恐竜復元教室レポート サウロロフス編

筋肉編に続きまして前回の復元教室、3月10日のサウロロフス編のレポートになります。

筋肉編冒頭で説明した通り、復元教室レポートは当ブログ本来の趣旨とは逸れるものなので、あくまでも間借りというスタンスで掲載するものです。今後はそのことは逐一説明しませんが、肝に命じておいてください🤓 ケラトプスユウタです。

それじゃ乱文につきご了承いただくとともに、レポートをお楽しみください。

【序】

陸上を闊歩した最大の二足歩行動物の一つ。

白亜紀後期マーストリヒチアンに生息したハドロサウルス科サウロロフス亜科サウロロフス族に属する大型植物食動物。北米産のオスボルニ S. osborni とアジア産のアングスティロストリス S. angustirostris の二種が有効とされる。

模式種オスボルニは亜成体のホロタイプがそこそこ完全。成体はアングスティロストリスの頭骨のみで知られる。

大型動物の死骸は目立つので肉食動物に分解されやすく残りにくい。

成長しきった個体はティラノサウルスより長く重く高さもあっただろう。

サウロロフスは頭が大きく復元されすぎることが多い。頭はたしかにでかいんだけど体も相応にでかい。

普通の鳥脚類よりは頭がでかいので重心がより前方寄りになってはいる。ただし坐骨の下で支える内臓の量が増えている。尾も長い。つまり重心が前に寄りすぎないボディープランになっている。

尾が長いというプロポーションは他の四足歩行の鳥盤類とは様子が違う。脚の筋肉が尾にも含まれているので、体の半分が尾だとしても、体の半分が尾である哺乳類のイメージとはボリューム差が違う。

そこそこ完全なホロタイプが知られる。

発見されているのは未成体と一部成体の頭骨のみ。

林原のサウロロフスは歪みが比較的少ない。

全身骨格掘っちゃって浮かれるのは最初から目を曇らせる行為。

サウロロフスはエドモントサウルス・レガリスと地質年代がかぶっているで標本数は圧倒的に少ない。サウロロフスが末期で衰退したのは植生の変化と関係あるかも?

足跡から全長18mと推定された事があるが、おそらくマスタープリントではないので怪しい。マスタープリントは動物の足が実際に直接踏んだ層につけられた足跡。化石として残っている足跡の多くはそれより下の層のものであり、より大きな足跡になっているので、実際よりも大きな動物と勘違いされてしまうこともある。マスタープリントは最初に風化しやすい。

その足跡がサウロロフスの物であることも推論である。

骨化腱は筋肉の中にあるので骨には接しない。骨化腱は動きを制限せずに背すじを支える補助の役割を持つ。

林原の頭骨は1.3mほどでティラノの頭より強靭。福井県立恐竜博物館のはおそらく成長の余地がある若い成体。

エドモントサウルスとサウロロフスはハドロサウルス類(科)の最も派生的な位置付け。咬合面の噛み合いが著しい。一個一個の歯は小さいがそれが交互に並ぶことによって優れた構造になっている。

歯列の面の大きさはランベオサウルス類(亜科)よりもかなり大きい。

カンパニアンの北米は高低差があった。マーストリヒチアンは平地が増えた。その事がランベオサウルス類の衰退と関係あるかも。

モンゴルのネメグト層も白亜紀末なのは間違いないが、定かではない。

タルボサウルス以外に成体サウロロフスを捕食できる動物はいなかった。ドロマエオサウルス類はティラノサウルス類と競合して負けているきらいがある。

ハドロサウルスの進化は頭に収束している。化石は上からの圧力を受けて過剰にダックビルにされていたり、上面の輪郭が潰されているのであまり信用すべきではない。

【頭】

先端が丸っこいのでクチバシが前後に長いのではと思われる。エドモントサウルスは先が広いので下生えを刮ぐのに向いている。サウロロフスはそうではない。

頭骨全体が長くなっている。歯列拡大によって頭が巨大化している。歯列を最も進化させた実利主義者が恐竜時代の最後に勝利したのである。

眼窩の上はちょっとしたひさしになっている。

強膜輪からすると眼窩全部を埋める眼球ではない。

クレストはかなり後方に突き出す。オスボルニは上方にも伸びる。クレストの伸びる方向が種差とされるが、アングスティロストリスでも若い個体で上に伸びているのが知られているので、クレストが上方に向くのは若いサウロロフスの特徴であり種差ではないかもしれない? 今後論文が出て統合されるかも?? その場合、先取権はオスボルニにあるけど成体が知られていないので、アングスティロストリスが生かされるかも??!(個人的に現段階でオスボルニが模式種として認められてるのでそれはないと思う)

上顎のクチバシは角質によってクッキーカッターのように大きく伸びていた。下顎のクチバシについては大きすぎると口が閉まらなくなるのでほぼ骨の形のままだったと思われる。

頰の幅が頭骨において最も広い。肉がつけば急激な張り出しではなかったはず。

後方に向かうに従って再び収束する。

頰は側面図では扁平に描かれがちだが実際はもっと立体的。

前から見るとしもぶくれ(図の矢印は一番高くなっている部分ということを示す)。

鼻腔の上に軟組織があった証拠がある。ゾウアザラシのように鼻を膨らませたかも。その表面自体は滑らか。

鼻の穴は前の方で良かろう。

クレストは途中まで抉れていて先端だけ明確にザラザラしていて、角質で覆われていた事を示唆する。抉れた部分は生体では軟組織が覆いかぶさっていただろう。それがどんな形からはわからないが、骨の形そのままではないのは確実。

エドモントとサウロロフスの頭はクレストを除けばバランスが似ている。歯列の発達度合いは同様。

より基盤的位置付けのグリポサウルス、ブラキロフォサウルスは小顔でスレンダーだが歯列は同様の進化をしつつある。

【首】

首は比較的短い。頚椎の構造は他のハドロサウルス類と変わらず太くなっていない。

より基盤的な近縁属プロサウロロフスは首の下方への曲がりが弱い。この曲がりは前後長を短くして重心が前に行きすぎる事を防いでいるのかもしれない。

頚椎は13個。見かけ上は12個。神経突起が小さいのが特徴。関節突起が幅広く一個一個きれいに並んでいる。一個一個は少しの曲がりでも首全体ではかなり大きく曲げられる構造。

柔軟で腰まで届く。

ケーブル靭帯がウシの如く発達していた可能性もある。唾液腺が下顎の後ろで大きく発達していたかもしれない。哺乳類の唾液腺の場合、骨の範疇から大きく逸脱している。

首は横から見たら太く見えるかもしれないが、上から見ると薄かっただろう。

首には皮膚ひだがあったと考えるべき。硬い皮膚は動きを制限するので、シワが動きやすさを実現する。

【胴部】

幅より高さがある胴体。

棘突起の高い恐竜たちは骨を描いてからアウトラインを書かないと間違いやすい。

【前肢】

上腕が胴体に埋まり気味。

手は短い。頭が大きいので四足に復元されがちだが、より二足歩行に適していて走行時の姿勢は二足であることはほぼ間違いない。四足歩行しないことはない。

指は2〜5、2と3が寄り添って前を向く。イグアノドンは2が最大だがハドロサウルス類は3が最大。

ハドロサウルス類は手の甲がより前に向く方向に進化しつつあった。イグアノドンの手の甲はふつうに真横を向いている。

イグアノドンは手首がほぼ曲げられない。一部の個体は動かしようがないほど骨化している。

ハドロサウルス類はもう少し柔軟に動かせた可能性があるが、全ての手根骨が骨化するわけではないので難しい。

前肢は短いのでゴツく見えるが比較的細い。

そもそも前足を地につけるためには腰を斜めにしなければならない。

福井県立恐竜博物館のサウロロフスは腰が水平に見えるが、そのために脛が水平になるくらい膝を曲げているので自然な姿勢ではない。

ミイラ化石ではミトン状の手先が証明されている。皮膚が薄く保存されているので水かきと思われていたが、水分が抜けて萎んだだけ。

内側二本には爪がある。4にはない。

ハドロサウルス類の前肢は全体的に短い。

指先が細長いものもいるにはいるが、四足歩行を基本とする動物ではない。

【後肢】

ハドロサウルス類は総じて大腿骨が強靭。大型動物としては機敏。

後肢の強靭さは前肢とは比較にならない。

サウロロフスの大腿部はいかなる獣脚類よりも強靭。

大腿部と脛の長さはほぼ同じ長さ。ゾウは脛が短く大腿が長い。

サウロロフスは構造的には跳躍走行が可能だが、重すぎてできなかった可能性もある。

腰の上が一番高いので重心がそこだったかも。

足裏には肉厚のパッド。骨で見るとつま先だけが接地する。

腸骨は分厚く前後に長い。

膝関節に軟骨質のくさびがあってまっすぐにならないようになっていたと思われる。

脚の筋肉は上の方が下の方より太い。

第四転子は獣脚類と比べて下の方についていた。持久走向きと言われる。

尾大腿骨筋は横突起に対応。

【骨盤】

坐骨には脚の筋肉はつかないが、先端が厚くなっているので下の方に内臓が収まっていただろう。

坐骨遠位端は皮膚のすぐ内側にあったと思われるが、生体では目立たなかったはず。

鳥盤類の仙椎は6個が基本。サウロロフスのは8本に増えている。

ランベオサウルス亜科とハドロサウルス亜科の違いは、坐骨先端の鉤状のカーブの有無(ハドロサウルス類はない)。

【幼体】

獣脚類と比べると一頭一頭が産む卵の数が多いはず。親と子のサイズが違いすぎるので、子供が歩き回るサイズになったら給餌は望めないらしい。幼体は植物の陰に潜んでじっとしている事が多かった(?)

【表皮】

サウロロフスは皮膚印象化石が出ている。論文もある。そういうのでイメージを掴むと良い。

アングスティロストリスは尾の上のひだが出ている。よくある角ばった構造ではなく、厚みの緩急があるだけ。尾椎の一個一個の真上に対応しているので棘突起にかぶっていた皮膚がずれてそう見えるだけ臭い。鱗だったら棘突起に対応しないはず。背中に装飾がある鳥脚類がいたのは間違いないが、これがそれと同じものかどうかは怪しい。

よく動かすところにはシワが。

鱗は細かかった。ところどころに大きめのウロコがあり、パターンのあるメリハリの効いた感じだったかも。