケラトプスの方でしょ?」
「いや、ブラキケラのホロタイプは不完全だから僕のシニアシノニムにはなり得ないんですって! そもそも幼体だし」
「え、じゃあスティラコザウルスとはどう違うの?」
「え? いや、もともとスティラコサウルス・オヴァトゥスって呼ばれてましたけど、スティラコはP1が僕みたいに中心に寄ってないじゃないっすか! だから独立したんですよ〜」
「ほんとか? ほんとにそれだけで別属って言えるのか?」
「ほんとに有効名ですって!」
「はい笑 じゃあ今日のところはお兄さんのこのオシャレなツノに免じて許してあげようかな笑」
「許してあげるって最初から何もしてないじゃないですか! 勘弁してくださいよ〜!」
「あれあれあれあれ〜?」
「はぁ、なんすか今度は…」
「このツノ武器だよね?」
「えっ、いや、使い方次第だと思いますけど…?」
「じゃあ何に使うの?」
「….ディスプレイですよ」
「いや〜、これ完全に武器だよね? 先っちょとんがっちゃってるし。でもディスプレイなんだ?」
「はい。ディスプレイですね…」
「結局オシャレなんだ?」
「まあ、はい…」
「お兄さん銃刀法って知ってる?」
「まあ、なんとなくは…」
「まあそういうのがあるんだ。刃渡り15センチ以上の刀、槍および薙刀なんかをみだりに持ち歩いちゃいけませんよーっていう法律なんだけど…。これ15センチ以上あるよね?」
「えぇ? どうっすかねぇ?」
「20時50分、銃刀法違反で現行犯逮捕(無線)」
「え、マジっすか…」
完
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