UALVP

ゴールデンウィークにアメリカ・カナダ旅行をお考えの皆さま、ESTA・ETAの取得をお忘れなきよう…。ケラトプスユウタです。

今回も前回に引き続いてUALVP(アルバータ大学古脊椎動物学研究室)所蔵の標本を紹介いたします。

セントロサウルス・アペルトゥス Centrosaurus apertus

UALVP 11735 (または 11385) 実物

(標本番号が複数ある経緯はわかりません)

カーネギー博物館のレン・クリシュタルカ Ren Krishtalka博士という人が学生時代に発見したもの。

ケラトプス類の頭骨としては、世界で最も完全に近い保存状態で知られています。とはいえ上下にぶっつぶされているのでセントロサウルスらしい高さのある鼻先は失われています。

セントロサウルスの個体発生の研究でも用いられた頭骨で、それによると、前傾した鼻角、吻側に伸びたP1(第1縁頭頂骨)、内側に伸びたP2、癒合した鼻骨などの点から成体と思われます。

(参考画像)(Fの標本)

セントロサウルスにしては発達した上眼窩角を持っているのが気になります。このレベルで上眼窩角を残しているのは僕の知る限り他には CMN 348 くらい。更に成長したセントロサウルスでは全然目立たなくなっていて、どちらかというとより若い個体の形質である気がします。(アーティファクトじゃないよね?)

続いて エオケラトプス・カナデンシス

Eoceratops canadensis

UALVP 40

最初に言っておきますと、現在では種不明のカスモサウルス Chasmosaurus sp. と見なすのが普通。

1915年代にランベ Lambe が記載した亜成体のケラトプス類(ケラトプス・カナデンシス Ceratops canadensis としては1902年)。

キャプションによるとこの標本は1920年にジョージ・スタンバーグ George Sternbergによって発掘されたとありました(Wikipedia では1921年)。 記載は 1933年にギルモア Gilmore によって行われたそうです。

調べたところ、エオケラトプスは数体分記載されていて、ホロタイプは別にあるようです。それは NMC 1254 とナンバリングされてます(参考文献)。

1989年には、レーマン Lehman がカスモサウルス・カナデンシス Chasmosaurus canadensis なる種を新たに設け、カスモサウルス・カイセニ Chasmosaurus kaiseniとエオケラトプスをシノニムとしてそれに統合しました(参考文献)。

2010年にロングリッチ Longrich は、レーマンが C. カナデンシスとしていた標本の一つを新属新種モジョケラトプス・ペリファニア Mojoceratops perifania のホロタイプとして記載。その顛末でエオケラトプスは疑問名に(参考文献)。

2016年のキャンベル Campbell らの論文ではエオケラトプスとカスモサウルス・カイセニはどちらもホロタイプとしての独自性に欠くため種不詳のカスモサウルス Chasmosaurus sp. とされました(参考文献)。

以上、古くから知られる古生物にありがちな、ややこしい研究史の話でした🤓

最後に、地球惑星科学科かなんかの建物内につるされてるクビナガリュウの写真でさよならです。