サンチュウリュウは破片もいいところでオルニトミムス類かどうかも怪しい。—-山本聖士
どうもケラトプスユウタです。
表題の通り、5月19日にお邪魔させていただきました、山本聖士さんの「恐竜復元教室 オルニトミムス類編」やります。
【全体のお話】
オルニトミムス類 Ornithomimosauria は初期のもので形ができあがってしまっている。
コエルロサウリア Coelurosauria の基盤的なところから分岐していると思われているが、より古いものが見つからないと詳しいことは言えない。
獣脚類の中でも身体に対する脚が長い。ティラノサウルス類 Tyrannosauridae よりも長い。
ガリミムス Gallimimus は全長6mくらい。大腿部よりも下腿部の方が長い。
二足歩行の動物が走力を強化するには脚を長くするしかない。
第四転子は発達していないので尾大腿骨筋はそこまで発達していないと思われる。
コエルロサウリアは最初の段階で尾が一度細くなっているが、オルニトミムス類は二次的に尾が太くなっている。
初期のオルニトミムス類は情報が少ないのでよくわかっていないが、ガリミムスの骨盤帯は前後に伸びていない。胴が短くなると内臓のスペースが小さくなるので恥骨は垂直か後方になるものだが、派生的オルニトミムス類は腸骨が著しく前後に伸び、恥骨がかなり前方に突き出している(二次的に)。
コエルロサウリアでそうなっているものは少なく、初期の獣脚類によく見られる特徴。
指骨は1〜3が同じような長さ。ハルピミムスHarpymimus は1が少し短いが、獣脚類としては比較的長い。
獣脚類は第1指が外側に向くのが多いが、ほとんどのオルニトミムス類は全体的にすぼまるような向きで指が伸びている。
手首の回内はできない。
首は長いが、ダチョウと違って、ふつうに立って地面に頭が届く長さではない。
走鳥類よりは頭はがっしりしている。
雑食か植物食と思われる。胃石も見つかっている。
どちらにせよ胴が短いので消化しやすいものを食べていたと思われる。
大型オルニトミムス類ほど尾の高さが増している。
【頭】
『基盤的オルニトミムス類』
基盤的オルニトミムス類であるンクウェバサウルス Nqwebasaurus とペレカニミムス Pelecanimimus は小さい歯をたくさん持っている。その段階は半ばクチバシと化した口。
先端に歯が残っているので、後方から嘴化が起こったという説があるが…(?)
涙骨と頬骨の関節が緩いので可動性があったかも。
コエルロサウリアは全般的に前眼窩窓が小さい。
鳥類とオルニトミムス類はクチバシの構成要素が異なる。鳥類のクチバシのほとんどは前上顎骨だがオルニトミムスのは上顎骨である。
派生的オルニトミムス類は後側頭窓が細くなっており、デイノケイルス Deinocheirus ではほぼ閉じているが、ハルピミムスは退縮が進んでいない。
ペレカニミムスの後頭部の突起はよく描かれるが、根拠は全くない。
『ハルピミムス』
ハルピミムスは下顎の先の方だけ歯が残っている。クチバシはペレカニなどに比べると高さが増している。
『ガルディミムス Garudimimus』
ガルディミムスはハルピミムスと同じか次の段階に位置付けられる。ガルディには歯がない。ほかのオルニトミムス類と比べて上顎も下顎もまっすぐっぽいのが特徴。
ガルディの強膜輪は眼窩いっぱいのサイズなので飛び出しぎみの大きな眼だっただろう。
『デイノケイルス』
デイノケイルスは頰の骨が下にえらい張り出している。
側頭窓がしまっている。
下顎は非常に高さがあり、上顎は細く低い。
鼻骨が細長く伸びていてオルニトミムス類としては例外的。
鼻先は上下の高さがない。
眼窩は8〜9cmくらいと結構でかい。
水辺の植物を食んでいたなどと言われている。
口先がカモのように平たいクチバシになっている。
『派生的オルニトミムス類』
派生的オルニトミムス類はダチョウよりも大きいが、軽快な構造は保たれている。
ストルティオミムス・アルトゥス Struthiomimus altus は上顎骨が拡張していて一定の塊を造っている。
グレゴリー・ポールは角ばったクチバシで復元しているが、実際はぬるっと丸みを帯びている。
内鼻孔が前の方にある爬虫類的口蓋。鳥類は前眼窩窓がほんのわずかで、後ろの方に内鼻孔がある。
【首】
首は細長いがダチョウほどではない。多くのコエルロサウリア同様、神経突起がほとんどない。
派生的オルニトミムス類は頚椎が前後方向に伸びている。実質12個の頚椎。
ペレカニミムスの喉袋は痕跡が示唆されている。
舌は長くも大きくもなく、固定的で喉の下にはりついてるかんじ。
【手】
手はオルニトミムス類の属種を分ける重要な要素。
上腕骨はだいたいまっすぐ。下腕が短くないのは獣脚類としては特徴的。
熊手のように枝を引っ掛けるのに適した指。
腕は長くて機能的だが筋肉は細い。
ペレカニミムスはボディサイズのわりに前肢が長い。
ンクウェバはまだ短く、爪が強く曲がっているが、オルニトミムス類らしくなって来ている。
ハルピミムスはなぜか第1中手骨が短く、第1指が明らかに短い。ンクウェバあたりの段階から独自に派生したのがハルピミムスなのかも。
ガリミムスとデイノケイルスは末節骨が緩やかに曲がっている。大型化と同時に食性に変化が起こっているかもしれない。
オルニトミムス Ornithomimus は第1中手骨が明らかに長く、ほかの中手骨と同じくらい。第1中手骨が長く、その結果、2、3と似た長さになっている。2と3は完全に同じ長さ。
【胴体】
全体的に幅のある胴ではない。
13個の胴椎のうち2個が頚椎化しており、10個が胴を支えている。1つは骨盤を支えている。
恥骨が前に出ているせいで腰のふくらみが後方に存在しない(デイノケイルスは恥骨が前方にそんなに突き出していない)。
『なぜ恥骨が前の方に伸びるのか』
コエロフィシス類やラウイスクス類もそうなっているが、直立二足歩行動物は足の間に内臓を置きたくない。そして獣脚類はほぼ一直線上に足を運ぶ。後肢を運ぶのに腹が干渉しないように進化したのではないか。また座骨が長いのは尾が脚の動きを阻害しないようにするためではなかろうか。大型肉食性獣脚類は頭が大きく前方が重くなるのでそういう進化をするわけにはいかなかった。
【脚】
アルクトメタターサルはンクウェバ、ハルピ、デイノケイルスの段階では獲得されていない。
ガリは成体では極端なアルクトメタターサルになっている。中央の指が一番長いので左右は短め。爪は蹄形に近い。
デイノケイルスだと体重が増したから、ハドロサウルス類のような先の丸い蹄になっている。速さを捨て、大型化した。でも大型獣脚類としては速い方。
派生的オルニトミムス類は第1指がなくなっている。ハルピミムスでは未発見だが系統的に恐らくあったはず。
デイノケイルスは太短い脚になっちゃぁいるが、テリジノのように腰幅が広くなっちゃぁいない。第一趾があったかどうかは明確ではない。
既知の中で2番目に大きなオルニトミムス類のベイシャンロン Beishanlong は中足骨が退化ぎみだが第一趾はある。
派生的オルニトミムス類は中足骨が短い。
速く走るためには設置面積は減らした方が有利。
デイノケイルスは趾骨も短いが中足骨も短い。
足先や手先は羽毛に覆われていなかったと思われ、ちょうど特徴がある部分でもあるので、描き分けしやすい部分。
速く走れる動物としては珍しく、足の骨があまり曲がっていない。
脛が長く、中足部はそこまで長くないが、膝から下がかなり長いのは確か。
左右方向から見た筋肉の幅は太いが、前後から見たら薄い。
腿よりふくらはぎの筋肉を大きくするのは間違い。
付け根が太く、先に行くほど細い。
恥骨と座骨の間には恐らく何もない(ヒトもそう)。
二足歩行なのでレイヨウのような細脚にはなり得ない。
【羽毛】
羽毛はヘルクリークのオルニトミムスから知られている。肩あたりからプロトフェザーに近い方の羽毛が見つかっている。航空力学的特徴はない。恐らく体全体を似たような羽毛で覆っていたのではないかと思われる。
腕の羽毛はヒトの腕毛みたいに巻き込んだ毛だったのではないか。
飾り羽のような物が規則的に生えていたというのは疑わしい。連想して尺骨のところに規則的に並んでいない。少なくとも風切羽のような物ではない。
カモの雛がそれっぽい。