ロイヤル・ティレル古生物学博物館 #7 賁育之勇

ムニャマワムトゥカ・モヨワムキアMnyamawamtuka moyowamkia ! (スワヒリ語のあいさつ(うそ)) ケラトプスユウタです。

さて、TMPは世界で最も恐竜化石の報告が多い大聖地、州立恐竜公園 Dinosaur Provincial Park (ダイナソーパーク層 Dinosaur Park Formation の名付け元)を抱える博物館です。恐竜公園はケラトプス類 ceratopsidae 化石の報告数も世界一で、カンパニアン期のケラトプス類の大多数が恐竜公園出身。そんなわけでTMPのケラトプス類の所蔵数、展示数は世界で1・2を競うレベルであります。

けれども今日最初に紹介するのは恐竜公園の角竜じゃなくアジア産のプシッタコサウルス Psittacosaurus

恐竜ファンの間では常識ですが、ケラトプス類はアジアの二足歩行の小型の角竜類 ceratopsia から派生したと思われています。

プシッタコサウルスはケラトプス類の祖先に当たるとは考えられていませんが、小型二足歩行という姿をとどめていて、基盤的な角竜類をイメージする上では最適な恐竜だと思います。

状態の良い標本や各成長段階を示す標本が多く見つかっていて、少なくとも10種が有効とされています。

(点光がきつくて大変申し訳ないです🙇‍♂️)

レプトケラトプス Leptoceratops 頭骨

トリケラトプスと同じフォーナ(生物相)に属していた「最後の角竜」の一つ。ケラトプス類とは早い段階で袂を分かったレプトケラトプス科 Leptoceratopsidae (ケラトプス類とプロトケラトプス類 Protoceratopsidae からなるコロノサウリア Coronosauria の姉妹群)の中では良く知られた動物です。

レプトケラトプス科はケラトプス科と比べるとフィーチャーされないタクサですが、アジア産のものもよく知られていてヨーロッパからも報告されているなど成功したグループの一つです。

フリルはまだ小さく角がないのが特徴で、こういった姿の動物からコロノサウリアが派生したと思われます。

いよいよ恐竜界の華、ケラトプス類登場!

カスモサウルス・ベリ Chasmosaurus belli

ROM 843

末広がりの四角っぽいフリルとでかすぎる窓が印象的な老舗ケラトプス類で、トリケラトプス Triceratops やトロサウルス Torosaurus などを内包するカスモサウルス亜科 Chasmosaurinae 模式属!

ケラトプス類は恐竜時代終盤に突然この世に現れ、ものすごい勢いで多様化を遂げ、当時のフォーナの主要なポジションにグイグイ食い込んでいって大繁栄したタクサで魅力の塊でしかない。

ちなみに熊本の御船町恐竜博物館で遊んでいる(人目に触れないところに置いてある)のはこのROM 843の復元骨格です。

てっかさ、正面の写真ちゃんと撮ればよかった。

そしてカスモサウルス属第二の種、C. ルッセリ C. russelli

CMN 2280 (ホロタイプ)

どうですこの佇まい。まさに勇姿といった感じ。

ちなみに、フリルの開口部が大きく層序的に新しいのがベリ、開口部がより小さく層序的に古い方がルッセリと言われてますが、このCMN 2280 が層序的には同じ(ダイナソーパーク層中部)(つまり同時に存在)という事と開口部の広さの差が性差である可能性が示唆されたそうな。今後ベリ一種に統合される可能性もなくはないと思います。とりあえず2019年2現在では2種が有効です。

インターネット上の記事によっては上眼窩角の有無で見分けるとしているものがありますけど、それは成長段階による差(カスモサウルスは成長すると吸収が起こる)とされるなので関係ないです。

あと「フリル正中線上の縁がくぼんでハート型になってるのがベリ」で「縁がまっすぐなのがルッセリ」としている記事や、その部分が「V字なのがベリ」、「狭いU字なのがルッセリ」とした記事もありますけど、上の二つの標本だと逆に見えるし、まっすぐな標本(YPM 2016, CMN 2245 など)があるので参考にならないというか、多分間違ってます(参考文献)。

あとカスモは特にホーンレットの個体差が激しく、縁鱗状骨はベリだろうがルッセリだろうが、そして成長段階に関わらず、6〜10対の間で個体変異があるらしいです。またベリに関しては縁頭頂骨が3対のパターンと5対(4対は知られていない)のパターンがあります。

これも一応カスモサウルス・ルッセリ 復元頭骨

TMP 1983.025.0001

ただし典型的なものではなく、モジョケラトプス・ペリファニア Mojoceratops perifania のホロタイプとして記載された事があるものです(参考文献)。

(あー疲れた)